山ちゃんの食べもの考

 

 

その164
 
『食は生命なり』 【22】




食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』と「永山久夫」 その15

永山久夫 「百歳までの健康ライフ 健康食・健康百科」 より

★★★★★「和食」日本人の健康を守る★★★★★

■ ネバネバ食品は世界一の長寿食
この地球上で、日本人ほどネバネバ食品の好きな民族はありません。
これは縄文時代後期、つまり3000年も前から培われてきた嗜好といってもよいでしょう。
トロロイモとか里イモ、オクラやジュンサイ、ナメコなどのキノコ類、ウナギやドジョウ、アナゴ、そしてトロロ昆布などの海藻類と、ざっとあげただけでもこんなにあります。
これらの中でもきわだってネバネバとした「粘糸」を出すのが納豆です。
 
ほかの国にも無塩大豆発酵食品はありますが、納豆のように糸を引かせ、そのネバネバをうまみとして食べている民族は、54億人の人類の仲でも1億2000万人の日本人だけです。
食べ方自体もたいへんにユニークで、トロロ汁や納豆をご飯にかけて、そのまま食べてしまうのは、他の民族にはあまり見かけられない独特の食べ方といってよいでしょう。
日本人にとっては、この食べ方がたまらなくうまいと感じるのです。
また海藻もキノコも、日本人は世界一食べています。
しかもネバネバ食品群は、健康と長寿に良いものばかりなのです。
 
 『ムチン』が元気を出す
日本人の好きなネバネバ食品に含まれている粘性物質を「ムチン」と呼びます。
人間の体は、約60兆個の細胞で出来上がっていますが、その細胞の一つ一つをつなげている組織が、ムコ多糖類というヌルヌル物質、つまりムチンなのです。
 
このムチンが欠乏すると、急速に老化していくといわれています。
日本人が、世界一の長寿民族になったのも、世界中のどこの民族よりも、たくさんの「ムチン食」、「ネバネバ食」を古くから食べてきたという事実と密接な関係があるのは、間違いありません。
 
 納豆を食べて元気ハツラツ
ムチン質の含有量の多い納豆は、まさに若返りの決定版といってよいでしょう。
納豆にはほかにも、頭の機能を向上させ、ボケの予防にも役立つレシチンやグルタミン酸、それにビタミンB類も豊富に含まれています。
 
最近注目されているのはナットウキナーゼという、納豆に含まれている酵素、恐ろしい「血栓」を解かす作用が高いといわれています。
納豆は血栓型老人痴呆症や脳血栓、脳梗塞、心筋梗塞などの予防にも役立つことが解明されました。
まさに納豆は、すぐれた百歳食なのです。
 
 納豆の「9大徳」
● 第1の徳  納豆は長生きの素
「人間は血管とともに年をとる」といわれるとおり、寿命を左右するのは血管の強弱。
納豆には血管を丈夫にする良質のたんぱく質やビタミン、ミネラル、脂肪分などがたっぷり布含まれています。
● 第2の徳  生菌効果が高い
納豆1gには10億個という驚くほど多量の納豆菌や生きた酵素が含まれています。
従って、整腸作用が高いわけです。
納豆菌のよく繁殖している納豆はネバネバが強い。
納豆菌には強力な腫瘍抑制効果があるといわれ、ガンを予防する食べものとしても注目されています。
● 第3の徳  頭の老化を防ぐ
脳細胞に不可欠の栄養といわれるレシチンやグルタミン酸、α―リノリン酸が多く、脳の働きをよくして、その老化を防ぎます。
● 第4の徳  カルシウムを補う
納豆は不足しがちなカルシウムを補う食べ物としても注目されています。
カルシウムには、興奮した神経を平静にする作用があり、イライラやストレスの解消にも効果的。
虫歯や骨折の予防にも欠かせません。
大豆100gには約240mgのカルシウムが含まれています。
● 第5の徳  血栓を予防
納豆には、脳卒中や心臓病の原因となる血管中に血栓ができるのを防ぎ、できてしまった血栓を溶かす強力な酵素が含まれています。
発見したのは宮崎医科大学の須見洋行先生で、納豆中に含まれている血栓溶解活性の強い酵素を「ナットウキナーゼ」と名づけました
● 第6の徳 肝臓を丈夫に
「酒を飲む前に納豆を食べると悪酔いしない」といわれるのは、納豆のネバネバ、つまりムチン質が胃を守るためです。
また、質の良い大豆たんぱくとビタミンBグループが肝臓の機能を向上させる働きもしています。
● 第7の徳 高血圧を予防
コレステロールが問題になるのは、血管壁に粘りついて血管孔をせばめ、高血圧や動脈硬化の原因となるためです。
納豆やきな粉の含まれているサポニンやビタミンE,それにリノール酸、レシチンなどには、この成人病の発生源ともいうべきコレステロールを洗い流す作用があるのです。
従って肉料理などの脂肪分の多いものをとったときなどには、食後に納豆やきな粉を食べておくと良いでしょう。
● 第8徳 腸の中を掃除する作用がある
納豆の原料である大豆にはたくさんの繊維質が含まれており、現代の「毒消し」といわれる繊維質職としてはまさに好適です。
何しろ納豆にはゴボウの2倍以上の繊維質が含まれているのです。
● 第9徳 余分な塩分を排除
納豆にはカリウムが多く含まれていますから、余分な塩分を排出する作用も含まれています。
東北地方では一般に塩辛いものの多いために、他県に比べて高血圧や脳卒中で倒れる人が多い。
ところが同じ東北でもリンゴを生産している地域ではこの種の病気が少ないのです。
その理由は、リンゴを食べているためにカリウムが多く、高血圧の予防に役立っているのです。
 
