山ちゃんの食べもの考

 

 

その264
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【121】
 
生田 哲  著   PHP新書
『食べ物を変えれば脳が変わる』
その10
 
 
第6章 脳をダメにする物質と、その解毒法 の1
 
● 脳を汚染物質から守る
 
ある調査によると、最近の50年間で3500種類もの人口物質が食品に添加されてきたという。
それに加え、3000種類もの新しい物質が建材や日用品として入ってきた。
鉛やカドミウムといった重金属は、21世紀の私たちの暮らしのどこにでも存在する。
現代人の身体には昔の人にくらべ、約700倍もの重金属が蓄積されているとまで言われいる。
 
また、わたしたちが口にする穀物、野菜、果物は、殺虫剤や除草剤がたっぷりかけられて育てられたものである。
食卓にのる肉類にしても、こうしてできたエサを食べて育てられた動物の肉なのだ。
養殖の魚介類だって、多くの抗生物質でいっぱいの水槽で育てられている。
 
これらの有毒物質はわたしたちの脳と身体にさまざまな悪さをする。
ここでは「抗栄養素」と呼ぶことにする。
 
どんな悪さかというと、たとえば、必須栄養素の人体への吸収を妨げたり、吸収された必須栄養素の利用を妨げたり、あるいは必須栄養素の人体からの排泄を促したりする。
 
抗栄養素のカクテルがわたしたちの心の健康に与える影響については、まだ明確な答えが出ていない。
しかし、鉛やカドミウムといった重金属、その他の有害物質を大量に摂取すれば、知的能力や行動に壊滅的なダメージを受けるということは、誰でも容易に想像がつく。
 
これまでの経験からわかっているのは、抗栄養素を摂取すると、気分の低下、衝動コントロールの欠如、攻撃的な行動、集中力の欠如、うつ、無気力、睡眠障害、記憶障害、知的能力の衰えなどを引き起こすということである。
 
ここで述べたような症状が起きた場合、どうすれば脳と心の健康を回復させることができるだろう。
まず第一に、こう栄養素のレベルを測定することである。
もしそれが高い値を示すなら、まず、大量の抗栄要素が摂取された原因を特定し、その原因を取り除かねばならない。
そして次に、抗栄養素を体内から取り除く「解毒」をするとよい。
 
それではこれから、抗栄養素とその解毒法についてみていこう。
本書で取り上げる抗栄養素の代表は、鉛、カドミウム、水銀、アルミニウム、銅、合成着色料である。
 
 
● 悩みの種、鉛
 
鉛は古代から白色顔料などさまざまな方面で使われてきたが、今でも、電池の電極、合金製分、鉛ガラス、ブラウン管など多方面に利用されている。
鉛は私たちの身の回りに存在する、悩みの種といってよい。
 
かつて鉛はオクタン価を高めるためガソリンに添加されていて、排気中に鉛が含まれるため、汚染源になっていた。
こうしたことから1980年代になると、日本などの先進諸国で有鉛ガソリンは使われなくなった。
 
しかし、現代でもまだ50カ国近く出有鉛ガソリンが使われているので、その排気ガスに含まれる鉛が水や空気を汚染している。
また、日本でもまだ一部で鉛製水道管が使用されている。
 
白いペンキにも鉛が含まれている。
かつてアメリカの街で、ペンキをむしりとり、口に入れてチューインガムのように噛む遊びが流行し、鉛中毒になる子供が続発したことがある。
嘔吐、腹痛、ショック、貧血などの症状が生じた。
もちろん、脳にも悪影響を及ぼし、神経障害が発生した。
 
古代ローマ帝国には、ワインが鉛汚染されていたことも知られている。ワインを室温で保存しておくと酢酸菌が増殖し、酸っぱくなる。
ところが酒屋が、この酸っぱいワインを鉛でコーティングした鍋に入れておくと、酸味が取れて甘くなることを発見した。
 
これは名案と、ローマ全体でこの方法が採用された。
だがその直後、異変が生じた。
鍋から溶け出した鉛が、酢酸と化学反応して酢酸鉛ができたことで、酸っぱさはなくなったのだが、酢酸鉛を摂取した人に、鉛中毒の症状が現れたのだ。
悪名高いネロの暴政は、実は、鉛入りのワインのせいではないかという説さえある。
 
