山ちゃんの食べもの考

 

 

その273
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【130】
 
『短命の食事 長命の食事』
ファイトケミカルが健康寿命を伸ばす
丸元淑生著 ワニブックス刊  より その1
 
 
● まえがき
 
まず最初に、本書のタイトルの「短命の食事 長命の食事」の長命からお断りしておきましょう。
これは、健康寿命の長命を意味しています。
短命は健康寿命の短命を意味しています。
 
たとえば、70歳のお方でも60歳のときに病気で倒れて、その後生活的な自立を失ったままだとしたら、短命と申し上げなくてはなりません。
反対に、がんになったお方でも、治療されて80歳で元気に日常生活を送っていらっしゃれば、まぎれもなく長命です。
 
現代は延命治療の進歩もあって、実際の寿命と健康寿命が大きくかけ離れています。
健康寿命が短くなっている人は多いのですが、統計的な数字で示されることがないために問題にされずにきています。
健康寿命を国が調べていないからで、そのために曖昧になっている一方、統計的に現れてくるのは、長寿世界一という、健康レベルとは関係のない空疎な数字です。
 
実際は、介護を必要とする肉親を抱えて苦労されている家族の数は極めて多数で、植物人間的な状態で長期入院されている方も少なくありません。
 
そういう事態を招いている要因の一つが食事にあることは明らかなので。本書の約半分は”健康寿命を縮めているもの”を示すことに費やしました。
本書全体では”病気を遠ざけて健康レベルを高める食事”の輪郭を描いたつもりですが、健康寿命を縮めているものについて、一、二申し上げておきたいと思います。
 
それは実質的な寿命を縮めているのですから、健康を奪う極悪犯人ということができるのですが、その多くは毒物のようなものではありません。
毒物であれば悪者の顔をしていますから、誰でも犯人とわかりますし、そのこわい顔をした悪者を排除さえすれば、安心できます。
 
しかし、今多くの人の健康を脅かしているのは、そのようなタイプの悪者ではありません。
みんなが喜んで食べているものが、健康を奪っているのです。
 
その例を犯人の一人のトランス脂肪酸で見てみましょう。
トランス型脂肪酸は自然界にはほとんど存在しない脂肪酸で、安い植物油で高いバターをつくろうと考えた業者が、マーガリンを作ることに成功したときに生み出されました。
1911年のことです。
 
その有害性が明らかになるのは、その分子の形を顕微鏡で見ることができるようになり、異常な形が確認できたときです。
それは普通の脂肪酸とは異なり、ねじれて硬直した形をしていました。
 
脂肪酸は体内では全身の細胞膜を攻勢するパーツとして使われていますが、トランス型脂肪酸は細胞膜に使えない形をしていたのです。
 
細胞膜に使えない脂肪酸は壊して燃料にするしかないので、体はカロリーに変えようとしますが、我々のエンザイム(酵素)システムは、この不自然な脂肪酸を代謝した経験がないために、その作業には時間がかかりました。
時間がかかるだけでなく、自然の脂肪酸の代謝に使われる酵素を使うため、自然の脂肪酸の代謝の能率まで落としてしまうことがわかりました。
 
それが確認された第二の有害性で、すぐに危惧されたのは妊娠への障害です。
妊娠は体が非常にタイトに期間を定めているプログラムですから、脂肪酸の代謝の能率の低下は即、未熟児に結びつく危険性があったのです。
同時に、心臓は脂肪酸を燃料にしている臓器なので、心臓への障害が憂慮されました。
 
妊娠への障害は、ノルウェーの研究者が未熟児を調べて、トランス型脂肪酸との相関を明らかにしますが、この犯人の問題点は、そういう科学的に証明された事実を無視して、安全性を主張する一部の科学者が存在しつづけた社会にありました。
 
いうなれば犯人が自分の無実を証明するのではなく、その人たちは被害者に対して、より確実な証拠“ハードエビデンス”を求めたのです。
 
これが1960年代の状況ですが、その後トランス型脂肪酸の消費量は急増します。
食品産業が新しいタイプの加工食品や調理済み食品のマーケットを広げ、それに使われるトランス型脂肪酸を含んだショートニングの消費が増大したからです。
 
トランス型脂肪酸の摂取が増えますと、体がこれをハネるのが大変になります。
そして、細胞膜のパーツとしても一部使われるようになります。
それが憂慮された第三の有害性で、糖尿病を発症させる要因になっていることを、ハーバード大学の研究が明らかにしています。
 
ハードエビデンスが得られたのは30年後の1990年代に入ってからで、別個に行われた2つの研究が、相次いでトランス型脂肪酸による心臓病死数は全米で年間3万人という一致した数値を発表しました。
 
多くの人が、こういうこわいものを平気で食べているのですが、あなたならばこの犯人を、いつの時点で排除なさったでしょうか?
アメリカでは1970年以降マーガリンの消費が横ばいになったことから、賢明な消費者は1970年代にはマーガリンを買わなくなり、トランス型脂肪酸を排除したと考えられています。
 
これ以外の”犯人”については本文をお読みいただきたいのですが、昨年私は食に関して非常に興味ある記事に出合いました。
ある新聞に載った毛利衛さんの談話で宇宙飛行士の方々の食事の内容を知ったのです。
 
宇宙飛行士が大変厳しい訓練を受けていることは知っていましたが、最高の健康状態を維持するためにオプティマルな食事をなさっていることを、私はそのとき初めて知りました。
現代の栄養学は”人間にとってのオプティマルな食事”を追及している総合的な科学ですが、栄養学の到達点ともいえる食事を、実際になさっている人たちがいることは驚きでした。
 
