山ちゃんの食べもの考

 

 

その262
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【119】
 
生田 哲  著   PHP新書
『食べ物を変えれば脳が変わる』
その8
 
 
第4章 脳にいい食べ物
 
知能や記憶力は頭の良さ、気分は性格によるものです。
遺伝子にとって決定づけられていると思われがちである。
だが、これは大きな誤りであると思う。
あなたの知能、記憶力、気分はいくつになっても改善できる。
 
脳が快適に働けば頭脳明晰となり、知能が高まる。
頭がすっきりし、気分がよくなれば、日々の生き方や性格も変わるはずだ。
 
では、すべての人の知能、記憶力、気分は栄養素の摂取によって向上するのだろうか。
残念ながらそうではない。
ビタミンやミネラルを大量に摂取することで劇的な効果があらわれるのは、日ごろ、最適な栄養素を摂取していない人たちだけである。
 
言い換えるなら、もし、すでに栄養素の摂取が理想的な状況にある人が、さらに栄養素を摂取したとしても、それ以上には賢くはならない。
逆に、最適な栄養素を獲得していないすべての人は、適切な栄養素の補給によって知能、記憶力、気分を高めることができる。
 
本章では、あなたの知能や記憶力を高める、集中力を持続させる食べ物、すなわち、あなたの脳にいい食べ物を紹介する。
 
 
● 知能は栄養素で高まる
 
頭の回転の速さも、記憶力や集中力をどれだけ持続できるかも、最適な栄養素の摂取によって大幅に改善できることは、本書を通してくり返し述べてきた。
 
栄養素が知能に大きな影響を及ぼすことを証明する沢山の報告がある。
1960年に発表されたアメリカのクバラ博士の研究を皮切りに、イギリスのベントン教授のグループは、ビタミンやミネラルを摂取した子ども達の非言語的IQが平均10ポイント、ある子どもは20ポイントも上昇したことを報告した。
 
 
● 知能栄養素ビタミンやミネラルのはたらき
 
ではどんな仕組みで栄養素がIQを高めるのだろう。
その答えを出したのが、イギリスの心理学者エンディ・スノウデン博士だ。
同博士は、子ども達にビタミンやミネラルのサプリメントを10週間摂取してもらったところ、言葉を通して表現される能力である言語的IQは上がらなかったが、感覚的・空間的・創造的・イメージ的な能力を計る非言語的IQは上がったことを報告した。
 
IQテストの結果をより詳しく見ていくと、どちらのテストでもサプリメントを10週間摂取した後子ども達が間違った解答をする率は、サプリメント摂取前にくらべ変わらなかったが、回答を出すスピードが大幅に上昇していた。
だが、言語的IQでストでは、すべての子どもが全問を解答したので、改善の余地はなかったのである。
 
以上のことから、ビタミンやミネラル効果は、脳の神経ネットワークを伝達物質がかけめぐるスピードを上げることができることであると推測できる。
 
 
● DHAが頭の回転を早くする
 
女性が妊娠期間中と授乳期にDHAを摂取すると、生まれてくる子どものIQが高まるコトコトは第1章で述べた。
これは、胎児や幼児の脳に必要なDHAが供給されたためである。
DHAを摂取することで、脳の神経ネットワークを伝達物質がより迅速に移動するようになり、幼児の思考のスピードが上がったと理解できる。
 
子どもの知能を調べると、母乳で育った赤ん坊は人口粉乳で育った子どもよりもIQテストのスコアが高いことは、多くの研究で明らかになっている。
また、あるグループの中でDHAを最も多く摂取した子どもは、知能だけでなく、行動においても障害が最も少ないことも確認されている。
 
アメリカでは子どもの脳の発育にDHAが欠かせないこと、DHAは人口粉乳より母乳に多く含まれていることが周知されるようになっている。
この成果があらわれたのだろう。
 
CDC〈米疫病対策センター〉の発表によると、アメリカで2005年〜2006年に出産した女性のうち77%が赤ん坊を母乳で育てていることが明らかとなった。
1993年〜1994年の調査では60%だったから、10年間で20%近くも跳ね上がったことになる。
 
わが国の状況はというと、2002年、厚労省が発表した子どもの授乳状況によれば、「母乳のみ」で育てた母親は20.9%に過ぎなかった。
母乳で育てられる赤ん坊の割合が5人に1人と極めて低いのは、子どもの脳の発育の観点から気がかりである。
 