なぜ、鉛は有毒なのだろう。
鉛は化学的に、カルシウム、鉄、亜鉛と性質がとてもよく似ている。
にて非なるものは、互いにライバル関係になりやすい。
すなわち鉛はこれらの鉛を補因子とする酵素の働きを妨げるのだ。
 
一例をしめそう。
亜鉛があってはじめて実力を発揮するアミノレブリン産脱水酵素は、赤血球に含まれるヘモグロビンの中心にあって酸素を運ぶヘムをつくるのに欠かせない。
だが、鉛が亜鉛を押しのけてこの酵素にくっつくので、酵素は仕事ができず、ヘムがつくられない。
こうして鉛中毒による貧血が発生するのだ。
 
ここまでは鉛を高レベルで摂取したときの中毒についての話だが、たとえ低レベルであっても、脳の災いをもたらすことには代わりはない。
それを次に見ていこう。
 
 
● 鉛は学習障害を引き起こす
 
カリフォルニア工科大学のコクレア・パターソン教授のグループは、世界各地の海底、土壌、雪に含まれる鉛のレベルを測定し、報告した。
それによると、鉛のレベルは、汚染が極端に少ないとされるグリーンランドにおいてさえ、有史以前に比べて500〜1000倍も高くなっていた。
 
また、私たちの骨に含まれる鉛のレベルは、1600年前のペルー人の骨に比べて、700〜1200倍も高くなっていた。
この鉛レベルの上昇は、私たちの健康にどのような影響を及ぼすのだろう。
 
鉛の毒性は、大人よりも子どもに現れやすい。
とりわけ、鉛による精神障害は12歳までの子どもの発生するケースが多い。
 
子どもに最も多くあわわれる症状は、集中力の欠如、不規則な夜の睡眠、キレる、食物の好き嫌いの激しさ、鼻炎、頭痛などである。
ちなみに、成人にあらわれやすい症状は、心と身体の脱力感、不眠、イライラ、混乱、不安、幻覚、うつ、頭痛、けいれんなどである。
 
とりわけ、鉛は子供に学習障害を引き起こすことがわかっている。
最近の研究でこの仕組みが明らかになった。
記憶を増強し、確かなものにするには、海馬の神経細胞の表面についているNMDA受容体という巨大なタンパク質でできたキャッチャーが、伝達物質のグルタミン酸をキャッチすることが前提である。
だが、鉛はNMDA受容体に優先的にくっついて、グルタミン酸をキャッチさせないため、記憶障害が発生するのだ。
 
 
● 鉛の蓄積で子どもの落ち着きがなくなる
 
鉛が子どもの脳に悪影響を及ぼすことを最初に証明したのは、ピッツバーグ大学のハーバード・ニードルマン教授である。
 
同教授は、アラバマ州バーミンガム氏の小学1年生と2年生、2146人を対象に、抜けた乳歯を検査するとことで、鉛レベルを測定した。
長期間にわたる鉛の蓄積を知るには、歯に含まれる鉛濃度を分析するほうが血液検査するよりも適しているのだ。
 
そして鉛の濃度によって、5.1ppm以下のいちばん低いレベルから、いちばん高いレベル<27ppm以上>まで、6グループに分けた。
 
次に、同教図は、この子どもたちを2ヶ月間教えたことのある教授に、子どもたちの教室での態度や行動を評価してもらった。
 
調査項目となった子供たちの態度や行動は、落ち着きがない、持続性がない、依存心が強い、整理・整頓ができない、動き回る(多動)、衝動的に行動する、イライラする、ぼんやりしていることが多く先生の指示に従えない、などである。
なお、この調査では、子供を評価する先生たちの主観や偏見を取り除くため、子どもの鉛濃度の情報は先生たちに与えられなかった。
 
同教授は、これらの項目に該当する子どものパーセンテージを、鉛濃度の6グループごとにブロックした。
その結果、鉛濃度と教室の悪い態度や行動の間に、あまりに見事な相関関係が確認された。
 
すなわち鉛濃度が高くなるほど、落ち着きがない、持続性がない、依存心が強い、整理・整頓ができない、動き回る(多動)、衝動的に行動する、イライラするなどの項目に該当する子どものパーセンテージが上がるのである。
 