オプティマルを訳して、私は”もっとむ望ましい食事”ともいっていますが、最も望ましい食事から程遠い、病気を招くような悪い食事を目にする機会が多いだけに、その驚きは感動に近いものでした。
 
人間の健康のレベルは、病気か健康かという2つに分かれているのではなく、オプティマルを100とすれば、死を意味する0から100までの無数の段階があります。
病気になるのは0に近いレベルですから、仮りにそれを10とすると、10の上には100までのレベルがあるのです。
 
そして、100に近い高いレベルの健康をもたらすものは、栄養学のいうオプティマルな食事であって、決して豪華な食事でないことを、宇宙飛行士の方々が身をもって示してくれています。
 
唐突に思われるかもしれませんが、ここで鶴の話をいたしましょう。
モンゴルからタクラマンカ砂漠の上を飛び、ヒマラヤを越えてインドに渡っていくアネハヅルの話です。
 
ヒマラヤを越えるには8000メートル以上の高度まで上昇して、極寒のなか猛烈な強風と戦いながら飛びつづけなければなりませんが、アネハヅルは何を食べているのでしょうか?
その体力と持久力は何から生まれるのでしょうか?
もちろん、この鶴は100に近いレベルの健康状態でなくてはならないはずですが、その食事は動物学者にとっても、栄養学者にとっても謎でした。
 
最近になって謎が解け、アネハヅルの食べているものがわかりましたが、それはイナゴでした。
では、イナゴは何を食べているのかといいますと、砂漠の草でした。
 
これくらい食というものの純粋な形で見せてくれているものはないように私には思えます。
そして。砂漠の草からイナゴへ、イナゴからアネハヅルへ、生命がそっくり移行していっていることがよくわかります。
 
アネハヅルにとってのオプティマルな食事がイナゴであることは明白ですが、もしそこにイナゴ以外のものが混じっていたら、エベレストは越えられないかもしれません。
栄養素濃度の低い加工食品のようなものを、アネハヅルが少しでも食べていたら、おそらくは全羽が死滅するでしょう。
 
我々はアネハヅルのような過酷な条件下では生きていないため、何を食べても死ぬようなことはありません。
しかし、アネハヅルに死をもたらすものは、われわれには健康レベルの低下をもたらす、とはいえるでしょう。
 
アネハヅルにとってのイナゴのような食事にする料理に本書は第4章を当てています。
変化のある毎日の料理の組み立てには、50から100の料理をレパートリーにしていなくてはなりませんが、載せたのは20の料理のレシピです。
 
数は足りませんが、いままでどおりのあなたの食事に、それをひとつでも二つでもプラスしていただきたいと思います。
そして、定着するものがあれば、食事が確実に健康のレベルを高める方向に変化していくに違いありません。
 
 
 
第1章
ファイトケミカルが健康寿命を伸ばす
 
● ファイトケミカルがあなたを救う!
 
果物と野菜をたっぷり食べる食事ががんのリスクを下げる。
それが、世界中で行われてきた多数のがん予防研究が導き出した結論です。
研究が進んで知見が蓄積されればされるほど、答えは単純になっていったのですが、この野菜は広義の野菜なので、ナッツ、豆、種も含めてお考えになってください。
 
がんを予防する物質を探す研究が本格的に行われるようになったのは、米国立がん研究所が予算をつけてその後押しを始めた1980年以降ですが、1990年には既に、栄養学の歴史を塗り替えるような画期的な知見が集まっていました。
そして、ファイトケミカルズ(植物化学物質)という英語の新語も生まれていましたが、それはがんを予防する物質が動物性食品からは見つからず植物性の食品からだけ見つかっていたからです。
しかも、その数があまりにも多数だったために、新語を作って総称するようになったのです。
 
それが栄養学を変えたのは、ファイトケミカルがアマゾンの雨林やチベットの奥地からではなく、最もありふれた植物性の食品、つまり八百屋さんに並んでいる日常的な果物と野菜の中から見つかっていったからです。
人類は何千年という昔からそれを食べてきているのですから、食事とは元来ファイトケミカルを摂る行為だったのです。
それで栄養学者は、ファイトケミカルをPhyto nutrients(植物栄養素)と呼ぶようになりました。
 
ファイトケミカルの数は、何百と多数ですが、そのほとんどは紫外線や虫などをはじめ、植物が環境から受けるさまざまなストレスから自分自身を守るために作り出している物質です。
それらの物質に共通しているのは抗酸化作用ですが、ファイトケミカルを多く含んでいる食事を食べると、がん以外の病気も予防され、老化のスピードもスローダウンすることがわかりました。
 
しかしファイトケミカルが薬品と異なるのは、少量で猛烈な効果を生み出すものではない点です。
栄養素として毎日かなりの量を摂っていなくてはなりません。
 
ですから、野菜と果物が十分に取れる食事を心がけなくてはならないのですが、現在の日本人の食生活では統計上の数字から見ても、果物と野菜が不足しています。
 
 
● 1日1個のリンゴで健康に!
 
