山ちゃんの食べもの考

 

 

その175
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【32】
『食は生命なり』と「永山久夫」 その26
永山久夫 「百歳までの健康ライフ 健康食・健康百科」 より
★★★★★長生き食歴・健康歳時記★★★★★
■ 5月(皐月・菖蒲月・狭雲月・田草月・五色月)
●5月・・・新茶
立春の日から数えて88日目を「八十八夜」といいます。
5月2日頃にあたりますが、昔からこの頃になると霜が降らなくなるので、農家では種をまく目安とされてきました。
茶所では茶摘も開始され、一番茶が出回る時期でもあります。
山地は静岡県をはじめ九州各地、三重県、埼玉県などですが、暖冬の年はその影響で、各地ともに葉の生長も良く、美味しいお茶が楽しめます。
 
一番茶、つまり「新茶」は栄養的にも最もすぐれ、香りや味も良く、お茶の王様といっても良いでしょう。
熱に強いビタミンCやミネラルなどがたっぷり入っていますから、美容や肌の老化防止にも効果があります。
 
古くから、「初ものをいただくと、75日間長生きできる」といわれていますが、一番茶はまさに“初物“であり、長寿飲料です。
 
お茶にはかすかな渋みがありますが、タンニンという成分のせいです。
このタンニンには細胞の老化防止に大変役立つ作用があり、長生きしている方に「お茶好き」が多いのも、このタンニンやビタミンCなどが力になっているものと思います。
「日常茶飯事」という言葉があるくらい日本人はお茶好きですが、「目には青葉山ホトトギス初ガツオ」と一緒に、まさに「新茶」の季節がやってきました。
 
新茶道中
ズイズイズッコロバシ
ごまみそズイ
茶壷に追われて
トッピンシャン
抜けたーらドンドコショ
俵のネズミが
米っくってチュー
 
よく知られたわらべ歌。実は、この歌には徳川幕府の圧制に対する民衆の怒りや恨みがこもっているのです。
その怒りを直接ではなく、なぞめいた歌詞で、ユーモラスに表現しているところに知恵が感じられます。
「茶壷」の文字があるとおりに、この歌は将軍様へ献上する「お茶壺道中」を歌ったもの。
 
毎年新茶のシーズンになると、「お茶壺様」を乗せた豪華なかごの行列が、江戸と宇治の間を往復しました。
将軍家直用の新茶を運ぶ「宇治採茶便」で、一行は「下にー、下にー」と声を上げながら運行。
沿道の民衆は、少しでも粗略な態度を見せると容赦なく罰せられたので、土下座して、その通過をじっと待ったのです。
 
お茶壺様が近づくと、戸をピシャンと閉めて、ごまみそをなめながら、息をこらしている。一行が通り過ぎるとドンドコショッと戸を開ける。
この間、子供たちはネズミのちょろちょろする米俵を積んだ納屋に閉じ込められ、「ズイズイズッコロバシ・・・・・・」と歌いながら時を過ごしたのです。
当時、ごまみそは下級武士や農民たちの、体力のつく常備薬でした。
やがて、この「ごまみそ」で力をつけた武士たちによって、徳川幕府は倒されていくのです。
 
●5月・・・かしわもち
昔は、5月は一年のうちでも、特別に重要な月と考えられていました。
田植えの季節であり、季節の変わり目に当たる物忌(ものいみ)(不吉なこととして物事を忌み避けること)の月でもあったからです。
中でも5月5日は、とくに不吉な“悪日”とし、邪気を払うために、いろいろの行事をしてきました。
 
ヨモギの葉で薬玉(くすだま)を作って家の中に飾ったり、その強い香りで悪霊よけの力があると信じられていたショウブを身につけたり、薬草摘みをする等の行事です。
もともとは中国の行事。日本に入ったのは奈良時代ですが、日本古来の田植え前の五月行事と結びついて、ヨモギやショウブで厄除けをするようになったのです。田植え前の五月行事というのは、身を清めた早乙女たちが、田の神様に豊作を祈るための祭りごと。
 