 
● 子どものIQが下がる
 
さらにニードルマン教授は、鉛濃度の高い子どものIQは、鉛濃度の低い子どもにくらべ、平均4.5ポイントも低いことを明らかにした。
それからショッキングなことに、通常IQ125を超える子どもは全体の5%存在するのだが、鉛濃度が高い子どもではゼロであった。
 
他の実験例も紹介しよう。
ロンドン大学のウィリアム・ユリ教授のグループは、ロンドンの小学生の血液中の鉛濃度と、読み、書きの能力、IQを調べた。
対象となった160人の子どもたちの鉛濃度は、血液100ml中に7〜33マイクログラムであった。
 
こんな結果となった。
子ども達の読み、書きの能力、IQは、鉛濃度が高くなるほど低くなった。
ユリ教授の結果はニードルマン教授のものより劇的で、鉛濃度の低いこと高い子で、IQの違いは7ポイントもあった。
IQ125を超える子どもは、高濃度ではやはりゼロであった。
 
 
● 喫煙による脅威、カドミウム
 
脳と心の健康を妨げ、攻撃性を高めるもう一つの重金属がカドミウムである。
カドミウムは、亜鉛と性質がよく似ているため、亜鉛に間違われて生体に取り込まれてしまう。
特に亜鉛レベルが低いときには取り込まれやすくなる。
 
しかも、カドミウムはタンパク質とくっつきやすいため、いったん蓄積するとなかなか排泄されない。
体内に入ったカドミウムの3分の1は腎臓に、6分の1は肝臓に蓄積する。
 
カドミウムを大量に摂取すると、骨の成分であるカルシウムが流出し、折れやすくなる。
カドミウム中毒の重症患者は、鋭い骨の痛みに苦しむため、「イタイイタイ病」と名づけられたことはよく知られている。
 
イタイイタイ病は、岐阜県にある三井金属鉱業の神岡鉱山が、長きにわたり鉱排水を無処理で川に流していたカドミウム中毒が原因であることが明らかになった。
今ではこのようなことはなく、これほど大量のカドミウムを摂取することもない。
 
だが、カドミウムは今なお微量ではあるが、環境中に排出され続けている。
その発生源はタバコである。
タバコを1日に10本すえば、1〜2マイクログラムのカドミウムが身体に蓄積する。
また、たとえ自分が喫煙しなくとも、周りの誰かのタバコから排出された煙の中にカドミウムが含まれている。
私たちは受動喫煙によって、カドミウムを強制的に摂取させられているのである。
 
タバコの煙のわずか15%が喫煙者によって吸われ、残りの85%は大気中に放たれ、周りの人が吸うはめになる。
だから、公共施設においてすべて禁煙にするのは当然の策なのである。
 
また、カドミウムは車の排気ガス中にも、微量だが食物中にも含まれる。
 
 
● 神経毒性が強い水銀
 
水銀は猛毒の重金属で、微生物の成長や増殖を妨げる。
水銀を含む医薬品のちオメルサールやマーキュロクロムが殺菌作用を示すのは、細菌にあるタンパク質のチオール基と化学反応することによって酵素のはたらきを止めるためである。
 
水銀は細菌だけではなく、人体にも非常に有毒で、とりわけ神経毒性が強い。
そして水銀もまたアルツハイマー病を引き起こす原因なのでは、と疑いを持たれている。
アルツハイマー病で亡くなった患者の脳の水銀レベルは、同年齢での死亡者の脳にくらべ高いことが確認されているからだ。
 
さらに付け加えるなら、スイスにあるバーゼル大学の研究者は、アルツハイマー病患者の血液中の鉛濃度が健常者の2倍以上に達していたこと、しかも若年性アルツハイマー病患者の鉛濃度が一番高かったことを報告した。
 
それでも、水銀がアルツハイマー病を引き起こす要因であるという結論にいたってない。
だが、水銀はごく少量であっても脳に脳に悪影響を及ぼすことは明らかだから、避けるべきである。
 
水銀はおもに、食物と歯科用のアマルガム充填剤から人体に入ってくる。
とりわけ、産廃廃棄物や工場排水で汚染された海から取れた魚介類には注意が必要である。
 
アマルガムは水銀の合金である。
歯科用のアマルガム充填剤は、安価で丈夫なため、欧米では19世紀から使用されてきた。
だが、どうしても水銀が少しずつ溶け出してくるため、毒性が心配されている。
アマルガム充填を受けた人は、そうでない人の6倍もの水銀が血液から検出されることもわかっている。
 
