山ちゃんの食べもの考

 

 

その255
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【112】
 
生田 哲  著   PHP新書
『食べ物を変えれば脳が変わる』
その1
 
● まえがき
 
最近、ある男性たちからこんな話を聞いた。
 
コンピューターエンジニアの40代の男性は、休暇の旅行で、それまでと違う自分を発見して驚いたという。
普段、彼は食欲がなく、午前中はぼんやりし、夕方になると頭が冴え、仕事の調子が出て深夜に食事をするという夜型の毎日を送っている。
そんな彼が旅行をして、三食きちんととったところ、朝食は美味いし、午前中から頭は冴えたという。
 
もう一人は50代の男性サラリーマン。
血尿が出たため2週間ほど禁酒し、食生活を整えたら、別人かと思うほど頭がすっきりしたという。
 
二人とも、本来の自分の能力がどれだけ高いかを実感したに違いない。
逆に言えば、ふだん、持っている実力をフルに発揮しないまま仕事をしていることも明らかになった。
規則正しい生活と適切な栄養素を摂取すれば、脳は本来のはたらきをするのである。
 
知能や記憶力は頭の良さ、気分は性格によるもので、遺伝子によって決定づけられていると思われがちである。
だが、これは大きな誤りであると思う。
あなたの知能、記憶力、気分はいくつななっても改善できるのである。
 
脳が快適にはたらけば、頭脳明晰となり、知能が高まる。
頭がすっきりし、気分がよくなれば、性格だって明るくなるに違いない。
親切にも社交的にもなるだろう。
 
そのためには、食事を見直すことだ。
わたしたちは口にする食べ物によってできている。
いい方向にも悪い方向にも「食べ物を変えれば脳も変わる」のである。
 
例えば、イギリスにあるスウォンジー大学のデービット・ベント教授のグループは、マルチビタミンとマルチミネラルの摂取によって、子ども達のIQが10ポイントも高まることを報告している。
 
また、白砂糖が知能に悪い影響を与えることもわかっている。
MIT(マサチューセッツ工科大学)アレックス・シャウス教授が子どもたちを白砂糖の消費量別に5群に分けてIQを調べたところ、白砂糖の消費量のいちばん高い群はいちばん低い群よりもIQが25%も低いことが明らかになったのである。
 
コーヒーなしには一日が始まらないという人は多い。
理由を尋ねると、気分がよくなる、元気が出る、目がさめるなどの答えが返ってくる。
だが、これは気のせいで、実は、コーヒー愛好家が一杯のコーヒーを飲むと、のむ以前より気分はよくなるが、コーヒーをまったく飲まない人よりも気分がよくなることはないことが証明されている。
そればかりか、コーヒーの飲みすぎ、すなわちカフェインの過剰な摂取は、脳に悪影響を及ぼすだけでなく、うつや疲労も引き起こすことが判明している。
 
もっと深刻な病気についても触れよう。
先進諸国は長寿社会になったが、長生きすればするほど、アルツハイマー病を発症するリスクも高まる。
 
アメリカではアルツハイマー病患者数は2007年に510万人と報告されている。
わが国では、2008年現在、アルツハイマー病の患者数は140万人と推計されているが、高齢化がすすむにつれ、患者数が急増することが確実と思われる。
 
では、どうすればアルツハイマー病を防げるのだろう。
現在、週に一度でも魚を食べる習慣のある人は、まったく食べない人に比べて、アルツハイマー病の発症リスクを半減できることがわかっている。
 
以上のように、本書では、あなたの脳を最適運転するのに必要な「いい食べ物」、それから、避けるのが望ましい「悪い食べ物」も紹介する。
 
まず、第1章では、頭の良さ、すなわち脳の性能は遺伝によってあらかじめ決まっているのではなく、あなたが毎日口に運ぶものによって左右されることを述べる。
 
次に第2章では、脳を快適運転するのに欠かせない、ブドウ糖、アミノ酸、必須脂肪酸、リン脂質、ビタミン、ミネラルといった6つの栄養素の役割について解説する。
 
第3章では、トランス脂肪酸、タバコ、アルコール、白砂糖、コーヒーなどが脳の快適運転を妨げることを明かす。
 
第4章では、知能や記憶力を高める、集中力を持続させる食べ物を紹介する。
青魚の成分DHA(ドコサヘキサエン酸)が頭の回転を早くし、鶏卵や大豆のフォスファチジルコリンが記憶力を高め、イワシに多く含まれるDMAE(ジメチルアミノエタノール)が脳を活性化するのだ。
 
