山ちゃんの食べもの考

 

 

その240
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【97】
 
日野原重明  劉影 著   青春出版刊
『病気なら15の食習慣』
楽しく生きる長寿の秘訣
  より その1
 
 
● まえがき
 
老年医学という言葉をご存知でしょうか。
老化現象を中心に、老年期の疾患や症状の治療法を研究する学問です。
私は、この学問に65歳ぐらいから興味を持ち始めました。
すると、老いていく自分を観察するのがおもしろくてたまらなくなりました。
 
自分の老化を認めるなんてイヤだという人もいるかもしれません。
それは、冷静に自分と向き合っていないからです。
愛情をおって見つめようとしないからです。
どんな運動がいいのか、何を食べたらよいのだろうかと、仮説を立てて、自らの身体で実験し、思うような結果が得られたときは楽しいものです。
 
また、96歳になった私の口から、時々思いがけない言葉が飛び出すのも愉快です。
先日、テレビの取材中に出た言葉はこうでした。
「バイキングで3000円払って、4000円分食べようとする人は長生きしませんよ」
なんと適切なたとえでしょう。
説得力があると我ながら感心しました。
 
老人の頭の中には、こうした知恵ある言葉がぎゅっと詰まっているものなのです。
そういうものを引き出してきて、若い人たちに伝えることがあるのではないか、こう思ったときに浮かんだテーマが“食”でした。
糖尿病や心臓疾患、がんなど、生活習慣病と呼ばれる病には、悪しき生活習慣が起因します。
 
特に食習慣の影響は大きく、食習慣を変えれば、かなり高い確率で症状が改善されたり、また進行を遅らせたりすることもできます。
 
私たちが次世代に残すべきものは、長い人生から得た生活の知恵、そして良い習慣ではないか・・・・・・。
 
この本の誕生には、こうした経緯がありました。
私の習慣の中には、個人的なものもありますし、若者にはそぐわない面もあります。
そこで、東洋医学がご専門の劉影先生に、養生医学の立場から解説を付け加えていただいたことにより、若い人から高齢者まで、年齢を問わずに実践できるようになっています。
 
「私は今まで出会った全てのものの一部である」とテニスンは言います。
私もこれまで、多くの人格者、多くの良書とめぐり逢いました。
私の著書に、よく先人達の言葉が登場しますが、それらは、私が若いときに読んだ本に見つけた言葉です。
何十年も心の中で生き続けているのです。
 
皆さんにとって、この本が素敵な出会いの1つになりますように。
食べることは、生きること。
もしあなたが楽しい生き方を見つけることができたら、私は、自分の中から飛び出す言葉を反芻し、今日からまた、新たな気持ちで、老人学の研究に励むことにします。
 
2008年1月                           日野原重明
 
 
 
習慣1“1日3食”の間違い
健康のために食習慣に気をつけるのは大切ですが、こだわり過ぎは考えもの。
1日3回、食事をとらなければと必死になっている人を見ると、かえって身体に悪いようにも思います。
忙しいときは抜いてもかまいません。
一人一人性格が違うように、身体もライフスタイルも違いますから、自分に合った食習慣を研究、実践してみましょう。
 
 
 
● 食への関心が高まる時代
 
――良い食習慣が心と体を育む。
これは講演活動などを通じ、私が根気よく語り続けてきたことです。
最近は、その中でも食習慣について尋ねられることが増えたように思います。
 
平均寿命をとうに過ぎても現役で、忙しく仕事をしている点が注目され、「先生の食習慣には秘密がありそうですね」という質問になるのです。
 
次々と起こるサプリメントブーム、また、「食育」といった言葉が注目される時代においては、ごく自然のことといえることでしょう。
多くの著書に、良い食習慣を身につけることの重要性、それを若い世代に受け継いでほしいと綴っているのも、こうした質問を受ける理由と考えられます。
 
さて、「何を食べているか」という質問に私がどう答えるか。それは必ずしもインタビュアーを満足させる内容ではないと思います。
 
まず朝食は、野菜や果物のジュースにオリーブ油茶さじ1杯を注いだものと、コップ1敗の牛乳、それと牛乳入りの温かいコーヒーを飲むだけです。
しかもキッチンに立ったまま。
朝は忙しく、ドリンク1杯さえ、味わって飲んでいる時間がありません。
 
けれどもそれ以上に取れないのがランチタイムです。
日によっては来客が絶えませんし、ひっきりなしに電話も鳴ります。
書類や本の隙間に、ちょこんと置かれた1杯の牛乳と2〜3枚のクッキー。
それが、私の昼食とわかる訪問者は、さて何人いるでしょうか。
ところが、そのクッキーすら、思うように食べられない日もあるのです。
 