フィンランドの公衆衛生研究所が、1965年にがんにかかっていない男女9995人を対象に、食習慣とがんの関係を追求した研究があります。
その結果が1991年に発表されましたが、997人ががんになっていて、そのうち151人は肺がんでした。
 
研究者によると、がんになった人とならなかった人を大きく分けていたのはファイトケミカルで、ファイトケミカルのひとつのフラボノイドがあまり摂れていない食事をしている人は、毎日摂れる食事をしている人より20%多くがんを発病していました。
そして毎日たっぷり取れる食事をしている人と比較すると、46%も多く発病していました。
 
フラボノイドの種類は極めて多く、確認されているだけでも4000以上の化学的に特異なフラボノイドが存在しています。
その働きのひとつは抗酸化作用で、ビタミンCと共働するという特徴をもっています。
 
特別な食品に含まれているのではなく、日常的な果物、野菜、豆、ナッツ、種、穀類、お茶に含まれている物質です。
 
フィンランドの研究者達はそういう食品を食べてフラボノイドが多く摂れる食事をしている人ががんにかかりにくいことを明らかにしたのですが、特に重要な働きをしていると考えられる食品の第一はリンゴだったと述べています。
それに肉薄している第2位は玉ねぎでした。
 
リンゴを毎回1個食べている人たち、玉ねぎを使った料理を日常多く食べている人たちの発病率が最も低かったからで、この2つの食品の共通点は、全食品中で最も多くケルセチンというフラボノイドを含んでいることから、ケルセチンには特に強い抗がん作用があるのではないかと、研究者は推論しています。
 
 
● サッカーのW杯から果物の重要性がわかる!
 
果物はファイトケミカルの宝庫ですから、元気で病気を遠ざけている生活をするのに欠かせない食品です。
 
ですから、食事の大きな1本の柱になっていなくてはならないのですが、GNP(国民総生産)が世界第2位の日本人が、1日に消費している果物の量は150グラムと少量です。
それはなんと世界で第117位というのが、統計が示している事実です。
 
果物が含んでいる成分は、激しい運動をする人には、特に重要であることがわかっていますが、2006年に行われたサッカーW杯(ワールドカップ)のドイツ大会では、果物の消費の少ない国はウクライナを除いてみな1次リーグで敗退したことでスポーツ栄養学者の注目を集めました。
高温下の試合では特に、スタミナが切れて敗退したチームが多かったのです。
 
わが国の果物の消費量は、W杯出場32か国中の28位でしたが、優勝したイタリアの消費量は1日に359グラム
ちなみに、消費量の第1位の国はオランダで、1日に500グラム。
決勝トーナメントに進んだ16の国のほとんどは、1日300グラム以上食べています。
 
それにしてもなぜ、日本人は果物を食べないのでしょうか?
[果物は高い」「果物は食べるのが面倒くさい」など、たくさんの理由が複合しているに違いありませんが、一部の医師と栄養士が、果物を栄養的に否定する発言を長く続けてきたことが大きいと私は思います。
 
[果物を食べるとか糖が多く含まれているため、中性脂肪が増える」という発言が、事実の裏付けなく、テレビなどのマスメディアで繰り返されてきました。
今でも記憶されている方は多いと思います。
 
それは世界各国で行われてきた疫学研究の結果に反していましたが、確実な証明は、つくば市の果樹研究所が行った研究でなされました。
 
平均年齢45歳の男女14人の被験者に、リンゴを3週間、1日1個半〜2個(360〜480グラム)、食べてもらったのです。
 
その結果中性脂肪は増えるどころか逆に14人中12人が減少しました。
しかも、中性脂肪が多かった人ほど減少幅が大きく、少ない人はあまり減少しないことから、リンゴには中性脂肪を正常にする作用があることもわかりました。
 
果物はアルカリ性なので、他の食物と一緒に食べると胃酸を中和して消化を妨げます。
ですから、果物は果物のみで食べるべきです。
欲するときに食べればよいのですが、必ず1回は朝に食べることが望まれます。
体のシステムは朝は排泄の方向に動いていますが、果物に含まれている成分はそれを助ける大きな力になり、体をきれいにするからです。
 
 
● 緑色野菜を欲するだけ食べる習慣を!
 
食卓を眺めて緑色が欠けていたら、健康的な食卓とはいえません。
緑色があったとしても、料理にあしらわれている程度ならば、欠けているのと同じです。
緑色の野菜は、多種類の貴重なファイトケミカルを供給してくれますが、それにはたっぷりの量を食べなくてはならないからです。
 
たっぷりとはどのくらいの量なのか、ほうれん草のおひたしを例にするとわかりやすいかもしれません。
 
銘々皿によそり分けずに、各自が好きなだけ食べられるように、ほうれん草のおひたしを一皿に盛り、遠慮しないようにといって、食卓に出しておきますと、誰もが欲するだけ食べるものです。
その量がたっぷりの量と思ってください。
 
同じ人でも、そのときの体の状態でその量は違ってきます。
緑色野菜の栄養素が欠けているときや、体が特に要求しているときはびっくりするくらいの量を食べますが、足りているときはほどほどの量で箸が止まります。
 
それは、食欲が正常に働くことを意味していますので、この実験は是非やってみていただきたいのですが、緑色野菜を欲するだけ食べる習慣がつきますと、一挙に健康的な食事になっていきます。
 
 
● 緑色野菜は目の病気のリスクを下げる!
 
