山ちゃんの食べもの考

 

 

その27
 

 戦後の経済復興、高度成長と共にモノが豊かにある幸せを享受してきました。食べものの世界においても、「食べることにこと欠く」時代は遠い昔の話となり、美食・飽食を欲しいままにするまでに至りました。近代化の波は食べものの生産原理にも導入され、合理性、生産性、収益性といった効率を重視する工業的な経済効果優先の思考や手法が、あらゆる分野で競って取り入れられることになりました。農業においても、化学肥料や農薬、抗生物質やホルモン剤などを多用する化学的現代農法へ、加工食品作りでは、多種多様の食品添加物を使った大工場での人工的食品へと大きく様変わりしました。

 そして、今や私たちが日頃食するものの多くは、“自然の恵み”などと呼ぶものから程遠くなり、わずか50年前には存在しなかったか、あるいは「似て非なるもの」になっているといっても過言ではない状況です。さらには世界中の美味・珍品を買いあさり、食料輸入大国となって贅沢三昧の暮らしをしています。美食・飽食への欲求は止まるところを知らず、西洋由来の栄養学偏重の影響とともに、世界に誇るべき日本の伝統的食文化を退廃させました。

 とどまるところを知らない欲求に呼応して、食品化学と食品加工技術の発達は、化学的手法を駆使し、数限りない “簡単”“便利”“安価”な、新たなる食べものを生産し世に送り出してきました。かって、この世の中に存在したことのない化学物質・化学的手法による不自然な食べものや飲み物に、子どもたちが群がっているのです。

 子どもたちばかりではありません。国民のほとんどが疑いもなく毎日口にする食べものが、真に決して忽せにしてはならない“食は生命なり”の最も基本的な思想の下において、作られたり、商われたりしているのかどうか疑問視せざるを得ないのです。現代病は食源病だといわれますが、私たちは、美食・飽食・簡単・便利・安価を求め、欲望の赴くまま気の向くまま食べ放題、結果今モノ豊かさの中で、1億総半病人といわれる事態を招いているのです。

 

 はじめにお断りしておきますが、ここで取り上げる「コンビニ食」とは、コンビニエンスストアで売られている食べものだけの意味ではありません。ご紹介する山田博士著『あぶないコンビニ食』『続あぶないコンビニ食』についても同様にお考え下さい。コンビニエンスストアをはじめ、広くスーパーマーケットやデパート、自動販売機、観光地、一般食品店などで売られている食品や、ファストフード、ファミリーレストランで食べる食事、それらをすべて含めて、私たちが普段気軽に食べている利便性の高い、つまりコンビニ(便利な)食という意味です。

 『あぶない健康食』『続あぶないコンビニ食』(三一書房)の著者・山田博士(やまだひろし)氏は、食べものや環境、人の心と食の関係などについて執筆活動や講演活動を続けており、「山田博士いのち研究所」主宰。「こみにて出版会」代表です。著書には他に『外食店健康ランキング』『暮らしの赤信号PARTT』から『PART5』があります。食品名を実名で紹介しており、具体的にあぶない食べものを知り、良い食べもの選びには大変参考になる解りやすい案内書です。ぜひご購読をおすすめします。

 今回はこの『あぶない健康食』の主な指摘や内容を中心に現代の“美食、飽食、簡単、便利、安価な食べもの”について考えてみたいと思います。

 

 山田氏は、“はじめに”で「コンビニ食であなたのお腹が重くなる。それだけ命が軽くなる……」「1974年5月、東京・江東区にセブン―エレブンの1号店が開店、1991年には4万1000店。塾帰りの小中学生や一人暮らしのお年寄り、独身者、共働き夫婦が利用するには、あまりにもお寒い食べものばかりが揃っている。ただ売れればいいという大人だけの“利便性”でいちばん先に影響を受ける子どもたちや弱者の体を、「コンビニ食」、つまり便利な食品、手軽な食品という名の毒で少しずつ壊しているこの社会――。子どもたちの体は本当に本当にまいっている」「48万人もの子どもがインフルエンザ、500校が休校(95年2月)子どもたちの体はどうなっちゃったんだ――。毎年1500人もの子供たちが小児ガンで短い人生を終えている。大半は白血病だ」