5月5日はいうまでもなく「端午の節句」。
「午」は「五」に通じるところから、呼び方もそれに由来したようです。
「端」は「初め」という意味。
この日に食べるのが「かしわもち」。
「かしわもち」の原型は、「??(ぶと)」と呼ばれた古代菓子で兜の形をしています。
米の粉を練ってアズキあんを包んで、兜形のもちを作り、柏の葉で包んで、蒸して作ります。
 
柏の葉は古代の食器で、この広い葉に米飯や魚などはもちろん、固練りの酒も盛っています。
とくに神様に食べものをお供えするときの食器としても重要でした。
穀霊の宿っている米を粉にして作ったもちを、田植え前の5月5日に食べることによって、忙しい田植え時期を乗り切るための元気をつけ、同時に病気などが寄り付かないように厄除けをしたのです。
アズキの赤色も、悪霊除けには大切でした。
 
◆ 「産地に調理なし」・・・ことわざ
日本には、古くから「産地に調理なし」という諺があります。
「調理法がない」という意味ではありません。
魚にしろ、山菜、キノコ、野菜にしろ、とれたての旬のものは、それだけで十分に美味しいので、都でやるような、やたらに人手を加えた料理法は不要という意味です。
「旬の素材の味、栄養」をそっくり生かして食べる。
それが一番うまい食べ方であり、健康にも良いのです。
 
日本料理のシンボルであり最も重要なのが「刺身」です。
刺身は、魚の身を食べやすいように切りそろえて出すだけです。
もちろん、素材の味がまずかったら話になりませんが、この刺身が日本料理の代表であるということは、日本料理というのは、素材の鮮度と旬の味を非常に重視していることを物語っています。
 
ヨーロッパ的な料理法、つまり、クッキングという視点から見たら、「刺身」はとても料理のカテゴリーには入りません。
ヨーロッパやアメリカの伝統的な料理というのは、香辛料や調味料、その上にクリームやソースをたっぷり使ったたいへん手の込んだものが多いのです。
 
和食と西洋料理、中国料理の決定的な違いは、前者が「素材の味を生かす」のに対して、後者は「料理された人工的な味」を重視する点。
 
西洋料理は「美味しくして食べる料理」であり、日本料理は「美味しいのを食べる料理」といっても良いでしょう。
日本料理は、材料の持ち味を生かして調理するという意味で、別の言い方をしますと、素材の持ち味以上に美味しくしてはならないというのが鉄則になっています。
そのシンボルが刺身なのです。
 
 
■6月(水無月・風待月・涼暮月・蝉羽月・鳴神月)
●6月・・・水無月
「水無月」は、わが国古来の呼び名で、『日本書紀』や『万葉集』などにも6月を「みなづき」と読ませています。
現在では、もっぱら「水無月」を当てて、「水無し月」というような解釈が行われていますが、それだけではありません。
『奥義抄』という書物には2通りの分析が行われています。
 
「農事のことも、皆しつきたる故に、みなし月”といふをあやまれり。一説には、この月まことに熱くして、ことに水泉(みなもと)かれつきたる故に、みずなし月といふをあやまれり」
農事が全部すんだので「みなしつき」であり、水源まで干上がるほど熱いので「水無し月」と解釈しています。
しかし、6月についての呼び名の由来は、次の『倭訓栞』のほうが正しいのです。
「みな月、六月をいふ。水月(みなづき)の義なるべし。この月田ごとに水をたたえるをもって、名とせり」
6月は稲作の大事な月で、田ごとの水が一杯たたえられており、「水なし月」どころか「水ありつき」の意味であり、田ごとの月というように、そこから「水月(みなづき)」となったといっており、これが正解です。
 