すべての緑色野菜はフラボノイドとモノテルペン類を含んでいて、コレステロールを下げる働きをします。
 
ケール、ほうれん草、ブロッコリーなどの濃い緑色野菜は、ベータ・カロテン、ルティン、ゼアキサンチンなどのカロテノイドを最も多く含んでいる食品で、目の健康を守る働きをします。
 
ですから逆に言いますと、そういった濃緑色野菜をあまり食べない食事をしている人は中高年になると加齢黄斑変性などの目の病気のリスクが高まると思っていなくてはなりません。
 
黄斑は網膜の中心部にあって像を結ぶところですが、ほうれん草などの濃緑色野菜をたっぷり食べますと、眼球の水晶体や黄斑部に、ルテインとゼアキサンチンが高濃度に分布することがわかっています。
しかし、たっぷり食べなければ、その濃度が低下しますし、不足すると加齢黄斑変性のリスクが高まるのです。
 
 
● 緑色野菜は加熱時間がポイント!
 
緑色野菜に含まれている多糖類のファイトケミカルは、熱で壊れるものが多く、また、低温からゆっくり加熱していくとエンザイム(酵素)の働きで化学反応を起こすものが少なくありません。
ですから、緑色は野菜の加熱調理のポイントは、酵素が働かないように最初に酵素を壊すことと、加熱時間をミニマムのすることです。
 
おひたしにする場合は、強火で沸点を維持しながら湯掻き、湯掻く時間はごく短時間にします。
一度にたくさんの野菜を鍋に入れると沸点が止まりますので、入れる量は沸点が止まらない量にします。
そのかわり、すぐに鍋から出すのです。
 
湯の量が少ないと強火にかけていても野菜を入れると沸騰がとまりますので、できるだけ大きな鍋を使ってください。
沸点下では酵素はすぐに壊れますので、化学変化が起こらずに野菜の成分が守られますし、加熱時間が短いので、ほとんど成分の損失がなく、色も鮮やかな緑色でおいしく、野菜の栄養を最大限に摂取できることになります。
 
炒める場合は、鍋にふたをして強火にかけ、約1分間加熱してから塩をふった野菜を入れ、その上からオリーブ油をかけてふたをします。
そうやって最初に酵素を壊します。
ふたをとって1、2度野菜の上、下を返してからふたをして、弱火にします。
酵素が壊れてからは強火で過熱する必要はなく、野菜の緑色が鮮やかになり、かさが減って少ししなっとしたら、火をとめて皿にとります。
この場合も、加熱時間をミニマムのにするのがおいしくするポイントです
 
 
● がん予防にはキャベツとブロッコリーを!
 
アブラナ科の野菜は、インドール類と、イソチオシアネート類という、強い抗がん作用を持った2群ファイトケミカルを豊富に含んでいます。
がんを予防する重要な物質で、他の野菜には含まれていないため、アブラナ科の野菜を食べないと、この物質は摂ることができません。
 
油ら仲の野菜の馴染み深いものを揚げてみますと、キャベツ、大根、かぶ、ブロッコリー、小松菜、カリフラワー、芽キャベツ、ケール、わさび・・・・・・。
 
あなたは、この2、3日の間に、これらの野菜をどれくらいお食べになったでしょうか?
大根おろしや、貝割れ大根やわさびのツーンとくる刺激と、ピリッとした辛味は、イソチオシアネートによるもので、おろしたての辛味の強い大根おろしは、日本料理の美味のひとつですが、病気を遠ざける力を秘めています。
 
体のがん予防の第一線は肝臓が担っていて、フェーズ2酵素と総称される酵素群で発がん物質の解毒を行っています。
ですから、がんを予防するにはフェーズ2酵素がよく機能している必要がありますが、フェーズ2酵素の働きを高めることが明らかな物質に、イソチオシアネート類のスルフォラファンという物質があります。
 
そのスルフォラファンを最も多く含んでいる野菜はブロッコリーです。
次いで芽キャベツ、ケール、レッドキャベツに多く含まれています
 
ブロッコリー、カリフラワー、芽キャベツは、軽く蒸すのがベストの調理法です。
それが含まれている成分の損失を最少にできる最もおいしい食べ方ですが、注意するのは蒸す時間。
蒸す時間が過ぎると、成分が壊れて一挙に味が落ちてしまいます。
 
《蒸す時間の目安》
ブロッコリー   2分
カリフラワー   1分
芽キャベツ    3分(早く火が通るように根元に十文字の切り込みを入れておく)
 
 
● 飽きがこないトマトは心強い味方!
 
世界中で一番多くの人がつくっている料理は、ラタトウュといわれています。
南仏のプロバンス地方の郷土料理ですが、アフリカでも、南米でもつくられるようになって、現在では何億にもの人がつくる料理になってしまいました。
この料理がそこまで広がったのは、簡単に作られておいしいからでしょう。
そして、食べて栄養的に満足感があるからだと思います。
 
なす、ズッキーニー、玉ねぎ、にんにく、じゃがいも、黄・赤ピーマン、トマトが入る野菜シチューですが、欠かせない材料はトマトです。
オリーブ油を加えるだけで、水を加えずに野菜の水分だけで蒸し煮するのがこの料理をおいしくつくる秘訣なので、汁を多く出すトマトが不可欠なのです。
量もトマトを多く使います。
 
こういう料理をよく食べている人は、当然トマトを多く摂ることになりますが、それが体によいことが最近になって科学的に証明されてきました。
 
トマトの栄養的な特徴は、カロテノイドのリコペンを全食品中で最も多く含んでいることですが、現在までに世界で行われた7つの研究のうち5つが、トマトを多くとる食事は前立腺がんの発病を低率に抑えていることを示しています。
そして、進行した前立腺がんに対しても、リコペンの抗腫瘍作用が明らかにされています。
 
