山ちゃんの食べもの考

 

その2
 

 

「あんたみたいなこと言っていたら、食べるものがなんにも無くなる」

 とよく言われるんですね。だから、だれかれ掴まえて食べものについてアレコレ言うのは控えていたんです。でも、どうしても話し合わねばならないという切実な思いに至ったわけです。 

 というのは本当に"食べるものがなくなる"という心配が多いからです。本当のことを知って食べているならそれでいいんです(個人の自由です)。本当のことが知らされないで、また知らないで安心しきって食べているとしたら問題です。赤ん坊がヤキヒバシをわしづかみするようなものです。ヤキヒバシなら熱い、火傷ですぐわかります。二度としません、させません。ところが食べものは、いろんなものが混じり合い重なり合って、何年もかかってジワ〜ッとやられたのではたまりません。気がついたら手の施しようがないなんてことにならないのかしら。

 

本当はこっちのほうがいいのだが・・・でも、それでは売り物にならん

 スーパーのバイヤーをしている時いろんな産地に行きました。農家のご苦労は大変なものです。市場や要望や消費者の嗜好に応え、見るからに立派な野菜や果物を作るために現代農法の技術の限りを尽して工夫努力されています。 

 帰りにはお土産を持たせてくれます。「自家用に作ったものだから見栄えはせんが私らが食べている本物の味や、無農薬だから安心して食べてください」とか「完熟だから」「ワックスかけとらん」などなど、「本当はこっちの方がいいのだが、市場へ出しても金にならん」という。さっきまで案内してくれていた整然とした園の立派な作物は市場出荷向けだと言う。

 市場向けにはとにかく実を大きくする、早や取りして流通での棚持ちを良くする、色つやを良くし美しくする、形を揃えるなどに大変だ。食べものとしての本質がだんだん阻害され、売り物、商品という食品が作られていく。20年程前からそんなことに疑問を持ち出し、こちらも意識して本音を聞くようにする。真夏にハウスの中で防寒服を着たような完全装備安全服に身を固めての消毒作業に出くわす。「大丈夫なんですか?」「こうでもしなきゃ仕方ないやろ」てな具合で言葉が続かなくなる。

 まるで絵に描いたよう見事な大きさ、美しさ、形のよさ、機械ででも作ったような見事さで粒ぞろい。15〜6年程前から、有機とか減農薬などを志す農家との出会いも始まる。そんな中でツヤツヤした立派な商品に出会うたびに素直に納得すけるわけにはいかなくなった。

 農家の言う「本当はこっちの方がいいんだが」という物は選外品、格外品になる。特選品、秀品と格付けされる物は必ずしも良品ならずである。

 

概観を少し我慢してくれたら農薬半分減らせるのに・・・農家の本音

 生産者は自己矛盾に苦しみながら、不本意ながら、消費者が買ってくれる物、スーパーが買ってくれる物、市場が買ってくれる物、つまりは売れる物、売り物作りにならざるを得ない。悲しいことだ。

 「皮に少しの黒い斑点やサビを我慢してくれたら、農薬は半分以下に抑えられるしワックスなんかかけなくてもいいのに……」というみかん生産者に遭った。農家は自分の健康のためにも、できることなら農薬は使いたくないと思っている。農薬の恐ろしさを一番知っているのも、本当は食べ物としてどうすることが一番いいのか、何が美味しいのか一番知っているのは作っている農家自身なんだから。背に腹は代えられない。良心の呵責に耐えながら、生活のためには開き直って化学肥料や農薬に依存する農業とならざるをえない。

 有機栽培や無農薬栽培のみかんはさすがに汚い(本当は自然の美しさ)。決して安くもない。どう説明してどう販売したらよいものか戸惑う。ワックスも使わないみかんだから、皮も使って欲しい。マーマレードやお菓子やお漬物に使う、またお風呂に入れるなど生かして欲しいと言われる。

 ギリギリまで農薬使用を抑えたりんご生産者とも出会えた。今年は完全無農薬に挑戦すると言う。甘味・酸味・香りが濃く、丸かじりして深い味わいに納得がいく。ただ甘いだけの薄っぺらい味に慣らされた向きには最初は馴染まないかも知れない。味蕾(味覚感応機能)がまだ固まっていない小さい子供たちに食べさせてみるといい。本物はお子さまには解ります。(味覚が決まるのは幼児期だそうです。小さいお子さんには出来るだけ安全な本物の味を覚えて欲しい。幼児期の味覚が生涯の味覚となり、やがてはおふくろの味になる。化学調味料でたっぷり味付けされたものを好むようになってからでは、回復に時間がかかることでしょう。野菜や果物など自然なものを好まない子になっては大変です)

 本物づくりに取り組まれる方々は、化学肥料、農薬、ホルモンなど化学物質使用の恐さを身にしみて嫌という程知っている。それを買い支え、商ってくださる方々もいる。それがないと困る方々も沢山おられるわけで、経済的な効率が優先される中で、あえて艱難辛苦に耐え、よりまともな食べものづくりにと黙々精を出してくださる方々のあることは本当に有難いことです。

 美容にいい、体にいいと言って生野菜サラダをバリバリ食べている人がありますが、どんな作られ方をしたかを確かめて選んで欲しいものでです。それも化学洗剤など使わないで、流水でよく水洗いをして下さい。ドレッシングやマヨネーズなんかも選んでください。