赤ん坊のためにベストなDHA食は母乳である。
もともと母乳はDHAが豊富なのだが、母親が青魚やアマニ油を多く摂取すると、さらにDHAはリッチになる。
だから、女性は積極的に青魚やアマニ油を摂取してほしい。
 
DHAは子どもだけでなく、成人の知能を高めるのにも有効と思われる。
また、うつを改善する効果も実証されているので、老若男女を問わず、積極的に摂取するのがよい。
では、DHAをどのくらい摂取すればいいかというと、1日に250〜500mgとされる。だから2日に1度、DHAを多く含んだサンマ、サバ、イワシ、サケなどを食べるとよい。
もし、あなたが心に問題を抱えているなら、この2〜5倍を摂取するのが望ましい。
 
■ DHAを多く含む魚類
可食部100gあたりの含有量〈単位:r〉

マグロ〈脂身〉   2900
サバ         1800
サンマ        1400
ウナギ        1300
マイワシ       1000
にしん         840
サケ          800

シシャモ        750
アジ           750
ホッケ          600
スズキ          300
タラコ          200
マグロ(赤身)     100

 
 
 
● 集中力を持続する
 
せっかく獲得した高い知能を長期的なものにするには、集中力の維持が欠かせない。
それには、まず血糖値を安定させることが大切だ。
 
もしも、甘いスナックやケーキ、甘いコーヒーやジュースをどんどん口にすると血糖値はグングン上がり、インスリンが大量に放出され、血糖値が急激に下がる。
こうなると脳がガス欠状態になり、集中できるわけがない。
しかも、血糖値を上げるために放出されるアドレナリンのせいで、イライラし、攻撃的にもなる。
 
血糖値の急激な落ち込みを避けるポイントは、甘いものをドカ食いしないことに尽きる。
その代わりにスローリリースの糖類を食べるようにしたい。
 
整理するとあなたの知能を高める食べ物は以下のとおりである。
? スローリリースの糖類を中心に食べて、血糖値を一定に保つ。
? 最適量のビタミンとミネラルを食事とサプリメントから摂取する。
? 必須脂肪酸のオメガ3、とりわけ、DHAの摂取を増やす。
それには、亜麻仁油、シソ油、青魚がお勧め。
不足分は魚油のサプリメントで補うようにした。
 
 
● 記憶力を高める
 
もし、以前より記憶力が落ちた、集中力が続かない、心が晴れないなどと感じるようなら、もしかすると「脳の衰え」が起こりつつあるのかもしれない。
 
少なくとも、あなたの脳は本来のベストな状態ではない。
加齢によって少しずつ記憶力を低下させている可能性もある。
もし、この状態を放置すれば、高齢になったときにアルツハイマー病を発症させ、記憶力を失うリスクが高まる。
 
しかし、失望するには及ばない。
なぜなら、記憶力の低下は避けることができるからである。
それどころか、記憶力はいくつになっても改善することができる。
 
多くの研究から、健康、最適な栄養、適切な教育を受けた人は、加齢によっても記憶力の減退がそれほど起こらないことが判明している。
脳の神経細胞は加齢によって死ぬが、いくつになっても神経細胞は誕生することも確認されている。
要は、適切な栄養素と正しい情報をあなたの脳に供給すればよいのである。
 
ここであなたの記憶力を採点してみよう。
以下の問いに当てはまれば、□にチェックし、その数を点とする
 
□ あなたは記憶力が減退してきているように感じますか。
□ あなたは集中力を維持するのが難しくなってきていると思いますか。
□ 時々、自分が話そうとしていることが何だったのか忘れることがありますか。
□ 新しい事を学ぶのに、以前に比べ時間がかかるようになったと自覚しますか。
□ 足し算や引き算を紙に書かないとできなくなりましたか。
□ 時々、心の疲れを感じることがありますか。
□ よく知っている人の顔を見ても名前を思い出せないことがしばしばありますか。
□ 過去の事はよく覚えているが、昨日の事を覚えていないことが自覚できますか。
□ 今日が何曜日かわからなくなることがありますか。
□ 鍵を置き忘れることがありますか。
□ 探し物をしていて、何を探しているのか忘れることがありますか。
□ あなたの友人や家族は、あなたが以前より忘れやすくなったと思っていますか。
 
