山ちゃんの食べもの考

 

 

その200
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【56】  『食は生命なり』と「新谷弘実」 その23
新谷弘実著
『病気にならない生き方』 2 実践編 より その4
 
 
第2章 エンザイムの暗号を読み解く の1
 
●便秘が原因でガンができることもある
 
私はもともと外科のレジデント(研修医)としてアメリカにわたりました。
 
当時のアメリカは、大きなステーキに代表されるような動物食が中心だったため、大腸ポリープを患う人がとても多く(当時は10人に1人、ポリープがあるといわれていた)、どこの病院でも毎日たくさんの開腹手術が行われていました。
 
今は腸にポリープができた場合、内視鏡を使った回復しない手術方法が選択されることがほとんどですが、30年前までは1センチくらいの小さなポリープでも、取り除く方法は開腹手術しかありませんでした。
 
実際、私が外科の勉強をしてい食ベス・イスラエル病院やベルビュー病院でも、外科の全手術の3分の1くらいをポリープの切除手術が占めていました。
 
大腸ポリープというのは、ごく簡単にいえば腸の中にできたキノコ状の「イボ」のような腫瘍です。
そのほとんど(80〜90%)は良性のものですが、腸にバリウムを注入しレントゲンを透かして見るという当時の検査方法では、ポリープが良性か悪性かを確認することはできません。
 
それに良性のポリープでも、そのまま放っておくと成長し、悪性の腫瘍、「ガン」になる可能性が高いことから、直径1センチメートル以上のポリープが発見されればなるべく早く手術で取り除くという処置が取られていました。
 
そのため腹部外科は非常に忙しく、外科のレジテントも毎日手術のアシスタントにかり出されました。
とくに私は、日本人特有の繊細さと天性の器用さが重宝がられ、多くの外科医からアシスタントを依頼され、他のレジテントよりも圧倒的に多い手術数を経験することになりました。
 
外科のレジテントを務めていた5年間で耳の手術を除くさまざまな外科手術法(たとえば子宮、前立腺、肺、甲状腺、乳ガンの手術や整形外科等)を習得することができたのは、医師として実に幸運な体験といえるでしょう。
 
当時は大腸ポリープに対しては切り取るという対症療法が行われるだけで、その原因究明や予防措置はまったくとられていませんでした。
そのため一度切り取ってもポリープを再発する人が多く、何度も開腹手術を受けなければならない人も少なくなかったのです。
 
今にして思えば、ポリープができる最大の要因である食生活を改善していないのですから、再発するのは当然の結果だったのですが、そのたびに開腹手術を受けなければならない患者さんの肉体的、精神的苦しみは大変なものでした。
 
患者さんの苦しみに接する中で、私は、コロノスコープにスネヤー・ワイヤーを入れて内視的に切除する方法の開発に取り組むと同時に、なぜ大腸ポリープがこれほど再発しやすいのかということについても深く考えるようになっていきました。
 
このとき食歴に注目したのは、それが直接胃腸に入ってくるものであると同時に、多くの手術で見たアメリカ人の腸が、私が知っていた日本人の腸とは明らかに違っていたからです。
私が開腹手術を受けもったアメリカ人の腸は、どれも渡米以前に見慣れた日本人の腸よりもかたく厚いものでした。
 
当時(1960〜70年代)の日本では大腸ポリープを患う人はとても少なく、その理由が、欧米とは明らかに異なる食文化、つまり「穀物中心の食事」にあるのではないかと思ったのです。
 
よく欧米人の腸は、日本人と比べて短いといわれます。
そしてこうした違いは先天的なものであるかのような言われ方をします。
でも、それは間違いです。
 
私はのちに、食事を改善した患者さんたちの腸から、アメリカ人の腸も本来日本人と同じように、長く軟らかいものであることを学びました。
彼らの腸がかたく短くなっていたのは、過剰な動物食摂取によって後天的に変化したものだったのです。
 
腸の長さやかたさ、腸管の中の様子である「腸相」は、食事によって大きく変化します。
ですから、これは嘆かわしいことなのですが、30年ほど前まではあれほどきれいで大腸ポリープなどはほとんどなかった日本人の腸も、最近では動物食の増加に伴い、かたく短いものとなり、腸相が悪化するとともに、生活習慣病が急増の一途をたどっています。
 
また、さまざまな病気の手術や検査を行う中で、一見すると腸とは関係のないと思われている臓器、たとえば肺や肝臓、胆のう、腎臓などであっても、何かしら病気を患っている人の腸相は美しくないということも知りました。
 
