山ちゃんの食べもの考

 

 

その115
 
[医食同源]を考える<5>
今回は、三大栄養素の一つ脂肪について、同書から学んでいきます。

 植物や動物はグルコース(炭水化物)を脂肪に変えることによってエネルギーをさらに濃縮し、長期貯蔵用に使うことができます。植物の脂肪構成分子は炭水化物と同じく炭素と水素・酸素がつながって鎖状をなす脂肪酸の混合物です。炭素原子のほとんどは水素原子と結合し、その鎖の一方の端末には酸素と結合した特徴的なグループがあり、弱酸性を呈しています。脂肪酸の炭素と炭素の結合は、炭水化物のそれよりもエネルギー貯蔵能力が高く、その結果、脂肪はグラムあたりのカロリーが炭水化物の2倍近くになります。
 植物の脂質は多くの場合、常温では液状なので油といいます。「脂肪」という言葉には、脂肪、油、それらの構造物である脂肪酸、脂肪酸がつくるさらに複雑な化合物のすべてが含まれています。植物はたいがい種子に油を貯蔵(ナッツ類、ゴマ、コーン)し、ごくたまに果実に貯蔵(オリーブ、アボガド)しますが、まずそれ以外の部位に貯蔵することはありません。
 植物が種子に油を貯蔵する目的は、次世代の胚の成長のために濃縮したエネルギーを用意しておくことにあります。人間は飢えに備え、エネルギー庫として脂肪をおなじみのさまざまな人体部位に貯蔵しますが、それが体を防護し、重要臓器のクッションとしても役立っているのです。人間の体はまたグルコースから簡単に脂肪を作るので、グルコースに分解する食べものなら何でも脂肪に変わります。摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余剰カロリーは脂肪として貯蔵され、反対に、消費カロリーが摂取カロリーを上回り、肝臓と筋肉のグリコーゲンが使い果たされると、体内に貯蔵してあった脂肪が代謝されてエネルギーに変わります。


 種子や果実には発芽する際のエネルギー源として用いられる脂質が大量に蓄積されているのですが、それらの脂質、殊にトリアシルグリセロール(貯蔵された体脂肪)を構成する脂肪酸には不飽和脂肪酸が多く、その幾つかはヒトの必須脂肪酸になっていいます。
 (トリアシルグリセロールはほとんどの細胞内で合体して脂肪滴になっており、ミトコンドリアのそばにあることが多く、ミトコンドリアにとって、脂肪酸は細胞活動のエネルギー源として必要です。哺乳動物では、脂肪を貯蔵するように特殊化した脂肪細胞が集まった脂肪組織に大半の脂肪があります。脂肪細胞の内部には、細胞の体積のほとんどを占めるほどの大きな脂肪滴があります。)
 さらに、植物には有機溶剤に溶けると言う性質で共通する炭化水素類、ステロイド、テルペン類も多く存在しています。
 (ステロイド=ほとんどすべての生物が生体内でステロイドを合成し、ホルモン、ビタミンとともに重要な構成物質として利用している。細胞膜の構成に重要な脂質であるコレステロールなどが代表的なステロイドである。また、性ホルモンやその他の副腎皮質ホルモン、昆虫の変態ホルモンなど、多様なホルモン作用をもつステロイドも多く、これらはステロイドホルモンと呼ばれる)
 (テルペン=天然に最も広く分布する天然有機化合物で、その種類も多くの化合物が知られています。さらに、大部分の植物の精油はこれらの混合物からなっています)。
 植物油の機能は、栄養機能と調理機能とに分けることが出来ます。油脂は蛋白質、炭水化物とともに、三大栄養素の一つとして消費され、重要なカロリー源であるとともに脂溶性ビタミン、必須脂肪酸の供給源となっています。
 代表的な不飽和脂肪酸として、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などがあり、広く油脂全般に含まれています。特に、リノール酸とリノレン酸は人間の健康維持に不可欠の物質ですが、体内で合成できないため”必須脂肪酸”と呼ばれています。


@トリアシルグリセロール
 三つの脂肪酸とも同じ物ですが、例えばトリオレイン(オリーブ油)、トリリノレイン(ベニバナ油)など多くの種類のものは、三つの脂肪酸が同じ比率とは限らない混合型で、ココナッツオイルのような例外もありますが、一般的に構成脂肪酸は不飽和脂肪酸が多く、常温で液体であります。