1点〜4点
あなたの記憶力と集中力は非常によい。
 
5点〜10点
あなたの脳の衰えがはじまったようだ。
これから紹介する食事とサプリメントの摂取を実践することで、記憶力と集中力を高めよう。
 
11点以上
あなたの記憶力と集中力にはっきりした衰えが見られる。
改善するために直ちに行動に移らねばならない。
 
 
● 記憶はどのように貯えられるか
 
記憶は脳内のどこか1か所に貯えられているのではなく、数か所にシナプスのネットワークとして存在すると考えられている。
神経細胞を木の幹とすると、幹には多数の枝が生えて伸びている。
この枝のことを樹状突起という。
新しいことを学ぶことによって、樹状突起が伸び、隣接する神経細胞の樹状突起とつながる。
こうして新しいシナプスができる。
 
シナプスは新しいことを学ぶことによって、どんどん密になっていく。
1つの神経細胞に1万もの樹状突起が生えているから、脳内のシナプスの数は数10兆個を軽く超える。
たとえば、おもちゃの多い恵まれた環境におかれたネズミは、4日以内に新しい樹状突起をつくり始める。
こうしてシナプスが増え、脳に情報が記憶されるのである。
 
ちょうどこれと反対の作用をもたらすのが、ストレスである。
ストレスホルモンのコルチゾールが大量に放出されると、樹状突起がしなびる。
シナプスが弱くなる。
ストレスによるこのマイナス効果は、短い場合では2週間以内にあらわれる。
 
幸いなことに、しなびた樹状突起はコルチゾールの大量放出がやむと再びもとにもどる。
また、特定の記憶を使わないケースも樹状突起はしなびるが、使用するとまた伸びて、シナプスは強化される。
 
記憶において、とりわけ大事なのが脳の奥深くにある海馬である。
膨大な量の情報が脳に入ってくるのだが、そのすべてを貯えていては脳の記憶能力を軽く超えてしまう。
 
だから、その情報が脳に貯蔵するのに値するものかどうかを判断しなければならない。
その箇所が海馬なのである。
海馬が能力を著しく失っているアルツハイマー病患者は、新しい情報を記憶することができない。
 
情報はどのように貯蔵され、読み出され、他の情報と結びつけられるのか。
その鍵を握るのが、海馬に多く含まれているアセチルコリンである。
アルツハイマー病を発症した人の脳内では、アセチルコリンレベルが、とくに海馬のあたりで著しく低下している。
 
たとえ記憶力が極端に落ちていなくとも、アセチルコリンが不足すると、ある箇所の記憶を別の場所の記憶と結びつけることが困難になる。
たとえば、顔はわかるのだが名前が思い出せないなどということになる。
 
 
● 記憶力を高める天然の物質
 
あなたを記憶力の衰えから守るベストの方法をこれから紹介しよう。
まず、ビタミン、ミネラル、脂肪を最適に摂取することである。
次に、脳がつくる5つの栄養素と2つのハーブも摂取するのがよい。
 
 
■ アセチルコリンをつくるフォスファチジルコリン
記憶力の衰えの第1の要因は、アセチルコリンの不足だとされている。
それなら、アセチルコリンを食べれば記憶力を高められるのか。
残念ながら、うまくいかない。
なぜなら、アセチルコリンは、血液−脳関門という脳の関所を通過できないからである。
脳に作用するには、脳に入ることが絶対条件である。
 
そこで作戦が必要になる。
アセチルコリンは、コリンにアセチル基という酢酸の単位がくっついてできたものだから、コリンを食べれば、体内でアセチルコリンに変換してもらえるのではないだろうか。
これは名案に思えるが、せっかくコリンを食べても、腸内の酵素によって分解されてしまうため、うまくいかない。
 
しかし、である。
リン脂質の一つ、フォスファチジルコリン〈PC)を食べれば、酵素がアセチルコリンにモデルチェンジしてくれる。
これで、アセチルコリンが脳に届く。
 
あなたの脳のはたらきを最大にするのに、1日1〜2gのPCを摂取することをお奨めする。
フロリダ大学のフローレンス・サフォード教授は、PCをサプリメントで摂ることで中高年の記憶力が高まることを報告した。
 
同教授が、50〜80歳代で記憶力に難点のある41人に毎日500mgのPCを5週間摂取してもらったところ、人の名前が思えだせない、物忘れするなどの間違いが半減した。
 
「レシチン」と言う名前で市販されているサプリメントには、PCが約20%含まれている。
だから、必要なPCをサプリメントだけで摂るとなると、1日に5〜10gのレシチンを摂らねばならない。
だから、まず鶏卵、大豆食品、魚類を食べてPCを摂るようにして、不足分をサプリメントで補給するのがよい。
 