アメリカでは、自閉症のダニエル・ガレアノちゃん(6歳)の両親がカリフォルニア州歯科医師会を訴えた。
母親の口腔に施された9か所のアマルガム充填剤から溶け出した水銀が胎児に移行し、生まれてきた子どもに自閉症が発症したという。
これを受けてアマルガムは、全米で歯科充填剤から取り除かれることになりそうである。
 
 
● 水銀はマグロに多く含まれる
 
マグロやクジラは、日本人の大好きな食べ物の代表であるといえるだろう。
だが、この中に大量の水銀が含まれているから、要注意。
水銀含有量を見ると、マイワシの0、02ppmにくらべ、マグロの0、5ppm、マッコウクジラの0.7ppmとなっている。
 
マグロはマイワシの20倍、マッコウクジラはマイワシの28倍もの水銀を含んでいることがわかる。
どちらも海における食物連鎖の頂点にいるのだから、それだけ有害物質も濃縮されているというわけだ。
 
健康志向の欧米では、日本食が大ブーム中である。
ロスアンゼルスでもニューヨークでも、寿司をつくる欧米人の姿が目につく。
そんな彼らも、マグロに含まれる大量の水銀をとても心配している。
 
だが、幸運なことに、マグロには水銀のライバルであるセレンが多く含まれていることが発見された。
これで水銀の毒性が緩和されるから、やや安心したようだ。
 
気がかりなのは、日本人のほうだ。
何しろ日本人だけで、マグロの世界水揚げ量の3分の1を食べているのだから。
単純計算すると、日本人は日本人以外の人に比べて、1人あたり30倍近い水銀を摂取していることになる。
 
とりわけ、妊婦の水銀摂取量が増えるのは気がかりだ。
水銀がお腹の胎児に移行し、胎児の脳の発達に障害を引き起こす恐れがある。
最近、日本で自閉症児が増えてきたのは、妊婦によるマグロの食べすぎが一因となっている可能性があることを指摘しておく。
 
マグロばかり食べないで、サンマ、サバ、イワシ、サケといった、DHAやEPAの豊富な青魚を食べることをお勧めする。
 
 
● 認知症を引き起こすか、アルミニウム
 
アルミニウムは地球上のどこにでも存在する。
岩石、土壌、川水や海水中、空気にも含まれている。
 
アルミニウムは軽くてやわらかいので、加工しやすい。
その性質を利用し、日常生活の多くの面で利用されている。
アルミカン、アルミフォイル、湯沸かし器、炊飯がま、硫酸アルミニウムによる水道水の浄化、漬物やきんぴらごぼうへの食品添加物、歯磨き粉のチューブ、パンや菓子などの膨張剤、制酸剤として医薬などにも用いられている。
 
日常私たちが接収しているアルミニウムは人体に必須のミネラルではない。
むしろ、アルミニウム化合物が人の脳に神経毒性を持つのではないかと心配されている。
とりわけ、アルツハイマー病を引き起こす要因になっているのではと疑われている。
 
あるミニウも化合物を動物の脳内に注入すると、てんかんを起こしたり、アルツハイマー病の特徴である神経原繊維の変化が起こるからだ。
 
1970年代には、腎臓病で透析していた患者の多くに認知症が現れ、「透析痴呆」などと呼ばれた。
原因として真っ先に疑われたのが、透析液中に混入していたアルミニウム化合物や、患者が服用していたアルミニウム製剤であった。
その推測は当たっていて、それをやめると認知症の発生が止んだことから、アルミニウム化合物が「透析痴呆」の原因と特定された。
 
もともとアルミニウムは人体に吸収されにくいのだが、ある条件のもとでいくぶん吸収されやすくなる。
条件の1つめは、亜鉛不足のときである。
亜鉛不足の人は世の中の半分を占めるのではないだろうか。
 
2つめは、アルミニウムは酸性になると化学反応を起こしやすくなるから、タンニン酸を含んだ茶やトマトを煮ると、アルミニウム製のナベから食べ物や汁の中に溶け出しやすい。
 
どれほど身体にアルミニウムが蓄積しているかは、毛髪を分析すれば容易に判定できる。
もしアルミニウムレベルが高いという結果になったら、まず第一に、あなたの食生活のどこから侵入しているのかを調査するとよい。

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

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池田 優

 

 

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