山ちゃんの食べもの考

 

 

その256
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【113】
 
生田 哲  著   PHP新書
『食べ物を変えれば
    脳が変わる』  その2
 
第1章 あなたの人生を左右する食べ物 の2
 
● 子どものIQが10ポイントもアップ!
 
イギリスにあるスウォンジー大学のデービッド・ベント教授のグループは、マルチビタミンとマルチミネラルの摂取によって、子ども達のIQが高まることを報告した。
 
まず、12〜13歳の子どもたち90人を30人ずつ、ランダム(無作為)に、3つのグループに分けた。
1つめのグループは大量のマルチビタミンとマルチミネラルのサプリメントを、2つめのグループには偽薬を摂取してもらい、3つ目のグループにはサプリメントも偽薬も与えなかった。
 
なお、儀薬は薬効成分は含まれていないが、色や形など外見上は本物の薬と区別のつかないデンプンでできている。
偽薬を「砂糖錠」と呼ぶこともある。
 
この治療は、教師側も子ども達もだれが偽薬を摂っているのか知らされていない二重盲検と、被験者をサプリメントと偽薬を摂取するグループに「無作為」に分けるランダム化の条件化のもとで行われた。
 
以下、本書で紹介する治療の大部分は、この条件のもとで行われたものである。
 
治療を始めて8ヶ月後に、子供たちの非言語的IQと言語的IQを測定した。
非言語的IQは感覚的・空間的・創造的・イメージ的な能力であり、脳の潜在能力を調べるものである。
一方、言語的IQは言葉を通して表現される能力である。
 
結果はというと、サプリメントを摂取した子ども達の非言語的IQだけが、約10ポイントも上昇していた。
言語的IQでは差がでなかった。
言語的IQは社会的、環境的な要因に影響を受けやすいが、非言語的IQは別物で、個人の能力をより正確に表すことが知られている。
 
1988年、この結果が「ランセット」という超一流医学誌に発表されたものだから、イギリス、オランダ、アメリカなどの教育界は騒然となった。
論文の真偽を確かめようと、多くの研究者が似たような条件のもとで追実験を行った。
 
ライナス・ポーリング博士や心理学者のハンス・アイゼンク博士といった世界的に名の通った研究者も、相次いで追実験に参加した。
ポーリング博士は、総計615人の子ども達に1日摂取所要量に従って、マルチビタミンやマルチミネラルを与えた。
こうして多くの追実験が行われたが、IQの上昇は平均4.5ポイントにとどまった。
 
やはり、一日摂取所要量では効果はいまいちのようだが、それでも、マルチビタミンやマルチミネラルの摂取によって子どものIQが高まることが実証された。
 
 
● 胎児や幼児の脳を育てるDHA
 
胎児や幼児の脳の発達には必須アミノ酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)が欠かせないのだが、実際には不足気味のことは良く知られている。
 
ならば、もし妊婦と授乳期の母親がDHAを摂取すれば、子どもの脳はこれまでより健やかに発達すると予測できる。
この仮説を治療によって厳密に証明したのが、ノルウェー栄養研究所のイングリッド・へランド博士のグループだ。
 
まず、妊娠18週目の女性590人を2グループに分けた。
Aグループには1日に10mlのタラの肝油(803mgのDHAを含む)を、妊娠中と出産後の3ヶ月間摂取してもらった。
Bグループには同量のコーンオイル〈4747mgのリノール酸を含むが、DHAを含まない〉を同期間摂取してもらった。
また、どちらのグループの子どもも母乳で育てられた。
 
4歳になっった段階で知能を測定したところ、DHAを摂取したグループが、リノール酸を摂取したグループにくらべ、IQが4ポイント高かった。
DHAが胎盤を通って胎児の脳を、そして、母乳を通して乳児の脳の発育を助けることがわかったのだ。
 
 
● 白砂糖の食べすぎは脳に悪い
 
あまり動き回らない日の場合、あなたの食べた糖類の40%を脳が消費する。
だから試験の後にはお腹がすくのである。
 
ブドウ糖の脳への供給が不足すると、疲労、イライラ、めまい、不眠、集中力の欠如、物忘れ、のどの渇きなど、好ましくない症状があらわれる。
だとすると、大量の糖を頻繁に食べれば、脳の働きがよくなるように思える。
だが、実際にはそんなに単純なものではない。
ある種の糖類は他の糖類よりも脳と身体によくないことがわかっている。
 
