山ちゃんの食べもの考

 

 

その258
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【115】
 
生田 哲  著   PHP新書
『食べ物を変えれば脳が変わる』
その4
 
第2章 脳を快適に働かせる栄養素 の2
 
 
● 脳に大切な5つの脂肪
 
脳に大切な脂肪は、つぎの5種類とされている。
飽和脂肪酸、分子中に1個の炭素・炭素2重結合を持つ一価不飽和脂肪酸、コレステロール、オメガ3やオメガ6といった分子中に複数の炭素・炭素2重構造を持つ多価不飽和脂肪酸である。
 
最初の3つは体内でつくることができるが、オメガ3とオメガ6は体内でつくることはできないため、食事から摂取しなければならない。
このため、オメガ3とオメガ6は、必須脂肪酸と呼ばれる。
 
なぜ、脂肪が脳の働きに大切なのだろう。
理由は2つある。
一つ目は。脂肪が神経細胞やその一部が伸びた軸策というケーブルを包む主成分となっているからだ。
 
脳内には1000億個もの神経細胞が詰まっている。
そして、脳のある箇所で発生した情報は電気シグナルとなって、軸索というケーブルを通して脳の別の箇所に送られる。
このケーブルを覆うのが、その80%が脂肪であるミエリン鞘である。
 
もし脂肪が不足すれば、ミエリン鞘が薄くなり、電気シグナルが漏電する。
そうなると情報の伝わるスピードが落ち、最悪のケースでは、情報が消えてしまう。
要するに、脂肪が不足すれば、頭の回転が悪くなるのだ。
 
理由の2つ目はもう少し複雑だ。
脳内の情報は、神経細胞の軸索を電気シグナルの形で伝わるが、そのつなぎ目であるシナプスのところに来ると、伝達物質に姿を変えねばならない。
シナプスには隙間があるためだ。
情報が電気シグナルのままでは、シナプスの隙間に邪魔されて、標的の神経細胞に到達できないのだ。
 
そこで、シナプスまでやってきた電気シグナルは、伝達物質というボールに姿を変えてシナプスを渡り、標的の神経細胞の表面についている受容体というキャッチャーミットにおさまる。
 
こうして情報が神経細胞から神経細胞に伝わる。
標的の神経細胞に伝わった情報は、再び、電気シグナルに姿を変えて軸索を伝わっていく。
 
この受容体を支える土台になっているのが、神経細胞の膜である。
隣接する神経細胞から放たれた伝達物質というボールをうまく捕らえるには、キャッチミットを支える膜がやわらかいことが前提となる。
 
 
■ 脳をやわらかくするオメガ3とオメガ6
 
神経細胞の膜がやわらかいと、伝達物質を受け取りやすい。
つまり、情報をスムーズにやり取りできる=頭がよい、ということになる。
逆に膜が硬いと、伝達物質を受容体は受け取りにくいので、頭の回転が鈍くなる。
 
昔から頭のいいことを、頭がやわらかいと表現してきたが、これは単なる比喩ではなく、神経細胞の膜がやわらかいほど柔軟性に富んだ脳になるのである。
 
神経細胞の膜のやわらかさは、摂取する脂肪の種類と量によって変わる。
すなわち、脳は硬い飽和脂肪酸の摂取量が増えると硬くなり、やわらかい不飽和脂肪酸の割合が増えるとやわらかくなる。
 
やわらかい脂肪酸の代表がオメガ3とオメガ6で、どちらも必須脂肪酸である。
オメガ3とオメガ6の両方があなたの食事にふくまれていなければならない理由が、ここにある。
 
神経細胞のミエリン鞘は、おもに「リン脂質」という脂質でできている。
グリセリンの3本の手のうちの2本に長い炭化水素がつき、残りの1本にリンがついたものだ。
 
リン脂質は頭としっぽの2つの部分に分けられる。
1つは「しっぽ」と表現した炭化水素の部分で、この部分は非常に油っぽい。
 
もう1つは、「頭」と表現した水っぽい部分(リンの部分)である。
たくさんのリン脂質が集まると、似たもの同士が群れを成す。
頭は頭同士、しっぽはしっぽ同士が集まり、脂質の2重層と呼ばれるサンドイッチ型の膜構造をつくる。
これが神経細胞の膜である。
 
