山ちゃんの食べもの考

 

 

その167
 
『食は生命なり』 【25】




食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【25】
『食は生命なり』と「永山久夫」 その19
永山久夫 「百歳までの健康ライフ 健康食・健康百科」 より
★★★★★「和食」日本人の健康を守る★★★★★
■ ニラレバ炒めに込められた日本人の知恵
● 万葉集にもある『ニラ』
「韮」の古名は「かみら」で、「か」は「香」であり、「みら」は現在の「ニラ」。つまり「みら」が転訛して「ニラ」になりました。
また「こみら」とも読んでいます。「こみら」は「小韮」であり、「大韮」に対しての呼び名。ちなみに「大韮」は「ラッキョウ」のことです。「万葉集」では
伎波(きは)()()の岡の茎(くく)(みら)われ摘めど
()にものたなふ夫(せな)とまさね
とあり、かなりポピュラーな野菜であったと推測できますが、ここでは「茎にら」という言葉を使っています。春になって、茎がみずみずしく伸びた「みら」という意味で、「茎韮」としたわけです。
古代の人々にとって、ニラは単なる野菜というよりは、疲れを取ったり、体力のつく精力食という認識のほうが高かったようです。平安時代前期の『新撰字鏡』に「和名古美良、起陽草」とあります。「ニラを食べると陽気(男性の精力のこと)が起こること盛んなり」という意味。わが国最古の医術書にある、平安時代の『医心方』にも「虚(精気の抜けた状態)を補い、腑と臓の機能を調和させ、食欲を増進する」とあり、やはりスタミナ効果の高さを上げています。
当時どのようにして食べていたかといいますと、かゆに入れたり、汁もの、おひたし、漬けものなどが多かったようです。
江戸時代の有名な『農業全書』では、「陽起草とて人を補い、温むる性のよき菜なり。また一度植えておけば、続年もそのまま置きつきにして栄える故に、無性なる者の植えべき物とて懶人菜(らいじんさい)とも言うなり」。ちなみに「懶人」というのは「怠け者」という意味で、無性者が放置しておいてもニラは自分ひとりでどんどん生長し、繁殖していくという意味。
事実ニラは最初の若葉を刈り取り、その後に木灰をふりまいておくと、4、5日でたちまち伸びてきます。そのくらい非常に生命力の強烈な植物なのです。踏まれても、切り取られても土中に根がしっかりと回っていれば、びくともしないで太陽に向かって伸長していく野菜なのです。
ですから、古くから「薬草」として珍重されてきました。欠点は匂い。ニンニクほどではないにしても、やはり人前に出るときなどには気になります。「ニラ」の「ニ」は「におい」、「ラ」は「きらう」の略という説もあるくらい、においが強烈ですけれども、栄養や薬効の宝庫なのです。ニンニク、ラッキョウ、タマネギの仲間で、ユリ科の植物の薫菜の一つですから、独特のにおいは避けられませんが、あのにおいは硫化アリルという成分で、ビタミンB1の吸収をよくする作用があります。
また、ニラは緑黄色野菜の代表で、ビタミンAが多く、ニラ1束ほどで、1日に必要な量がとれるほどたくさん含まれています。
ビタミンAが不足すると、風邪を引きやすくなったり、病気に対する抵抗力が低下するといわれています。女性でしたら肌が荒れたり、カサカサしてきます。
夏バテしやすい方、あるいは夏風邪を引きやすい方は今のうちからニラを積極的に食べておくとよいでしょう。ニラに含まれている硫化アリルには、ビタミンB1の吸収を向上させる作用があると申しましたが、このビタミンB1こそ疲労回復に役立つビタミンなのです。
ですから、夏になって疲れを感じる前からニラを食べておくとよいのです。
 
● 『ニラレバいため』のスタミナ効果
ニラはニンニクの強精効果とホウレンソウのビタミンAの両方をかけ備えた、貴重な食べ物といってよいでしょう。
中国料理の大衆メニューに「ニラレバ炒め」があります。実はこの料理は日本人が考え出した素晴しい“疲労回復のメニュー”なのです。レバーにはビタミンB1が多く、そのB1を体内での代謝をニラの硫化アリルが向上させてくれるからです。
また、ニラにもレバーにもビタミンAが豊富に含まれていますが、ビタミンAは油を使って料理すると、吸収がよくなります。
昔の人はニラを「起陽草」とか『陽起草』と呼んでいましたけれども、実に的確な表現です。「陽」は「男性のスタミナ」のことであり、「起」は「おこす」。枯れ木のように体力の衰えてしまった男性でも、ニラを食べると若者のように走り回るくらいの元気が出てくるという意味がこめられています。
ニラは古くから北海道や東北で盛んに利用されてきました。ニラは保温効果があるためで、常食すると寒さに強くなり、冷え性や神経痛、しもやけなどにかからない体質に変えてしまうためともいわれています。
『古事記』の中の“戦いの歌”の中に「臭韮(かみにら)」と出てきます。少々においは強いけれども、兵士の戦闘食、行軍食として用いられていたことがわかります。戦う前のスタミナ食として、用いていたようです。
ギョーザやニラレバ炒めをはじめ、煮物や味噌汁の実などにも利用されますが、肉や貝類、卵とも相性がよく、強火で手早く料理し、薄めに味付けすることがニラ料理のコツです。
 