第5章では、うつを撃退するのに有効な栄養素を紹介する。
ノルアドレナリンの原料であるチロシン、セロトニンの原料であるトリプトファンや5−HTP(5−ヒドロキシトリプトファン)の摂取が気分の向上に役立つことを示す。
 
最後に第6章では、あなたの能を悪くする有害物質と、その解毒法を紹介する。
鉛、水銀、カドミウム、アルミニウムは脳の働きを低下させる。
また、合成着色料が子どもに多動を引き起こすことも述べる。
 
能力開発のために刻苦勉励することも必要か見知れない。
だが、その前にやるべきは、あなたの脳を最適な栄養状態にして快適運転させることである。
しかも、そのための小さな努力は今日から実践できるのである。
 
脳の栄養学の最前線を知り、それを食生活に取り入れればあなたの「脳力」は格段に高まるに違いない。
そうなれば、おのずと充実した日々を送ることができるだろう。
 
2008年9月
生田 哲 (いくた さとし)
 
 
 
第1章 あなたの人生を左右する食べ物 の1
 
● 口にする食べ物であなたの人生が変わる!
 
あなたは、喜びを感じて生きているだろうか。
あなたの気分は安定しているだろうか。
あなたは元気で働いているだろうか。
日々の暮らしを楽しみ、人生を幸せに感じているだろうか。
 
日ごろ、あなたが口にする食べ物によって、その答えは大きく左右される。
こういうと驚かれる人がいるかもしれない。
 
私たちの食べる食べ物は、胃腸で生体触媒の酵素によって栄養素に分解され、腸管から吸収されて血液に溶け込む。
この栄養素が血液によって脳内に運ばれ、姿を変えて脳を作り、身体を作る。
だから、何を食べるか、何を食べないかが、私たちの人生の質を左右する要因になるのである。
 
身体のてっぺんに位置する脳は、主さ約1400gの豆腐のような臓器である。
この脳が働くことによって、心が発生する。
この心を明確に表現したものが言葉であり、言葉を具体化したものが行動である。
すべては脳がはたらくことではじまるのだ。
 
では脳が働くとはどういうことなのだろう。
 
車がガソリンをエンジンで燃焼させて走行するように、脳は食べ物を酵素が分解することで得たエネルギーを消費して活動している。
これが神経ネットワークを形成している。
この神経ネットワークを駆けめぐるのが、伝達物質(神経伝達物質)である。
さまざまな伝達物質が神経ネットワークを伝わって受け渡されることによって、私たちの心が発生する。
 
 
● 大切なのは、
神経細胞同士のコミュニケーション
 
私たちは何かを考えたり、喜んだり、悲しんだり、苦しんだり、痛みを感じたりしながら日常を過ごす。
こんなとき、脳内の神経ネットワークをかけめぐっているのが伝達物質というわけだ。
 
つまり脳が働くとは、ある神経細胞から放出された伝達物質を、別の神経細胞が受け取ることなのである。
 
これを人と人のコミュニケーションにたとえれば、ある神経細胞から伝達物質が放出されるのは「話す」に相当し、放出された伝達物質を別の神経細胞が受け取るのは「聞く」に相当する。
脳が快適に働くには、神経細胞と神経細胞のコミュニケーションが円滑でなければならない。
 
それでは、脳のはたらきをよくするには、どんな栄養素を食べ物から摂取すればいいのだろう。
 
まず、脳のエネルギーとなる糖類、神経細胞をつくる原料であるタンパク質や脂肪、伝達物質をつくるための原料となるアミノ酸が必要だ。
 
だが、これだけでは不十分だ。
糖類をエネルギーに、タンパク質や脂肪を神経細胞に、アミノ酸を伝達物質にモデルチェンジするのは、タンパク質でできた酵素である。
 
酵素がすごい実力の持ち主であることは明らかだが、その酵素にしても、ビタミンやミネラルといった助け(保因子と呼んでいる)がなければ、実力を発揮できない。
 
脳の働きをよくするは食べ物とは、脳にエネルギーを安定的に提供し、神経細胞間のコミュニケーションをよくする食べ物のことである。
反対に、脳の働きを悪くする食べ物とは、脳へのエネルギーの供給を不安定にし、神経細胞間のコミュニケーションを悪くする食べ物のことだ。
 
脳に良い食べ物を積極的に摂取するいっぽうで、脳に悪い食べ物をできるだけ摂取しないように心がけて実践するのが、あなたの脳をフル回転させ、本来の実力を発揮するための本筋であると思う。
そうなれば、冒頭に掲げた問いに、自信を持って「イエス」と答えることができるはずである。
 
 
● 便利になったのに疲れるのはなぜ?
 
