山ちゃんの食べもの考

 

 

その113
 
[医食同源]を考える<3>


 さて、ワイル博士の「満足な食事の7つの原則」をもう一度整理すると。
@人は生きるために食べる。
A食は快楽の主源である。
B健康食と快楽食は矛盾しない。
C食事は重要な社交の場である。
D食べるものを見れば、その人がわかる。
E食は健康を左右する因子の一つである
F食生活の改善は病気対策と健康づくり戦略の一つである。

 食は人間の健康長寿にとって一因にしか過ぎないといわれます。しかし、その食のあり方によって、われわれの健康が大きく影響されていることは事実です。日本人の三大死亡原因は、癌・心臓病・脳卒中で、日本人の死因は欧米型に近づいているといいます。世界一の長寿国になったとはいえ、いつまでも保障されるものではありません。高齢者のみならず子どもたちにまで、食を含む生活習慣病、健康不安に悩む人は少なくありません。
 私たちの身体は脳も含めて全てが食べたものから作られております。日々の健康状態も健康で長寿であることも、食べるものに大きく左右されるのは当然であります。農薬汚染や食品添加物をはじめ、輸入食品のポストハーベスト農薬汚染、家畜や養殖魚の抗生物質、ホルモン剤使用問題、遺伝子組み換え食品、出血性大腸菌O−157による食中毒、ダイオキシン汚染、環境ホルモン等々食の安全性と健康を脅かす問題が増加するばかりです。
 健康に不安を抱く人、生活習慣病者のおびえる人が急増しているいま、考えるべきは生活習慣のなかでも、我が国における食の乱れについてでしょう。
 最も理想的と評価される日本の伝統食が崩壊の兆しにある現在、ワイル博士の述べるように、ヒポクラテスの教え、「食を薬となし、薬をして食となせ」を真剣に考えなければならないと思うのです。


 東京農業大学の小泉武夫教授は『食の堕落と日本人』の中で、厳しく次のように警告を発しています。
 「食生活が乱れるとその人の体調が崩れるのと同じく、国民の食の周辺が乱れてくるとその国の社会も崩れてくる。早い話が今の日本だ。あちこちで若者ばかりか大人までもがぶっちぎれ、詐欺だ、使い込みだ、傷害だ、殺人だといったニュースが眼から耳から入ってこない日がない。」
 「……高度経済成長を実現し、世界一の富める国を築いたまでは良かったが、みんなが浮かれて民族としての生きる知恵や基本を忘れてしまったとたんから、食い物は外国から金で買えば楽だわ、魚だって取るのは面倒くさいから外から買うのがちょうどいいわ、ということになって、食べ物は作らないは、加工もしないわという堕落新がはびこってきたのである。
 そんな堕落が長く続くと、生き方にもどんどん変化が現れて、食の周辺文化も激しく崩れていく。農作物(食料)の生産活動や生産量はどんどん低下するから、食料の輸入量は逆に増加する。年々食料の自給率は低下し40%を切ってしまった。……」
 食の乱れは精神の乱れにつながります。「医食同源」「薬食同源」。食に対する正しい知識と考え方を持ち、日本民族の食体系を再構築しなければなりません。


 そこで、私たちが食を通して摂取している栄養についてみてみましょう。
人間の栄養とは何か。ワイル博士の『医食同源』を中心に学ぶことにします。
 脂肪、炭水化物、タンパク質は、体が多量に必要とする三大栄養素で、体のカロリー、つまりエネルギーがすべてまかなわれていまする。
 タンパク質の最も重要な働きは私たちの体のいろんな部分を作ることです。筋肉はもちろん、肌や髪、血液、血管など、身体の水分以外はほとんどタンパク質で出来ていると言っても過言ではないのです。それに、タンパク質はホルモンや酵素、病気から体を守ってくれる免液体の材料にもなります。タンパク質が不足するとむくみ・肌荒れ・抜け毛・下痢・食欲不振・貧血・免疫力低下・成長障害・精神障害・無月経などの症状が出ます。逆にタンパク質を摂りすぎると腎臓に負担がかかったり、特に動物性タンパク質には脂肪やプリン体も多く含まれているので肥満・通風になる危険も出てきます。
 豆腐など、植物性タンパク質を含む食品を食べる時は、ご飯を一緒に食べるようにする。豆腐のタンパク質を構成しているアミノ酸が、ご飯(米)のアミノ酸と一緒になると、足りないアミノ酸を補い合い、総合的にタンパク質の栄養価がアップするからです。タンパク質は成長と組織の修複のための構成要素にもなるます。
 体が正常に機能するためには、三大栄養素のほかにもビタミン類やミネラル類などの必要な微量栄養素があります。
 体がどのようにして炭水化物・脂肪・タンパク質を利用しているのか。どのようにしてエネルギーを引き出し、それらを貯蔵し、相互に転換しあっているのか。まず炭水化物から見てみましょう