PCが脳内の酵素によってアセチルコリンにモデルチェンジされる際に、パテント酸、ビタミンB1、B12、ビタミンCが欠かせない。
これらの栄養素も一緒にとるようにしたい。
 
■ フォスファチジルコリンを多く含む魚類
可食部100gに含まれるフォスファチジルコリン(OC)のグラム数
鶏卵      10.2
ダイズ      9.0
エダマメ     6.6
豆腐      5.6
納豆     10.0
 
 
 
■ 細胞膜の主成分フォスファチジルセリン
もう一つのリン脂質、フォスファチジルセリン(ps)も記憶力を高める。
PSは、PCと同じように、アセチルコリンの材料になるのだが、それよりむしろ神経細胞の受容体を支える良質の膜になることで、記憶力を増強するようだ。
 
こういうことだ。
脳における情報は、神経細胞から放出された伝達物質が標的となる神経細胞の受容体にキャッチされてはじめて伝わる。
だから、情報の伝達は、伝達物質の量だけでなく、受容体を支える膜の成分は、リン脂質、必須脂肪酸、タンパク質だが、最も多いのがPSである。
このPSを摂取すると、一方の神経細胞から放出された伝達物質を片方の神経細胞の受容体がキャッチする能力が高まり、記憶力が増すのだ。
 
PSをサプリメントで摂取することで、学習障害の学習能力が高まり、加齢による記憶力の衰えのある人の記憶力が改善したことが確認されている。
 
アメリカ・メリーランド州にある「記憶改善クリニック」のトーマス・クルック博士は、PSが、加齢による記憶障害の患者の脳を12歳も若返らせたと報告した。
62歳の記憶障害者なら50歳の脳年齢に若返るということだから、その意味は大きい。
 
まず、50〜75歳の、加齢による記憶障害者の149人を2グループに分け、一方に1日300mgのPS、もう一方に偽薬を12週間摂取してもらった。
そして人の顔を名前を一致させる記憶力テストを行ったところ、PS摂取グループは偽薬グループにくらべ、大幅な改善が見られた。
この成果は治験を終えPSの摂取をやめても4週間も持続した。
 
 
■ イワシに含まれる脳の活性剤DMAE
イワシが勧められるのはDHAが豊富なためだが、もう1つ、ジメチルアミノエタノール、通称DMAEという栄養素も忘れてはならない。
 
DHAEはPCやPSと同じようにアセチルコリンの原料になるが、コリンとは異なり血液-脳関門を用意に通過することも、脳内におけるアセチルコリンの生産に有利にはたらいている。
 
DMAEには不安を抑え、イライラを鎮める効果がある。
一方、アセチルコリンは集中力を高め、学習能力を向上させる。
DMAEが能力を高めるサプリメントとしてかなりの人気があるのはこのためだ。
 
脳の興奮薬リタリンは、多動児の治療に用いられている。
DMAEもこの目的で利用されることが多く、かなりの効果を発揮している。
カリフォルニア州のバーナード・リムランド博士によると、DMAEは多動の治療にリタリンの2倍も効率があり、しかも副作用がないという。
 
記憶力の増強を目的にしたケースでは、DMAEの摂取量は1日100〜1000mgとされている。
 
 
■ 脳のコミュニケーション力を高めるピログルタミン酸
ピログルタミン酸は、記憶力や認知能力を増強する鍵になるアミノ酸だ。
これはグルタミン酸の兄弟である。
グルタミン酸の2個のカルボンさんの1つとアミノ基が水分子が抜けて、5角形になってできた分子である。
 
ピログルタミン酸は脳や脳脊髄液に大量に含まれているため、おそらく必須の栄養素ではないかと考えられ、研究が進められた。
 
その結果、ピログルタミン酸には、脳内のアセチルコリン酸を増やすことと、右脳と左脳のコミュニケーションをスムーズにするという2つの効果があることがわかった。
 
また、ピログルタミン酸に構造がそっくりのピラセタムというヨーロッパで繁用されている認知機能改善薬を老ネズミに2週間与えてから解剖すると、脳内のアセチルコリン受容体が4割も増えていたことが確認された。
このことから、ピログルタミン酸は、アセチルコリンの受容体を増やすと推測されている。
 
