山ちゃんの食べもの考

 

 

その111
 
[医食同源]を考える<1>

 最近、健康志向の高まり、というよりも、長寿社会を迎えて、果たして自分は健康でかつ長寿であることが出来るのであろうか?トイウ老後に対する不安への高まりからか、「医食同源」という言葉が再びよく聞かれるようになってきました。
 「医食同源」という言葉は、中国から渡来したもののように思われていますが、実は、日本の  先生によって生み出された言葉です。中国では古くから「薬食同源」という言葉で言われ、その考え方が伝えられてきました。
 ここでは、特に区別することなく、『大辞林』の「病気の治療も普段の食事もともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じであるとする考え方」。『広辞苑』による「病気を治すのも食事をするのも生命を養い健康を保つためでその本質は同じだと言う事」という解釈によって進めてまいりたいと思います。
 「医食同源」について考えるとき、やはり、石塚左玄の次の言葉は忘れられません。
 「食よく人を養い、食よく病を癒す」「食よく人を生じ、食よく人を健弱にし、食よく人を勇怯にし、食よく人を智才にし、食よく人を寿夭にし、食よく人の性格を左右す」「食よく人を上品にし、食よく人を下品にす」
 また、ドイツの哲学者・フォイエルバッハは“You are what you eat”(人間は何を食べてきたかによるものだ)といっています。
 日本綜合医学会会頭の沼田勇先生は「精神的にも肉体的にも人間の健康を左右するものは、結局は食の問題である」と述べ、日本人一億総半病人の原因は人工化された脱自然的文明生活にある。中でも生存の第一条件である食の歪みが最大の要因だと警告しています。
 
 
 アリゾナ大学教授で医学博士のアンドルー・ワイル著・上野圭一訳『ワイル博士の医食同源』(角川書店)の中で、博士は日本人に向けて以下のようにメッセージしています。
 「つい最近まで、日本人は世界でいちばん健康と長寿に恵まれた人たちだった。ところが今、その栄養が失われ始めている。主な原因は食習慣の変化である。朝食で言えば、ごはんに味噌汁、魚の干物、漬物、緑茶といった伝統的な食じを取る人が激減し、バターつきのトーストにベーコン、卵、コーヒーなどを望む人が急増している。いたるところにあるレストランでアメリカ式のファーストフードを食べる人も増えている。」
 「西洋の食事がよくないというわけではない。西洋にも健康にいい日常食がある。スペインやポルトガル、私は南フランス、イタリア、ギリシア、クレタ島などの地中海型の食事が好きだ。地中海型の食事は牛、豚、鶏などの肉をあまり使わず、魚、少量のチーズとヨーグルト、そしてオリーブ油をたっぷりと使う。また、果物と野菜を多用し、荒挽きのパンやパスタによって体にいい炭水化物が十分摂取できるように作られている。東洋における日本の伝統料理と同じように、西洋においては、地中海型の日常食が健康と長寿に寄与する料理だとされている。」
 「問題は、日本で最もポピュラーになってしまった西洋型の食事が、実は最も健康に良くないものの一つだったというところにある、ファーストフードがその最悪の見本だといえるが、飽和脂肪の塊である肉やバター、チーズをはじめとして、白パンや砂糖などの精製炭水化物、それに高度に加工された食品が多すぎるのである。」
 「食習慣の変化によって、日本では、若い人たちの間で肥満が増え、心臓病の罹患率も上昇し始めている。食生活のアルカリ化に起因するが、特に乳がんと前立腺がんの罹患率も急上昇している。正しい知識の欠如が原因で日本人の健康が低下していくのは、とても悲しいことだ」


 さて「医食同源」について考えていく上で、前出のアンドルー・ワイル著・上野圭一訳『ワイル博士の医食同源』(角川書店)から、博士の説を学んで見たい。
 博士はの冒頭で、まず「満足な食事とは何か」について述べている。
 博士が述べる「満足な食事とは、それは体や健康にいいというだけではなく、五感を満足させ、快楽と慰安をもたらす食事をも意味する。そして満足すべき最適な食事とはまた、カロリーや栄養素など、体の基本的な欲求を満たした上で、さらに病気へのリスクを減らし抵抗力を高め、生まれつき備わっている治療のメカニズムを強化するものでなければならない。と述べています。
 さらに、人が世界をどのように感じ、どのように年を重ねていくかを決定する要因はその人の食生活にある。また、食べものが薬としても機能し、多様な病気の発症や経過に影響を及ぼしている。と。
 まさに、「人は食べものの化身」であり、石塚左玄の「食よく人を養い、食よく病を癒す。食よく人を生じ、食よく人を健弱にし、食よく人を勇怯にし、食よく人を智才にし、食よく人を寿夭にし、食よく人の性格を左右す。食よく人を上品にし、食よく人を下品にす」という言葉と意を等しくするものであります。
 ワイル博士は「最大の危険性は食べすぎである。人類の遠い祖先ならそんな心配は無用だったはずだが、次から次へと魅力的な新商品が出現し、レストランはサービス合戦が盛んで、大量に注文すればするほどおまけがついてくる。愛情や関心のしるしとしてご馳走をしてくれる人が多くいる現代、食べ過ぎずにいることは至難の業である」。
 「口はわざわいのもと」という諺があるが、口から出す言葉だけでなく、貪り漁って飽くことの知らない貪欲な食欲も、健康を損なうわざわいのもとである。