Aリン脂質
 クロロプラスト(葉緑体)やミトコンドリアの成分として葉に多く存在しています。
 (ミトコンドリアはほとんどすべての生物(動植物や菌類など)の細胞に広く含まれている細胞内構造物の一つです。このミトコンドリアは一つの細胞に(細胞の種類によって違いますが)数十から数万という大変な数が含まれています。これらのミトコンドリアは細胞の中で呼吸をしてエネルギーを生産しているのです。 我々が肺から吸い込んだ酸素は、血液によって体内の細胞に運ばれ取り込まれ、ミトコンドリアによって糖や脂肪を燃やす燃料として使われていることになります。 燃やすといっても生化学的に糖などを分解していく過程でエネルギーが発生するわけで、我々はそのエネルギーを利用して体温を保ち運動をして生きていることになります。)
 
B糖脂質
 葉緑体の重要な成分として植物界に広く存在しています。

C脂肪酸
 脂肪酸は殆ど前記の脂質の成分としてエステル型で存在していますが、植物界ではその種類は数百種に及ぶといいます。飽和脂肪酸ではパルミチン酸が葉の脂質の構成脂肪酸として最も多く含まれますが、種子油ではステアリン酸の方が多い。オリーブ油では構成脂肪酸の80%がオレイン酸であり、ピーナッツ油では59%に達します。リノール酸も広く植物界に分布しており、αーリノレン酸はアマニ油の脂肪酸の52%を占めています。

Dテルペン類
 植物成分で有機溶剤に溶けるものにテルペン類があります。テルペンはイソプレンまたはその重合体で、トリテルペンはステロイド、テトラテルペンはカロチノイドとして、植物成分である。勿論、トリテルペン以下のものも植物の香気成分あるいは植物ホルモンの性質を有します。


<リノール酸>
 食べ物から摂取しなければならない必須脂肪酸のリノール酸は、コレステロール値を下げる作用を持ち。リノール酸が不足すると、エネルギーの生産能力が低下したり、皮膚や臓器の健康に支障をきたすようになります。
 大豆は食用油としての価値も高いですが、この脂肪の大部分は不飽和脂肪酸で、その内の半分程度はリノール酸と呼ばれる必須脂肪酸です。不飽和脂肪酸はコレステロールの沈着を防いで動脈硬化を予防することで知られています。
 リノール酸に代表される不飽和脂肪酸を多く含む大豆は、血管の掃除役、動脈硬化から私達を守ってくれるのです。総コレステロールや悪玉コレステロールの体内濃度を低下させる作用があり、動脈硬化や心臓病の予防に効果があるといわれています。


<リノレン酸>
 リノレン酸は体内で合成することのできないα−リノレン酸と、体内でリノール酸から合成されるγ−リノレン酸があります。
 α−リノレン酸は、体脂肪を燃焼させる効果が高く、余分な油を分解し、脂肪が体にたまりにくくする働きがあり、体内に吸収されるとEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸) といった良質な脂肪酸に変わり、体内でアレルギーの抑制に働きます。
 しそ油、エゴマ油や、魚介類、海藻、野菜など昔から日本食に多く含まれている必須脂肪酸です。
 現代の生活では、アレルギー(アトピー性皮膚炎や花粉症などなど)が蔓延していますが、これはリノール酸の過剰摂取が原因とも言われており、α-リノレン酸は、このリノール酸がアレルギー誘発物質に変化するのを抑制する効果があるといいます。他の食用油の大豆油や菜種油、コーン油などは「リノール酸」の含有量のほうがはるかに多いのに対し、しそ油(えごま油)は全体の61.5%がこのα-リノレン酸で構成されています。
 

 貯蔵された脂肪はグリコーゲンのように容易かつ迅速にエネルギーに転換されるわけではありません。そのプロセスに時間がかかるからこそ、激しい運動をするマラソン選手など、エネルギーが切れてくると、「壁に頭をぶつける」というような現象のおそわれるのです。
 脂肪からエネルギーを得るために、体は脂肪酸分子を炭素二つの破片(アセテートフラグメンチ)にまで分解しなければなりません。そうなってはじめて酸素と結合し、細胞が代謝炉で燃焼することが出来るわけです。その結果、廃棄物としての二酸化炭素と水が作られるということです。
 全部ではありませんが、ほとんどの細胞が、脂肪酸酸化と呼ばれるこのプロセスを行っています。筋肉は特にその処理が得意で、筋細胞のグリコーゲンが消費されつくされると脂肪酸からエネルギーをとりはじめます。
 長期の断食をするときなど、たいがいの組織は脂肪酸を燃料に使いはじめるのですが、なかにはそれができない組織もあります。特に脳細胞は脂肪酸からエネルギーを得ることができません。しかし脳細胞は、肝臓が脂肪を代謝するときに血中に放出する脂肪酸の中間分解産物の一部なら燃やすことが出来ます。
「ケトン体」というその分子は、飢餓状態のときに重要な意味をおびてきます。ケトン体の血中レベルが一定以上に達すると、脳がそれを取り入れ、代替エネルギーとして利用しはじめるのです。その現象は「ケトーシス」(ケトン体血症)と呼ばれ、病態の一種であります。