例えば白砂糖は控えるべきだ。
マサチューセッツ大学のアレックス・シャウス博士は、子どもたちを白砂糖の消費量別に5群に分けてIQを比べたところ、白砂糖の消費量の一番高い群はいちばん低い群よりもIQが25%も低かったことを報告している。
 
それから知的能力を高くするには、脳へのブトウ糖の供給を一定に保たなければならない。
ベントン教授は、血糖値の急激な低下によって、注意力が散漫になったり、記憶力が落ちたり、攻撃的な行動に結びついたりすることを述べている。
 
このことは子どもだけでなく、大人にもそのままあてはある。
しかし、子供のほうが、理由は不明だが、血糖値の上がり下がりに敏感だ。
 
 
● うつを改善するトリプトファン
 
ある種のうつは、脳内にセロトニンという伝達物質が不足することによって発生することがわかっている。
そこで、セロトニンの脳内における利用効率を高めようとするのが最新の抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)だ。
しかし、SSRIを摂取しても、脳内のセロトニンそのものが増えることはない。
 
一方、トリプトファンというアミノ酸を摂取すれば、脳内で酵素の働きによっても出るチェンジが行われ、セロトニンが作られる。
実際に、トリプトファンのサプリメントによる摂取が、気分を向上させることが明らかになっているが、それよりもういちだんセロトニンに近づいた物質はさらに効果的だ。
それが、5−ヒドロ記し摂りプとろファンで、5−HTPと略記されることが多い。
 
スイスにある精神医療大学のウォルター・ポルディンガー教授のグループは、5−HTPが抗うつ薬SSRIよりもうつの改善に効果的であることを報告した。
 
こうして、うつ、不安、不眠について、両者の効果が比べられたが、どの面においても5−HTPがSSRIよりはるかにすぐれ、しかも副作用はなかったのである。
 
 
● 急増するアルツハイマー病
 
多くの人は長生きを望む。
しかし、長生きをすればするほどアルツハイマー病を発症するリスクも高まる。
 
米国アルツハイマー病協会は、同国内におけるアルツハイマー病の患者数は、1975年の50万人、2005年の450万人、2007年の510万人と爆発的に増えていること、2050年には1100万人〜1600万人になるとの見込みを発表した。
 
わが国では、2008年現在、アルツハイマー病の患者数は140万人と推計されているが、高齢化がすすむにつれ、患者数が急増することが確実と思われる。
 
アルツハイマー病患者は物忘れが激しいことや、徘徊することで知られているが、それだけではすまない。
高速道路を逆送したり、介護する家族に暴力を振るうことも多く、人身事故や事件につながることも少なくない。
 
この事態を重く見たアメリカ政府は、アルツハイマー病の予防と治療のための研究に、2005年に910億ドル(約9兆1000億円)もの資金を投入している。
 
アルツハイマー病の発症の引き金は、およそ40個のアミノ酸からなるβーアミロイドという小型タンパク質が、脳内に蓄積されることだとされている。
このβーアミロイドの蓄積は、ほとんどの人で40歳前後から始まり、老化とともに加速するようだ。
 
加齢によってβーアミロイドが蓄積するとして、では、なぜ、その蓄積が特定の人に早くあらわれるのだろう。
それは、その人がアルツハイマー病の危険因子を持っているからだ。
 
 
■ 危険因子、その1
過剰なエネルギー摂取
 
アルツハイマー病の危険因子が解明されつつある。
危険因子、その1は、糖尿病である。
九州大学医学部の清原祐教授のグループが福岡県槽屋郡久山町で、65歳以上の住民800人を対象に血糖値と認知症・アルツハイマー病との関係を調べたところ、糖尿病とその予備軍は、そうでない人に比べてアルツハイマー病になるリスクが4.6倍も高くなっていた。
 
その一方、2008年4月31日の厚労省の発表によると、2006年わが国の糖尿病とその予備軍は1、870万人と推定され、2002年に行われた前回調査にくらべ、250万人も増えていることが判明した。
糖尿病がアルツハイマー病の危険因子であり、しかも糖尿病患者がわが国で急増中というのは、恐い話ではないか。
 
エネルギーの過剰摂取による肥満が引き金となって、インスリンの効かない糖尿病が発生し、やがてアルツハイマー病を発生させるようだ。
食べ物とアルツハイマー病の関係がはっきりとわかる。
 
では、糖尿病とアルツハイマー病には、どんな関係があるのだろう。
これを解明したのが、ソーク研究所のデービッド・シューベルト博士のグループだ。
糖尿病にかかった若いネズミの脳を解剖したところ、血管が高血糖によってダメージを受けていただけでなく、低レベルであるがβーアミロイドが蓄積していたことを発見したのである。
 
