山ちゃんの食べもの考

 

 

その114
 
[医食同源]を考える<4>
 今回は、「ワイル博士の医食同源」から、炭水化物について、もう少し詳しく学びたいと思います。

 植物の光合成作られた炭水化物は、炭素・水素・酸素の化合物であり、両端が結合する環状構造をなして、複雑な分子を作っています。最も単純な炭水化物はグルコース(ブドウ糖)フルクトース(果糖)やガラクトース(乳糖成分)といった単環の糖類で、それらは総称して単糖類と呼ばれます。
 二つの単環が結合すると穀物の芽やビールに豊富な麦芽糖(マルトース=グルコース+グルコース)などのに糖類になります。サトウキビやビートにはマルトーストは別の、スクロース(蔗糖)というに糖類が含まれていて、これがいちばん知られている砂糖(グルコース+フルクトース)で、二糖類と呼ばれています。ミルクの主要な糖分であるラクトース(乳糖)も二種類の仲間(グルトース+ガラクトース)に入ります。
 また、多糖類と呼ばれるものには、デンプン、グリコーゲン、セルロースがあります。
 
 炭水化物(糖質)には働きは大きく3つあります。
@食物として摂り入れられたデンプンなどの多糖類は、消化液の酵素(消化酵素)などによってブドウ糖などに分解される。

A小腸から吸収され、体の各部分に運ばれエネルギー源となり、1gあたり約4カロリーの熱量を発生させる。

B余分なブドウ糖は、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に蓄えられ、スポーツなどの激しい活動をするとブドウ糖に変えてエネルギーを補充し、血糖値を一定に保つ。それで余った糖質は、脂質となり体脂肪として蓄えられる。


 牛乳などが十分に消化できない乳糖不耐症の人はこの二糖類を、代謝に必要な単糖の構成要素に分解するために必要な消化酵素を持っていません。したがって、乳糖不耐症の人がミルクを飲むと、腸内の細菌が乳糖を消化してしまうために大量のメタンガスが作られ、胸焼け、げっぷ、腹鳴、鼓腸、下痢などの症状を呈します。豆類のような、もっと複雑な糖類を分解する酵素がない人は、それを食べるとやはりガスがたまり、鼓腸になります。
 ≪乳糖不対症≫――牛乳を飲むと、お腹が痛くなるという人がときどきいます。“乳糖不対症”といって、牛乳の糖質(=乳糖)を消化する酵素が少ない人に起こりやすく、一般的には、赤ちゃんの時には乳糖を分解する酵素(ラクターゼ)が腸内に多くありますので、母乳を飲んでもなんともありませんが、この酵素の働きは離乳とともに落ち始めます。そして牛乳を飲む習慣が少なくなった成人ではラクターゼ活性はかなり低下するといわれています。したがって、乳糖が分解されずに腸内に多量残るため、腸内の浸透圧が高くなって、そのため牛乳を飲むとお腹の調子が悪くなる人が出るというわけです。さらに、白人と比べて東洋民族にはその傾向が強いといわれています。
 このように消化できない糖類は、人間の消化活動に抵抗するので「抵抗炭水化物」と呼ばれます。抵抗炭水化物のあるグループは極めて巨大な分子で、たとえばセルロース(繊維素)のように、それ自体が植物の構造物として機能し、細胞壁を強靭なものにしています。セルロースが集まったものが繊維であり、人間の消化活動に重要な役割を果たす微量要素の一つになっています。


 糖類は浸透的に活動します。つまり、膜をもつ細胞のように、多孔質の膜をつうじて水の分子を吸収しながら活動します。その性質があるからこそ、植物や動物はエネルギーを糖という形で貯蔵することができるのです。ただし、一つの細胞にグルコースが過剰に貯蔵されると、その細胞はたちまち膨張して破裂してしまいます。したがって、エネルギーを貯蔵するために、生き物はグルコースを他の分子に転換しなければなりません。植物は糖類を澱粉に変えるのが普通ですが、澱粉は糖類よりもはるかに大きな炭水化物で、化学構造も異なり、細胞膜をつうじて水を吸収することもないので、エネルギーの貯蔵にはもってこい分子なのです。
 エネルギーを貯蔵する部位には根(サツマイモ)、地下茎(ポテト)、果実(カボチャ)、種子(豆、穀物)などがあります。澱粉には大きく分けてアミロースとアミロペクチンの二つがあり、アミロースは、しっかりとつながったビーズのネックレスのように、グルコースの環でできた長い鎖になっています。そしてアミロペクチンには、その鎖にたくさんの分枝があります。
 澱粉質の多い野菜や果物、穀物を食べると、人間の体はその複雑な炭水化物を単純なグルコースに転換して、代謝用の燃料に使います。ところが、アミロースとアミロペクチンの構造の違いがその転換の速度に影響して、アミロペクチンのほうがはるかに早く消化されます。アミロペクチンには多くの分枝があり、表面積が大きいので、それだけ酸素が仕事をしやすくなるからです。わずかな相違のようですが、その相違が重要になるのは、それがグリセミック指数(GI)の主な決定的因子に使われているからです。グリセミック指数(GI)は前述したように、さまざまな種類の澱粉が血糖値に影響を与える速度の指数です。血糖値の上昇速度は活力や肥満傾向など、健康全般にも関連する指数なのです。