しっぽの2本の脂肪酸に注目してほしい。
1本はまっすぐに伸びた脂肪酸、もう一方は途中で折れ曲がった不飽和脂肪酸だ。
この脂肪酸が、オメガ3またはオメガ6なのである。
 
 
■ 脂肪が日本人に長寿を授けた
 
脂肪は健康に悪いという風潮があるが、これは間違いだ。
摂取そうエネルギーに対する脂肪の比率は、20%ほどが適量とされている。
 
脂肪は日本人で26%程度なのだが、アメリカ人やイギリス人では何と40%に達している。
これだから、心臓病がアメリカやイギリスで多発し、日本では少ないのである。
パンにバターを分厚く塗り、食後にアイスクリーム、プリン、ケーキを平らげる食生活をしていては、摂取脂肪量が多くなりすぎるのは当然というほかはない。
 
では、脂肪の摂取量は少ないほどいいのかというと、決してそうではない。
摂取総エネルギー〈2000カロリー〉に対する脂肪の比率が9%と少なかった1950年代のわが国では、脂肪が足りないために、脳の血管が切れる脳血管疾患が死亡原因の首位を独走していた。
 
たとえば、1951年の日本人の平均寿命は男性は60.8歳、女性は64.9歳であった。
1950年代、日本人は脳血管疾患で早死にしていたのである。
しかし、摂取エネルギーに対する脂肪の比率が上がるに従い、脳血管疾患での死亡率は急激に低下していった。
 
今では、総エネルギーに対する脂肪の比率は26%で、脳血管疾患と心臓病による死亡率はともに低い。
これが日本人が長寿である秘訣である。
 
日本人にとっての理想は、20〜25%とされる。
現状の26%はギリギリで合格といえよう。
 
栄養学を専門とする一流の研究者達はこう指摘する。
硬い脂肪酸の摂取量は全志望の3分の1以下に抑え、オメガ3やオメガ6などの多価不飽和脂肪酸は3分の1以上を摂取すること。
しかも、オメガ3とオメガ6の比率は1:1が望ましい。
 
現在、この比率はどんな状況になっているかというと、日本人で1:4、アメリカ人やイギリス人で1:20〜30である。
アメリカ人やイギリス人はオメガ6を過剰に取り、その一方で、オメガ3の摂取が少なすぎることがわかる。
 
今、アメリカやイギリスではアルツハイマー病が爆発的に増えているが、その原因の一つが、オメガ6への極端な偏りであると指摘されている。
 
多くの人々は、オメガ3の摂取が不足する一方、オメガ6、飽和脂肪酸、脳の働きを悪くするトランス脂肪酸を過剰に摂取している。
 
 
■ オメガ3の運命

●オメガ3の一種、α‐リノリン酸が酵素の働きで退社されるプロセス

α‐リノリン酸〈アマニ油、ナタネ油、カボチャ、クルミ、葉野菜〉
  ↓
EPA → DHA → プロスタグランジン3型(PG‐3)
(魚油)  (魚油)    (抗炎症の効果あり)
 
オメガ3は非常に重要だ。
その理由は神経細胞の膜の成分になるだけでなく、プロスタグランジン3型(PG−3)という強力なホルモンにモデルチェンジされるからである。
 
PG−3は血管を拡張し、血圧を下げ、免疫力を高め、炎症や痛みを抑え(抗炎症)、インスリンの働きを助けるなど、多くの効果が知られている。
 
オメガ3からPG−3ができる道筋は明らかになっている。
出発点となるのは、最も構造が単純なα‐リノリン酸であるが、これに酵素が働き、水素を奪い、より複雑な不飽和脂肪酸ができる。
そしてこの複雑な不飽和脂肪酸はEPAを経由してDHAに変換され、最終的にPG−3ができる。
 
このように生体内では、単純な脂肪酸から出発し、酵素の活躍によって複雑な脂肪酸がつくられている。
 
これと同じことが食物連鎖の段階を登る際にも見られる。
小魚のエサの中心になっているプランクトンには、単純なオメガ3のα‐リノリン酸が多い。
 
小魚を食べる肉食魚のサンマ、サバ、ニシンは、α‐リノリン酸をEPAやDHAに変換している。
これらの肉食魚を食べるアザラシには、EPAやDHAが最高レベルに蓄積されている。
 