★ 納豆に関連することわざ
● 納豆食う人、色白美人
納豆中のビタミンB2は肌や粘膜を保護する働きがあり、納豆を食べ続けると目がきれいになって肌のつやが良くなります。
また、ネバネバ成分のムチン質が肌の保水性を高めますからみずみずしい肌に。
● 納豆どきの医者知らず
昔は、納豆仕込みは秋から冬にかけてがシーズンでした。
野山が色づいて納豆を食べるころになると、体力が充満して病気にかかる人がなくなってしまうというたとえ。
● 根(こん)がつき、粘りがつく
納豆にはビタミンBのグループがほとんど含まれており、バランスの良いアミノ酸とともにスタミナがつきます。
● 納豆は悪酔い予防の妙薬
納豆のアミノ酸と豊富なビタミンがアルコールをすばやく分解し、ネバネバが胃壁をカバーしてアルコールの害から守ります。
● ネギ入りの納豆汁は風邪によい
ネギの薬効と納豆酵素、それに納豆の豊富な栄養が合体して体力をつけ、体を芯から温めます。
 
 
■ トロロイモで元気百倍
● お正月にはトロロ汁
元日のもちのかわりに、里イモやトロロイモを食べるところが各地にありますが、このような「もち無し正月」は、水稲栽培以前の日本の古層栽培文化の風習が引きつがれたものです。
里イモほど一般的ではありませんが、トロロイモも儀式やあらたまった祭事、または賓客接待のときにはなくてはならない食べもので、古くから重要な役目を果たしました。
たとえば、「松の内にトロロイモを食べれば中風にかからぬ」といって珍重されたものです。
また「三日とろろ」といって、正月三日の夜食にトロロを食べると風邪をひかないとか一年間の運勢が良くなると縁起をかつぐ地方もあります。
 
東北地方に多い、トロロイモが登場する正月行事をあげてみましょう。
 
★ 元日の晩に神棚にトロロイモを供える。
★ 二日の晩、すりおろしたトロロを食後に、屋敷の入口に切らさないようにして線を引き、厄病除けにする。
★ 五日の晩に、すったトロロ汁を食べて、「無病息災」を願う
★ 十五日の晩に、すったトロロを戸口に塗り、魔物が入ってこないようにする。
 
● 「山イモ」は『山ウナギ』
トロロイモには2種類あり、山に自生しているトロロイモを「山薬(さんやく)」といい、畑で作られるほうを「家山薬」と呼びました。
前者が山芋、後者が長いもです。
どちらも非常に濃厚な滋養や薬効を持っているという意味です。
江戸時代の『和歌食物本草』には、
トロロ汁 折々少し食すれば
脾腎のくすり 気虚を補う
とあります
 
山イモは、ムチン食品の中でも日本人と最もつき合いが古く、縄文時代のかなり早くから山に自生しているものを食していました。
奈良時代には各種の文献に「薯蕷(しょよ)」と書いた文字が出てきますが、「やまついも」と読ませています。
 
「薯蕷」というのは中国名で、栽培された長イモのことです。
長イモが日本に渡来したのは縄文時代とみられていますが、山にたくさんの山イモが自生していたために、主として自生種のものが用いられていたようです。
ですから、山芋の「薯蕷」の文字を当てはめるのは間違いで、「やまいも」のほうが日本では古い呼び名であり、この「やまついも」から現在の「山イモ」になったのです。
 
いまから千年ほど前の平安時代にできた、わが国最古の医学書である『医心方(いしんぼう)』には、効能について、次のように述べています
 
 「腰をとめて、五臓を充実させる。
長く食べていると、耳と目がさとく明るくなり、身体が軽く、飢えに対しても抵抗力
がついて、寿命が延びる。
肌が美しくなって、成功能力も強くなる」
 
また、山イモが精がつくところから、古くは「山ウナギと呼ばれていました。
江戸時代の浮世草子作家として有名な井原西鶴も、『好色一代女』の中で、鶏の卵とドジョウ、そして「山イモ」を精のつく食べものとしてあげています。
 
● トロロ汁の美味しい食べ方
「トロロ汁」のことを「ことづけ汁」とも言います。
麦ご飯にとろろ汁をかけて食べるとスルスルと何杯でも食べられます。
つまり、「ご飯がすすむ」ので「飯やる(いいやる)」。
この「いいやる」が「言いやる」に転じて、「ことづて」になったもの。
確かにトロロ汁は少々食べ過ぎても胃にもたれません。
 
山イモにはでんぷん消化酵素のアミラーゼが多量に含まれているので、ご飯の消化を助けてくれるのです。
でんぷん消化酵素といえば「大根おろし」を思い出しますが、山イモには大根とは比較にならないほど多量のアミラーゼが含まれています。
消化スピードが速いので、すぐにエネルギーとして役立ちますから、トロロ汁を食べると体中に力がみなぎるような充実感を感じるわけです。
 
トロロ汁を作る上で重要なのは、よく摺(す)ること。
味がまろやかになるだけでなく、コクが出て粘りが均質になるので、のどごしもなめらかになります。
その上、よく摺ると消化酵素の作用も活発になります。
もう一つ重要な点は、「だし汁」の温度。
だしは昆布と煮干しでとりますが、冷たすぎるとトロロによくなじみません。
逆に厚すぎると消化酵素の働きが弱くなってしまいます。
だし汁の温度は人肌が最高です。
 

 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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