それはリコペンが前立腺がんの治療にも役立つ可能性を示唆しています。
サプリメントでリコペンを補った研究が複数行われていますが、リコペンは前立腺の腫瘍の成長のスピードを遅らせ、また腫瘍を縮小させています。
 
そうした研究で投与されているリコペンの量は1日10〜30ミリグラムですが、生のトマト100グラム中の含まれているリコペンの量は3ミリグラム。
ラタトウユのような料理では1人がトマト1個以上食べることになりますから、10ミリグラムは十分に摂れるわけです。
 
これだけトマトに偉力があるのならば、威力を遺憾なく発揮させる料理がほかにもあってもよいと思われますが、実際にあって、これもやはり非常に多くの人がつくる料理になっています。
 
ナポリタンの名で知られるナポリ料理、トマト・ソースのスパゲッティがそれです。
この料理の主材料は玉ねぎとトマトですが、伝統的なレシピでは玉ねぎ1個に対してトマトがなんと1キログラム使われます。
それが黄金比で、レシピ通りにつくったものが最もおいしく、何度食べても飽きることがありません。
 
 
● セロリやせりはただの飾りにあらず!
 
アメリカ国立願研究所は、がんを予防する成分を含んでいる食品を食事に多く取り入れるように提唱し、特に重要な食品のリストをピラミッドの表にして発表しましたが、ピラミッドの一番上の重要度の最も高い食品のグループには、セリ科の野菜が入っています。
 
セリ科の野菜を挙げますと、人参、セロリ、パースニップ、せり、みつば、あした葉、パセリ・・・・・・。
 
みな独特な香りがあり、味もそれぞれ比類のないものです。
それは他の野菜では得られないさまざまな成分を含んでいる証拠で、それだけの多種類の成分はサプリメントでは補うことはできないので、野菜そのものを食べるしかありません。
 
人参を除いてセリ科の野菜はみな、低カロリーの若茎、若葉野菜で、少ないカロリーで多くの微量栄養素をもたらします。
つまり、みな極めて栄養素濃度の高い野菜です。
 
昔の栄養学では、あまり栄養的価値がないようにいわれてきた野菜ですが、多種類のファイトケミカルを含んでいるため、抗がん以外にもさまざまな病気を遠ざける働きをします。
 
セロリの含まれている3−nープチルフタライドという物質には、血圧を下げる強い力があり、シカゴの研究者は、自分自身113グラムのセロリを毎日1週間食べ続けた結果、158/96の血圧が、118/82になったと報告しています。
 
セロリは野菜スープには是非加えたい野菜ですが、この野菜の何よりもよい点は、生でそのまま食べられることでしょう。
料理の手間がかからず大事な栄養を補うことができます。
 
セリは、カロテノイドのゼアキサンチンを最も多く含んでいる野菜で、10月下旬から4月まで出回っていますが、旬の早春のものは特に香りが強く、おひたしにすると感動的なおいしさです。
 
三つ葉の茎を軟化させた切り三つ葉は、春から夏が旬の野菜で、旬の間は安く売られています。
この切り三つ葉のおひたしもおいしく、たっぷり食べたい春から夏の味覚です。
 
揚げものを食べると、がんのリスクの指標のひとつにされている変異原性の数値が上昇しますが、パセリの働きのひとつは、その変異原性抑制作用です。
 
つまり、パセリを食べ合わせると、揚げものの害が抑えられるわけで、飾りとして料理に添えられているパセリではなく、本格的に料理に使われているパセリには、食事を健康的なものにする大きな力があります。
 
 
● 人参は脳卒中のリスクを下げる!
 
人参には、カロテノイドのアルファ・カロテンが、全食品中一の濃度で含まれています。
アルファ・カロテンは、強力な抗がん物質ですが、人参は脳卒中のリスクも下げることがわかっています。
 
8700人の看護婦を対象に、8年かけて行われたハーバード大の研究では、週に5本以上の人参を食べている人は、月に1本しか食べていない人よりも、脳卒中を起こす率が68%も低かったのです。
 
それは、人参に含まれている多種類のファイトケミカルによる効果と考えられていますが、そのひとつのペクチン酸カルシウムという水溶性の食物繊維は、コレステロール値を下げることがわかっています。
 
ビタミンやファイトケミカルの多くは、熱に弱い物質ですから、加熱料理をすると一般的に多く失われますが、人参は逆に、煮たり炒めたりしたほうが、体に使われる有効成分の量が増加します。
 
ですから、きんぴらごぼうなどは定番にしたい料理ですが、人参をたくさん食べるにはサラダもよい料理です。
作り方は簡単で、人参をグレイターでおろして、レモン汁をかけるだけで出来上がります。
レモン汁のビタミンCが人参を生食する場合の栄養素の損失を防いでくれるので、レモンを先に絞っておいて、人参をおろしたらすぐにかけるのがポイントです。
 
そのままでもよいですが亜麻仁油をかけて和えれば、オメガ3脂肪酸が一緒に摂れるので一層健康的なサラダになります。
グレイターでおろした人参のサラダがおいしいのは、人参の組織がギザギザに切れるからで、油にも馴染みやすく、食卓に出しておくと、私の経験では、みなびっくりするくらいの量を食べます。
 
 
● アボガドはコレステロール値を下げる!
 
