山ちゃんの食べもの考

 

 

その201
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【57】  『食は生命なり』と「新谷弘実」 その24
新谷弘実著
『病気にならない生き方』 2 実践編 より その5
 
 
第2章 エンザイムの暗号を読み解く の2
 
●遺伝子・エンザイム・微生物の三角関係
 
これまで「胃腸」とひとくくりで述べてきましたが、その働きは胃、小腸、大腸といった部位によってかなり違います。
 
胃のもっとも大きな働きは「消化」です。
胃は、胃酸という強酸の液体を分泌し、入ってきた食べ物を溶かすとともに、タンパク質分解酵素ペプシンを出して、消化吸収しやすい形に分解していきます。
胃ではこうした消化が行われるだけで、まだ吸収は行われません。
 
ちなみに、強い酸性でタンパク質分解酵素に満ちていながら胃そのものが消化されないのは、厚い胃粘膜によって内部がコーティングされているからです。
 
だから、萎縮性胃炎などで胃粘膜が薄くなってしまうと、このバリア機能が損なわれ、胃自身が自分自身の消化作用や他の化学物質によって損傷し、胃潰瘍や胃のポリープ、胃ガンへと進行してしまうのです。
 
吸収が行われるのは、続く小腸においてです。小腸では腸管からさらにさまざまな物質に対する消化液が分泌され、食べものは腸壁から吸収できる大きさにまで分解され吸収されます。
 
ここでとても面白いのは、胃は強酸性ですが、「腸」の内部は弱アルカリ性だということです。
 
この強酸性から弱アルカリ性への転換は、小腸の上部、十二指腸の中に膵液が分泌されることによって行われます。
胃から十二指腸に食べものが流れ込んだ瞬間、酸性を中和するために強アルカリの膵液が流れ込み、中和されるというわけです。
 
これ以降腸内は弱アルカリ性となります。
ここで膵液が不足し、うまく中和されないと、腸の粘膜が酸に侵され潰瘍が生じてしまいます。
 
腸が弱アルカリ性なのは、腸で働く消化酵素は一定のアルカリ濃度で活性化するようになっているからです。体が酸性に傾くといろいろとトラブルが起きるのは、ひとつにはこの小腸の消化酵素がうまく働けなくなることもあるのです。
 
小腸の主な働きは「消化と吸収」です。
消化は消化酵素によって行われることがわかりましたが、では吸収はどのようにして行われるのでしょう。
 
吸収は小腸の腸壁を埋め尽くす小さな突起「絨毛」部分で行われます。
絨毛は高さ1ミリ程度の突起です。
その小さな突起が、まさに絨毯の毛のようにみっちりと腸壁を埋め尽くしています。
さらに、その絨毛の裏側には、「微絨毛」と呼ばれるさらに小さな突起があります。
吸収はこの小さな微絨毛を通して行われるのです。
 
この絨毛と微絨毛によって小腸内部の表面積は約600倍にも拡大されます。
よく腸をすべて広げるとテニスコートの広さになるといいますが、それはこの絨毛・微絨毛まですべてを広げたときのことをいっているのです。
 
微絨毛には毛細血管とリンパ管が分布しており、ブドウ糖やアミノ酸は毛細血管から、脂肪酸・グリセリンはリンパ管から吸収され、体中に送られていきます。
そして、消化に必要な酵素を出したり、時には体によくないものをすばやく排泄させるために腐敗を進めたりしているのです。
 
胃から腸にものが入ってきたことを膵臓にどのようにして知らせるのか。
膵臓は中和できる膵液の量をどのようにして知るのか。
渾然一体として入ってくるさまざまな物質を分解するのに必要なエンザイム(消化酵素)をどのようにして見極め分泌しているんか。
 
じつはこうした複雑な腸の作業がどのようなメカニズムで行われているのか、まだはっきりとしたことはわかっていませんが、私は、こうした複雑な作業を可能にしているのは、「細胞と微生物のコミュニケーション」なのではないかと考えています。
 
腸の中の様子は、腸壁細胞より、腸の中に住んでいる腸内細菌のほうがよくわかります。
腸の内容物とじかに接し、消化のためのエンザイムを出しているのも腸内細菌たちです。
 
もちろん腸壁の細胞からもエンザイムは出ていますが、腸壁がどのようなエンザイムをどれだけ出せばいいのかは、腸内細菌の状態によって大きく異なります。
また、ボディ・エンザイム(体内酵素)の保有量によっても、そのときの体調によっても、体細胞から分泌できるエンザイムの量は異なります。
 
だからこそ、腸内細菌と体細胞のコミュニケーション(情報交換)が必要であり、実際それが的確に行われているという事実が、そこでコミュニケーションが行われている証拠だといえるのではないでしょうか。
 
腸内細菌と体細胞は互いに自分たちの情報を出し合い、コミュニケーションを重ね、そのときの状況にもっともふさわしいエンザイムの出し方をきめ、その情報を互いの細胞の遺伝子に送ることによってエンザイムを作っているということです。
 