旧暦の6月といえば、そろそろ稲の実が膨らむ時期であり、「実の成り月」「みな月」となったという説もあります。
 
●6月・・・サザエのつぼ焼き
角(がど)のある人のことを「サザエに金平(こんぺい)糖」といいます。
どちらも角(かど)ならぬ角(つの)があるところが似ているからです。
もっとも角のないサザエもあります。外海に生息するものだけに長い角が発生し、内湾内海のものには角がありません。
 
サザエの旬は6月、産卵期は6月下旬から7月頃なので、「夏のサザエは口ばかり」となります。
産卵の終わった、旬外れのサザエは、痩せて殻と口ばかりが目立つようになります。
 
サザエはいうまでもなく代表的な巻貝ですが、磯の香りが特に強く、ひなびたうまさがあります。
旬のサザエは身が丸々と肥えていて、うまい。
アラメやカジメなどの海藻を常食にしているために、磯の香りが身に染みついているのです。
「香りマツタケ、味シメジ」という言い方をすれば、「香りサザエで味赤貝」ということになるでしょうか。
 
サザエで注目したいのはアミノ酸の一種であるタウリンが多いこと。
コレステロール値を下げて血圧を正常に保つ作用があります。
その上アルギニンという、男性機能を強化する成分が驚異的に含まれており、精力減退に悩む方にはぜひサザエのつぼ焼きをおすすめしたいと思います。
何しろうなぎの1.6倍も多く含まれているのです。その上グルタミン酸が多いので、頭の老化防止にも役立つ、“海の幸”です。
 
 
■7月(文月・秋初月・親月・愛合月・女郎花月)
●7月・・・そうめん
チリリン、チリリンという風鈴の音を聞きながら、すだれ越しに入ってくる風を受けて、ツルツル、ツルツルとすする素麺の味は、実に涼しさ満点。この素麺は古くから日本の夏の代表的な食べ物でした。
素麺の先祖は、奈良時代の「索餅」で、これを「むぎなわ」と呼びました。
 
その名の通り、小麦粉、米粉、塩を混ぜて、縄のように太くねじりより、それを蒸して食べていたらしいのです。
このため『今昔物語』には「麦なわが蛇に化けた」という物語があるくらいですから、そうとう太かったのです。
「索」はなわとか、つなという意味ですから、なわ状のもちということになります。
これを引き伸ばして細くする工夫が加えられ、現在の乾麺ほどの細さになりました。
その後、手にごま油などをつけて引き伸ばす製法も考えられ、「素麺」が生まれたのです。
 
室町初期には、宮中の女房言葉で「ほそもの」、後になって「ぞろ」とか「ぞろぞろ」という異名が付けられました。
素麺を「天の川」に見立てて、7月7日に食べる習慣が古くはありました。
細ものといえばところてんがあります。
 
ところてんさかさに銀河三千尺
与謝野蕪村の句で、突き出し具でぐっと突き出されたところてんを、三千尺の天の川と見立てたのです。
 
●7月・・・冷ややっこ
いよいよ夏本番――。
夏は冷やっこに冷や酒です。
冷や酒を、昔は「霊酒」としゃれました。「霊酒」は「冷酒」に通じるためです。
冷酒に氷のぶつかきを入れます。そして冷奴。
これが、盛夏には、最高の取り合わせ。
マンションに“ウサギ小屋”では、庭に打ち水というわけにはいきません。
心の中の“打ち水”が、「冷や酒」に「冷ややっこ」なのです。
 
この二つを、テーブルにどすんとすえます。一日の疲れが、吹っ飛ぶ瞬間。
肩のあたりに重くまとわりついていた一日のストレスも、スーと消えていきます。
まさに霊酒の効果。豆腐のうまさ、夏の薬味が引き立ててくれます。
ミョウガ、シソ、ショウガ、ニンニク、ワケギ、ノビル。
冷やっこの醍醐味は、実は、これらの薬味にもあるのです。
 