 食べものからとるエネルギー(カロリー)はすべて、もとをただせば緑の植物が固定し、貯蔵した太陽エネルギーからきています。植物はこの驚異的な作業を炭酸同化作用と呼ばれる光合成を通じておこなっています。つまり、植物は太陽の光をかりて、空気中の二酸化炭素と根から吸収した水を使って、自分で養分を作り、酸素を吐き出しています。このはたらきを光合成といいます。
 自分で養分を作りだすことができるのは、植物だけが持っている特別な力で、植物は生産者といわれています(この場合、動物は消費者、微生物は分解者と呼ばれます)。植物がその体内で、無機化合物または簡単な有機化合物から、体を構成する有機化合物を合成します。空気中の二酸化炭素を材料(栄養源)にして植物が成長し、成長した植物体には炭素量が増えていきます。
 植物にも人間と同じように1日24時間リズムがあり、光合成の時間帯は、だいたい午前中に、日の出とともに太陽からの光線を受け、根から水を吸収し、炭酸ガスを葉の気孔から採り入れて炭酸同化作用をおこないます。
 日が暮れると、植物の光合成は停止し、細胞たちは昼とは逆向きの反応をはじめる、呼吸作用と呼ばれるその逆転作業で、細胞は昼間作ったグルコース分子を酸素の力で燃やし(代謝し)、分子を二酸化炭素と水に分解して、その化学結合の中に貯蔵してあったエネルギーを取り出す。植物がこのときに使う酸素は微々たるものです。
 植物は赤から紫までのスペクトルを持つ光エネルギーを利用して大気中の二酸化炭素と地中の水を結合させ、グルコースの分子を作っています。そのプロセスで酸素が放出されます。右旋糖、ブドウ糖(植物)、血糖(動物)とも呼ばれるグルコースは最も単純な炭水化物の一つであって、植物や動物の細胞にとってはいちばん基本的な食料になるものです。いわば、エネルギーを得るために、ほとんどの細胞が使いたがる燃料です。


 活発に光合成をしている植物が放出している酸素は相当な量に達するものであり、地球のすべての動物は全植物が放出する酸素によって生きているのです。
 植物と動物という二つの生物王国は、こうした見事な相互依存関係を結んでいるのです。動物は自らエネルギーを生産できないため、太陽エネルギーを使って有機物をつくる植物の光合成に依存し、食物連鎖という形でその生存を維持しています。
 つまりこの地球には、二酸化炭素を利用し酸素を供給する植物と、酸素を必要とする動物がバランスよく共生し、地球大気を介した炭素循環のシステムが築きあげられているのです。植物も動物も四六時中、貯蔵したエネルギーを燃焼させるたびに酸素を消費し、二酸化炭素を放出していますが、動物が放出した不要の二酸化炭素は光を浴びた緑の植物によって、グルコースを作る最初の材料として利用されます。その過程で酸素を放出しているのです。
 そしていうまでもなく、自力では太陽エネルギーを固定することが出来ない動物は植物(および草食動物)を食べてそのエネルギーを吸収し生きています。だから植物を栄養の生産者と呼ぶのに対して、動物のことを消費者と呼んでいるわけです。グルコースは一般的にはブドウ糖と呼ばれているものです。グルコースは体を動かしたり、考えたりする時のエネルギー源です。特に、脳や中枢神経はグルコースのみをエネルギー源としますので、とても重要な糖質です。


 植物と動物の生きた組織(伸長する芽や葉、脳など)は絶えずグルコースを必要とし、太陽エネルギーの中身、すなわち単純な糖の配分を調節する精巧なホルモン機構を備えています。肥満や糖尿病ではそのグルコースの代謝に異常が生じているのですが、その異常が果たして原因なのか結果なのかまだわかっていません。
 血糖値が低くなりすぎる(たとえば糖尿病の人がインスリンを過量に注射したときや、食べる量が少なすぎたときなど)と、急速に脱力感に襲われ、ついには意識が失われますが、静脈にグルコース液を注射すると、その症状はたちまち消失して元気を回復します。
 この事例を見ても、脳は常に一定量のグルコース供給に依存していることがわかります。中でも脳神経細胞はまた、体全体の代謝エネルギー総量に占める割合が極めて大きく、血中グルコースの消費量が突出して多い器官であり、グルコースしか利用できませんからデンプンは重要な栄養素ということになります。
 私たちは動物性・植物性多糖類の両方を食べているのですが、どちらもグルコースがたくさん結合してできたものです。このグルコースとは、ヒトが生きてゆくために不可欠な物質で、「血糖」の糖のことなのですが、細胞に取り込まれたのちエネルギーに変換されます。ブドウ糖と呼ばれるグルコースは、代表的な単糖のひとつ。人間をはじめ動物や植物の活動のエネルギーになる物質の一つです。