そしてアザラシの肉ばらり食べるイヌイットが、EPAやDHAからの健康利益を受けている。
これだから、イヌイットは、コレステロールを多く含んだ食事をするにもかかわらず、心臓病が発症しにくいのである。
 
だからといって、筆者は野菜も果物もあまり食べないイヌイットの食事を読者に勧めているのではない。
イヌイットは心臓病になりにくい分、骨粗しょう症やうつなど、別の病気にかかりやすいのである。
 
 
■ 青魚でEPAやDHAを補給しよう
 
EPAやDHAは、サンマ、サバ、イワシ、サケ、マグロなどの青魚に多く含まれている。
通常、成人一人当たり1日に300〜300mgのEPAやDHAを必要とするが、学習障害や心臓病などの問題を解決するには、この2〜3倍を摂取する必要があると思われる。
 
それから、生体ではα‐リノリン酸からDHAへのモデルチェンジも効率が低いため、菜食主義者はEPAやFHA不足になりやすい。
これを補うために、彼らはα‐リノリン酸の豊富な、しそ油やアマニ油をたくさん摂っている。
 
特に、胎児が成長するじきな授乳期の女性は、α‐リノリン酸、EPA、DHA、を多く摂るのがよい。
WHOは、これらの油を乳幼児用のミルクに添加するように奨励している。
妊娠中や授乳期の女性にとってとりわけ大切なのが、文字通り脳を作るDHAだ。
実に、水分を除けば、脳の4分の1はDHAなのである。
 
オメガ3を十分に摂取するには、青魚を積極的に食べるのがいちばんだ。
オメガ3は生体でモデルチェンジという間接方法によってはじめてEPAやDHAになるが、EPAやDHAを多く含んだ青魚を食べれば、直接入手できる。
週3回、食卓に並べてみよう。
 
また、亜麻仁油やシソ油をサラダにかけて食べるのもよい。
こうすることで、オメガ3を摂取するだけでなく、飽和脂肪酸の摂取量を減らす効果もある。
亜麻仁油を摂取した鶏の卵にも、オメガ3が多く含まれている。
 
 
■ オメガ6の運命

● リノール酸から酵素の働きでオメガ6が代謝される

リノール酸〈コーン油、ダイズ油、ベニバナ油、ヒマワリ油〉
  ↓
γ‐リノレン酸→アラキドン酸→プロスタグランジン2型(PG‐2)
(肉類、乳製品) (炎症を起こす)
  ↓
プロスタグランジン1型(PG‐1)
(炎症を抑える)
 
もう一つの必須脂肪酸が、オメガ6である。
脳は、人間のからだの中でオメガ6を最も多く含んでいる臓器だ。
このオメガ6が何に含まれているかというと、コーン油、大豆油、紅花油〈サフラワー油〉、ヒマワリ油などである。
どれも、食事で摂取する植物油ばかりだ。
 
オメガ3のケースと同じように、オメガ6も酵素によっていくつかの段階を経てプロスタグランジンにモデルチェンジする。
この際に注意したいことは、γ‐リノレン酸を経由して、炎症を起スプロスタグラジン2型〈PG−2〉と、その反対に炎症を抑えるプロスタグラジン1型(PG−1)ができることだ。
 
要するに、必須脂肪酸であるオメガ6からは、善玉と悪玉の2種類のプロスタグラジンができるのだ。
それなら、善玉と悪玉が相殺されて、炎症には影響なしかと思いきや、そうではない。
オメガ6が増えると、炎症が起こりやすいのである。
悪玉が善玉より強いのは、人の世も、生化学の世界も共通のようだ。
 
また。多くの研究から、γ‐リノレン酸が心の病の改善に有効なことが確認されている。
γ‐リノレン酸が豊富なのは、月見草油やボリジオイルである。
 
 
■ 必須だが摂りすぎに注意したいオメガ6
 
多くの研究者は、統合失調症患者は、健常者に比べてオメガ6が低レベルであることを報告している。
 
オーストラリアにあるモナシュ大学のバタディ教授は、月見草油の効果を発表した。
それによると、月見草油を摂取することで、統合失調症患者の記憶力が高まるだけでなく、他の薬物治療の副作用で発生した運動障害も改善したという。
 