 「“危険物”の5種類(後述)を、狂った本能の思うがままに体に詰め込み、肉や砂糖の摂りすぎで血管をつまらせ、やれアレルギーだ、アトピーだ、花粉症だ、いじめだ、勉強嫌いだ、仕事嫌いだ、人間嫌いだなんていって騒いでいる。しかも魚や海藻類の嫌いな人が増えている」「自分で“病気になる努力”をしておきながら、“ここがいたい、あっちがおかしい”なんていっている」。

 山田氏は「厚生省が認めているから大丈夫」というがこの厚生省が指定する添加物という毒で、子供たちばかりでなく多くの人々が、病み苦しんでいることを指摘している。なかでも子供の体を蝕む5つの“危険物”として、食品添加物の@タール色素(合成着色料)、A安息香酸(合成保存料)、B亜硝酸塩(発色剤)、CBHA/BHT(酸化防止剤)、D味の素(化学調味料、核酸系調味料)の問題点を取り上げ、それらを使用する商品を実名で紹介し具体的に述べている。

 

 「フライドチキン、ポテトチップス、冷凍食品。これらに共通したものは、油に揚げたものだということだ。若い人に料理というと野菜炒め、天ぷら、フライなど、油で揚げたものしか頭に浮かばないようである。近くのコンビニエンスストアで売られている“おかず”なんか、冷凍の揚げ物が圧倒的に多いだろう。使われているのは植物性油だがこの脂質が体の中に入ると、有害な過酸化脂質に変化する。このため血液が滞って“?血状態”になる。この過酸化脂質がガンを作る発ガン物質として全世界で注目を集めている」

 「北里大学で交通事故などで亡くなった人たち400人を解剖したら、5歳児の76%、10歳以上の人は100%が動脈硬化だった」「“自然”だと信じられている牛乳でさえ、牛のエサに飼料添加物なんていう名前の殺菌、防腐、栄養などを名目にした、40種以上の化学物質が含まれている。本物の牛乳とは全く違った味の牛乳を飲んでいる。だから今の牛乳を飲むと“毒物”を体外へ出そうとして、のどが渇いて水が飲みたくなる」

 「化学物質を食べものを通して体に取り入れているため、アトピー、花粉症などのアレルギーをもっている子どもが増え、東京都内の赤ちゃんの80%はアトピーだという数字もある」

 山田氏はお母さんの食生活を変えない限り、10年経っても20年経ってもお子さんの病気はこのままで、薬で治るものではなく、母親の責任は重大だと述べている。

 

 「合成着色料のタール色素《黄色4号》を体に入れると、わずか1時間でアレルギーになってしまうぞ!花粉症で泣いている人、アトピーの人、いじめにはしる人はぜひ注意を!」山田氏は“危険物”の第一番に、タール色素を取り上げている。 北欧で着色料が厳しく規制されている理由の第一は「食べものに不可欠でないこと」。第二に「アレルギーに問題があること」であると。

 そこで、西岡一監修「すぐわかる食品添加物ガイド」(家の光協会)から、着色料について見てみよう。

 「現在日本で許可されている合成着色料には、“タール色素”と呼ばれる12種と“天然由来の合成色素”7種がある。困ったことに、この中にひとつとして、安全性に不安のないものはない。ことにタール色素には、ほとんど発ガン性の恐れがあり、12種中8種はすでに発ガン性が確認されており、諸外国では使用が許可されないことが多い。赤色106号は、日本を除いてほとんどの国で禁止されている。タール色素は、かって24種も使われていたことがありますが、次々と発ガン性などの理由で禁止され11種に減った。ところが自由化に伴う外圧などもあり、1991年に赤色40号が追加され12種になっている。タール色素12種は、何種類か混ぜ合わせて使います。12種は赤、黄、緑、青の4色ですが、これを配合すればどんな色でも作り出せます。紫色には最低3種、コーヒー色やチョコレート色には4〜5種類使われます。

 

