山ちゃんの食べもの考

 

 

その26
 

 前回、スーパーマーケットの対して苦言を呈すると同時に、消費者がこれまでの食生活に「考え改め」「買い改め」「食い改め」を始めた今、スーパーマーケットには良い食べもの「作り手」と、良い食べものを求める「食べ手」に間に立つ良い食べものの「つなぎ手」として、国民の健康な食生活を実現する新しい「流通革命」「消費革命」を起こして欲しいと期待を述べました。

さて、うれしいニュースが飛び込んできました。東京・自由ヶ丘に健康コンビニエンスストアが誕生しました。当地の方々にはぜひ利用し希望も伝えて応援して欲しいし、お店にも大いに頑張って成功してもらいたいものです。『日本農業新聞』特集連載「農業は生命産業」“食べ物再考”の記事をご紹介しましょう。

 「健康コンビニ、簡便性見直し、主役は青果物。10年後のコンビニを実現しよう――東京・自由ヶ丘2丁目に7月、未来型コンビニ(ナチュラルローソン)が開店した。店の主力商品は、簡便性商品とは言い難い野菜。それも鮮度が売り。コンビニが得意分野とする揚げ物主体の弁当はない。

店舗を作ったのは、コンビニエンスストア業界第2位のローソン。遠洋漁業の漁師から転身した池田順一さんがアイデアを出した。池田さんはダイエーに転職後、食品の商品開発などを経てローソンに移った。そこで商品開発部長などを務め“野菜と穀物こそ健康に役立つ”と実感、健康を売る店の実現を目指していた。池田さんはこれから目指す店の姿の社内募集で見事第一位を獲得、入社以来温めてきた思いを実現する。

 “コンビニが現代の生活に浸透した結果、不規則な食生活を支えているという認識を変えたかった”と池田さんのパートナーを務める小坂さんは語っている。健康食品やビタミン剤だけでは健康な食生活をおくれない。千葉県の若手生産者グループ和郷園の減農薬野菜を売る。店の真ん中に野菜売り場。となりに玄米弁当コーナー……」

 

 コンビニは今や単なる物売り屋ではなく、地域の人々に多岐にわたる便利性とサービスを提供するシステム産業といえます。コピーやファックスに始まって各種の取次ぎ業務、公共料金の受け取り代行業務、各種チケット販売、宅配業務、旅行取次ぎその他諸々のサービスシステムが充足され、保険から銀行業務まで始めつつある。今後さらに情報機器を駆使した新しい簡便性が提供されることになり、地域住民にとっていよいよ無くてはならない存在になっていくことでしょう。

 しかし私は卓越した新しいシステム上にあっても、食品に関する限り提供される商品内容と利用のされ方について否定的です。現状を見る限りではコンビニエンスストアの食品売上が伸びれば伸びるほど利用者の健康にも日本の食文化にも大きな不幸をもたらすことになると思うからです。その意味でご紹介したナチュラルローソンの健康コンビニ誕生のニュースは、経営者の良心に基づく画期的な意識の転換であり、これを契機に全てのコンビニエンスストアが競って、地域の人々に健康な食べものと情報を提供する、無くてはならない店に発展してくれることを願わずにはおれないのです。そこで今回と次回はコンビニの食について考えてみることにします。

 

年中無休、24時間営業のコンビは簡便性を売りに、今や田舎の隅々に至るまでチェーン店舗を広め結構繁昌している。平成11年度現在のコンビニエンスストアの店舗数は約4万店、売上は6兆円強です。私の友人にもコンビニを経営する何人かの知人がいますが、利用者に簡単便利を提供する裏には、年がら年中昼も夜もなく、親子夫婦が寝食を共にすることもできないミスマッチ状態が続きます。私たちが24時間気軽に利用できるコンビにの便利性は、昔の魚屋や八百屋の労苦を超える家族の苛酷な労働と私生活の犠牲によって成り立っているといえます。

 

 スーパーマーケットの進展と共にコンビニエンスストアの猛烈な出店によって町のアチコチにあった八百屋や食料品店が次々と姿を消していきました。コンビニエンスストアがスーパーマーケットを凌ぐ勢いで伸びていったにはそれなりの理由があるわけですが、経営システムのことは別にして最大の理由は「今何が最も売れるか」の発見とその商品開発にあったといえます。