というわけで、ピログルタミン酸には、記憶力を高めるばかりか、加齢によって減少したアセチルコリン受容体を増加し、神経ネットワークを再活性化する効果が期待されている。
 
神経ネットワークにおける伝達物質のやりとりをわたし達の会話にたとえると、伝達物質アセチルコリンを増やすのは「話す」、アセチルコリン受容体を増やすのは「聞く」の強化といえる。
右脳と左脳のコミュニケーションを円滑にするのは、右脳と左脳の協力関係を増強することにほかならない。
 
現在ヨーロッパの製薬会社はピログルタミン酸によく似た物質をどんどんつくり、記憶力や認知能力の改善薬として開発しようとしている。
 
イタリアのカタリナ大学の研究者は、加齢による記憶障害にピログルタミン酸を2ヶ月間摂取してもらったところ、偽薬グループに比べ、記憶力が著しく改善されていたことを報告している。
 
ピログルタミン酸は、魚類、乳製品や野菜や果物に多く含まれる。
サプリメントで最も多く販売されるのは、アルギニンをくっつけた「アルギニンピログルタミン酸」である。
記憶力を増強するには、1日400〜1000mgの摂取が推奨されている。
 
 
■ 脳のガソリン、グルタミン
記憶をつかさどる伝達物質の主役はアセチルコリンであるが、もちろん、これ以外の伝達物質もかかわっている。
ある伝達物質は脳を興奮させるアクセルであり、別の伝達物質は脳の興奮を抑止するブレーキとなっている。
両者のバランスが大事なのである。
 
アクセルの伝達物質のひとつグルタミン酸は、記憶の貯蔵を助けるがこれが多くなりすぎると神経細胞の興奮が限界を超えて死に至る。
グルタミン酸ナトリウムが、少量では無害で調味料として働くのだが、大量に摂取すると脳に悪影響を及ぼすのはそのためだ。
 
ピログルタミン酸が記憶力や学習能力を大幅に高める一方で、その親戚であるギャバは神経細胞の興奮を抑えるという反対の働きをする。
学習効果や記憶、それから清らかな心を保つには、伝達物質のバランスが大切なことがわかる。
 
グルタミン酸は脳脊髄液に最も多く含まれているアミに酸であって、しかも、脳はブドウ糖と同じようにこれを直接のエネルギー源として利用できる。
実際に、グルタミン酸を摂取すると気分が向上し、記憶力が高まることが確認されている。
 
グルタミン酸の安全性はどうだろうか。
これについてボストン市のツィグラー博士の報告がある。
健康なボランティアに1度に40〜60gを摂取してもらったが、マイナスの副作用は見られなかったという。
プラスの副作用は記憶力が高まったことだ。
 
別の研究者は、骨髄移植患者にグルタミン酸を摂取してもらったところ、元気が出て、怒りにくくなり、疲労感が減少したと述べている。
 
グルタミン酸は、ライ麦パン、小麦、カシューナッツ、ゴマ、ヒマワリの種、ピーナツ、ダイズに豊富だ。
粉末のサプリメントも安価に入手できる。
1日に5〜10g摂るのがよい。
 
 
■ メモリーハーブのイチョウ葉
数千年前から東洋で、記憶力を増強するために利用されてきたのが、イチョウ葉だ。
多くの研究から、イチョウ葉エキスには加齢による記憶障害を改善し、頭の回転を速くし、落ち込んだ気分を高める効果があることが確認されている。
 
これには2つの理由がある。
一つめは、イチョウ葉エキスが脳の血液量を増加させることによって、神経細胞の栄養源であるブドウ糖とそれを燃焼させ、エネルギーに変換する酸素の供給を増やすからである。
 
もう一つの理由は、イチョウ葉エキスには神経細胞や血管を活性酸素から守る効果があるからである。
神経細胞や血管にダメージを与える活性酸素は、老化、がん、脳卒中、心筋梗塞などの現況となっている。
この活性酸素を分解する生体の強い味方が、イチョウ葉エキスに含まれるフラノボイドやポリフェノールなどの抗酸化物質なのである。
 
イチョウ葉エキスのおもな成分は、クエルセチンやケンフェロールなどのフラボノイド(含有量24%)、ジテルペンやギンコライドやビルボライドなどノテルペノオド〈含有量6%〉、ギンコールさん、ポリフェノールなどである。
 
当初、成分の24%を占めるフラノボイドが有効成分と思われていたが、後になってギンコライドやブルボライドが脳を目覚めさせ、気分をすっきりさせる物質であることが判明した。
 
