山ちゃんの食べもの考

 

 

その28
 

 「地元では美味しいと評判のしょう油です、里帰りのお土産代わりに持ってきましたので」と、もう一年以上前になりますが、知人のくれたしょう油が事務所の奥に置かれたままになっています。商品ラベルを見てみましょう。

 品  名 こいくちしょうゆ(新式醸造)      (ポリ容器)

原材料名 脱脂加工大豆、小麦、食塩、アミノ酸液、カラメル色素

糖類(氷糖蜜、砂糖)調味料(アミノ酸等)

甘味料(甘草、サッカリンナトリウム)ビタミンB1

保存料(パラオキシ安息香酸)

 

このしょう油の表示を読んでみましょう。

「新式醸造」とはどのようなことでしょう。「本醸造」はアミノ酸液などを加えずに麹菌酵素によって天然に醸造したもので、これに対して、「新式醸造」は本醸造で作られた諸味(もろみ)にアミノ酸液を加えて熟成させたものです。

「脱脂大豆」とは輸入大豆などから抽出剤で大豆油を搾り取った後の大豆カスで、以前は畑の肥料に使われていました。畜産用の飼料にも使われます。現在市場に出回っているしょう油の大半は脱脂大豆が原料で、化学調味料や防腐剤を使って作られた速醸造(3〜6ヶ月)のものだということです。本醸造しょう油の場合は1〜2年間かけて天然醗酵熟成します。無理に速く作ろうとすると酵母や乳酸菌が十二分に働かないので味や風味も落ちることから、多種多様な甘味や旨味成分を添加することになります。

「小麦」はおそらく輸入小麦かと予想されます。

「食塩」は海水をイオン交換膜電気透析法によって作られたものであり、一般の食塩で、天然のミネラル成分含有量が極端に少なく、塩化ナトリウムの純度の高い安価な一般の食塩でしょう。

「アミノ酸液」とは、主に脱脂大豆原料を分解して化学的に作られた旨味成分液です。

「カラメル色素」には4種類あって、いずれもデンプン加水分解物、糖蜜、糖類の炭水化物を化学的に熱処理して作られるもので、褐色の色をつけるため多くの食品に使われている添加物です。この場合はしょう油の色を出すための着色料として使われています。遺伝毒性や変異原生があると認められ、有害な活性酸素を発生するともいわれます。

「糖類(氷糖蜜・砂糖)」の氷糖蜜とは安価な糖分の高い砂糖の代替物です。

「調味料(アミノ酸等)」とは、味の素を代表とするアミノ酸系のグルタミン酸ナトリウムや、核酸系のイノシン酸二ナトリウムなどを混合して使用していることの表示です。

「甘味料(甘草、サッカリンナトリウム)」の甘草は、砂糖に代わる甘味料で中国やスペインから輸入されており、血行障害や遺伝毒性についても疑いがもたれています。サッカリンナトリウムについては、やはり砂糖の代替品で砂糖の500倍の甘味度がある化学合成甘味料です。染色体異常などの疑いが濃い物質です。

「ビタミンB1」は、醤油(pH酸性)に入れると抗菌作用があり、防カビ用に使われる物質です。

「保存料(パラオキシ安息香酸)」については『山ちゃんの食べもの考 その22』で述べましたが、食品が腐るのを防ぐための保存料として使われる化学合成添加物です。パラオキシ安息香酸には5種類の物質があり、何種類か混ぜて使われるのですが、いくつ使っても「パラオキシ安息香酸」という簡略名で表示しても良いことになっているそうです。このパラオキシ安息香酸は、化学合成発色剤「亜硝酸ナトリウム」(食肉ハム・ソーセージやイクラ、スジコなどの赤い色を保つために使われる)と紫外線下で反応して突然変異を引き起こす発ガン疑惑物質を作ることが指摘されています。

 

 

 さてこのしょう油についてどのようにお考えになりますか。これは決して珍しいことではなく、これに類したものはあらゆる食べもので見ることができます。私たちが求める簡単、便利、安価な食べものには恐いものが非常に多いのです。

 しょう油や味噌は遠いご先祖から継承されてきた日本人にとって切り離すことのできない知恵の食です。私たちはいささかの疑念を抱くことなく、昔ながらの手法で作られた安全なものであり体に良い食べものとして、煮物やサシミの他多くの料理で利用しているものです。このように日本の最も代表的な食べものが、私たちの思いも及ばないところで歪められ、化学的に合成された食品になってしまっているのです。そして「♪あなたが買うのを待って、昔の名前で出ています♪」。この類の商品がとても多いのです。まず表示ラベルをよく読んで、わけのわからないものは避けるべきでしょう。

 