いつも同じ場所に同じような商品が並べられているように思われがちですが、わずか30坪そこそこの限られたスペースの中でコンビニの商品は絶えず急速な“新陳代謝”を繰り返し、1年間に5〜7割の商品が入れ替わっています。常に最大効率の“売れ筋品”に置き換えられているのです。全国に張りめぐらされた各店舗のレジスターから弾き出されるデータは、即刻本部のコンピュータで集計分析され、効率の悪い商品は新しい商品に置き替えられていきます。“より効率の良い売れ筋、稼ぎ筋”がコンビニの生命線ですから、消費者の新しいニーズの発見と商品開発への努力は想像を絶するものがあるといえます。つまりコンビには「昨日まで売れていた物を売る」のではなく常に「今日明日もっとも売れる物を売っている」のです。本部の設計に従って店舗をつくり、本部の指示に従って商品を並べ、方針指示によって徹底的に無駄を省いた最大効率の運営がされています。

 

 日頃私たちはコンビニエンスストアを利用するに当ってそれ以上の期待をすることもなく、特に不満を抱くこともなく簡単に便利に利用し、それで満足しています。コンビニに置かれている商品群や提供されるサービスの概略が頭の中に描かれていますから期待値を大きく裏切られることはありません。キメの細かい補充システムが整っていて何時行っても品切れなどでがっかりすることも少ない。ちょっと困った時などはここにコンビニがあってよかったということで、まことに簡単便利にして重宝な存在ということになる。

 この「余分な期待や特別な不満を抱かせることなく、簡単便利にして重宝なサービス」を合理的なシステムで効率的に提供するところにも、システム化されたコンビニが発展する大きな理由があると思います。

 

 コンビニエンスストアはスーパーマーケットを小さくした小型版ではなく、これまでの八百屋でも食料品店でもありません。本屋でも雑貨屋でも弁当屋でもありません。1974年にアメリカから導入された全く新しいシステム化された小売業態です。店舗は小さくても全国に何千店何万店の店舗を有するビッグ企業です。町にあった八百屋や食料品店とコンビニとでは「売る物」や「売り方」がまったく変わってしまったのです。

 自宅の近くにあるコンビニ、隣町にあるコンビニ、旅先で見るコンビニで不思議なことがあるのに、むしろそのことで誰もが安心して利用しています。それはどこへ行っても期待通りに皆同じだということです。沖縄や北海道に旅して食べるホテルの朝食が東京のそれと同じことに疑問を抱くよりも、特別なことを求めたり迷うことも無く、変わりの無いことに安らぎさえ覚えるというのと同じことです。計算され尽くした「画一化均質化」に慣らされてしまった私たちの現代生活は、独自性を口にしながらも皆同じであることにホッと安心してしまうという、没個性的な考え方や生き方になってしまっているのです。豊富にある食べものでもメーカーや産地・形態・味付けなど少々変っても、地域性も季節性もない平板で狭いものになっているのです。自分で選んで買っているから自分の意志で食べていると思いがちですが、極論を言えば食べる日が少し違うだけで誰もが与えられた同じ素材、味付けに慣らされた給食を食べさせられているようなものです。だからスーパーマーケットでもコンビニエンスストアでも売れ筋(買い筋)はほとんど同じです。だから作られた「画一化均質化」で同じスタイル、同じシステム、同じ商品で全国的なチェーン展開ができるのです。しかも看板を塗り替えればどこの店だかわからなくなる店が同じような質の競争をしています。

 

 朝の登校時間、夕方の下校時間にはどこのコンビニエンスストアも子供たちで溢れています。盛んに口を動かし飲み食いしています。朝食を摂ってこなかったのでしょうか、昼食を買っているのでしょうか、夕食はどうなるのでしょうか。この時間に全国何万店舗ものコンビニで多くの子供たちが「画一化均質化」された食べものに群がっていることを想像するとき背筋に悪寒が走ります。コンビニやファストフード、ファミリーレストランなどの食べものが、子どもたちの口を喜ばせることを狙って安価に便利に商品開発を繰り広げています。人工的に作り出された画一的な味によって、子どもたちや若者の舌が変えられてしまい、生涯の食習慣が決定づけられてしまう恐れがあります。