 体はある程度の血糖値を維持するためにはさまざまなことをしています。まず食事で取れない場合絶食、飢餓など、あるいはこれは糖尿病の一種などのように糖代謝がうまく運ばなく細胞内でブドウ糖のエネルギーが有効利用されないため、血糖値の維持を測ります。
 まず肝臓のグリコーゲン分解もしくは糖産生で血糖の値を維持しようとします。しかしそれも肝臓からは1日150グラム程度ですから、血糖が下降してもっと必要なときは、次に体内に蓄積された脂肪から放出される脂肪酸をエネルギーとして変換して利用します。身をけずって血糖値を持続させようとするのです。
 この脂肪酸が増大すると脂肪酸は肝臓に摂取されてケトン体になります。つまりケトン体は脂肪の分解により肝臓で作られ、血液中に出されます。
 ケトン体は心筋、骨格筋、腎臓などさまざまな臓器でエネルギー源や脂肪の合成に再利用されますが、肝臓はこれを利用出来ません。
 このケトン体が体内に増えると、血液が酸性に傾き、インスリンはますます働きにくくなり悪循環することになり、さらに、体内で糖のエネルギーが殆ど利用できなくなります。 そして脂肪を分解してエネルギーを取り出す結果、 体内にケトン体という有害物質が多量に作り出されます。
 体内にケトン体が増加する状態をケトーシス(ケトン症)といいます。インスリンの欠乏や、ストレスが原因で脂肪組織から脂肪酸が作られ、その約半分が肝臓でケトン体になることにより起こります。
 ケトーシス(ケトン症、ketosis)とは、様々な原因により体内にケトン体(酸性物質)が増加する状態をいいますが、ひどくなると消化器障害や神経症状を示します。
 ケトーシスが発生すると血糖コントロールがさらに悪化する悪循環がおこり、 その結果ケトン体の量がさらに増え、血液のpHが酸性に傾いていきます。この状態(ケトアシドーシス)がある程度まで進むと意識がなくなり、 そのまま放置すると死に至ります。
 ケトアシドーシスは糖尿病、高脂肪食、絶食(または飢餓)、運動、外傷や大手術、発熱などで見られます。これらの場合にはからだがエネルギー補給のためにブドウ糖や、グリコーゲンのような糖質よりも脂質を利用していることを意味しています。


 高度に特殊化した脳の細胞は最も単純な燃料であるグルコースを使いたがる性質があります。しかし、これは重要なポイントで、人間の体はグルコースを容易に脂肪に変えることができるのに、脂肪をグルコースにもどすことはできないのです。
 飢餓状態にある人や炭水化物の摂取を制限または停止している人にとっては、この基本的な生化学的限界が深刻な意味を帯びてきます。グルコースの供給を絶たれた脳がやむを得ずケトント体を燃料に使いはじめてケトーシス状態にある人は、しばしば全能感を感じ、空腹を覚えないものです。
 アトキンス博士やその亜流たちは、低炭水化物食で同様の状態になると報告しています。すなわち、低炭水化物食を実行している人たちはケトーシス状態になり、その結果として空腹を覚えず、心身にみなぎる活力を感じているのではないか。
 ワイル博士は、その推測は必ずしも正鵠を射ていないかもしれない。というのは。人気を博している低炭水化物は同時に極度の高タンパク食でもあるからです。グルコースが底をついたとき体は、タンパク質からグルコースをつくることができます。だから、アトキンス食やモンティニャック食の実行者でも、脳はタンパク質から作ったグルコースを燃料に使っているかもしれない。だが、それが健康に及ぼす長期的な影響については大いに不安がのこる、といいます。



 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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