その効果は、ビタミンB6、亜鉛、ナイアシン、ビタミンCとの併用で大幅に高まった。
どれもオメガ3やオメガ6をプロスタグランジンにモデルチェンジするのに必要な栄養素ばかりである。
 
それなら、オメガ6をどんどん摂ればいいかというと、そうはいかない。
オメガ6からつくられるアラキドン酸が問題なのである。
アラキドン酸は脳の働きに欠かせないのだが、これが増えすぎると、悪玉のPG−2ができてくるため、脳に炎症が発生することになる。
脳の炎症がアルツハイマー病の要因の一つと考えられているので、オメガ6の摂り過ぎを避けるのが賢明だ。
 
脳のアラキドン酸は、直接にはアラキドン酸を多く含む肉類や乳製品の摂取、そして間接にはリノール酸やガンマーリノレン酸からのモデルチェンジでもつくられる。
後者のほうが都合がよい。
というのは、悪玉だけでなく、善玉もつくるからである。
 
 
● 知能を高めるリン脂質
 
情報は脳内を電気シグナルのかたちで伝わる。
このとき、漏れを防ぐための絶縁体がミエリン鞘であることは述べた。
ミエリン鞘の主成分はリン脂質でありそのためリン脂質は知能を高める脂肪であると考えられる。
 
分子構造を見ると、リン脂質の中心はグリセリンで、3本の手がある。
その2本に脂肪酸がつき、残りの1本にリン酸をブリッジにしてコリンやセリンがついている。
 
リン酸をブリッジにして手をつないでいるのが、フォスファチジルコリン(レシチン、PCと酪記する)。
そしてセリンとくっついているのが、フォスファチジルセリン(PSと略記する)である。
 
PCとPSの2つがリン脂質の代表である。
どちらも記憶力を高めるアセチルコリンという伝達物質の原料となっており、その重要性はいくら強調してもしすぎることはない。
 
リン脂質はあなたの気分を高め、やる気を生み、心に張りを持たせるだけでなく、加齢による記憶力の衰えやアルツハイマー病の発祥を防ぐ効果も知られている。
どちらも食事やサプリメントから摂取することで、あなたの脳にプラスの効果をもたらす。
 
デューク大学の研究者は、妊娠中の母ネズミにPCを与えると、優秀な子ネズミが生まれたことを報告した。
 
PCを多く含むエサを食べた母ネズミから生まれた子ネズミは、普通のエサを食べた母ネズミから生まれた子ネズミにくらべ、脳の神経ネットが蜜で、学習能力が高く、記憶力がすぐれていたのである。
しかも、この3つの特徴はネズミが老いてもなお維持されていた。
この研究から、コリンを食べるとネズミに知恵が高まることがわかる。
 
PSの効果も同様だ。詳しくは第4章で述べる。
 
 
■ リン脂質の宝庫ーー鶏卵、モツ、ダイズ食品









 
● やわらかい脳を作り脂肪
名称 おもな食材 効果
オメガ3 青魚、アマニ油 シソ油 神経細胞を覆う幕がやわらかくなり、頭の回転が速くなる
 
オメガ6
 
コーン油、ベニバナ油
ヒマワリ油
リン脂質
(フォスファチジルコリン、フォスファチジルセリン)
鶏卵、モツ、ダイズ食品
(納豆、エダマメ、豆腐)



 
やる気を引き出す、
記憶力の低下を防ぐ、
アルツハイマー病の発症を防ぐ

 
 
リン脂質は生体で作ることができるから必須栄養素ではない。
しかし、食事から摂取すると脳の回転運動を助けることになる。
 
ヤマネコやチータなど野生の肉食獣が、捉えた獲物の臓器や頭を真っ先に食べるのは、そこにリン脂質が豊富であることを本能で知っているからである。
 
リン脂質は普通の食物に含まれているが、とりわけ、鶏卵、モツ、ダイズ食品などは、リン脂質の宝庫といってもいい。
 
中でも納豆、枝豆、豆腐となどダイズ食品は日本人の好物で、頻繁に口にする。
だが最近気がかりなことに、卵を避ける人、モツをあまり食べない人が増えている。
記憶力が衰え、集中力の続かない人が急増しているのはそのせいではないだろうか。
 