 今コンビニエンスストアの繁盛を支えているのは子供たちばかりではなく、徹底した研究開発による売れ筋品と便利さが、老若男女あらゆる人たちによって利用されています。作られ方も中味も、もう昔の八百屋や食料品店にあった食べものではなくなっています。季節性や地方性は失われ、料理の仕方や食べ方を教えるなど面倒なことはもう売り手も買い手も必要としなくなってしまいました。 

 

 巨大なショッピングセンター、豊富な品揃えのスーパーマーケット、簡単便利なコンビニエンスストアが乱立しています。それに全国広域規模でファストフード店、ファミリーレストランをはじめ外食店が所狭しと展開されていますが、簡単便利さを追い求める中で何か大切なものを失ってしまったことを感じませんか。それに最も恐いのはこの簡単便利なモノの豊かさが当たり前の生活であり、失った大切なものに気付くことすらできない世代が多くなってきていることです。

今から50数年前の1948年(昭和23年)には60品目であった食品添加物が急激に増えだし、1957年(昭和32年)には一気に189品目、1968年(昭和43年)には358品目になったのです。もう30歳代40歳代のお父さんやお母さん、いわんや10歳代20歳代の若者たちは、生まれながらにして大量の添加物の力を借りて作られた食べもののお世話になっているのです。

 

大切なことは私たちが安心しきって常食している食べものが、倫理性を欠いた人たちの手によって粗悪な原材料を用いて化学的に作り上げられたものであり、売れることはいいことだと言う人たちの手によって真実が明かにされないまま商われていることです。「簡単・便利・美味しさ・安さ・豊かさ」の影に潜む恐さを感じ取って欲しいのです。人の健康や安全な食べものよりも経済性が優先され、良心を欠いた利己的な人間の意識的な業なのです。物づくり、物商いに「人の命を思いやる心」が呼び戻せるのでしょうか。私たちの失ったものは「心」です。

 先日消費者団体が主催する新聞の記事に、中国から輸入されるネギや生シイタケに輸入制限措置として発効されるセーフガードに対して概略次のような内容が記されていました。「消費者は1円でも安い方が良く、多くの農産物が外国から輸入され消費者物価が引き下げられることは大歓迎すべきである。日本の種苗会社や農業技術者、商社などが現地指導して、国内産に負けない品質のものを開発輸入することを阻止する政府のやり方は、消費者利益を無視する暴挙であり実にけしからん」と。私たちが普段食べているもの、例えば和食レストランに入っても割箸からはじまって山菜、煮物、てんぷら、味噌汁、和え物、味噌、しょうゆ、薬味等々ほとんどに、氏素性のわからない物が多く使われています。

 その「1円でも安い」を実現するための激烈な競争が、世界で困っている人々の食べものまで奪い取り、自給率を引き下げ、「心を失い、生命を失った粗悪な食べもの」にしているのです。日本の健全な農業の崩壊は日本国民の食べものの崩壊であり未来の崩壊です。食べものにとって今日の「1円でも安い」を求める前に最も大切なことは互いに「人の命を思いやる心」です。自分たちの手によって良い農産物づくり、良い食べものづくりを進め、よい食文化を築き上げていくことは、私たちにとって待った無しの緊急課題だと思いませんか。そこには生産者も消費者もなく共同責任者としての一体感がなければならないのです。

 

昨日の暑い最中に二人からお茶の差し入れがありました(ちなみに私は家内の沸かした番茶をポットに入れて持ち歩いている)。一人は「山ちゃんの食べもの考」のファンでちょくちょく訪ねてくれるが、良い食べものを広めることに夢中になっている青年である。彼の差し入れはさすがに超逸品でさわやかな香りとコクのある風味は参会者を唸らせました。機会があったらぜひお試しください。

香檳烏龍茶(シャンピンウーロンチャ)