アボガドは、コレステロール値を改善してくれる果菜です。
重量にして19%、カロリーでは88%が脂肪という高脂肪食品なのですが、アボガドを食べると血液中の脂質の数値がよくなるのです。
 
それは、アボガドの脂肪を構成している脂肪酸が、オメガ9と呼ばれる一価不飽和脂肪酸で効率に占められているから、と考えられています。
 
オレインサンという名の脂肪酸ですが、これを最も効率に含んでいる食品は、次に3つです。
・ オリーブ
・ アボガド
・ アーモンド
含まれている脂肪酸に占めるオレイン酸の率は、オリーブが最高で77%。アボガドとアーモンドは67%です。
この脂肪の特徴を一言でいいますと、最も酸化しにくい不飽和脂肪酸です。
ですから、加熱料理に使う油は、オリーブ油がすすめられています。
 
アボガドの脂肪は、皮をむくまでは空気に触れていないので、フレッシュに保たれていて、酸化していません。
しかも、アボガドは生で食べるものですから、その酸化していない脂肪を、新鮮なまま変化させずに摂ることができます。
その意味でアボガドは、最高のオメガ9源となる食品です。
 
それはどれだけ健康に寄与するものでしょうか?
オーストラリアの研究者が行った、決定的な研究があります。
 
アボガドを含む高オメガ9食と、米国心臓学会のフェーズV食(低脂肪・高複合炭水化物食)を比較したのですが、37歳から58歳の15人の高脂血症の女性に、そのいずれかを3週間食べてもらい、次の3週間は食事を逆にしてもらいました。
 
その結果、アボガドを含む高オメガ9食は、総コレステルールを8.2%下げたのに対して、フェーズV食の下げは4.9%でした。
単純に低脂肪食にするより、適量のオメガ9を摂るのは健康に非常によいことが、これでわかりました。
 
アボガドは高オメガ9食品というのが大きな特徴ですが、ビタミンB群の葉酸とパントテン酸も非常に多く含んでいますし、多種類のファイトケミカルを含んでいます。
アボガド料理の基本は、皮をむいたらすぐにレモン汁をかけること。
それによって、色も栄養も守られます。
 
アボカドいろんな野菜と合い、マグロや帆立貝などの魚介類とも合いますが、定番料理にするなら、トマトと玉ねぎとアボカドのサラダでしょう。
ただ切って混ぜ合わせるだけで、充実した一品になります。
 
 
● セレンの摂取不足は
がんのリスクを高める!
 
セレンは必須ミネラルのひとつで、摂取勧告量は1日に50〜100マイクログラムと微量ですが、不足するとがんのリスクが高まります。
 
ウィレト・スタディとして知られる研究によって明らかにされた事実で、研究はハーバード大のウィレト教授のチームにより、アメリカの14に地域の4480人のがんになっていない男性の血液のサンプルを採って行われました。
1973年に研究が始められて、5年後の1978年には111人ががんになっていましたが、同じ年齢で同じライフスタイルの、がんになっていない210人と比較したところ、血中セレン値が最も低かった人たちは、最も高かった人たちの2倍の率でがんを発病していたのです。
 
セレンは体の抗酸化ネットワークの欠かせないメンバーで、細胞膜内の酸化した脂質を無害化する数種類のエンザイム(酵素)の構成要素です。
構成要素とはつまり、それらの酵素はセレンを含んでできているわけで、逆にいいますと、セレンがないとそれらの酵素がは作れないことを意味しています。
 
ですから、セレンが不足する食事をしていると、細胞内の脂質の酸化を防ぐことができないために、現在ではがんのリスクを高めるだけでなく、心臓病と脳卒中のリスクも高めることがわかっています。
 
では、どういう食品にセレンは多く含まれているのかといいますと、筆頭は貝と青魚です。
野菜類はキノコが筆頭で、タマネギ、にんにく、にんじん、ブロッコリー、キャベツ、グリーンピースに多く含まれています。
貝類は、アサリ、ハマグリ、シジミ、カキ、サザエ、赤貝。青魚は、イワシ、サケ、アジ、サバ、ニシン、サンマ、マグロ。みんな高セレン食品です。
 
ですから、魚介類をよく食べている日本人が、肉主体の食事をしている欧米人に比べて心臓病による死亡率が低い理由のひとつは、セレンの高摂取と考えられています。
 
野菜に含まれるセレンの量は、生産地の土壌に大きく左右されます。
アメリカで週ごとに土壌に含まれるセレンの量と心臓病による死亡率の比較が行われた結果、心臓病による死亡率が全米一低かったのは、土壌に最もセレンを含んでいるコロラド州のコロラドスプリングでした。
 
 
 
● エンザイムは
生の食べ物のみに含まれている!
 
エンザイム(酵素)は熱くて手をつけていることができない湯の温度では壊れますので、加熱した料理には含まれていません。
さまざまな加熱の過程のある加工食品にはもちろん含まれていません。
含まれているのは、生の食べ物だけです。
 
ですから、エンザイムが十分に摂れる食事は、生ものを十分に食べる食事といい換えることができますが、人類は長い間(ごく最近まで何万年という長い間)そういう食事をしてきたと考えられています。
 
 
● 病気になるまで酵素不足はわからない!
 