 「合成着色料への批判が高まり、登場したのが化学合成品以外の着色料です。しかし自然系の色素だから安全といったムードが強調されていますが、化学的に安全性が保障されたものはありません」「自然系の原料から抽出されるというものの、菌や昆虫など非食品が素材になっているものが多いのです。これらは合成品以外といっても、抽出から精製まで工場で科学的に生産されています」「天然物中の成分は元来単純な単一物質ではなく、毒性不明の不純物も多く混じっています。これを精製するには化学処理が必要で、さらにこうした色素は色があせやすいので、それを防ぐためにまた安定剤のような別の薬品を使うこともしばしばです」

 現在指定されている合成品以外の着色料は87種、98品目にのぼっています。しかもこれらの90%は原料が日本には成育しない輸入品です。

 

 着色料は食品衛生法で「食品を美化し、魅力を増すもの」と定義されています。“食べものに人工化学物質を加えて見かけを良くする”というゴマカシが堂々と公的に認められているのです。有毒とわかっていても、着色料でお化粧された食品を選択するかどうかは、私たち一人ひとりの意識にかかっています。

 西岡一監修「すぐわかる食品添加物ガイド」から化学合成着色料12種について、主な使用食品と毒性について拾い出してみました。

 

@ 食用赤色2号
毒  性 ; 染色体異常、発ガン性、遺伝毒性の疑い、米国では発ガン物質として指定され使用禁止

使用食品; 菓子類、清涼飲料水、冷菓、洋酒など

 

A 食用赤色3号

毒  性 ; 動物実験などで赤血球減少、ヘモグロビン低下、成長抑制など染色体異常や発ガン性の疑い。欧米で使用禁止の国あり

使用食品; 福神漬け、かまぼこ、農水産加工品、焼き菓子、和菓子、洋菓子、サクランボ、粉末食品、糖衣菓子など

 

B 食用赤色40号

毒  性 ; アレルギー性、腎臓疾患の疑い

使用食品; キャンディ、チューインガム、アイスクリーム、ゼリー、ジャム、清涼飲料水、アルコール飲料など子供の好むおやつに使用されることが多い

 

C 食用赤色102号

毒  性 ; アレルギー性、染色体異常の疑い、米国、カナダ、ベルギーなどでは使用禁止

使用食品; 福神漬け、紅ショウガ、ハム、ソーセージ、タラコ、佃煮、タコ、ジャム、あめ、和菓子、焼き菓子、清涼飲料水など

 

D 食用赤色104号

毒  性 ; 遺伝子損傷性、遺伝毒性、染色体異常が認められ、発ガン性の疑いが濃厚で、外国では使用禁止

使用食品; かまぼこ、ソーセージ、でんぷ、和菓子、焼き菓子など

 

E 食用赤色105号

毒  性 ; 遺伝子損傷性、遺伝毒性、染色体異常が認められ、発ガン性の疑いが濃厚、外国では使用禁止

使用食品; かまぼこ、なると、ソーセージ、和菓子、焼き菓子、サクランボなど

 

F 食用赤色106号

毒  性 ; 遺伝子損傷性、遺伝毒性、染色体異常が認められ、発ガン性の疑いが濃厚、外国では使用禁止

使用食品; 福神漬け、みそ漬け、さくらえび、ハム、ソーセージ、洋菓子、焼き菓子など

 

G 食用黄色4号

毒  性 ; じんましん、アレルギー、発ガン性、染色体異常

使用食品; 数の子、練りウニ、漬物、佃煮、ドロップ、あめ、和菓子、洋菓子、冷菓、焼き菓子、飲料水、シロップなど

 

H 食用黄色5号

毒  性 ; ラットに乳腺ガン、染色体異常。アレルギー性、喘息

使用食品; 菓子類、飲料水、農水産加工品など

 

I 食用緑色3号

毒  性 ; 発ガン性、染色体異常の疑い。米国・EC諸国で使用禁止

使用食品 ; 菓子、清涼飲料水など

 

J 食用青色1号

毒  性 ; 発ガン性の疑い。EC諸国で使用禁止

使用食品; 菓子類、清涼飲料水など

 

K 食用青色2号

毒  性 ; 発ガン性や染色体異常の疑い

使用食品; 和菓子、焼き菓子、あん類、冷菓など

 