 山田博士氏は『危ないコンビニ食』の中で、「安息香酸」を危険物の第2に取り上げ、「この安息香酸が使われているものとタール色素が使われているものを一緒に食べると、子供たちが暴れ出す」と警告していいます。イギリスの病院で保存料の安息香酸類と着色料の黄色4号が混ざった食事が、喘息や皮膚炎、花粉症、耳炎、鼻炎、偏頭痛の原因であったことがわかり、ことに喘息やじんましんの傾向のある人は、これらの添加物を使用した食べものは避けるべきだ」と述べています。

 安息香酸類は、しょう油や清涼飲料水、マーガリン、キャビアに限って使用が認められているものであり、一定量以上を動物に与えると死んでしまうという毒性の強いものです。強い変異原性があり、染色体異常と遺伝子の修復異常を引き起こすともいわれるものです。栄養ドリンク剤の保存料としても使われることが多く、体に良いと思って飲んでいるドリンク剤が、逆に体に害を及ぼすかも知れないということです。パラオキシ安息香酸類は、しょう油、果実ソース、清涼飲料水、シロップ、果実や果菜の表皮に限って使用が認められています。

 

 今朝も若い青年が訪ねてきたので「最低限、子供さんのおやつと飲み物、調味料と野菜だけは良いものを選んで食べるように」と話しました。見分け方は簡単で生鮮物の場合はお店が堂々と胸を張って強調していますから、それらを選んで疑問点を聞けば、おおよそどの程度のものか見当がつきます。調味料や加工食品の場合は必ず原材料の表示ラベルを見ることです。理解できない難しい言葉がたくさん並んでいるものほど危ないと考えて良いでしょう。売らんかなのために強調された「お肌が美しく」「食物繊維がこの一本で」「天然風味が生きている」「歯を丈夫にする○○強化」などのきれいな謳い文句には決して惑わされないことです。それから価格の高いものは必ずしも良いものとは限りませんが、高いものには高いわけがあり、安いものには安いわけがあります。表示で判断できないことは遠慮なく店員に聞くことです。納得のいくキチンとした答のないものは避けるべきでしょう。

 

 つぎに、先ほどのしょう油と比較するためにも、私が愛用する2点のしょう油をご紹介しましょう。とても素晴らしいものなのでメーカー名、商品名も明らかにしましょう。金沢のサシミは格別にうまい。いろいろ使ってきましたが、「溜りしょう油」に出会って2年。サシミや焼き魚に使ってすっかりはまっています。

製造元 愛知県知多郡武豊町字里中54番地

合名会社 伊藤商店 電話 0569-26-1312

商品名 国産丸大豆、天日塩 溜“伝右衛門”

      九代目伝右衛門が造る弊社最高の旨味の結晶

杜氏 伊藤富次郎 

 溜・豆味噌の蔵元「伊藤商店」の豆味噌「手作り生赤味噌・傳右衛門」は貝類や野菜の味噌汁に格別の美味しさでヤミツキになる。「溜りしょう油」はこの豆味噌を3年という長期間の熟成中に木樽に溜まってくる旨味エキスです。

表示ラベルを見てみましょう。

品  名 たまりしょうゆ(本醸造) (ビン)

原材料名 大豆・食塩・小麦

商品説明 : 原料に厳選した国産大豆とミネラル分の多い天日塩を使用。

 造りは麹を贅沢に使い昔ながらの醸造法で、杉の大桶にじっくり三年以上寝かせた天然醸造溜。時間を掛けてゆっくり搾り出したそのままの味は、まろやかな風味とコクのある旨味をたっぷりと含んでおります。蔵人として出し得る全ての経験と技・労力をそそぎ、代々伝わる当主の名を受け継いだ溜の味を存分にご賞味ください。

 

 参考までに、

溜りしょうゆ
720ml 1本 1500円

200ml 1本  450円

            

生赤味噌    

1kg  1カップ 1000円

500g  1カップ  500円        

 

 さて、わが地元の金沢が誇る美味しい「生しょう油」を1点ご紹介しましょう。個人的には特に煮物におすすめしたい逸品です。焼魚や漬物にも香りがよく、焼肉でもぜひお試しいただきたい風味です。いろいろな雑誌にも取り上げられており、知る人ぞ知る逸品です。ニューヨークのレストランでも人気の商品とか。ぜひお確かめいただきたい。

製造元 石川県金沢市大野町4丁目イ170
株式会社 ヤマト醤油味噌 電話076-268-1248

商品名 「生」自然塩仕込み、丸大豆醤油 “ひしほ”

旨味を増す丸大豆を使った絞りたて生醤油。まろやかな味わいとこくが生きて、煮物・焼き物でさらに引き立つ風味。 

 表示を見て見ましょう。

名  称 こいくちしょうゆ(本醸造)          (ビン)