卵にはコレステロールが多い、と心配する向きも多いだろう。
しかしすでに述べたように、必須脂肪酸は脳や身体の働きを高める。
卵に含まれる脂肪酸の種類は、鶏が何を食べるかによって決まる。
アマニ油や魚油を多く含むエサで育った鶏の肉や卵はオメガ3が豊富だ。
鶏卵は安価に入手できる、「スーパーブレインフード」なのである。
 
コレステロールについても、マイナス面ばかりが強調されるが、実は健康、とりわけ脳と心の健康に欠かせない栄養素である。
コレステロールは、脳に大量に存在し、神経細胞の膜を適度な硬さに守っているのだ。
 
しかも、コレステロールは生体でモデルチェンジされて、男性ホルモンのテストステロン、女性ホルモンのエストロゲン、そしてストレスに打ち勝つコルチゾールがつくられている。
 
テストステロンは男女ともにやる気を引き起こす。
エストロゲンは女性に気分を高める。
だからコレステロール値が下がると、男女ともにうつになりやすい。
これで、自殺者にコレステロール値が低い人が多いことも説明がつく。
 
そもそも、コレステロールを多く含む卵を食べると心臓病になる、というのは迷信にすぎない。
多くの研究がこのことを証明している。
その一つは、カリフォルニア大学のあるフィン・スレーター教授の報告だ。
それによると、血中コレステロール値の正常な25人にふだんの食事に加え1日2個の鶏卵を8週間摂取してもらったが、血中コレステロール血は上昇しなかったという。
 
普通に卵を食べてもコレステロール値が上がることはないし、心臓病になることもない。
やはり鶏卵はスーパーブレインフードなのである。
 
それから、PSも忘れないでほしい。
PSはとりわけモツに豊富だが、最近、モツも不人気だ。
だから、積極的にモツの煮込みや、焼き鳥のモツ、ホルモンなどを食べてほしい。
 
 
● 心と感情を作るアミノ酸
 
前述のとおり、脳がはたらくとは、神経ネットワークにおいてある神経細胞から放出された伝達物質を別の神経細胞が受け取ることである。
これを人と人とのコミュニケーションにたとえれば、伝達物質を放出するのは「話す」に、伝達物質を受け取るには「聞く」に相当する。
 
先に述べたリン脂質は、神経細胞の膜を柔らかくしたり、ケーブルである軸索を絶縁体で包むことによって、「聞く」側の能力を高めるものだった。
これから述べるのは、たんぱく質の構成要素であるアミノ酸についてである。
アミノ酸のおもな役割は、神経ネットワークにおける「話す」能力を高めることにある。
 
ある神経細胞から別の神経細胞に送る「言葉」にあたる伝達物質〈神経戦辰物質)は、アミノ酸から短い工程でつくられる。
脳は考えるために、伝達物質をすばやく供給するシステムをアミノ酸のモデルチェンジによって用意している。
 
したがって、アミノ酸を十分に供給すべきなのだが、不足することも珍しくない。
すると、うつ、無気力、緊張によるリラックス不足、記憶障害、集中力の欠如などに陥りやすくなる。
 
学術的に評価の高い一流医学誌に発表された多くの医学論文によって、これらすべての症状が、アミノ酸をサプリメントで摂取することによって改善することが証明されている。
 
たとえばトリプトファンは、ベストの抗うつ薬とされるプロザックよりも効果的だ。
またチロシンはストレスを緩和し、ギャバ〈γ‐アミノ酪酸)は脳の過剰な興奮を抑え、不安を取り除くことが確認されている。
あなたの脳にとってのアミノ酸はかけがえのない友である。
 
 
■ おもな伝達物質
 
伝達物質の働きを理解できれば、その原料となるアミノ酸の重要性はおのずとわかる。
これまで発見された脳内の伝達物質は100を超えるが、おもなメンバーを紹介しておこう。
 