 こうして見てくると、アレルギーや発がん性、染色体異常、遺伝毒性の疑いが濃く、欧米などで使用禁止ともなっているタール系の合成着色料が、弱い子どもたちの大好きな飲み物や食べものに、ふんだんに使われていることがお分かりでしょう。この他に合成品以外の着色料が98品目もあるのです。西岡先生も述べているように、天然系だからといっても化学的に安全性が証明されたわけではありません。私たちの食べものの多くが危険物で美しくお化粧され、劣悪な原材料をもゴマカシで覆い隠されているのです。「恥のうわぬり」という言葉がありますが、これでは「毒のうわぬり」「ウソのうわぬり」ということになります。

 

 山田氏の話にもどってポイントを話そう。「このタール色素は、石炭からアニリンという物質を使って安く作られる。タール色素は、少しくらい汚れた食べものや古くなったものでも“美しく”見せ、内容が自然なもので無くても“本物”に見えるから食品メーカーにとっては大切なものになった」

 「黄色4号は、アゾ系色素と呼ばれ、親類仲間として、黄色5号、赤色2号、赤色102号などがあり、これらを取り入れると、ぜんそく発作や、じんましん、鼻づまり、目の充血などアレルギー症状になることがわかっている。なかでも黄色4号では“摂取後約1時間以内で症状が現われた”という報告がある」

 「日本には、150万人のぜんそくの子どもがいる。アレル源を調べていくと、一歳児では9割以上、6ヶ月検診、3ヶ月検診では100%が食べものが原因となっている。赤ちゃんの未熟な腸管に異物を入れるため、アレルギーを起しやすくなるのである」お母さんの離乳が早くなったのも一因である。母乳アトピー児も増えている原因について、@肉などの動物たんぱく質の食べ過ぎ、A植物性油の摂取過多、B農薬や食品添加物など化学薬品の増加、を上げている。さらに山田氏は、薬のカプセルにまで黄色4号、5号が使われており、製薬会社と薬品が実名入りで明らかにしている。

 “H―LD症”とよばれる、子どもの異常行動や暴れる原因が黄色4号などのタール色素にあったことが明らかになったこと。またアメリカの少年院や刑務所で、添加物などを使用しない自然な食事を与えた青少年たちの行動がいち早く改まり、更正して社会復帰するという研究事例を挙げ、「食べものが人の行動に影響を与える」ことを述べている。

 

 私がスーパーマーケットに勤務をはじめた昭和36年頃には、食品添加物はもう200品目前後であったろう。インスタントラーメン、インスタント粉末ジュース、色あざやかなキャンディ、香りの高いパンやビスケット、次から次へと予想だにしない新しい食品が生み出されてくるのです。数年にして食品添加物の数も350品目となり、商品の種類もどんどん増える。スーパーマーケットの売場も大きく拡張され、支店もドンドンできる。新しいスーパーマーケットが雨後の竹の子のように誕生する。モノが「飛ぶように売れる」という言葉は、そのころのスーパーマーケットの売場にぴったりでした。

 化学肥料や農薬が農業革命を起し、食品添加物が食品革命を起したといえるのではないでしょうか。町の魚やさんが軒下で吊るして作っていた干物が、すり鉢なんかで作っていた魚肉練り製品が、外国から輸入される遠洋の魚を使って大企業の工場で作られ、全国津々浦々に輸送され販売される。漬物しかり、豆腐、うどんやそば、みそ、佃煮、揚げ物、パン、ケーキ……そして、刺身やサラダまでもが。

 いろいろな技術が発達し、より豊かにより便利になることは大変結構なことであります。科学の発達が私たちの食についても、多くの恵みをもたらしてくれていることは申し上げるまでもありません。しかしその科学という道具を扱う人の“こころ”に人の生命を思いやる倫理観が欠如していたのでは恐ろしいことになります。

 あなたのお子さんが無心に食べているメロンシャーベット。その色、その味、その香りは何でできているのでしょう。あなたが口にしているそのたくあん。その色、その甘味、その香り、その……。「食は生命なり」「生命なきは食にあらず」と申しますが、私たちの食べているものは本当に「生命の食べもの」なのでしょうか。

 次回も引き続いて山田博士著『あぶないコンビニ食』の指摘するところを中心に話を進めていきます。

 

 

 

 

 


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
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池田 優

 

 

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