山ちゃんの食べもの考

 

 

その139
 

 わが国におけるエネルギー換算食料自給率が40%という危機的状況ですが、昭和35年当時には79%を確保していたのです。現在特に深刻なのは穀物自給率で平成13年度では28%です。この穀物自給率も昭和35年当時には82%でありました。
 第二次世界大戦後、先進各国においては、食糧安保の立場から国策として、自国における農業の振興を図り、食料自給率を確実に向上させています。日本では昭和45年で60%であったものが、55年には53%、平成2年には48%、平成12年には40%と、この間に20ポイントもの急落です。
これを同じ年度でイギリスの場合を見ると、46%、66%、75%、74%と、同期間に30ポイントの上昇。ドイツの場合は68%、75%、92%、96%と28ポイントの増加で、ほぼ100%に近い自給可能な態勢を整えました。農業大国のフランスにおいては104%、131%、142%、132%で食料輸出大国の地位を高めています。


 わが国が世界一の食料輸入大国であるということは、その食糧を生産するために必要な農地などを海外に依存しているということになります。私たちは飽食とまで言われるこの豊かな食生活のために、想像を絶する外国の広大な農地や山林あるいは海域を利用していることになるのです。
 穀物や畜産物など日本の主な輸入食糧の生産に必要な海外の農地面積を農林水産省が推計し、各年度の食糧生産に必要な農地面積を100としたときの内外の農地面積の割合を示したものがあります。それによれば、平成13年度の国内耕地面積は479万haに対し、輸入に必要な海外の作付面積は、国内耕地面積の実に2.5倍に当たる1200万haとなっています。
 私たち日本人が食べていくために必要な農地の71.5%が海外に依存しているのです。それは昭和35年度には28.9%、50年度には64.0%、平成2年度には68.5%でありましたから、日本は年々海外の農地、なかんずくアメリカの農地への依存体質を顕著に強めているのです。
 一方国内の作付け延べ面積は、昭和35年度には813万haであったものが、50年度には576万ha、平成2年度には535万ha、そして、平成8年度には478万haと年々急減して行っています。
 日本は大きな購買力を背景にして、食料の自国での生産を放棄し、海外の広大な農地を日本向け食料の供給基地として利用しているのです。
 海外に依存している作付面積1200万haのうち、主要な輸入農産物の生産に必要な海外の作付面積は、小麦が242万ha、トウモロコシが215万ha、大豆で199万ha、その他の作物294万ha(うち菜種132万ha、大麦等79万ha)、畜産物(飼料換算)250万haとなっています。
 それに比して国内耕地面積は479万haの内訳は、田は262万ha(しかし実際に稲作が行われている作付面積は170万haです)、畑217万ha(普通畑118万ha、果樹園35万ha、牧草地65万ha)となっています。


 米の消費量が半減し、畜産物や油脂類の消費量が大幅に増加した現在の食生活です。国民1人・1日当たりの供給熱量は約2600キロカロリーでが、エネルギー換算食料自給率は40%ですから、そのうちの約1000キロカロリーしか国産で賄えていないということです。
 何もしないで寝ているだけでも、呼吸や体温など生命を維持するために必要な最低限の消費エネルギー、すなわち基礎代謝量は成人男性で約1500キロカロリー、成人女性で1200キロカロリーといわれていますから。それさえも国産でまかなえないというのが実情です。
 昭和40年における供給熱量は約2500キロカロリーで、消費熱量は約2200キロカロリーでした。それが平成13年度における供給熱量は約2600キロカロリーで、そのうち実際に私たちの胃袋に入った消費熱量は約1900キロカロリーとなっています。
 その差約700キロカロリーが家庭や飲食店における食べ残し、調理クズ、流通段階における賞味・消費期限切れ商品の廃棄など、いわゆる「食料ロス(生ゴミ)」として捨てられているのです。


 家庭から排出される厨芥等の食品廃棄物量は年間約1000万トン、食品流通・外食産業等からの排出量は約600万トン、食品製造業から排出される動植物残渣は約340万トン(いずれも1996年度)。これらの数値には調理等の過程で不可癖的に発生する不可食部分が含まれるため、すべてを食料ロスとすることはできませんが、生産から消費に至る各段階においてかなりの量が食料ロスとして排出されていると推測されます。
 1960年度と2000年度とを比較すると、米の消費量がほぼ半減しているのに対して、肉類、牛乳・乳製品、油脂類の消費量は、それぞれ3.5〜5倍強に著しく増え、「食の洋風化・近代化」顕著に進行したことがわかります。
 その裏側には、巨大な経済力にモノを言わせて世界中から買い漁った貴重な食資源を年間1000万トンも生ゴミにしている事実を、われわれは正しく認識し、謙虚に反省しなければなりません。ちなみに、1960年度の加工品を含む日本の農水産物の総輸入量は約810万トン、減反を行わない場合の米生産量は約1000万トンだから、われわれの家庭から毎年排出される生ゴミの量がいかに膨大であるか想像できます。
 世界屈指の経済力を背景に、グルメと飽食の時代を謳歌している現在の日本人の食生活は、不安定な土台の上に成り立っていることを自覚しなければなりません。