現代医学は心臓、肺、胃、腸、腎臓など臓器別に分類し、何かトラブルが生じてもその臓器一つの問題として、解決することを考えます。
そのため痛みがあれば痛み目止めを処方する、胃粘膜がはれていれば胃酸を抑える薬を処方するといった、非常に近視眼的な対症療法が取られてきました。
 
しかし実際の人間の体というのは全てつながっています。
一ヶ所でトラブルが起きれば、その影響は全身に及ぶのです。
 
たとえば、食物繊維や水分の摂取が少なく便秘を起こしている人は、便の中の不消化物が腐敗・発酵し、毒素を発生させます。
この毒素が腸壁の細胞内の遺伝子に変化を起こさせポリープをつくり、次第にガン化していくことは従来からよく知られていますが、停滞便が生み出した毒素が全身の細胞にも悪影響を与えていることをはっきり認識している人はあまりいないのではないでしょうか。
 
便秘をすると吹き出ものなど肌荒れがひどくなるというのは多くの人がご存知だと思います。
これは腸内で発生した毒素が腸壁から吸収され、その毒素の溶け込んだ血液が皮膚へと送られた結果です。
 
肌荒れは目に見える場所で起きるトラブルなので目立ちますが、顔にニキビが一つできたということは、同じようなことが、目に見えない体の中のいたるところで起きていると考えなければなりません。
そして、全身に運ばれた毒素が細胞内の遺伝子を傷つけた場合、最悪のケースではさまざまなガンの原因にもなりうるのです。
 
つまり、便秘が原因で全身にガンができる可能性があるということです。
 
腸相の悪化、腸内環境の悪化は、単に腸だけの問題ではありません。
腸に悪いことは、全身にとって悪いことなのです。
 
 
●小さな異常をあなどると大変なことになる
 
人間の体は約60兆個の細胞の集合体です。
ですから本当の健康体というのは、60兆個全ての細胞が健康でイキイキとした状態にあることです。
 
細胞は、それぞれが酸素と栄養の補給、老廃物の排泄、そしてエネルギー生産を行っている一つの生命体です。
したがって、一つの細胞が健康な状態を保つためには、全ての細胞に必要な栄養と酸素がきちんと行きわたり、代わりに老廃物と二酸化炭素がきちんと排泄されることが必要です。
そして、そのためには、血液・リンパという体の中の体液がスムーズに流れることが大切です。
 
前著でタバコとお酒は最悪の生活習慣だと強調したのは、単にそれらが肺や肝臓といった特定の臓器にダメージを与えるだけではなく、全身の毛細血管を収縮させ、この大切な血液・リンパの流れを阻害してしまうからです。
 
喫煙や飲酒が習慣化すると、全身の毛細血管が収縮してしまうので、細胞に充分な酸素と栄養を届けることができなくなります。
栄養を届けられないということは、同時に、老廃物を排泄できなくなるということでもあります。
 
これは、わかりやすくたとえるなら、60兆個の大部分を占める細胞が「便秘」状態になってしまうということです。
そして、腸の停滞便が全身に悪影響を及ぼすように、細胞の便秘もさまざまなトラブルの原因となります。
 
喫煙・飲酒習慣があり、肌が荒れている人、肌の色がくすんだり黒っぽくなっている人は、すでに体が危険信号を出していると思ってください。
 
肌のくすみや荒れは、肌の細胞が酸欠状態を起こし、排泄しきれない老廃物や毒素が細胞にたまることによって生じているからです。
 
私はこれまで数多くの人の胃相・腸相を見ていますが、
目に見える皮膚にタバコや飲酒の弊害が現れている人は、胃や腸内の粘膜や毛細血管にも異常や出血といった変化が生じています。
 
全身を浸す恐ろしい病気であるガンも、最初はたった一つの細胞の遺伝子が変化することから始まります。
小さな異常、小さな変化をあなどってはいけません。
 
近年、これといった病気もなく、死の予兆を感じていない人がある日急に死に至る「突然死」が増えています。
現代医学では、突然死の死因は「不明」とされていますが、本当の意味で健康な人が急に死に至ることなどありません。
 