植物性の食品は、その消化に必要なエンザイム(酵素)を、それ自体が含んでいます。
リンゴを生で食べますと、リンゴの消化に必要な酵素が一緒に入ってきます。
 
アボガドのように脂肪を多く含んでいるものは、脂肪を消化する酵素が多く入っていますから、消化が非常にスムーズに行われます。
それは、すい臓などの消化酵素を作り出す臓器の負担を軽くしますが、生ものを食べることのメリットは、それだけではないことがわかってきました。
 
酵素が十分に摂れる食事をしていますと、体内で生成される抗酸化酵素のグルタチオン・ベルオキシターゼや、SOD(スーパーオキシド・ジムスターゼ)の量が増えることが確かめられています。
つまり、体内における酵素の生成が活発になるわけで、それが病気を防ぐ力になります。
 
逆に生物をほとんど食べずに、酵素の摂取量の少ない食事をしていますと、体内での酵素の生成が不活発になります。
そして、酵素の不足する事態が起こりますが、問題は酵素不足がさまざまな病気になって現れてくるまでは、自分では知ることができない点です。
さらに、病気になって医者にかかっても、見過ごされてしまう場合が少なくありません。
 
ですから、酵素の少ない食事(生ものの少ない食事)の害は、見過ごされていることが多いのですが、生ののゼロ、酵素ゼロの食事をするとどうなるかは、動物を使った実験で明らかにされています。
 
人間を使った実験はできないので、人間の食べるものなら何でも食べるネズミを使って行われたのですが。その結果は衝撃的です。
 
 
● 生ものゼロの食事は脳を小さくする!
 
ネズミにとって自然な、生ものを含んでいる食事と、生ものゼロという食事で飼育して比較した複数の研究が、時も場所も異なるところで、それぞれ独立して行われていますが、全く一致した結果を出しています。
 
生がゼロで飼育していたネズミは、脳が小さくなり、すい臓が肥大していたのです。
 
脳が小さくなったというのは、脳が十分に発達できなかったことを意味していますし、すい臓の肥大はすい臓に過重の負担がかかり続けたことを意味しています。
 
これで、生ものがゼロ、あるいはゼロに近い食事は、非常に危険な食事であることがわかったのですが、たとえば、正月が近づくとよくお目にかかるおせち料理の広告を見ますと、これは見事に生ものがゼロの食事です。
揚げ物と、煮しめたもので埋めつくされていて、食材だけは高価なものが使われているのか、何万円という値段がついています。
 
現在の食事が、栄養学の知見からまったく離れたところに行ってしまっていることを教えてくれる広告ですが、わが国の伝統的な食生活では、正月の料理の3分の1くらいは生ものが占めていました。
栄養学からいうと、それが正月料理の最も重要な部分だったのです。
 
 
● 生もの不足は漬けもので補う!
 
わが国の伝統的な正月の料理で生ものが3分の1を占めていたのは、正月の三が日の間であっても、生ものがゼロの食事ではいけないという認識が、家庭の主婦にあったからだと思われます。
 
それが継承されてきた食生活の知恵の重要な部分で、冷蔵庫のなかった時代に大変な労力と工夫によって、保存のきく生もの料理がつくられました。
 
北陸の「かぶら鮨」は、そのよい例でしょう。
かぶとブリとご飯でつくるこの鮨は非常においしく、温度が10度以上にならない場所に漬けた桶を置いておけば、年末から翌年の2月までもちます。
そして、2月になってもブリの身が新鮮な桃色をしているのには感動させられます。
 
これほど手間のかかる料理でなくても、大根酢やかぶ酢など、簡単にできる生の料理が少なからずありましたが、日常の食生活で生の比率を高めていたのは、自家製の漬けものだったと思います。
 
寒い間の塩漬けと、気温が上がってからのぬか漬けで、いずれも理想的な乳酸発酵をしているのでおいしく、大皿に盛った漬物を、みな好きなだけ食べていますが、それはかなりの量でした。
塩漬けは圧しが効いていますので、よく醗酵してからは塩が抜けて、うま味が入り、なんともいえないうま味のある漬物で塩辛くはなかったからです。
ですからしょう油をかけて食べたものです。
 
そこにも継承されてきた食生活の知恵があったのですが、現在の家庭から自家製の漬けものが消えたのは、住居から漬けものの空間が排除されていった結果といえるでしょう。
かつては夏でもひんやりとする土間の納屋(物置小屋)があって、そこは理想的な漬けものの空間でした。
 
10度以上になると醗酵しすぎて酸っぱくなりますので、塩漬けは10度以下に保っている必要がありますが、土間の納屋は中秋から春までの長い期間、10度以下に保っていたのです。
ですから、白菜などのおいしい塩漬けを半年近くもの長い間、食べつづけることができました。
 
その漬け物の空間がなくなった現代では、冷蔵庫がほとんど唯一の漬けもの空間になっていますが、これは温度が少し低すぎるために、塩漬けを理想的に乳酸発酵させて、かつ毎日食べられるようにするには、工夫と研究と不断の注意が必要です。
 
それでも私は漬け物をお漬けになることをおすすめしますが、ぜひともすべての家庭で漬けていただきたいのは梅です。
むろん、それは自家製の梅干しをつくためと、梅酢をつくるためです。
 
家庭でなら塩の比率が13.5%という低率で梅を漬けることができますし、その比率でできた梅酢は塩辛くなく、非常にに広範囲に使える調味料になります。
 
この梅酢がぴったり合うのは――、
・ 生のクルマエビ、アマエビ、ボタンエビ
・ 生のシラス、シラウオ、アナゴの幼魚
・ 生のサザエ、平貝、帆立貝
・ 生のアワビのきも、カワハギのきも、タラの白子
 