こうしたコミュニケーションは、単に消化吸収においてだけ行われているわけではありません。
腸が最大の免疫器官であることから考えても、免疫システムをコントロールしているのも、こうした腸内細菌と体細胞のコミュニケーションだと考えられます。
 
ここで思い出していただきたいのが、私たちの体のさまざまな部分に微生物が棲みついているということです。
皮膚にも鼻口腔内にも、膣にも胃腸にも、私たちの体の外界と接する部分にはすべて微生物が棲みついています。
 
じつは、これらの微生物たちが、最前線での情報収集を行ってくれているのではないでしょうか。
そして、その集めた情報を近くの細胞に送り、細胞からは血液の「流れ」に乗って、免疫システムの中枢である「腸」に情報が送られ、そこからまた全身に指示が送られていることで、健康が維持されていると、私は考えているのです。
 
腸は栄養だけではなく、免疫に関する情報の吸収と全身への再分配も行っているということです。
 
つまり、遺伝子・エンザイム・微生物の間で交わされるこの「トライアングル・コミュニケーション」こそが、私たちの健康をつかさどっているもっとも根幹の部分ではないかと考えられるのです。
 
 
●『5つの流れ』と「7つの健康法」
 
遺伝子・エンザイム・微生物のコミュニケーションがスムーズに行われる体内環境を整えること、これこそが私の行うエンザイム・セラピーの目的です。
 
しかし、先にも述べましたが、胃腸は副交感神経という自律神経の支配下にあるので、わたしたちが意識的にその動きに関与することはできません。
 
では、どうすればいいのでしょう。
トライアングル・コミュニケーションがスムーズに行われるためには、情報を運ぶ「体内の水の流れ」がよいことが絶対条件です。
 
その水の流れとは、「血液・リンパ」「胃腸」「尿」「呼吸」の4つです。
「呼吸が水の流れ?」と疑問に思われるかもしれませんが、呼吸によって取り込まれた酸素は、血液によって全身に運ばれるので、ここでは水の流れと考えます。
 
これらの流れがよくなれば、放っておいても、トライアングル・コミュニケーションはスムーズに行われます。
 
では、どうすれば、体内の水の流れをよくすることができるのでしょう。
まず血液・リンパの流れをよくするために重要なのは、食事と水の飲み方です。
 
よく血液をサラサラにする食べものとか、血液をドロドロにする食べ物ということが言われますが、実際、何をどのくらい食べるかによって、血液の流れは大きく変わってきます。
 
リンパというのは、血液を上水道にたとえるなら、下水道のようなものなので、血液の流れがよくなれば、自然とリンパの流れもある程度よくなっていきます。
 
しかし、血液の流れとリンパの流れのもっとも大きな違いは、血液が心臓というポンプによって全身に送られているのに対し、リンパには心臓のようなポンプの役目をするものがないということです。
 
リンパの流れを担っているのは、筋肉の伸縮です。
よく長時間同じ体勢でいると手足に「むくみ」が起きますが、これは「動かない=筋肉の伸縮がない」ため、リンパがうまく流れないからなのです。
ですから、適度な運動をすることが、リンパの流れをよくするためにはとても大切です。
 
食事とともに血液・リンパの流れを大きく左右するのが、水の質、そして摂取量と取る方です。
水はのどが渇いたときに飲めばそれでいいと思っている人も多いのですが、それは大きな間違いです。
 
のどが渇くというのは、体内の水分量が足りないことを訴える緊急警報なので、のどが渇いてから飲むのではじつは遅いのです。
特に高齢者は体内の水分保有量が少なくなりがちなので、決まった時間に決まった量の水を飲むように心がけるなど、意識して水分を摂取することが大切です。
 
胃腸の流れをよくするためにも、食事と水はとても重要ですが、胃腸の場合は、同時によい排泄を心がけることが重要です。
腸は消化・吸収を行う機関であるとともに、体内の毒素をまとめて排泄する働きも担っているからです。
 
便とともに、不要なものを排泄するもうひとつの流れが「尿」ですが、よい水分の摂取と正しい食事は尿の流れをよくするものでもあります。
健康な人の尿の量は、1日あたり約1.5リットルといわれています。
 
尿のほかにも汗と便として排泄される水分があることを考えると、やはり毎日1.5リットル〜2リットル程度の水分摂取は必要です。
 
さらに、不規則な生活を送っている現代人にとって、胃腸の流れを整えるために忘れてはいけないのが、正しい呼吸と適度な休息・睡眠です。
 
呼吸は自律神経の支配下にある臓器に対し、意識的にコントロールできる唯一の方法です。
私たちが眠っている間でも呼吸が止まらないのは、呼吸器が自律神経の支配下にあるからですが、呼吸だけは、止めたり、深呼吸したりと意識的に調節することができます。
 