人が「死」に至るには必ず原因があります。
突然死にいたる人は、細胞レベルでの異常、痛みや自覚症状を伴わない異常が静かに進行していたのです。
 
病気は偶然や、急に何の予告もなく起こるものではありません。
 
あなたの体を構成している細胞は、一つ一つが一生懸命天寿を全うするための最善の努力をしています。
しかし、彼らには選択の自由はありません。
あなたが選び、取り込んだものを、血管というライフラインを通して受け取るだけです。
 
でも、そのライフラインさえも、あなたの選択によっては切断(毛細血管の収縮)されてしまうかもしれないのです。
 
人は目に見える外傷や皮膚の表面に現れた異常にはとても敏感に反応します。
目に見えない内臓でも痛みを伴う異常であれば、意識を向け、治療を考えます。
しかし、目に見えず痛みも感じない異常が細胞レベルで起きている「未病」の状態と「健康」をきちんと区別して考えている人はあまりいません。
 
とはいえ、痛みも何もないのに、病気のことばかり心配していられないというのが多くの人の本音でしょう。
それに、生活していくうえでは、体に負担がかかるとわかっていてもしなければならないこともあります。
 
私も若いときはずいぶん無理をしましたし、今だって健康によくないとわかっていることでもあえて選択することもあります。
現代社会で生きるためには、それも仕方のないことです。
 
でも、だからこそ、タバコやお酒を飲んだら体の中でどのような変化が起きるのか、動物食の過剰摂取が細胞にどれだけ負担をかけるのか、自分の体にどのような影響を与えているのか、正しい知識を得ることが大切なのです。
 
体の中で何が起きているのか、どんな行動が自分の細胞をどれほど苦しめるのかを知っていれば、いっとき無理をしたとしても、そのあとで「きちんと体をいたわろう」「もっと自分を愛そう」という気持ちが湧くからです。
そういう気持ちの持ち方や考え方に変えていかなければ生活習慣病という病気を予防したり、治したりすることはまずできません。
 
自分の体をいたわることは、自分自身にしかできないのです。
 
病気になるのも、健康に生きるのも、全ては自分の選択しだいだということを自覚し、体に思いやりをもつこと、それが「本当の健康」を手に入れる第一歩となるのです。
 
 
●腸は自ら考える「第二の脳」である
 
腸はとても不思議な臓器です。
 
実は腸の働きは、体の司令塔ともいうべき「脳」の支配から独立しているのです。
その証拠に事故などで脳からの指令をする伝達する脊髄を損傷しても、脳死状態になっても、腸は正常に働き続けます。
 
通常、人間は、脳の機能が完全に停止すると、数分からどんなに長くても数時間で心肺の働きが止まり死に至ります。
これは、心肺機能が脳の支配下にあることを意味します。
 
ところが、腸は、脳死状態でも生命維持装置で呼吸と血液の循環さえ保たれれば、脳からの指令がなくても、栄養分を吸収し、不要なものは排泄するという自らの機能をきちんと果たすことができるのです。
 
このように脳からの「独立性」を保つことから、腸は「第二の脳」とも言われています。
 
実際、腸の働きを深く知ると、「第二の脳」という表現にふさわしい働きぶりに感動さえ覚えます。
 
たとえば、腸にはタンパク質や脂肪、デンプン質やさまざまな成分の食べ物が同時に入ってきますが、腸はその成分を瞬時に見分け、消化吸収に必要なエンザイムの質と量を各臓器に伝達します。
 
同時に、体にとって害があるものが入ってくれば、免疫システムに伝達し、下痢を起こさせ毒素を体外へと排泄させます。
こうしたすばやい見極めと対処は、腸自身がその場で考え、判断を下し、他の臓器や免疫システムに指令を出していることを示しています。
 
近年アメリカでは、腸が「第二の脳」であることを示すさらに共鳴深い研究成果も報告されています。
 
その研究発表を行ったのは、アメリカの神経生物学者マイケル・D・ガーション医学博士。
博士は脳に存在している神経伝達物資中「セロトニン」が腸にも存在していることを発見し、さらに研究を進めた結果、なんと体内の全セロトニンの実に95%が腸で作られていることをつきとめたのです。
 
彼は自らの発見に対して、その著書「セカンドブレイン――腸にも脳がある!」(古川奈々子訳、小学館)の中で、次のような言葉で驚きを述べています。
 
「とても信じられないことかもしれないが、あの醜い腸は心臓よりもずっと賢く、豊かな「感情」を持っているのである。
脳や脊髄からの指令がなくとも反射を起こさせる内在性神経系を持っているの臓器は腸だけなのだ。
進化はうまい工夫をした。
われわれの祖先がアメバー状の原始的生物から進化して脊椎を獲得したとき、頭蓋と腸の両方にそれぞれ別の感情を持つ脳を発達させたのである」
 