 昔から「少食に病なし」といわれているが、断食療法で有名な甲田光雄先生は『少食が健康の原点』の中で、健康長寿の秘訣は少食にあると断言しています。そして、患者さんたちの病気を治し健康を増進させる決め手になるものはその「心」と「食」にある。患者さんたちの病気を治し健康を増進させる決め手になるものはその「心」と「食」にある。と述べています。
現代医学が長足の進歩を遂げ、日本人の平均寿命も飛躍的に伸びている中であまりにも病人が多い。人間の体は自然の法則にかなった生活をしている限り、そう簡単に滅び去るようには出来ていないのです。にもかかわらず現代社会のような病人の続出は自然の法則から逸脱した生活を続けている結果だとしか考えられない。農薬や食品添加物によって“不自然化”された飲食物を常用しているため、体質が急速に劣悪化の一途をたどっています。
 甲田先生は、一億総半病人のような現代社会を招いたのは「いのち」を粗末にした報いだ。人間の幸せはなんといっても健康であるということであり。人が健康であるためには「いのち」を大事にすることだ。と次のように述べています。


 まず一番は自分の命であり、自分の命こそは世界中で一番可愛いから、人は無意識のうちにも自分の命を守るような行動をとっている。毎朝ジョギングをしたり、いろんな健康法を試みているのも、みな自分のいのいが可愛いからに他なりません。
 ところが、甲田先生は、自分の命を大事にしていても、それだけでは本当に健康になることは出来ないのだ、ということがよく解ってきたというのです。


 「自分の命だけは大事にするが、他人の命は粗末にする」。公害問題などの根本原因はまさにそれで、差別思想だというのです。
 市場向けに、農薬や化学肥料をたくさん使って見栄えの良い米や野菜や果物を栽培して出荷する一方で、自家消費用のものには化学物質を使わず自然な農法で作ってたべる産地があったりするのもそうです。
 長く日持ちさせるために防腐剤や保存料、美しく見せるために着色料、香りを良くする為の香料、粗悪な原材料でうまいものを作るための化学調味料をはじめ、決して体のためには良くないと解っていながら大量の食品添加物を使っての有害食品。
 自分たちさえ売れて儲かれば、他人がどうあろうと構っちゃいないというエゴの行為です。このような他人の命など構っておれないという自己中心的な考えがまかり通る社会では、結局可愛い自分の命を守ることも出来ません。
 このことが、どんなにかこそ人々の命を脅かしているか計り知れません。


 自分の命を大事にすると同じように他の人々の命を大事にすれば、それでわたしたちは健康を得ることが出来るかというと、まだまだ足りません。甲田先生は、動植物の命をないがしろにしていたのでは本当の健康は得られないのです、とっ強く主張しています。
 命を大切にと言いながら、卵や魚、野菜、肉などを単なる「モノ」としか見ていない人がいます。野菜も果物も、一匹の鰯も一個の卵も、同じくこの世に生を受けた命なのです。
 私たちはこの大切な命をいただいて生かされているのだ、という自覚が必要であり、一粒の米、一枚の葉っぱといえども、天から与えられた大切な命として、感謝合唱していただき、決してこれをムダにしないという考えで食事することが、健康法の最も基本となってくるのだ、と述べています。
 私たち日本人は、世界中から美食・珍味を買いあさり、美食飽食をほしいままにして、その上大量の食べ残しをゴミとして廃棄しています。このような命を命とも思わない横暴な行為が心も体も蝕んで不健康にしているのです。
 先生は、少食が守られず、過食を続けている限りは、他にどのような健康法を実行しようとも、結局は病に倒れ、長寿を全うすることが出来ない、とおっしゃっています。


 甲田先生は、2500年前に釈尊は「この地球上に生存するすべての生物は平等に生きる資格が与えられているのであって、すべての生物がお互いに共存共栄(共存供与)をはかることにより、天命を全うすることが出来る」と教えています。この教えを私たちは今真剣に考え且つ、本当に実行すべきときであることを悟らねばならないのです。この思想はすなわち、細菌、微生物の命といえども無駄にしてはならないということです。と述べています。
 農業や医学、食品加工においても“邪魔者は殺せ”で微生物や細菌、虫や小動物を皆殺しします。畑や田んぼではメダカやタニシも死に絶え、雑草すら生えない「死んだ土」がいっぱいあります。動物の飼育にも抗生物質をはじめ、いろんな薬剤が使われます。このように人間の自分さえ良ければいいという横暴極まりない”邪魔者は殺せ“の思想が、結局すべての人々の体質を弱体化し、劣悪化させて来ているのです。
 小動物も微生物も死に絶えて生きられないような荒廃した土や環境では、決して健全なる心身を育むための作物や食品など誰が考えたって出来るわけはないのです。




 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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