原材料名 丸大豆、小麦、食塩、アルコール

 生の醤油です。開栓後は冷蔵保存してください。

 商品説明 調理で際立つ生醤油“ひしほ”。丸大豆と小麦で造った麹を食塩水に仕込み、十分に時間をかけて醗酵させると諸味ができます。これを布袋でしぼったものが生醤油。“ひしほ”はこの生醤油を熱処理せず、ミクロフィルターでろ過しました。大野独自の種麹菌と蔵つき酵母に育まれた諸味の風味が生きています。焼いた時の香り、煮物にした時のこくと日持ちのよさも、これまでの「生」の醤油とは違います。

 

 熟成したもろみを絞ると“生しょうゆ”ができます。加熱処理した醤油と違って“生しょうゆ”には酵素や乳酸菌、酵母菌が生きていますから、それだけ食べものとして理想的といえるでしょう。生きているため放置しておくとカビが生えることがありますが有害ではありません。ガーゼなどでこして使えば差し支えません(私たちが小さい頃田舎ではおふくろが掻き混ぜていました)。冷蔵庫で保管するのが安心です。カビなどの繁殖を抑えるためにアルコールが使われます。

 参考までに、

生しょう油“ひしほ”
900ml 1本      1000円

300ml 1本       400円

                        

有機栽培の味噌“かなえ”
500g  1カップ    800円
   

生こうじ味噌

750g  1カップ   780円
         

 大野しょう油の歴史は江戸時代に始まります。当時の大野は加賀百万石金沢の港として栄えました。「北前船」による原料(大豆・小麦・塩)の荷揚げや製品の出荷に便利であったこと。さらに霊峰白山の清冽な伏流水が潤沢に湧き出る地であったことから全国有数のしょう油産地として発展してきた港町です。

 潟с}ト醤油味噌は1911年に初代・山本藤松という人が創業し、私の尊敬する山本晴一氏は4代目である。「季節の味、旬の素材を引き立てる良質な調味料の製造・販売を通して、人々の健康な食生活に貢献したい」と頑なに伝統の製法を守りつつ、新しい商品の開発もすすめている。氏はまた食と健康への造詣が深く、石川・加賀百万石の伝統的な食文化の振興に力を注いでいる。詳しくは「ヤマト醤油味噌」のホームページをご参照ください(「ヤマト醤油味噌」の検索でご覧になれます)。

 

 合成保存料安息香酸等の話を進めるために、3点のしょう油をご紹介しましたがもうお分かりでしょう。同じ種類の商品でも、食品の腐敗を防止するための添加物を使ったものと使わないものがあります。良い原材料を用い、自然といのちを大切にしたものには使われず、粗悪な原材料のものには多くの添加物も一緒に使われていることがわかります。肥料や飼料に使われている原材料に、遺伝毒性や発がん性、アレルギーの心配などが指摘される物質を使ってまで、食べものが作られ本物顔で売られていることに怒りさえ覚えます。ご家庭でご使用のものだけでなく、子供さんが食べている学校給食やレストランで使われているしょう油や味噌についてもご確認いただくのが賢明です。

 

 「良いのはわかっているけど高くて、私たちにはとてもねえ――」とよく言われます。そしてその足で喫茶店に入ってコーヒーとケーキでだべっている。次に言われるのは「でもウチの人は(子供は)これでないと美味しくないって言うのよ」「なんぼ体に良いからと言ったって食べものはやっぱり美味しくないとねえ」あげくには「好きなものを美味しく食べて楽しければ特別長生きしなくてもいいの!」なんて言われる。

 元気なうちは何とでもいえます。10年ほど前になりますが、私はアレルギー性アトピーで全身真っ赤に腫れあがった赤ちゃんを抱いた若いお母さんが「安心な野菜が欲しい」と救いを求めてこられた姿を忘れることができません。しっかり確認をとりながら良い野菜を何度もお届けしました。ご家族の大変なご努力で今はきれいになり元気で学校に行っています。心を打たれた私は農産物のみならずよい食べものを本気で探し勉強しました。

 お元気な方にご理解いただくのは大変難しいものです。化学肥料や農薬、添加物など化学物質による疾病は10年、20年、30年の長い長い年月を経て現れてくるといわれます。しかも病状が現れてもその原因物質を特定することはできません。発がん性や、遺伝毒性、アレルギー性、活性酸素発生などが指摘されているにも拘らず、いろいろな食べものを通して毎日何十種類の添加物を取り入れています。しかも化学物質を多用するほどその食べものに使われる原材料は怪しいものだということです。

 

 


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

 ◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る