* アルドメイリン、ノルアドレナリン、ドーバミンは、脳を興奮させる「興奮性伝達物質」。「脳のアクセル」として働き、集中力を高め、気分をよくし、やる気を起こさせ、ストレスに対処させる。
アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーバミンは「集中力、やる気、快感の物質」である。
 
* 興奮性伝達物質とちょうど逆の働きをするのが、「抑制性伝達物質」のギャバとタウリンだ。
これらは脳の興奮を抑える「脳のブレーキ」として働く。
リラックスさせ、ストレスによって発生した緊張をほぐすギャバとタウリンは「心を鎮める物質」として知られる。
 
* 「幸福物質」セロトニンは、気分を安定させ、うつな気分を晴らす。
セロトニンが不足すると、うつになり、食欲が増進し、焼け食いし、太りやすい。
 
* 「記憶物質」アセチルコリンは脳をシャープにし、記憶力や注意力を高める。
 
* 「タイミング物質」メラトニンは昼と夜のタイミングを計り、生活リズムを整える。
メラトニンは暗い夜だけ放出され、眠気を起こすので、睡眠効果がある。
 
これ以外にも、満足感や陶酔感を与えるエンドルフィン、痛みを抑えるサプスタントPなどがある。
だが、ここに紹介した伝達物質が、脳内オーケストラの大演奏者達である。
 
あなたの気分、記憶力、注意力などは、脳内をかけめぐるこれらの伝達物質の種類と量によって左右される。
もしセロトニンが増えればあなたは幸福を感じる。
ドーバミンやノルアドレナリンが増えれば、やる気モリモリ、元気一杯、快感が脳を走り、たとえ身体が疲れていても脳は疲れを感じない。
 
だが、あまりに脳が興奮すると、おしゃべりになるのはいいとして、不安、不眠症、イライラが発生する。
そして興奮が度を超すと、妄想や幻覚が起こってくる。
 
毎日、わたし達の身の回りには毎日、さまざまな事柄が起こる。
それに適切に対処するには、平常心を保ち、能力を最大限に発揮する必要がある。
そうするには、これらの伝達物質をバランスよく脳内で放出させることが大切だ。
 
 
■ アミノ酸から伝達物質が作られる
 
脳内の伝達物質は、あなたが食事から摂取したアミノ酸から直接、しかも短い工程で作られる。
アミノ酸は全部で20種類あるが、そのうち11種類は体内の酵素によって他の栄養素をモデルチェンジすることによってつくることができる。
 
だが、どうしてもつくれないものもある。
それが、必須アミノ酸と呼ばれるもので、トリプトファン、フェニルアラニン、スレオニン、メチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、ヒスチジンの9種類である。
 
20種類のアミノ酸から1〜2段階の短い工程で、すべての伝達物質がつくられている。
 
セロトニンは、落ち気味の気分を上向かせ、うつを改善する。
その効果を期待したいときは、トリプトファンの豊富な肉類は卵黄、ピーナッツを食べるとよい。
 
 
■ 伝達物質の運命
 
ある神経細胞の末端から放出された伝達物質は、神経細胞と神経細胞のシナプスというすき間を通って標的の神経細胞に届く。
だが、届いた神経細胞のすべてが効果を発揮するのではない。
それぞれの伝達物質は、みずからにフィットす受容体だけにドッキングするからである。
 
たとえばセリとニンはセロトニンだけを、ノルアドレナリンはノルアドレナリンだけを専門に受け取る受容体が神経細胞の表面に突き出ている。
 
神経細胞の「情報」が標的の神経細胞に伝えられたら、この情報は電気シグナルに形を変えて軸索を伝わる。
情報を届け終えた伝達物質は受容体から離れ、いったんシナプスに戻るのである。
シナプスに戻った伝達物質には3つの運命が待ち受けている。
 
まず、もう一度受容体にくっついて、効果を表す。
こうして2倍の効果を表す。
つぎは、最初に放出した神経細胞に戻る。
これを薬学では、「再吸収」と呼んでいる。
3つ目は、再吸収された伝達物質が酵素によって分解される。
 

 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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