品   名 ウーロン茶飲料

原材料名  ウーロン茶

原料茶産地 台湾新竹縣

販 売 者 株式会社清水一芳園 大阪市福島区吉野3丁目2番49号

清水一芳園のシャンピンウーロン茶は、台湾新竹縣産の選りすぐりの無農薬栽培茶を手摘みし、独特の製法で加工したものです。オレンジの花のような香り、深い味わいはヨーロッパのサロンではおもてなしのティとして高く評価されています。添加物は一切使用しておりません。お茶の成分が沈殿することがありますが品質には変わりありません。

 (台湾新竹縣は世界一のウーロン茶の栽培地として知られている)

もう一つはコンビニで購入の某有名メーカー缶入り緑茶

 品   名 緑茶(清涼飲料水)

 原材料名  緑茶、ビタミンC

○ ○産の優良な一番茶を使用し緑茶本来の香りとすっきりした味わいに仕

上げました

このビタミンCとは何だろう。ビタミンCの表示があると栄養が補強されていて良いのではないかと勘違いしないでください。アスコルビン酸類の化学合成添加物で、食品の酸化による変色や変質を防ぐために用いられる化学物質です。清涼飲料水、果実類ジュース、ジャム、缶詰、キャンディ、パン、野菜、果物、ハム、ウインナ―ソーセージ、油脂、バター、チーズ、魚肉練り製品、小麦粉、菓子類、アイスクリームなど数多くの食品に使われています。いろいろ化学名はありますがイメージのいいビタミンCまたはV・Cで表示されています。ビタミンCは栄養強化剤としても使用されることがあるので毒性について特に心配の必要はないでしょうが次のことは覚えておいてください。

 ビタミンCは大変酸化されやすい物質で、この性質を利用して酸化防止剤として使われているのです。つまりビタミンCは自分自身が犠牲になって酸化され食品の酸化を防いでいるわけです。ところが酸化されたビタミンCは酸化型ビタミンCといって、もう栄養的効果はなくなっているのです。

 食品添加物としてのビタミンCの毒性を問題にしているのではありません。現代の食べものはなぜ多くの添加物を必要とするのか、本物にはビタミンCといえども添加物は使われていないのです。

 

 ついでながら郡司篤孝著『何を食べたらいいかU』からお茶について見てみよう。「農薬をそのまま飲んでいるような茶。それに玉露呈味剤で味をつける。無農薬で食品添加物を使わない茶をお買い求め願いたいものである」以下ポイントを抜粋して記します。

 「グルタミン酸ナトリウムを焦がすと、テアニンという物質に変わる。これが日本茶の玉露呈味剤で、煎茶や番茶のような下級茶でも見事な味に化けてしまう。着色の目的で重炭酸ナトリウムを使っている業者もかなり多い。新芽を蒸す時、この溶液を入れると色がきれいになる。その上日本茶といっても、年間4000トンの茶がブラジル、台湾などから輸入され国産茶と混合している」

 7、8年程前になるが無農薬栽培茶をいただいた生産団体の方から「今のお茶は農薬を煎じて飲んでるようなものだ。生産者はよく知っているから自分の飲むものは別だ」と聞いたことがある。当時は有機野菜や無添加食品の宅配も手がけていたので案内したところ結構売れた記憶がある。

日本の長寿者は大変お茶好きでたくさん飲んだという。ガンの予防にも効果があるといわれる健康食品の代表です。静岡県の中川町はとてもお茶を飲むところでガンの発生率が全国平均の2割だとか。農薬漬け添加物漬け、あるいはどんな原料を使ったかわからないようなものでは意味がないわけで、氏素性のわかる有機無農薬のお茶を選んで飲んで欲しい。

 今夏は猛暑でミネラルウオーターや清涼飲料水の売れ行きは絶好調、各メーカーはお盆休みも返上して生産に追われているようです。スーパーの店頭では各種ペットボトルが山積みされています。お宅では何をお飲みでしたか。朝夕コンビニを賑わせている子どもたちは何を飲んでいるのでしょう。自販機やコンビニで多く利用される清涼飲料水についても私の考えを述べることがあると思いますが、ラベルの表示ぐらいは気にしてご覧いただきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

 

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

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