山ちゃんの食べもの考

 

 

その140
 



野菜の鮮度と栄養 (1)
「生産者」「消費者」「分解者」-「食物連鎖」
「野菜の鮮度と栄養」について考えていく上で、生物の中における野菜と人間とは、どのような位置づけにあるものかをおさらいしたいと思います。
 
野菜(植物)は根から吸収した水と空気中から吸収したの二酸化炭素と太陽の光エネルギーを浴びて、栄養分を作り、酸素をはき出します。この働きを光合成といいます。生物の中で自分で栄養分を作る(生産)ことができるのは植物だけです。そこで植物のことをは「生産者」と呼びます。植物が全生物の必要とする養分(エネルギー)を生産しているのです。植物がなければ他の生物は生きていくことはできません。
 
これに対して、動物は自分で養分を作ることができません。他の生き物を食べ、その養分を取り入れて生きています。動物には、植物を食べる草食動物と動物を食べる肉食動物がいますが、自分で養分を作ることができず、他の生き物を食べる(消費)ことに生きているので、植物の「生産者」に対して動物のことを「消費者」といいます。
人間は小も角産出する酸素を取り入れ、野菜や果物(植物)と魚や肉(草食動物・肉食動物)を食べる雑食動物の「消費者」です。
 
一方、植物の死体(枯葉や朽ちた根や幹、枝)、動物や昆虫の排泄物や死骸は、虫などの小動物によって食べられ、細かく砕かれ、多くの微生物にとって分解され、これらは次の新しい植物生命の成長に欠かせない養分となって土に還されてゆきます。土に還っていきます。それでこれら微生物は「分解者」といいます。
 
「生産者」である植物が作った養分が貯蔵されている葉や実、その他は、「消費者」である草食である虫や草食動物の栄養源として食べられます。その虫や動物は肉食動物の栄養源として食べられます。そして「生産者」や「消費者」の死骸等は「分解者」である微生物の餌(栄養源)となってきれいに分解され土壌中に還元されます。そして、新しい植物「生産者」の成長にとって欠かせないの栄養分となってに吸収されていきます。こうした、生き物たちの関係を「食物連鎖」といいます。
 
「野菜は生きている」――「光合成作用」と「呼吸作用」
さて、野菜(植物)は「光合成作用」を行って養分を作り成長していきます。
「水と二酸化炭素を用い、太陽エネルギーを糖と酸素に変換している化学反応」のことです。
 
植物は、葉の葉緑体にある葉緑素が太陽光エネルギーを吸収し、根が地中から吸い上げた水分は茎を通って葉に送られ、葉の裏側ある気孔が空中から二酸化炭素を吸収します。太陽光エネルギーと水と二酸化炭素から、糖やデンプン(炭水化物=炭素Cと水素Hの化合物)などの栄養分を作ります。このとき酸素が作られ気孔から空中に排出出されます。
植物は、わたしたち人間をふくむ動物にとって欠くことのできない酸素と食物栄養分を作り出すものであり、生きていく上でかけがえのない生産者なのです。
 
二酸化炭素(CO2)+水(H2O)+光(エネルギー)
―→炭水化物(C、Hの化合物)+酸素(O2)
 
ところが植物の「光合成作用」は、二酸化炭素と水と太陽光によって炭水化物(デンプンや糖など)を作るだけです。植物が生きていくためには、植物自らが光合成作用によって体内に産出した炭水化物(デンプンや糖など)を、生命活動に必要なエネルギー(体温を保つなど)に変換しなければなりません。そのため植物は「光合成作用」を行う一方で「呼吸作用」を行っています。
 
気孔から吸った酸素で糖分を燃焼させ、体温を保つなどのエネルギーに換え、そのとき二酸化炭素と水を体外に放出します。動物や人間も酸素を使って糖をエネルギーに換え、二酸化炭素と水に分解しているのです。
 
炭水化物(C、Hの化合物)+酸素(O2)
        ―→ 水(H2O)+二酸化炭素(CO2)+エネルギー
「呼吸作用」は「光合成作用」とはまったく逆の反応なのです。
 
太陽光を受ける昼間はに「光合成作用」をするとともにと「呼吸作用」も行っています。植物の「光合成作用」は光が当たっていないと行われませんから、太陽光がなくなった夜間には「呼吸作用」だけを行っています。
植物の成長期における「光合成作用」は、その「呼吸作用」に比べてはるかに大きいので、どんどん成長し養分が蓄えられていきます。
 
「野菜は生きている」――収穫後の野菜
収穫された野菜を放置しておくと、時間の経過とともに水分を失い、萎びたり黄色くなったりして急激に鮮度が落ちていきます。そればかりではなくビタミンCをはじめ糖分や各種栄養分、そしておいしさもどんどん失われていきます。
これは収穫後も野菜は生きているからです。野菜や果物は、収穫後も直ちに死滅するものではなく、酸素を吸って二酸化炭素放出する「呼吸作用」と水分と熱を放出する「蒸散作用」を行いながら生きています。この作用によって自分の体内に蓄えられた糖分などの栄養分をエネルギー源として「自己消化」ながら生きているのです。
 