40歳以上のほとんどの人でごく少量のβーアミロイドが血液中に流れているのだが、糖尿病にかかると、高血糖とβーアミロイドの蓄積が相乗的に働くようである。
 
 
■ 危険因子、その2
ヘビードリンキングとヘビースモーキング
 
危険因子その2は、ヘビードリンキングとヘビースモーキングである。
ヘビードリンキングとは、1日に2杯以上飲むこと。
そしてヘビースモーキングとは、1日1箱以上のタバコを吸うことをさす。
 
フロリダ州にあるマウントシナイ病院のランジャン・ドウアラ博士は、60歳以上でアルツハイマー病の938人を対象に調査して明らかになった結果を、2008年シカゴで開催されたアメリカ精神学学会で発表した。
その内容は以下のとおりだ。
 
ヘビードリンカーは、
そうでない人に比べ、アルツハイマー病が4.8年早く発症する。
ヘビースモーカーは、
そうでない人にくらべ、アルツハイマー病が2.3年早く発症する。
そして、ヘビードリンキングかつヘビースモーキングだと、
発症が6〜7年ほど早まる。
 
 
■ アルツハイマー病を防ぐ青魚
 
では、どうすればアルツハイマー病を防げるのだろう。
現在、週に1度でも魚を食べる習慣のある人は、まったく食べない人にくらべて、アルツハイマー病の発症するリスクを半減できることがわかっている。
 
とりわけ、サンマ、サバ、イワシ、サケ、マグロなどの青魚に多く含まれるDHAが、アルツハイマー病の予防に役立つという疫学結果や治療結果がいくつも報告されている。
DHAは脳内で一番多く存在する必須脂肪酸であり、もし不足すれば、記憶力は低下することが知られている。
 
アメリカでは青魚の主成分DHAのサプリメントが大好評だ。
サプリメントでDHAを摂らなくても、青魚を食べればいいようなものだが、アメリカ人は青魚の持つ独特の臭いが我慢ならないようだ。
「いかがわしい」「怪しい」という悪い意味で「フィッシイ」と言う言葉を使うほどだから、彼らが青魚の臭いをどれほど嫌っているかがわかる。
 
魚は、脳に良い食べ物のナンバーワンである。
だが、最近は日本人まで魚嫌いになったようなのが気がかりだ。
 
水産白書によると、2004年における日本人の魚介類の消費量は、9年前の1995年前に比べて、すべての年代で大幅に減少している。
最も良く魚を食べる40代と50代の魚離れが目立つ。
 
40代では1日113g食べていたのが、82gと27%の減少。
50代では128gから102gと20%の減少。
ぜひとも、魚を食べて脳にDHAを補給してほしい。
 
DHAがアルツハイマー病の予防に効く仕組みも解明されつつある。
 
そもそもアルツハイマー病は、β−アミロイドが脳の神経細胞を圧迫し殺すことで発症する。
だから、β―アミロイドの蓄積がアルツハイマー病に危険信号であると考えられる。
 
2008年1月、カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部のグレッグ・コール教授のグループは、DHAの抗アルツ効果の仕組みを発表した。
それによると、DHAの摂取によって生産されるLR11というタンパク質がβ―アミロイドを分解し、その蓄積を妨げるという。
ネズミの餌にDHAを混ぜて食べさせると、脳の神経細胞でLR11が増えることも確認されている。
 
そこでNIH(米国立衛生研究所〉はアルツハイマー病患者を対象に自らの手で大規模な治療を実行中である。
 
だが、コール教授は大意をこう語る。
すでに進行したアルツハイマー病患者ではDHAが効果を発揮するには手遅れかもしれない。
だから、アルツハイマー病発生の初期段階の人を対象に、発症の予防に関する大規模な治療が行われることが望ましい。
とりわけ、NIHに期待する。
というのは、魚油は容易にしかも安価に入手できるので、製薬会社が治療が行うことは到底思えないからである。
 














 

第1章のおもなポイント

本章では、脳の性能が食べ物によって大きく変わることを明らかにした。
たとえば――

◆子どものIQは、マルチビタミンとマルチミネラルの摂取や、妊娠期・授乳期に
母親がDHAを摂取することで向上する。
◆トリプトファンの摂取により気分が改善する。
◆アルツファイマー病は、アルコールやタバコにその原因となる可能性があるが、
青魚に含まれるDHAの摂取により抑えられる。

人生は遺伝で決定されるのではなく、あなたが毎日口に運ぶ食べ物によって
左右されているのだ。
 
 
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

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池田 優

 

 

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