 
■ 悪酔い防止、酒飲みの助っ人・枝豆
● 枝豆はウナギにまさる
暑い夜に飲むビールの味は、また格別です。ビアガーデンに行くと、どのテーブルにも山のように枝豆が盛られています。もちろんさやごと釜ゆでして冷たくしたもので、枝豆は江戸時代にも人気がありました。夏の居酒屋では評判おつまみの常連です。
ビールや酒のおつまみとして、なぜ枝豆が好まれるかというと、さっぱりしていて味の相性がよいだけではなく、ビタミンB群やCが多く、悪酔い予防の効果もあるからなのです。
肝臓を強くするコリンも多いから、酒飲みには心強い助っ人です。しかもウナギに多いビタミンEもたっぷり。ウナギに比べて、枝豆ははるかに安価です。ウナギはちょっとしつこいけれど、枝豆はさっぱりしています。秋を迎える前の体力食として季節は枝豆を、酒の肴として恵んでくれたのです。
「枝豆」は、まだ完熟していない青い大豆を枝付きのまま刈り取ったもので、大豆は「豆類」ですが枝豆は「野菜」の仲間に入ります。
奈良時代には「生大豆」と呼ばれ、おつまみばかりでなく、女性のスナックとしても人気がありました。
さやから取り出して、天ぷらにしても酒の魚によく合います。
江戸時代には「豆めし」が作られ、夏の風物詩になっていました。
 
 
■ ショウガは風邪退治の妙薬
● 小野小町も愛用していたショウガ
ショウガは、古くから香辛料として用いられ、また、薬用としても珍重されてきました。『百人一首』などで有名な小野小町は、歌人としてはもちろんですが、日本を代表する美人としても、今なお有名です。この小野小町がショウガを好んで用いていました。ショウガのさわやかな辛みを好んだというより、どうも目的があったような気がします。
ショウガの辛み成分は、ジンゲロンやショウガオールなどで、これらには発汗作用、つまり体をポカポカと温める作用があり、冷え性などに効果のあることが知られています。
つまり、小町は女性に多い冷え性であり、特に寒気の厳しい冬季には連日のように使用していたのかもしれません。
江戸時代の食物事典である『本朝食鑑』にも「冷え腹の痛みを治す」とあります。漢方では生のものを「生姜(しょうきょう)」、「乾燥したものを「乾姜(かんきょう)」と呼び、どちらも健胃や解熱、冷え性、風邪、腹痛などに用いられています。
また平安時代の医学書・「医心方」には「ショウガを食べるところに患者はいない。ショウガのないところに知恵のある人がいることを聞かない」とあります。平安時代、ショウガは脳の機能を向上させる効能を持っていると信じられていました。ですから、冷え性対策と、歌人としての才能をもっともっと伸ばすために、小町はショウガをひそかに愛用していたのでしょう。ショウガには血行をよくする作用もありますから、健脳効果もいちがいには否定できません。
さて、風邪のひきはじめにおすすめしたいのが生姜湯、ショウガをすりおろして生みそ、刻みネギを加え、熱湯を注いでフーフーいいながら飲み干し、早めに休みます。
 
ことわざ 「すしを食べたらガリも食え」
「ガリ」というのは、ショウガの甘酢漬けのこと。すしを食べるときには、ガリをつまむのも忘れるなという意味です。
すし屋に入ると必ずガリが用意してありますが、これは単なる食欲増進のためではありません。生魚や生貝などに中毒しないよう、その予防に殺菌効果を持たせてあるわけです。ショウガに含まれているジンゲロンとショウガオールは辛みの成分ですが、同時に強烈な殺菌作用も持っているのです。
したがって、すしを食べるときには、ガリも積極的につまむべきです。
魚毒の中和作用だけではなく、ショウガには発汗を促進したり、新陳代謝をよくするという、すぐれた効果があることも覚えておきたいものです。
 
 
■ 強精効果満点のカキ
● 北風がカキを運んでくる
木枯らしがピューピュー吹きまくって、風邪のはやる季節になると、海はカキを恵んでくれます。身の肥えたカキには、風邪を予防し、その治りを早めてくれる成分がぎっしり詰まっているのです。ビタミンAでありCであり、体力をつけてくれるグリコーゲンです。ビタミンAもCも鼻やのどの粘膜を丈夫にしてくれますから、、北風に対するガード効果が高いのです。西洋では俗に「海のミルク」といっていますが、日本では古くから「海の玄米」と呼ばれてきました。それほど栄養効果が高く、スタミナもつくという意味でしょう。
しかも、精子の原料となるアルギニンというアミノ酸が豊富に含まれていますから、新婚ホヤホヤの夫婦、体力の衰えが気になる中年、熟年男性には、ぜひともこの「海の玄米」をおすすめしたいのです
今出回っている99.9%は養殖のマガキ。養殖といっても、味も栄養高価も天然ものと変わりません。昔から、海外ではRのつかない月のカキは食べるなといわれていますが、日本でも地方によっては「花見が過ぎたら、カキは食べるな」といわれています。
マガキの場合、夏場の放卵と放精を繰り返すためで、身がぺしゃんこになってとても食べられたものではありません。
カキの生殖巣は丸い軟体部分の半分以上も占めるほど大きく、ここに強精効果の高いグリコーゲンとアルギニンが含まれています。さらに血中のコレステロールを下げて、高血圧の予防にも役立つタウリンも多いので、成人病を追い払う食べ物としても注目されています。カキはなんといっても生で食べるのが身上ですが、なべmのに入れても体が温まります。
 