 日本人や中国人が主要な蛋白質源として食べているもちっぽい白米の澱粉は、主にアミロペクチンです。インド人の主食である蒸したバズマティ米(長粒米)は、味も見かけも日本のものとはまったく違ってサラサラしていますが、これは澱粉の大部分がアミロースだからです。生成した炭水化物が血糖値を上げる元凶として白米の害を説いてやまない「ダイエット・グル」の人たちは、この澱粉の相違に気づいていないのです。たとえ「炭水化物過敏症」人でも。バズマティ米のようなグリセミック指数(GI)の低い米を食べていれば、白米の美味を堪能することができるわけです。
 世界のコメ生産量は約5億トン強で、それらの米は大別してインド型コメと日本型コメの二種類別に分けられます。米の生産量の大半はインド型コメでアミロース含量が高い長粒種であり、中粒もしくは短粒のアミロース含量が比較的低くアミロペクチンを多く含む日本型のコメの生産は、北緯と南緯30度より北か南に位置する稲作地帯で生産されています。
 その主な理由は、日本型稲は寒冷気象に比較的強く、冷害がインド型稲に比べて少ないことによります。また、一日の日照時間が比較的長い温帯ないしは寒冷地に適していることに起因しているからです。
 日本型コメを生産している主な国と地域は日本、韓国、朝鮮民主主義人民共和国、中国東北地域、オーストラリア、アメリカ西海岸、台湾北部などです。他にもヨーロッパの国々等で生産している地域もありますが量的にはきわめて少量です。輸出の対象となる日本型コメは、主としてオーストラリア、アメリカ西海岸、中国の一部です。


 さて、動物はグルコースをグリコーゲンという特有な形の澱粉に変え、短期用のエネルギー貯蔵庫として、それを肝臓や筋肉に蓄えることができます。グリコーゲンもアミロペクチンと同様にきわめて分枝が多く、容易にグルコースに変わりやすい性質を持っています。
 絶食をしても(または一時的に炭水化物の摂取を絶っても)、激しい運動をしない限り、肝臓に貯蔵してあったグリコーゲンだけで48時間は血糖値を正常に保つことができるのです。しかし、激しい運動をすれば、グリコーゲンはたちまち底をついてしまいます。グリコーゲンが底をついたら、体は代謝用にほかの燃料を探さなければならなくなります。
 マラソン選手のような過酷なスポーツをする人たちはそのことをよく知っていますから、その状態のことを「壁に頭をぶつける」などといっています。最後のグリコーゲンを使い切って、代謝がタンパク質や脂肪を燃やすモードに切り替わる間の空白期に、選手は完全なエネルギー切れの体験をするらしいのです。グリコーゲンを最大限に貯蔵してその時期を遅らせるために、選手たちは、試合の前に、たとえば大量のパスタを食べて「炭水化物積み」をするのです。


 いくつもの鎖につながれ連続することで生じる高分子化合物の多糖類にはグリコーゲン、デンプン、セルロース等がありますが、この逆に多糖類を切っていくと単糖類になります。植物での貯蔵物がデンプンであり、動物での貯蔵物がグリコーゲンです。米のデンプンも砂糖も成分は単糖類ですから、栄養素としては同じです。体の中では糖質はブドウ糖として利用されます。そして、血液中のブドウ糖濃度の事を血糖値と言います。糖尿病ではこの血糖値が異常に高くなります。
 先に見たように、余分な糖分はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられますが、肝臓のグリコーゲンの貯蔵量はせいぜい半日から1日分です。1日何も食べなければ無くなってしまいます。
 肝臓は必要に応じてグリコーゲンを分解して血液中にブドウ糖を出しています。グリコーゲンは筋肉中にも存在おり、筋肉中のグリコーゲンは筋肉の収縮のエネルギー源として用いられていますが、血液中に放出される事はありません。
 運動中には、筋肉や肝臓に貯蔵されているグリコーゲンもエネルギー源として使われます。運動後には、使ったグリコーゲンを再貯蔵しなければなりません。そのため、ブドウ糖が肝臓や筋肉に取り込まれ、血糖が低めになります。
筋肉を動かすエネルギー源は、血液中の糖分(血糖)ですから、体を動かすとその血糖が使われるために血糖が下がります。
 有酸素運動をすることでグリコーゲンと脂肪が同時に燃やされますが、運動の結果、血中のブドウ糖濃度が低くなったことを視床下部が感知し、食物の補給を促してお腹が空いたと発信します。そこで食事をし、ブドウ糖が吸収されてくると、肝臓と筋肉とが同時に取り込み始めますが、取り込み速度は筋肉の方が速いので筋肉のグリコーゲンタンク、肝臓のグリコーゲンタンクの順で回復していきます。



 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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