21世紀の日本。
ずいぶん豊かになったものである。
生活水準が上がり、数十年前と比べると圧倒的に便利になった。
食べ物だって、安価で美味しいものが、いともたやすく手に入る。
 
ところが、そこに住む私たちは、本当に幸せだろうか。
むしり、疲れ、不安、イライラを感じながら生きているのではないだろうか。
何がいけないのだろう。
 
人はサルから分かれて数百万年が経過した。
この間に、気候や環境が大きく変わり、それに伴い、獲得できる食べ物も激変した。
この変化に適応し進化して生き延びてきたのがヒトである。
 
しかし、一口に適応というけれど、それまで慣れ親しんだ仕事や住環境を捨て、新しい死後田や住環境で生活するのは、大変つらいだけでなく、かなりの時間もかかる。適応は一朝一夕にできるものではないのだ。
 
時間や空間に対する感覚も一変した。
交通や通信が発達したおかげで、かつて1週間かかった仕事が、今なら1日でできる。
かつて1日がかりだった出張先に、今なら1時間で着ける。
遠くの友達と話したいなら、携帯電話をかければよい。
手紙をやり取りしたいのなら、電子メールを書いて10分もたてば返事が来るだろう。
どこか遠くに行きたいなら、飛行機に飛び乗ればよい。
 
このように、仕事や生活のテンポがやたらと速くなった。
私が生まれた1995年当時、わが国の一般家庭には、テレビも電話も自動車も冷蔵庫も普及していなかったことを考えると、変化の大きさと、そのスピードに恐れ入る。
 
 
● 強いストレスに耐えられるか?
 
ヒトが新しい環境に適応するのには長い時間がかかる。
にもかかわらず、これほどの激変が起こったのは、最近の50年間のことである。
百万年単位の人の歴史から見れば、50年間は、まばたきほどの時間でしかない。
 
環境の激変とそのスピードに順応できる人もいるだろうが、このような人は少数派ではないだろうか。
むしろ多くの人は環境の激変とそのスピードを強いストレスとして受け取り、苦労しているようだ。
 
わが国をはじめとする先進諸国で、慢性の疲労、不安、うつ、睡眠障害などが蔓延しているのは、この現われのように思えてならない。
 
WHO(世界保健機構)は、自殺、暴力、うつ病が世界的に増えていることを報告するとともに、21世紀におけるいちばんの健康問題は心の健康である、と指摘している。
 
また、厚生労働省が発表した2005年度の患者調査によると、うつ病(気分障害)による精神科の受信者は年間924,000人、統合失調症者による受信者は年間757,000人で、その他の精神疾患を含めると年間に合計203万人が精神科を受診した。
 
しかも、うつ病を含む気分障害で治療を受けている人は、1996年の433,000人から、2005年には924,000人と10年間で約2倍に急増している。
 
精神科以外の内科や心療内科などを受診する人が圧倒的に多いことをことを考えると、心の病に苦しむ人の実数はこの数倍になるだろう。
うつ病だけに限っても患者数は500万人と見積もられている。
 
睡眠障害の人には睡眠薬、不安やストレスを訴える人には抗不安薬が処方されている。
そして、つらい胸のうちを聞いてもらうために、心理カウンセラーを訪れる人も急増している。
 
また、書店の一角に広がる自己啓発書コーナーや、ヨガや座禅の人気も、強いストレスに苦しむ人が多いことを示している。
 
 
● いちばん変わったのは食べ物
 
最近の50年間で激変したもの。
もう一つ、何かとても大切なものを忘れているのではないだろうか。
実は真っ先にあげねばならないのが、「食べ物」である。
 
事の性質上、統計データはないのだが、私はこう信じている。
私たちの大多数は最適な栄養状態にないため、本来の脳と心の健康、幸福感、心の張りを発揮できないまま、人生を送っているのではないだろうか、と。
 
私たちは、口にする食べ物や飲み物が脳に強い影響を及ぼすことを経験から知っている。
ビールやワインなどのアルコール類を口にすれば、陽気な気分になる。
眠いときにコーヒーや緑茶を飲めば目が覚め、頭がすっきりする。
仕事や勉強で疲れを感じたときに、ケーキやもちなどの甘いおやつを食べれば、元気がでる。
 