野菜や果物は、土や根や枝や茎につながっている間は、水分や光合成によって作られた栄養が運ばれて成長していました。ところが収穫によって土から離れ、根や茎から切り離され、供給源を切断されてしまったらもう一切の補給はありません。
収穫された野菜や果物が生きるとは、自分の中にある蓄えをを消費すること=自分自身を食べることで生きているということです。
 
これを人間にたとえるなら、収入をまったく絶たれた人が、これまでの貯蓄をはたきながらの生活を余儀なくされるのと同じです。これまでの通りの生活スタイルや遊び呆け、浪費暮らしをしていたのでは、アッという間に破産しに、生きることも難しくなります。可能な限り最小限の消費で健全な生活を持続する工夫をしなければなりません。
 
炭水化物(C、Hの化合物)+酸素(O2)
        ―→ 水(H2O)+二酸化炭素(CO2)+エネルギー
収穫後の野菜は呼吸作用をして生きており、この呼吸作用が激しいほど、養分の自己消化が激しく、水分の蒸散も大きいのです。したがって、この呼吸作用を何とかして最小限に抑えることができれば、鮮度の維持はもちろん、栄養分とおいしさの損耗を防ぐことができるのではないか。
 
野菜の呼吸を抑える最大のポイントは「低温」と「湿度」と「ガス調節」です。
一般に野菜は、温度を低くして呼吸を抑えることにより、新鮮さを長く保つことができます(例外あり)。また、水分含有量が多い野菜は、湿度を高くすることで長持ちします(例外あり)。さらに、野菜の保管場所の炭酸ガス濃度を上げたり、酸素濃度を下げて呼吸を抑制することにより、貯蔵期間を伸ばし、野菜の老化を遅くすることもできます。
これらは後述するように、家庭における保存についても十分応用できることです。
 
生きている野菜の鮮度管理
私たちは生きている野菜(植物)生命の生命を食べることで生かされています。
唯一養分の生産者である野菜(植物)の生命があって、消費者である自分たち(動物)の生命があります。その野菜(植物)は生き生きとした鮮度の高い、栄養分の充実した、生命力の旺盛なものでなくてはなりません。だから、誰しもが新鮮なものを食べたいと願っています。
 
「鮮度保持」は同時に「栄養保持」・「おいしさ保持」でもあります。したがって、
青果物を購入する際に消費者が最も重視する条件は「鮮度が良い」ということであり、「安い」をはるかに上回っています。
 
野菜は畑から採った直ぐ、収穫した直後が一番新鮮で栄養価も高くおいしいのは当然で、可能な限り収穫時に近い状態でたべるのが理想です。しかし現実にはそうもいきません。そこで、収穫された野菜や果物の呼吸作用や自己消化作用どのよう抑え、失われる鮮度・栄養・おいしさをどのように維持するかを工夫しなければなりません。
 
「より新鮮なものを食べたい」「より栄養価の高いおいしいものを求めたい」という消費者の要望を満たすべく、生産者、卸売業者、小売業者、それぞれの段階でいろいろな工夫や努力が行われています。それが「鮮度管理」です。農家の人たちは夜明け前から畑に出て、農協や市場に出荷するまでに、収穫、選別、包装、梱包、一時冷却、そして輸送など鮮度維持にいろんな努力を払います。農協や市場では一時も早く小売業者に届けるべくまだ暗いうちから貯蔵、仕分け、配送を行っています。そして販売店では入荷品の仕分け、蘇生、貯蔵、包装など、鮮度管理をしながら店頭に並べます。
 
「直ぐ食べる」が最大のポイント
いかに鮮度のよい野菜や果物が入手できたとしても、私たち消費者の段階でその取り扱いに誤りがあれば、金が銀になり、銀が銅になって、生産者や流通業者・販売店の工夫や努力も水泡に帰し、おいしさも栄養も不十分なものになってしまいます。
 
そこで私たち消費者は消費者なりに野菜や果物の栄養価やおいしさを損なわないための取り扱い方や保存の工夫が必要になります。
以下、購入に際しての野菜ごとの選び方や家庭における保存方法について簡単に述べてみたいと思います。
 
しかし、どのような保存方法をとろうとも、生鮮野菜は呼吸作用・自己消化作用によって鮮度・栄養・おいしさを劣化しながら生き続けているのです。したがって安いからといってあまり大量に求めたりせず、鮮度のいいうちに早く食べ切ることが最大のポイントであることは申し上げるまでもありません。
 
さて、これまで述べてきたように、野菜の鮮度を保持するためには、その鮮度劣化となる要因と栄養分消耗(出費)を可能な限り抑えるための取り扱いや環境条件を整えることが重要になります。つまり、呼吸作用と蒸散作用(水分の蒸発)、また成長作用によって消耗(鮮度劣化・栄養劣化)が進みますから、それを極力を抑えてやります。
 
まず野菜の保存には温度管理や湿度管理があります。温度が高いと呼吸作用や蒸散作用が激しくなりますから、一般には冷蔵庫の野菜室で、5℃前後の低温貯蔵をします。また80〜90%台の水分を含む野菜や果物は乾燥に弱いので、適度な湿度を保ち風に当てないなどの工夫が必要です。さらに強い成長力を持った野菜で、芯のある野菜は芯を摘み取ること、横にすると立ち上がろうとする野菜は立てて保存するなどの処置も必要です。もちろんそれぞれに例外もありますので、後述する具体例を参考にしてください。
(つづく)




 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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