イチョウ葉エキスを摂取することのよって、認知症患者の記憶障害を改善させることを目的とした研究が、ヨーロッパ諸国、とりわけ、ドイツとフランスを中心にすすんでおり、期待が持てる結果がすでにいくつも発表されている。
 
1996年、ドイツにあるベルリン自由大学高齢神経科の課ノースキー教授は、軽度から中程度の認知症患者216人を対象にしたイチョウ葉エキスの効果を発表した。
 
それによると、1日240mgのイチョウ葉エキスを1年間摂取したグループは、偽薬を同期間摂取したグループに比べ、注意力と記憶力が明らかにすぐれていた。
 
また、こんな例もある。
68歳のエミリー(仮名)は元会社員で、結婚生活は35年目、彼女の仕事は60歳で定年を迎えるまで順調であった。
だが、最近の8ヶ月、家族は彼女の記憶が定かでないことや行動がおかしいことに気づいた。
 
ある日、彼女は車を運転して遠く離れたホテルに着いたが、どのようにして着いたのか、なぜそのホテルにいったのかは思い出せなかった。
安全を心配した家族は、彼女の運転免許証を取り上げた。
 
また、彼女は鏡を見ると誇大妄想に陥り、不審者が忍び込んでくるといってはおびえた。
さらに彼女の記憶力は次第の衰えていった。
 
心配になった家族は、彼女をデューク大学の病院に連れて行った。
詳しい検査の後で、医師は彼女を認知症と診断し、アリセプトを処方した。
だが、数ヶ月たっても効果は見られないどころか、判断力も鈍くなっていった。
 
そこで医師がイチョウ葉エキスを1日180mg、後に240mg処方したところ、6ヵ月後から記憶力の低下はすっかりおさまった。
そして彼女は今、人生の伴侶であった夫の死という辛い出来事にもめげず、元気にゴルフを楽しんでいる。
 
 
■ 記憶力を改善するビンポセチン
ビンポセチンは、1960年代にハンガリーで開発され、ヨーロッパでは「カビ屯」と言う名前で「記憶力の向上」や「認知症の改善」を目的に販売されている医薬品である。
だが、アメリカでは医薬品としてではなく、サプリメントとして販売されている。
 
もともとビンポセチンは、ツルニチニチソウの葉から発見されたビンカミンというアルカロイドの形を少しだけ変えた新規物質で、記憶力の増強や認知障害の治療に利用されてきた。
 
わが国では脳循環改善薬として、めまい、頭重、頭痛などの改善を目的に用いられていたが、再評価の結果、顕著な効果が確認できなかったため、2001年市場から回収されたという経緯がある。
 
新しい治療を実行するための費用と、その後の利益を天秤にかけた末の商業上の判断と思われる。
 
ビンポンセチンの記憶力を改善する効果は、沢山報告されている。
その一つはイギリスのヒンドマーク博士によるもので、中程度の認知障害者203人にビンポセチンを1日30または60r、あるいは同量の偽薬を16週間摂取してもらったところ、ビンポセチン摂取者は偽薬摂取者に比べ、認知能力に著しい改善が認められたが、副作用は認められなかったという。
 
また別の論文で同博士は、ある患者がビンポセチンを40mg摂取したところ、1時間後に記憶力が改善したと報告している。
 
ビンポセチンは、記憶力や集中力の低下、以前に比べ学習に時間がかかるようになったと自覚している人に効果的とされている。
また、多くの研究からビンポセチンは、脳の毛細血管で小さな血栓が形成されるミニ梗塞が起こり、脳への血流が低下したときにも有効とされている。
 
また、イチョウ葉エキスと同じように、ピンボセチンは血液の流れが滞ることで発生する耳鳴りにも効果的と報告されている。
 
ピンボセチンは3つの仕組みで効果を発揮する。
最初の2つは、脳への血流量を増加させることと、脳の毛細血管を拡張することである。
このため、赤血球が毛細血管を通過し酸素を効率的に組織に届けることができる。
それに加え、ビンポセチンは血小板の凝集を防ぎ、血管内で血栓ができるのを阻止する働きもある。
 
また、脳の健やかなはたらきを維持するには、脳に酸素をしっかる供給するだけでなく、神経細胞が十分なエネルギーを生産しなくてはならない。
ビンポセチンには、脳のエネルギー生産を高めることも確認されている。
 