 脳はエネルギー源としてブドウ糖しか利用できず、しかも、脳は身体の中でもかなりの大食漢なのです。脳は体重の約2%程度の重さですが、一日に消費するエネルギーは、体全体が消費するエネルギーの約18%(約500kcal)にもなるそうです。さらに、脳は夜寝ている時も、日中の起きている時も、ブドウ糖の消費量は同じで、1時間あたり5gを消費しています。
 ところが、肝臓でグリコーゲンとして肝臓に蓄えられるブドウ糖の量は60gしかなりません。大量にブドウ糖を消費する脳が、必要な時に必要なだけ供給できるようにするためには、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度は一定水準以上を保られていなければなりません。だから、常に食事によってそれを補充していかなければならないのです。
 このように、ブドウ糖は肝臓で60gしか蓄えられませんから、夕食をとってから12時間後にはすでに底をついた状態になっているわけです。だから脳への栄養を絶やさないという意味で「朝食」は重要だといわれているのです。
 既にのべてきたように、私たちが食物として摂取する砂糖や米、パン、いも類などに含まれる炭水化物が体内で消化されブドウ糖に変わっています。この糖質をエネルギーに変えるのに欠かせないのがビタミンB1で、大豆や小豆、ごま、人参など多くの食物に含まれています。


 最近朝食をとらずに学校へくる子どもが増えており、頭の回転が悪く、朝からボーとして勉強に集中できないとか精神状態の不安定などがいわれていますが、朝食を食べないと脳がエネルギー不足で働かなくなり、やる気や集中力も出なくなるのだといいます。
 あまりにもお腹が空いていると精神の集中力が緩くなり、頭の回転が鈍くなったり、疲労感を覚えたりするような経験は誰でもあるものですが、空腹時には血糖濃度が食事直後に比べ20%も低くなっており、脳へのブドウ糖供給が低下するからだといいます。そういう時には手っ取り早くキャンディーなど甘いものを摂るとすばやく元気になります。仕事や勉強の合間のブラックコーヒーが好きという方もいるでしょうが、こうした時、閃きや集中力がいま一つだと思ったら、コーヒーや紅茶に少しの砂糖を入れてみるのもよいでしょう。砂糖は半分がブドウ糖、半分が果糖からなっており、果糖も体内でブドウ糖に変わります。砂糖は太るからとか、虫歯になるからとかでまったく摂らない人がいますが、適度な摂取が必要だと考えます。


 子どもの甘いもの好きに悩む親は少なくないでしょうが、発育期には子どもは大人より脳のエネルギー消費率が高い。甘いものを極端に制限すると、脳の正常な発育を損なうおそれさえある。食間に甘いおやつを少し与えるのも、子どもの脳の発育と機能の活性化のためには有効な方法なのです。
 脳がエネルギー不足を起こすと、即時的には、低血糖も起こしており、一種のストレス状態で、イライラはもちろん集中力が低下し、仕事や勉強の能率が上がらない。また、長期的みると、老人性痴呆症の原因ともなるといいます。
 脳の栄養は糖分だけではない。脳も代謝しているので、たんぱく質、ビタミン、脂質を必要とし、特に、たんぱく質は脳神経伝達物質(ホルモン)の原料であるから、不足・アンバランスは重大な結果を招く。多くの食材をバランスよく摂ることが大事だ。特に、子どもにとっては脳がつくられ6歳頃までは、脳細胞をつくっているタンパク質が重要である。良質のタンパク質が多く含まれているものとしては卵、牛乳類、米、牛肉、トウモロコシなどがあげられる


 見てきたように、脳は身体の中でもかなりの大食漢で、そもそも脳は、体重の約2%程度の重さにも関わらず、一日に消費するエネルギーは、なんと全体の約18%にものぼります。したがって、無理なダイエットは、当然、脳の栄養不足を招き、これが続くと脳の活動が低下するだけでなく、神経細胞が死んでしまう恐れもあるというのです。
 さて、[ものを食べないで行うダイエットが長続きしないわけ]……
脳に栄養が充分行き渡らないため、脳の機能が低下し、神経細胞が死んでしまい、こんな状態では、どんなに意志を強く持っていても、脳全体の活動が落ちているのだから、意志は貫かれなくなってしまう。
 脳が働くために必要な様々な栄養素がありますが、しかし、その中でエネルギー源として使えるのはブドウ糖のみ。ブドウ糖は、栄養素の中でも、体に溜めておける量が限られているため、一度に沢山食べても効果なし。脳のエネルギー源を絶やさないためにも、一日三回の食事が必要というのです。
 例えば、夜の7時にお腹いっぱい食べたとしても、睡眠中も脳は休まず働いているため、体に蓄えられていく脂肪と違って蓄えられたブドウ糖は消費され、朝の7時になると、脳はエネルギー切れの状態になっている。よって、朝食を食べないと脳がエネルギー不足で働かなくなるため、やる気や集中力も出なくなる。脳が元気に働くためには、脳の栄養を考えてきちんと食事をすることが必要なのだといわれるのです。




 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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