ここまで話すと、たいていのインタビュアーは、困った顔になります。
食生活の重要性を語る、本人の食生活がこれでは話にならないというわけです。
時間がたち、かわき気味のクッキーを指して質問を続けます。
「このクッキーには、先生のこだわりがあるんですか?」
「別にありませんよ。どんなクッキーでもいいんです。ただ、甘みは少ないものにしていますけどね」
 
おまけに、「お腹がすくのは仕事に集中していないからです。私は、熱中すると空腹なんて感じません。執筆に夢中で、気付いたら食事をするのを忘れていたなんてことはしょっちゅうですよ」などと、つけ加えるものですから、その表情は、余計に暗くなります。
 
 
● 1日のトータルで考えれば大丈夫
 
けれども、肝心な話はこれからです。
朝食や昼食の欠点をカバーしようと、夕食のバランスには気を遣います。
 
野菜を中心に、魚や肉などの動物性たんぱく質もしっかり摂取。
お茶碗に軽く1膳ほどのご飯もよく味わって、ゆっくり食事を楽しむのです。
もっとも、週の半分は会食やパーティーがあるのでこうはいきませんが、それでもなるべくバランスを考えて、昼間、摂取できなかった野菜や果物、タンパク質などを意識的に摂るようにしています。
 
私としては、こうして夕食に気を配ることで、十分に栄養を補っているつもりですが、この食習慣を良しとしない人は多いかもしれません。
そういう人たちは、バランスの取れた食事を、1日3回、きちんと食べることが基本だといいます。
 
確かに成長期の人間にとっては、1日3回、栄養バランスのよい食事をとることは不可欠です。
最近では朝食抜きの子供が増えているようですが、エネルギー不足では、脳も身体もうまく作動しませんし、成長面でも支障をきたします。
 
けれども、成長期を過ぎた人は違います。
毎日、自分に必要なエネルギーを補給すればいいのです。1
日中身体を動かしている人やスポーツ選手の場合は、朝、昼、晩と、いずれもカロリーがあって、バランスの良い食事が必要でしょうが、デスクワークが中心の場合は、私が夕食に重点を置いているように、1日の中でバランスをとるようにすれば十分だと思います。
 
 
● “規則正しく”より“身体に合わせて”
 
朝食を抜くと太りやすい身体になると信じ込んでいる人がいますが、そういう研究報告はされていないと思います。
 
発育期の子どもたちの調査では、1日3回食事を取らないと身体に悪いという報告はありますが、仕事に追われる40代、50代が、朝食抜きで出かけるのは、今の日本の社会においてはむしろ普通で、朝からゆっくり食事ができるという人のほうが珍しいでしょう。
責任ある仕事を任されている人ほど、朝は忙しいものです。
 
そんな状況を気に病むことも、また、出勤途中に無理に何かを食べようとする必要もありません。
朝食ぐらい抜いたって大丈夫。
 
もしかすると、「朝食をしっかり食べるより、抜くくらいのほうが調子いい」と感じることがあるかもしれません。
実際、先夜の過食を調整するには、朝食を抜くほうが身体に良い場合もあります。
 
時間短縮のため、ろくにかまないで朝食を食べたり、また、熱いものを急いで胃に流し込んだりしている人もいますが、そのほうが、朝食抜きより、胃に負担をかけているといえるでしょう。
 
大切なのは食事の回数ではなく、”質“です。
栄養素は偏っていないか、その量は自分の生活に見合ったものかどうかという点で判断してください。
それも1食ごとではなく、1日、もしくは2日単位でトータルに考えれば問題はないでしょう。
 
現代人が食生活で気をつけるべきことは、糖質や脂質、塩分などの過剰摂取です。
1食抜いたからといって、エネルギー不足になることはまずありません。
 
私の場合、回数にすれば1日3回ということになりますが、朝、昼は食事らしい食事とはいえません。
それでも食事を抜く場合があります。
 
学会などで海外に出たときは、どうしてもカロリーオーバーになってしまいますから、そういう時は、帰りに機内食には手をつけないとか、帰国後しばらくは、昼のクッキーを抜くなどして、バランスを保とうとします。
食事を抜いたほうが体調もよく、爽快にさえ感じることがあります。
 
96歳でも元気なのは、規則正しく食べているからではなく、身体に合わせて臨機応変に食べているからかもしれません。
 
 
劉影の養生ガイド
食事は回数よりバランス
 
● 年齢とともに変化する食習慣
 
中国に古くから伝わることわざに「福は口から、病も口から」というものがあります。
良い食事は心身を健康にして幸せをもたらすが、それが乱れると病になりかねない、ということを示しています。
つまり、食事には、健康を左右する力があるということです。
 