その一方で、精神科や心療内科の薬を服用する人のかなりの割合が、実は、本当は薬を必要とせず、あるいは、心理カウンセラーに反応しないのである。
それは、心の病の原因が、薬が不足しているからではないし、辛い胸の内をだれかに聞いてもらえないからでもないからだ。
 
わたしは、心の病の主な原因は、長年にわたる不適切な栄養素の摂取や環境中に存在する毒物によるものであると信じている。
肝心なのは、脳に最適な栄養素を提供していくことなのだ。
 
 
● 脳の栄養素の最適レベルは個人差が大きい
 
しかし、その際的レベルは個人によって大きく異なる。
ふたりの人が同じだけの1日栄養所要量(1日1人あたりの摂取勧告量)を摂取しても、その反応は一定ではない。
ひとりは頭の具合が本調子ではないが、もうひとりは絶好調、ということが現実にありうる。
 
このため、脳を最適に働かせるために必要な、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、必須脂肪酸などの摂取量も個人によって異なることになり、また体質やおかれた環境によっては一日栄養所要量をはるかに超えて摂取量が必要な場合もある。
 
ある人における脳の栄養素の最適レベルは、遺伝子、生まれてから今までの食事、ライフスタイルによって左右される。
 
さらに、ストレスが栄養素を消費する。
例えば、喫煙や花粉症によって、ふだんより多くのビタミンCが消費される。
 
それは、わたし達が慢性的なストレスにさらされるとき、脳や身体が大量のノルアドレナリン、コルチゾール、セロトニンなどの伝達物質やホルモンをつくって、ストレスや気分の上がり下がりに対処するからだ。
 
すると、これらの伝達物質やホルモンの原料となるトリプトファンやチロシンといったアミノ酸が消費されるのは当然であるが、それに加えて、アミノ酸のモデルチェンジの際にビタミンC、ナイアシン、葉酸、ビタミンB6、マグネシウム、マンガン、亜鉛、鉄なども失われる。
だから、ス取れるが多いほど要求される栄養素も増える。
 
わたし達の多くは、脳に最適な栄養素を供給していない。
それは、わたし達の食事が栄養面において最適といいがたいことが一因であるが、ストレスのせいで、これらの伝達物質を作る栄養素の要求量が増えたことにも原因があるのだ。
 
 
● いくつになっても知能は高まる
 
では、最適な栄養素を適量摂取すれば、どうなるのだろう。
 
IQ(知能)は年齢にかかわらず高めることができるといったら驚かれるかもしれない。
ある人はこう主張するだろう。
人の賢さをあらわす知能は、もって生まれた性質であって決して変えられるものではない、と。
すなわち、知能は遺伝で決まっている、と。
 
この主張は部分的には正しいけれど、全体的には誤りである。
 
そもそも知能とは、物事を考え、賢く判断し、決断する能力を意味する。
言い換えるなら、知能とは頭脳の明せきさである。
この知能は生得の知性によるところもあるのだが、それだけでなく、どれだけ物事を迅速に考えることができるか、すなわち、どれだけ頭の回転が速いか、記憶力や集中力をどれだけ長くできるかによっても大きく変わってくる。
 
そして、頭の回転の速さも、記憶力や集中力をどれだけ持続できるかも、最適な栄養素の摂取によって大幅に改善できる。
 
というのも、わたし達がものを考えるとき、脳内では神経ネットワークの配線の組み換えが起こっているのだが、同時に神経ネットワークをかけめぐる伝達物質の種類と量が変化する。
 
私たちが最適の栄養素を摂取するなら、伝達物質も最適の状態になり、脳は最高にはたらく。
だから、いくつになっても、知能を高めることができるのだ。
 
栄養素が知能に大きな影響を及ぼすことを最初に報告したのは、アメリカのクラバ博士のグループである。
今から50年近く前の1960年のことだった。
 
同博士は、血液中のビタミンCレベルが高いほど子どものIQが高いことを発見した。
同博士が351人の子ども達を血液中のビタミンCレベルに応じて2グループに分け、それぞれのIQを測定したところ、高ビタミンCレベルのグループでは113、低ビタミンCレベルのグループでは109であった。
 
このように、脳に最適な栄養を供給すれば、脳は最高にはたらき、あなたの本来の実力が発揮できるのだ。
 
次に、栄養素の摂取によって脳の働きが改善した例を見ていこう。
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

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池田 優

 

 

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