先ほど気道は交感神経優位で拡張し、副交感神経優位で収縮すると述べましたが、これは逆もまた真なりで、腹式呼吸を行い気道の収縮を図れば、交感神経優位の自律神経を副交感神経優位に切り替えることができるのです。
 
ドキドキしたときや、神経が高ぶって興奮しているときに、腹式呼吸をすると心が落ち着いてくるのは、交感神経優位からリラックス神経である副交感神経に変わるからなのです。
 
ですから、正しい呼吸は、どうしても交感神経優位になりやすい現代人にとって、胃腸の働きをよくし、免疫力をアップすることができるとても有効な方法なのです。
 
さらに、この4つの「水の流れ」のどれにも有効に働きかけるものが、笑いと幸福なんです。メンタルなものが肉体に大きな影響を与えることはすでに広く知られています。
最近ではガン治療に「笑い」を盛り込んでいる病院も見られるほどです。
 
しかし、笑いや幸福感が免疫力を上げ、病気治療に有効であるという事実がわかっても、そのメカニズムはまだわかっていません。
 
私はこうしたメンタルなものが体に影響を与える媒体として、「気の流れ」を考えています。
トライアングル・コミュニケーションをよくする5つの流れとか、先の4つの「水の流れ」にこの「気に流れ」を加えたものです。
 
「気」の科学的存在証明はなされていませんが、元気、勇気、やる気など、私たち日本人は「気」が存在していることをずっと以前から実感しています。
もともと病気という言葉自体が「気が病んだ状態」を意味しているくらいです。
 
 
説明が長くなったので、ここで少し整理しておきましょう。
まず私たちの健康を保つための指令塔となっているのは、遺伝子とエンザイムと微生物の間で行われている「トライアングル・コミュニケーション」です。
 
そして、そのトライアングル・コミュニケーションがスムーズに行われるためには、「血液・リンパ」「胃腸」「尿」「呼吸」、そして「気」という「5つの流れ」がスムーズに行はれることが必要不可欠です。
 
私が集めた臨床データによると、トライアングル・コミュニケーションと5つの流れは相互に影響しあう関係にあることがわかります。
 
トライアングル・コミュニケーションがよければ5つの流れもよく、5つの流れがよければ、トライアングル・コミュニケーションもスムーズに行われていつということです。
 
私たちは意識的にトライアングル・コミュニケーションに関与することはできません。そこで考えたのが、5つの流れをよくすることです。
 
では5つの流れは何の影響を受け、どうすればよくなるのでしょう。
それを臨床データをもとに整理していったのが、本書で紹介する「7つの健康法」なのです。
 
 
【7つの健康法]
1、正しい食事――
胃腸の流れをよくする・
2、よい水――
全身の体液の流れをよくする。
特に血液・リンパ、尿の流れをよくする。
3、正しい排泄――
胃腸、尿の流れをよくすることで、血液・リンパの流れをよくする。
4、正しい呼吸――
呼吸の流れをよくすることで、酸素を運ぶ血液の流れも整える。
自律神経のバランスを整える
5、適度な運動――
血液・リンパの流れと呼吸の流れをよくする。
6、上手な休息・睡眠――
気の流れ、胃腸の流れを整える。
7、笑いと幸福感――
気の流れをよくし、5つの流れすべてによい影響を与える。
 
つまり、この「7つの健康法」を実践すれば、「5つの流れ」がよくなることによって、トライアングル・コミュニケーションがスムーズにいき、その結果、健康が維持されるということです。
 
これが私の進める「新谷式食事健康法」であり、「エンザイム・セラピー」の理論なのです。
私たちの体は、すべてつながっています。
胃腸に悪いことは全身に悪いことと本章の最初で述べましたが、同じように体の1カ所によいことは、全身によい影響を及ぼすことができるのです。
 
正しい食事は胃相・腸相をよくするだけでなく、エンザイムを増やすことのつながります。
よい水を飲むことは、全身の細胞をみずみずしく元気にするだけでなく、トライアングル・コミュニケーションをスムーズにすることにつながります。
 
適度な運動は体を流れる水の流れをよくし、正しい排泄は、体に悪影響を及ぼすものをすばやく体外に排出してくれるので、エンザイムの節約に役立ちます。
 
正しい呼吸はエネルギー代謝に必要な酸素を取り込むとともに、体内リズムと自律神経のバランスを整えます。
 
上手な睡眠と休息は、エンザイムの消耗を防ぐと同時に生成を促します。
笑いと幸福感は、ストレスを軽減させるとともに、体内の気の流れをよくし、エンザイムを活性化させます。
 
こうしたよい循環は、より大きな循環の中で互いに影響しあっています。
食事だけよくするよりは食事と水、食事と水だけよりも運動も一緒にすればなおよくなるということです。
 
そして、それらをすべて実践したとき、あなたの体はその能力を最大限に発揮することができるようになるのです。
 
「人間の体は天寿を全うするようにできている」
「7つの健康法」を実践していただいたとき、きっと皆さんにもこの言葉を実感していただけるのではないかと思っています。
 
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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