冷やっこの豆腐は、絶対に鉄の包丁は避けたい。
鉄の異臭が、せっかくの豆腐のうまみを台なしにしてしまいます。
なるべくならしんちゅうの包丁。これが無理ならステンレス製を使ってもらいたいといいたいところですが、本当は金気を避けて欲しい。
すっぱり切った切り口があまりにも平面的で面白みがありません。
昔の通人は、「豆腐の「箸割り」としゃれました。割り箸を使ってさくのです。
箸で縦と横の割り切りますと、割れ目がざらざらになって、醤油が適度について、かえって風味が出てきます。
ダイナミックでワイルドで、いかにも豆腐を食べたという感じ、冷や酒にもいちだんと心地よく酔えます。
 
 
■8月(葉月・秋風月・草津月・木染月・月見月)
●8月15日・・・お月見
旧暦では7月を初秋、8月を中秋、9月を晩秋といい、8月15日の満月がお月見です。
だんごを15個と秋の初物の数々、そして、ススキの穂など秋の七草をお月様に供えます。
満月の光を全身に浴びながら、夜露のついたものを食べると長生きするという伝承があり、中秋の名月は屋外でまつります。
 
土地によっては、ゆでた枝豆を大きなますに入れて屋根の上に供え、満月が東の空に昇りきったところで、おろして食べるところもあり、これも同じような発想からでたものと思われます。
また地方によっては「芋名月」と呼んで、だんごと一緒に必ず里イモを供えますが、これは稲作開始以前、つまり縄文時代の主食が里イモだったときの名残と見られています。
 
江戸時代には高台に上ったり、川船をくり出して、にぎやかに月見の宴をはりましたが、江戸の料理茶屋は、その流れで大繁盛したと伝えられています。
遠く平安時代の女官たちは、ヤツガシラに箸で穴を開け、そこから満月を眺め、
「月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月」と詠んでいます。
 
●8月・・・ところてん
夏の夜空に、まるで空を流れる川のように見える、無数の星の集団を「天の川」とか「銀河」といいます。
万葉集には、この天の川に関する言葉がいくつか出てきます。
例えば、「天の川津」。
これは天の川の船着場のこと。「天の河原」というのもあります。
こちらは文字通り天の川の河原で、天女が遊びに来る場所と伝えられています。
天の川は季節に関係なく、いつでも見ることができますが、夏から秋にかけて、地平線に垂直近くになり、真上に来るのでよく目立ちます。
 
このようなことから、歳時記などでは、天の川は初秋のものとしています。
江戸時代の俳人・蕪村の作品に
 ところてん逆さに銀河三千尺 というのがあります。
ところてんは、天草を洗ってさらし、釜でに溶かしてからカスを除き、型に流し込んで凝固させて作ります。
これを清水などの冷水に十分に冷やしたところを、「てんつき」と呼ばれる箱筒になった道具で突き出し、玉うどんほどの太さになったものを酢じょうゆやナスしょうゆで食べます。古くから暑気払いの食べ物として喜ばれました。
 
●8月・・・シソの葉
暑さがいよいよ本格的になって、そういう暑い日が続くと、とかくダウンするのが食欲です。そんなときこそ、シソの葉の出番なのです。
シソは、大きく分けて青ジソと赤ジソがありますが、栄養成分や薬効は、ほとんど同じです。とくに多いのがビタミンAでカボチャのなんと14倍も含まれているのです。
ビタミンB1やB2、それにビタミンCやカルシウムもたっぷり。その上、強力な防腐力や殺菌力を持っています。
今でこそ、シソは「大葉」と呼ばれ、一年中出回っていますが、昔は、梅雨期から夏だけのものでした。
ちょうど食中毒が増え、夏ばてする季節でもあり、それらを予防する夏の健康薬味として、シソは欠かせなかったのです。
 
緑の色彩も鮮やかなシソの葉は、刺身のつまや冷ややっこ、みそ汁、おかゆなどに、添えられます。
食欲をそそる香りも高く、シソの葉は、まさに“和風ハーブ”の傑作といっても良いでしょう。
原産地は中国で、わが国には縄文時代に渡来しており、野菜の仲でもたいへんな古株です。
 
 

 

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池田 優

 

 

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