「腸」が第二の脳であることは、体を無意識かで統制している「自律神経」の働きからも読み解くことができます。
 
自律神経には、交感神経と副交感神経という二種類があり、交感神経は緊張・興奮状態にあるときに優位に働き、副交感神経は逆にリラックスしているときに優位に働きます。
 
たとえば、運動するときや恐怖を感じたときに心臓の働きが活発になるのは交感神経の働きですし、リラックスしているときや子供が眠くなったときなどに手が暖かくなるのは、副交感神経が優位になり、毛細血管が拡張するからです。
 
こうした自律神経と内臓の働きの関係を具体的に示すと、次のようになります。
 
【交感神経優位】       【副交感神経優位】
上昇     ←  血圧  →下降
拡張     ←  気道  →収縮
促進     ←  心拍  →緩徐
弛緩     ←  胃   →収縮
善導抑制  ←  腸   →善導促進
 
ここで興味深いのは、交感神経優位では血圧、気道、心拍などの動きが活発になるのに対し、胃腸だけは副交感神経優位のときに動きが活発になるということです。
 
私たちが食事をしておなかがいっぱいになると眠気を感じますが、これは消化を促進するために自立神経の副交感神経が優位に変わるからなのです。
 
先ほど脳死に至ると心肺機能は停止するが胃腸の働きが停止しないと述べましたが、交感神経と副交感神経それぞれの支配下で活発になる臓器は、じつは脳支配、腸支配の構図と同じです。
 
つまり、心臓や呼吸器などの交感神経優位のときに働きが活発になる臓器は、脳の支配下にあり、副交感神経優位のときに活発になる腸は、脳ではなく、腸の支配下にあるということです。
 
日本の免疫学の権威である、新潟大学医学部の安保徹教授は、
「交感神経優位のときには白血球の中の顆粒球が活発になり、副交感神経優位のときは同じ白血球でもリンパ球が活発になる」
ということを発見されましたが、リンパ球の60〜70%が腸内にあることも、リンパ球が副交感神経優位において活発になることと考え合わせれば納得がいきます。
 
私たちの体は、交感神経優位と副交感神経優位の状態が交互に繰り返すことによってバランスを取っています。
そのため交感神経優位の時間が長すぎても、副交感神経優位の時間が長すぎても、健康は損なわれます。
 
では、交感神経と副交感神経のバランスは何によって保たれているのでしょう。
それは一言で言えば、「自然の摂理に則した規則正しい生活」です。
 
太陽が昇ったら起きて活動し、食事をとったら少し体を休め、日が沈んだらぐっすりと眠る。
人間は太古から何万年も、こうした自然のリズムに即した生活を送ってきました。
臓器のさまざまな機能も免疫システムも、その長い歴史の中で培われてきたものです。
 
しかし現代人の多くは、自然のリズムを無視した生活を送っています。
不規則な食事、不規則な睡眠、運動のしすぎや不足といった偏り、そして過度なストレス。
これらはすべて自然のリズムを無視した行為です。
 
現代人が自律神経のバランスを崩す最大の要因はそこにあります。
私たち人間は、自分たちが自然の一部であることをもう一度思い起こす必要があると思います。
自然の摂理を無視したところに健康はありません。
 
ですから、私の提唱するエンザイム・セラピー「七つの健康法」も、その基本は「自然のリズムに則した規則正しい生活」を心がけることにあることを、まず頭に入れておいていただきたいと思います。
 
 
●遺伝子には「命の歴史」が詰まっている
 
私たちの体は60兆個の細胞と無数の常在菌からなる、膨大な数の「命の集合体」です。
そしてその命の一つひとつが「遺伝子」という命の設計図を持っています。
 
命の設計図には、その生命が代々受け継いできた「命の歴史」が詰まっています。
私たちの遺伝子で言えば、地球上に始めて生まれた単細胞生物の記憶から始まり、多細胞へと進化し、さらに魚のような海中生物、それが陸へ上がり、哺乳類となり、猿のような高等動物へ進化し、人間に至るという何十億年もの「命の歴史」が詰まっているのです。
 
たった一つの受精卵が、お母さんのおなかの中で、細胞分裂を重ねながら人間の赤ちゃんへと変化していく様子は、この「命の歴史」を再現しているともいわれていますが、再現できるのはそれだけの情報を遺伝子が持っているからです。
 