 
ことわざ 「夜のカキは見逃すな」
若夫婦、特にお婿さんに言う言葉です。夕食にカキが出たら、逃さずに平らげよという意味。
カキには“セックスのミネラル”といわれる亜鉛がたっぷりと含まれています。亜鉛が不足すると精子の増殖できず、精力が衰えます。最近アメリカで青年の精子数がかなり減少しているといわれますが、その有力な原因は亜鉛の欠乏と見られています。
ビスマルクは一度に175個のカキを平らげ、ナポレオンは戦場でもカキを注文して食べたといいます。武田信玄や懶山陽もカキの大ファンでした。
事実カキを食べると体がポカポカしてくるように、亜鉛のほかにもアミノ酸やビタミンなど豊富な栄養源をたっぷり含んでいる健康食なのです。
 
 
■ 長寿食・ネギみそ
● 酒の肴に最高
寒さが加わってくると、味にコクが出てくるものがたくさんありますが、その一つはネギです。
特に白い部分が、甘みを増してきます。うまいネギの見分け方は、曲げるとポキッと折れるもの。新鮮なネギでないと折れないのはいうまでもありませんが、折れるネギが入手できたら、まず生みそをつけて食べます。
実に甘くてうまい!
ネギが生きているからですが、健康によいだけでなく、熱燗の酒にもよく合います。3、4cmのぶつ切りにし、みそをつけて焼いて食べてもよいのです。生ネギを焼いて外皮をむき、生みそを添えて出しても肴の一品です。
また、ネギを刻んで小皿にとり、生みそかもろみを添えても、これまた美味しいです。刻みネギを作るときには、青い葉の部分も加えます。彩りも映えますが、ビタミンAやCがたっぷり含まれており、がんや風邪を予防するパワーを持った部分だからです。しかも、カルシウムも多いから、成人病の予防にも役に立ちます。
 
● 風邪をひいたらネギみそ
「昔から「風邪をひいたらネギみそ」といわれるくらい、よく用いられてきましたが、これが酒の肴にも、実によく合うのです。
ネギ特有の香りは、硫化アリルという成分ですが、発汗や発熱、あるいは疲労回復に役立ちます。江戸時代の『本朝食鑑』にも「長ネギの葉、根でかゆを作り、みそ味をつけて熱いうちに食べると、汗がよく出て風邪が治る」と出ています。
風邪のひきはじめには熱々の味噌汁に、刻みネギをたっぷり入れて、フーフーいいながら平らげると、一晩で熱が下がります。緑色の葉の部分ににはビタミンAとCが多く、どちらも風邪退治には理想的なビタミン。
ビタミンAは鼻やのどの粘膜の抵抗力を強くする作用がありますから、コンスタンとにとっていますと風邪に強くなります。
また寒さが厳しくなると体内のビタミンCの消耗が激しくなりますので、補給しないと風邪をひきやすくなります。
 
 
■ ぼたもちは古代からの長寿食
● アズキの成分をとりこんだ柔らかい「もち」
お祭りや行事の日などに作るお祝いの食べものに、「ぼたもち」があります。鎌倉時代には「かゆもち」とか「かいもち」と呼ばれてきました。「かゆもち」は、もち米を主体に少量のうるち米を混ぜて炊き、すり鉢であらくついて適当な大きさにちぎり、丸めてアズキあんで包んだり、ゴマや黄な粉をまぶして食べるもので、通常のもちよりは、ずっと軟らかいものです。その軟らかさを「かゆ」で表現したのです。
「かゆもちから」「かいもち」になったのはいうまでもなく、「ぼたもち」「おはぎ」という呼び名が用いられるようになったのは、江戸時代になってから。同じ食べものなのに、なぜ「ぼたもち」といったり、「おはぎ」と呼んだりするのでしょうか。
ぼたもちは、お彼岸には欠かせない供物。春のお彼岸はボタンの季節であり、秋のお彼岸は萩の季節。そこで、同じ食べ物を季節によって、呼び分けたといわれます。
米とアズキは味の相性がよいだけでなく、日本人は小豆の赤い色に特別の力を感じてきました。「赤」は、魔よけの色であり、健康を守る色なのです。
アズキに多いビタミンB1は頭の働きをよくし、疲れを除いてくれますし、サポニンは体細胞の老化防止に役立ってくれます。
 

 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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