実は、日野原先生の食生活を聞いたとき、私も驚いたうちの一人でした。
仕事に熱中していたら、お腹がすかないなんてとんでもありません。
私は、仕事に集中すればするほど、脳が疲労して空腹を感じます。
そんなときは甘いお菓子をつまんだり、チョコレートを口に含んだりします。
 
いったい、先生の身体は、どうなっているのでしょう。
以前、中国で、ほんの少量食べるだけで生きられるという人に出会ったことがあり、彼は「大自然に気からエネルギーを得ているので空腹をを感じない」とまるで仙人のようなことを言っていました。
 
日野原先生にも、こんな超人的な雰囲気を感じることがあります。
やっぱり、これは90歳まで生きて見なければわからないことなのでしょうか・・・・・・。
 
けれども、食事の回数に関しては、私も日野原先生と同意見。
成長期までは3度の食事をバランスよく、しっかりとる必要がありますが、成長期を過ぎたら自分のライフスタイルに合わせて、食習慣を変えてもかまわないと思います。
若いときは過食気味の人も、食欲は年齢とともに落ちますから、変えざるを得ないという面も出てくるでしょう。
 
例えば私の先輩に、残った料理を必ず最後に片付ける人がいました。
大勢で中華料理を食べれば、料理が残ることもあります。
しかし、彼はそれを平らげないときがすまないのです。
日本では、料理を残さないのがよき習慣とされていますが、中国では違います。
 
特に食事会の際、招かれたら客が調理を残さず食べたら、招いた方は”今日の料理は十分ではなかった”と思います。
余らないということは、料理が足りなかったことを意味するのです。
国が違えば、食習慣もこれだけ違うというわけで、ですから、私などは、料理を残すことにあまり抵抗がありませんでした。
 
そして、ある日の食事会でのこと、お皿にはまだ料理が残っていました。
「先生、どうしたの、今日は残したままでいいのですか?」
すると残念そうな表情で、こんなふうに答えました。
「食べたくてもね、もう入らないんだよ」
私は先輩の過食を心配していましたから、彼のがっかりした表情に同情しつつも、安心したのを覚えています。
 
 
● 意識すべきは回数ではなくバランス
 
食事量が減ってきたときに、注意しなければならないのはバランスです。
若いときは多少食べ過ぎても大丈夫ですし、また、たくさん食べるから、よほどの偏食でないかぎり、偏りもなかったと思います。
 
ところが、量が減ると、とたんに偏りが出るという場合も少なくありません。
好きなものだけで満足になってしまい、ほかのものに箸が伸びないというパターンです。
さっぱりしたものを好む人は、野菜ばかりでたんぱく質不足になったり、脂っこい料理が好くな人は、脂質過多になったりしてしまうということが起こってきます。
 
実は、人間はタイプによって、身体に合う食べものと合わない食べ物があり、東洋医学ではそれを治療にも取り入れています。
 
例えば、アロエやうこんなどは、健康に良い食材として注目され、サプリメントなどにも使われていますが、身体の冷えやすい人が食べると、胃腸の働きを鈍くしてしまうことがあります。
 
最近では、良質の水を飲む健康法を実践する人が多く、ペットボトルを携帯する人をよく見かけます。
代謝のよい人なら、たっぷり水をとっても問題ありませんが、肝機能が弱っていたり、むくみやすい人が多量の水を摂取したりすると、余計に代謝が悪くなってしまいます。
 
また、食材を選ぶにしても、好きなものが必ずしも身体に合うとは限りません。
身体に合わないものを食べ続けると、生活習慣病を発症する可能性が高いということも、ここ20年の研究で明らかになってきました。
 
これを食事の回数と合わせて考えるなら、1日3回食事をとっても、身体に合わない方法を実践していたら、かえって身体を痛めてしまいます。
 
大切なのは、情報や流行に左右されず、自分に合った食材や食べ方を探すこと。
その意味で、日野原先生が実践されているのは、先生の身体やライフスタイルに合った方法なのだと思います。
 
そういえば日野原先生は、自らの身体でさまざまな実験を行っていて、そのつど、「今、上手な転び方の練習をしているんですよ」「身体に負担のかからない寝方について研究しているところです」といっておられました。
そして、答えが得られたときのうれしそうなこと・・・・・・。
日野原先生を見習って、そんなふうに、独自の健康法を見つけるのも楽しいことだと思いませんか?
 
試行錯誤を重ねることで、自らのコンディションを意識するようになり、より健康になっていくのではないかと思います。
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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