遺伝子のもつ情報は計り知れないほど莫大なのです。
 
人間が生きていくうえで必要な情報はすべて遺伝子がもっているといっても過言ではありません。
細胞内でエンザイムを生成することができるのも、必要なエンザイムの「作り方」が遺伝子の中に情報として入っているからです。
 
しかし、日本の遺伝子研究の権威である筑波大学の村上和雄名養教授によると、私たちその莫大な遺伝子情報の中の、5〜10%というほんのわずかしか使っていないといいます。
 
遺伝子情報は、DNAの塩基配列として細胞の核の中にある染色体の中に存在しています。
アデニン(A)、チミン(T)、シトシン(C)、グアニン(G)という4種類の塩基と呼ばれる化学物質の配列によって構成されているDNAは、二重螺旋構造になっており、各塩基は、「AとT」「CとG」という組み合わせで結合しています。
 
この対になっている1組を「塩基対」といいますが、この塩基対の配列こそが遺伝情報、つまり命の設計図なのです。
よく人の遺伝子は30億個あるといわれますが、それはこの塩基対が30億個あるということです。
 
コンピューターが情報すべてを「0」と「1」の配列で記憶していることはよく知られていますが、この遺伝子情報も、4種類の塩基の並び方によって情報が異なります。
塩基対が30億個もあるということは、4種類の組み合わせでまさに無限といってもいいほどの組み合わせが考えられます。
 
だからこれほどたくさんの人間がいても、たとえ親子兄弟であっても、まったく同じ遺伝子情報を持った人は、一卵性双生児以外には存在しないのです。
 
私たちの体を構成している約60兆個の細胞は、すべて同じ遺伝子を持っています。
遺伝子が同じということは、持っている情報もまったく同じだということです。
でも、実際に体を見ると、骨や筋肉、皮膚、爪、髪の毛など、部位によってまったく違った個性を発現しています。
 
なぜ同じ情報を持った細胞が異なる個性を見せるのでしょう。
 
これは、先の村上教授の言葉を借りるなら、「爪の細胞は、爪になる遺伝子のスイッチだけがONになっており、それ以外の遺伝子のスイッチはほとんどOFFになっている」からです。
 
さらに村上教授は、こうした「遺伝子のON/OFF」機能は、一生を通じて固定されたものではなく、さまざまな環境の変化や心の持ち方によって変わってくるといいます。
 
ここで知っていただきたいのは、そうした遺伝子のスイッチの切り替えにも、エンザイムが使われているということです。
 
遺伝子とエンザイムの関係は、じつは密接にしてちょっと複雑です。
遺伝子もエンザイムも、まだはっきりとわかっていない部分が多いのですが、エンザイムの作り方を情報としてもっているのは遺伝子だということはわかっています。
ところが、その遺伝子のもっている情報を読み出すためには、エンザイムが必要なのです。
これはまるで「ニワトリが先かタマゴが先か」です。
 
遺伝子に関しては、すでに2003年にヒトゲムノの解読が終了。
現在はそれをもとに、3万から4万もあると推定されている遺伝子の確定作業が進められています。
それでも、機能がはっきりと認められた部分は、全体の2〜3%程度。
残りのおよそ97%は、どんな機能を持っているのか、はっきりとは解明されていないのです。
 
あまりの少なさに驚かれたかもしれませんが、じつは、エンザイムの働きについての解明度合いも同じようなものです。
 
私たちが生きていくうえで必要なエンザイムの種類は、3000から5000種といわれていますが、そのほとんどが何をしているのか解明できていないのです。
しかもこれは人間に関してだけです。
 
生物はすべてエンザイムを持っていますから、地球上の生物(微生物を含む)が有しているものまで考えると、いったいどれだけの種類のエンザイムこの世の存在しているかかさえわかっていません。
 
もしかしたら、腸内細菌が作り出すエンザイムが、私たちの遺伝子のスイッチを切り替えていたり、遺伝子を読み出すのに役立っているのかもしれないのです。
 
このように遺伝子もエンザイムもまだまだ未知の部分は多いのですが、エンザイムを作り出すには遺伝子の情報が必要であり、遺伝子から情報を引き出すためにはエンザイムが必要であり、遺伝子のスイッチを切り替えるのにもエンザイムが使われているということを、ここでは知っておいていただきたいと思います。
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

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池田 優

 

 

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