さらにビンポセチンには、ブドウ糖と酸素の輸送スピードを高めることで、ミニ脳梗塞のダメージを軽減する効果もある。
 
3つ目は、ノルアドレナリンを放出させることによる効果である。
ビンポセチンには脳の背班核と呼ばれる箇所に働きかけ、ノルアドレナリン神経を興奮させる。
ノルアドレナリン神経は計画、判断、実行をつかさどる前頭葉に伸びているから、ビンポセチンの摂取によって前頭葉の活動が高まる。
ノルアドレナリン神経の数は加齢によって減少し、集中力、注意力、脳における情報処理のスピードが落ちていく。
これを抑えるには、1日10〜40mgのビンポセチンを摂取するのがよいとされる。
 
 
■ ビタミンB群と亜鉛も忘れずに
糖類を分解してエネルギーをつくるのに大活躍するのが、ビタミンB群であることは第2章で述べた。
だから、元気を出すにも、脳を活性化するにも、B群を十分に摂取するのが先決だ。
 
記憶力に関してとりわけ重要なのが、ナイアシン、パンテント酸、ビタミンB6、ビタミンB12。
中でもビタミンB3と呼ばれるナイアシンは、記憶力を高めるのに大きな力を発揮する。
多くの研究論文が発表されているが、ここでは、ドイツのロリアクス博士の成果を紹介しよう。
 
まず、健康な96人を35〜45歳、55〜65歳、75〜85歳の3グループに分け、それぞれのグループに1日141mgのナイアシンあるいは偽薬を8週間摂取してもらった。
 
その後で記憶力テストを行ったところ、3つのグループすべてにおいて、ナイアシングループは偽薬グループにくらべ記憶力が10〜40%も改善されていた。
 
パントテン酸は、脳がコリンに酢酸の単位であるアセチル基をくっつけて記憶物質アセチルコリンをつくるのに欠かせないだけでなく、ストレスホルモンのコルチゾールの生産でも活躍する。
だから、パンテント酸はストレスの多い人にとって大事な栄養素だ。
最適な摂取量は最大で1日200mgとされる。
この値は、日本人の1日所要量17mgよりはるかに高い。
 
ビタミンB12については、これが豊富なエサを摂取したネズミの学習能力が高まること、神経細胞の健やかな成長に欠かせないことが判明している。
B12は、メチオニンについているメチル基をDMAE、PC、PSに移動することでコリンをつくる。
 
アミノ酸を別のアミノ酸にモデルチェンジするのがビタミンB6だ。
このはたらきによって、セロトニンやメラトニンもつくられている。
 
ビタミンB群は互いに協力して働き、脳が伝達物質をつくるのを助けている。
そのため、B群をいっしょにとるのが合理的である。
あなたが特定のビタミンBを取る際は、B群複合体やマルチビタミンの摂取も忘れないようにしよう。
 
亜鉛は脳の友達で、記憶に深くかかわるミネラルである。
亜鉛が不足すると、夢を思い出せないことが多い。
学習障害児の多くは、血液中の亜鉛レベルが低いこと、また亜鉛不足が高齢者の記憶障害を悪化させることも知られている。
逆に、亜鉛不足を解消すると、うつや統合失調症に顕著な改善が見られることがある。
 
亜鉛の豊富な食べ物としては、魚介類では、魚、カキ、ホヤ、ツブ貝など。
肉類ではレバー、鶏卵。
種や種を含んだ食べ物にも亜鉛は多い。
それは、植物でも動物でも成長するには亜鉛が欠かせないからである。
このため種類、豆類、ナッツ類はすべて亜鉛が豊富ということになる。
とりわけ亜鉛が豊富なのはカキだ。
 
これらの食べ物を食べ、毎日10mgの亜鉛を補給すれば、亜鉛については最適な栄養状態にあるといっていい。
 
ここで、脳を快適に働かせる助けになる栄養素を以下にまとめる。
第2章に紹介した栄養素に加えて、これらの栄養素を必要に応じてとるとよい。
 
毎日、鶏卵、ダイズ、エダマメ、豆腐、納豆のどれか一つを食べるようにし、PCを摂取するようにしよう。
 
 
最後に一つアドバイスを。
毎日、新しいことを学び、あなたの脳を活用しよう。
もしあなたが脳を十分に使わないようなら、脳はその能力を不要なものとみなし、その能力を失ってしまうからである。
 
 

 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

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