 日本は、世界最大の農産物の輸入国であり、国内の耕地面積の約2.4倍の1200万haにも及ぶ作付面積を海外に依存しています。そして食料自給率が減少の一途をたどり、まったく向上の目途もなくきざしもがありません。しかし、世界では21世紀の世界の食料需給について厳しい悲観論が叫ばれています。
 その第1は、“人口爆発”で、1990年には、約50億人だった世界人口が、現在は約60億人を突破しておりで、8億数千万人以上もの栄養不足人口が存在します。2025年の世界人口は約1.4倍の80億人にもなると見込まれています。2050年には100億人に達するとの予測もあります。世界このままではますます飢餓人口の増加が危惧されています。誰が世界の人々を養うのか。
 第2は、世界中で発生している耕地の都市的用途への転用、表土流亡、地形侵食、塩類集積等による“農地の減少”であります。
 第3は、灌漑用水の都市用水への転用、地下水の枯渇による“水不足問題”です。
 第4は、“地球温暖化”等々、21世紀の世界の食料需給は逼迫することが確実視されています。砂漠化の進行など生産条件の制限、さらには異常気象です。
 こうした状況の中で、世界の人口のわずか2%の日本が、世界全体の食料貿易量の約1割もの食料品を輸入していることは、国土の富栄養化を招くとともに、途上国における食料価格の上昇や飢餓輸出、環境破壊の元凶と非難されることになります。さらには、地球の有限性を認識し、「持続可能な循環型社会」の形成を目指す21世紀の国際社会に受け入れられるものではありません。


 平成7年(1995年)に政府が策定した「食料の需要と生産の長期見通し」によれば、平成17年(2005年)の食料自給率は、現在の趨勢を基礎とした試算で41〜42%、最大限の政策努力を講じても44〜46%にとどまるとの厳しい予測がなされています。しかしながら、実際の自給率は、既に、この予測を下回って推移しています。
 新農業基本法では基本理念のひとつとして、食料自給率の向上を基本とした食料の安定供給をあげ、自給率を41%から45%に引き上げる数値目標を示しました。生鮮食品である牛乳については、全量国内の乳牛が生産したものですが、飼料については、60%以上を海外に依存しています。見かけの自給率は100%になりますが、乳牛の食べるエサまで考えると低い値になってしまいます。このことが、熱量ベースの食料自給率低下の一因にもなっており、畜産分野においては、飼料自給率を高める方向に生産構造を転換することが重要な課題になっています。
 

 食料自給率低下の問題の一つに私たち急激な食生活の変化があります。ごはんを食べなくなった日本人の米の消費量は、昭和35年度に比べて現在では4割も減少しているのです。これに対して畜産物の消費量は約5倍に急増しました。
 食生活の欧米化によって、国内で自給できている米の消費量が減って、海外からの輸入に依存する肉の消費量が劇的に増えているのです。
 その肉類の自給率を見ると53%となっています。ところが、その家畜を養うために必要な飼料の自給率は25%しかありません。そうすると単純計算で、私たちの食べる肉類の純粋な自給率はわずか13%であるということになります。
 我が国における畜産の拡大は海外からの輸入飼料に大きく依存している飼料自給率は約25%ですが、乳牛、肉用牛を合わせて蓄牛飼育に必要な資料の自給率は、平成10年度現在で14%という恐るべき低さです。
 日本における食糧問題は、減反しなければならないほどごはんを食べなくなり、日本型食生活を放棄して欧米化した食生活によって、外国に依存しなければ食べることのできない畜産物の過剰摂取にあります。100%国産でまかなえる米作農業の問題ではないのです。
 肉類を食べるようになりましたが、その飼料を日本で生産し自給率をあげるのが難しいのです。自給率がこんなに低いことは、家畜の飼料用穀物自給率の低さにあります、飼料用穀物であるトウモロコシなどの生産は、日本の気候・土地条件が適応していないので、アメリカからの輸入に頼らざるを得ないのです。
異常天候などによって安い家畜飼料用穀物の輸入がこれまでのようにできなくなった時、そして、肉類の輸入が自由に出来ない状況になったとき、日本は肉の食料不足になるだけでなく、大変な食料不足を招きかねないのです。



 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

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池田 優

 

 

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