まだまだ、たくさんありますが少し例を挙げてみました。魚をよく食べている方ならば、このリストを見るとおわかりになると思います。みな非常に繊細な味で、しょう油の味は強すぎるものばかりですが、この塩の浅い梅酢はその繊細微妙な味を引き立てて、かすかな味まで味わわせてくれます。
 
《梅干し》
つくり方
(1) 梅を洗って水を切り、13.5%の塩を加え、
フリーザーバックに入れてきっちりジッパーを閉め、
冷蔵庫に入れておきます。
(2) ときどき上下を返して、出てきた汁にすべての梅が浸るようにしてやります。
(3) 8月中旬の晴天の日に梅をザルにあけて天日に干します。
一昼夜おいてふたつきの容器に移します。
それが梅干しになります。
(4) 梅をザルにあけたときに取れる汁が梅酢です。
これは便に入れて冷蔵庫で保存してください。
 
意外に思われるかもしれませんが、梅酢に類似した味の酢はほかになく、これは梅だけが作り出す酢です。
 
 
● 海藻は最もすぐれたミネラル源!
 
必須ミネラルの多くは、生命活動に不可欠なエンザイム(酵素)の構成要素です。
体はそのミネラルがないと酵素をつくることができません。
 
生命活動を支えている酵素は、種類も数も膨大ですが、それを作るために必要なミネラルを土と水から取り出してくることができるのは植物に限られています。
ですから、植物を食べることで私たちは必要なミネラルを得ています。
肉や魚から得ているミネラルも、みな植物が土と水から取り出してきたものなのです。
 
植物の中でも海藻は、あらゆるミネラルの溶け込んだ海水から必要なミネラルのすべてを取り込んでいますから、最もすぐれたミネラル減です。
 
鉄の海藻中の濃度は、海水中の濃度の1万5千倍にも達していますが、鉄は酸化還元に関わる酵素の構成要素ですから、海藻の生命活動がそれだけの濃縮をもたらしたということができるでしょう。
 
同じように光合成や糖の代謝に関わる酵素の構成要素であるマンガンは、海水の1万2千倍の濃度で海藻に含まれています。
 
海藻はそのように、酵素を作るのに必要なミネラルを、海水から取り込んでいますから、海藻を食べますと、酵素をつくるのに必要なミネラルが供給されて、われわれの酵素活動も活発になります。
それは、食べることによって生命が移行する感じで食の根元を感じさせますが、海藻は病気を遠ざけるファイトケミカルの宝庫でもあります。
 
昆布、ワカメ、ひじき、モズクなどに共通して含まれているフコイダンは、海藻特有のぬるぬるした成分ですが、強い抗がん作用を持っています。
それにわかめにしてもモズクや岩ノリにしても、海藻の多くは生で食べられるところがすばらしく、酵素そのものを豊富にもたらします。
 
 
● 白米では肥満や糖尿病の改善は難しい!
 
玄米が栄養的にすぐれていても、玄米はかたいので食べられないという方が少なくありません。
そういう方にすすめられるのは3分づき米です。
3分づき米ならば、かたくて食べられないという人はまずいないでしょう。
 
白米は玄米から、種皮、果皮、糊粉層、胚芽を取り去ったものですが、3分づき米は種皮と果皮の一部を取り去っただけのものです。
果皮は一部取り去られるだけなので、3分づき米には玄米の半分の食物繊維と、1割から3割減のビタミンと必須ミネラルが含まれています。
 
病気を防ぐ力を持ったファイトケミカルは果皮と胚芽に集中していますから、その損失はほとんどありません。
インドール類、フラノボイド、イソチオシアネート類、植物ホルモンなどの重要な成分が、玄米同様に含まれています。
白米は、これらのファイトケミカルがゼロで、ビタミンと必須ミネラルは7割から8割失われています。
 
玄米と3分づき米に含まれる必須ミネラルのクロムは、インスリンと結合する形の生物学的活性を持ったクロムですが、白米はその9割を損失していますので、白米を食べていて肥満や糖尿病を改善するのは非常に困難といってよいでしょう。
 
ファイトケミカルが果皮と胚芽に集中しているのは米だけでなく、他の穀類にも共通していますが、複数の研究が、精製していない穀類を食べている人は冠状動脈性の心臓病と糖尿病の発病率が低いことを明らかにしています。
 
3分づき米は精製していない穀類の仲間ですが、5分づき米はファイトケミカルの多くが失われていて、必須栄養素の損失も大きいので白米の仲間に入ります。
 
精製していない穀類を食べるようにしますと、食事が大きく変わります。
食べていて栄養的な充実感の違いがはっきりわかりますから、誰しも充実させる方向に食事を変えていく気持ちになるからです。
 
パン食の場合、小麦全粒粉のパンはほとんど市販されていない状況ですから、自分で小麦全粒分100%のチャパティをつくることをおすすめします。
 
《チャパティ》
材料  小麦全粒粉3カップ、オリーブ油小さじ3、塩小さじ1.
 
つくり方
(1) 水を加えながら材料を混ぜ合わせます。
水の量は1カップ強。
(2) よくこねて丸め、湿らせたふきんをかぶせて冷蔵庫に入れておきます。
   入れておく時間は最低1時間。一晩入れておいても構いません。
(3) 適当な量に分け、丸めて平らに伸ばします。
(4) 鍋を強火で2分間加熱してから、それを入れ、ふたをして弱火で加熱します。
(5) 上下を返して両面に焦げ色をつけて出来上がりです。
 
 
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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