 

価格の優等生 卵。今でも安い卵は食べられないんです。

 鶏卵。価格の優等生と言われる高栄養食品。しかも自給率が100%に近いと言われるが、その飼料のほとんどが輸入に依存しているそうだから、私は日本生まれの輸入品だと思っています。それに飼われ方が不自然だから安い卵は食べる気がしない。養鶏場もいくつか見てきました。薬品や抗生物質の使用がそんなにやかましくなかった頃は、鶏舎の周りや倉庫にその空き瓶などが転がっていたものです。太陽から遮断され、エサの効率を最大限にするため身動き出来ないケージの中で卵を生む機械?何万羽、何十万羽と飼われる鶏舎は近代工場さながらの風景です。

 山の中の百姓に生まれた私には不気味で見ていられない。それこそ放し飼いでミミズや虫や草をついばみ、飼料はもちろん自家栽培の雑穀屑である。50年前はそんな貴重な卵を食べていたのである。田舎では有機農業を志す兄が今でもそんな飼い方をしている。いとこの娘が田舎にきてこの卵を食べても平気であるばかりでなく、アレルギーが治ったというから食べ物は考えて選ばなくてはならない。雄鶏も貴重な存在で、お祭りやお客さんがあるとなるとご馳走になって振舞われたものである。

 昔は卵アレルギーなど無かったのだが、飼料が輸入品に依存するようになり、ギュウギュウ詰めの蜜飼い、成長促進剤やホルモン剤、抗生物質や抗菌剤などの薬品が使われるようになってからだと言う話を聞いたことがある。推察するにその飼料は化学肥料や農薬を使って大量栽培されたものであろう。さらには輸入に当ってポストハーベストも使われていることであろう。

 少しでも安心できる卵をと探して見た。極めて小規模だが理想に近い養鶏場はあるにはある。安売りの卵に押されてなかなか採算が取れないと言う。自動化された生産工場と、広いスーペースに飛び回る本格的な放し飼いとはコストも効率も雲泥の差だ。消費者の安全健康志向からいい卵が増えてきたようにも思うがまだまだ少ない。

 今ではかなり改善されたのだろうが、10個入れ1パック100円前後で売られる卵には何となく抵抗を感じてしまう。1個30円も50円もする卵と何がどう違うのか。訳も無く安かったり、3倍も5倍も高かったりする筈はないと思いませんか。

 それじゃ高価な卵はいい卵かと言うとそうはいきませんね。いろんな卵が出てきました。いわゆる健康志向にあわせてという差別化商品です。ビタミン強化とかミネラル強化とか、薬草云々などいろいろありますよね。どこでどういう飼われ方をしたものなのか、本当のところの情報をしっかりお聞きすることが大事だと思います。

 卵の殻の赤茶けたものの方がいいとお思いの方が案外多いのですが、同じ飼い方ならば白い卵と何ら変わらないそうですから念のため。付け加えるならば黄身の色の濃いもの栄養があるといわれますが、エサで何とでも着色できるそうで、トウモロコシを多くしたり、赤いピーマンや唐辛子を混ぜたりいろいろあるそうです。福島県に高橋さんという素晴らしい養鶏家がいらして、その卵の黄身の色は薄かったです。見た目より重量感があり、会合に集まった人たちが一様に感動して掻き卵で戴きました。

 

卵の生産や販売に携わる方で、お勧めが合ったら是非教えてください。
何がどう違うのか詳しい内容をお知らせいただきたいのですが。

 卵を原材料に使った食品もたくさん有りますね。赤ちゃんの玉子ボーロから、プリン、カステラ、ケーキなどたくさんのお菓子に使われていますね。温泉玉子や、玉子焼き、オムレツ、茶碗蒸し、それにマヨネーズもありますね。

 それらにはどんな卵が使われているのでしょう。一緒に使われているその他の原材料の作られ方、そして加工方法や添加物の使われ方なども気になりますね。知りたいですね。

 

食べものをよくするには、
疑問質問をどんどん出して、まず本当のことを知ることから。

 みかんもりんごも卵も、消費者が何を求めるか、何を買うかによってしか変わらないと思います。あなたのお子さんが食べているそのお菓子も同じです。

@ 食品の容器には生産者やメーカーの名前や所在地が書いてありますから直接お聞きして見るのがいいですね。同じ種類の食品でいくつかの銘柄を聞いてみるとよく判ると思います。納得いく回答が得られればいいですね。「それは企業秘密です」などや難しすぎればおかしいと思います。お金を出してお買い求めくださるお客様にきっと解りやすく教えて下さるはずです。

A あなたがよくご利用になるお店の店長さんや担当責任者の方にお聞きするのもいいですね。必ずしも明解なる回答が得られるとは限りません。しかし心あるお店でしたら「よく調べていついつまでにお答えします」とお尋ねになられたことに感謝されます。そんなお店はいいですね。うるさそうな態度を見せたり、納得できる返事が得られず、つき返すような感じのお店でしたら推して知るべきでしょう。

 


◎子どもたちや孫たちの時代の健康な命を守るために、

 今、私たちが本気でやらねばならないことは、

 食べものについて本当のことを知ること。

 私たちが何を選び、何を買うか、何を食べるかで

 明日の食が良くなると思います。


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

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