山ちゃんの食べもの考

 

 

その297
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【153】
朝食抜きで、高血圧、糖尿病、
肝炎、腎炎、アトピー、リュウマチが
ぞくぞく治っている!
「奇跡が起こる
半日断食」
甲田光雄 著  マキノ出版 刊
より その3
 
 
第2章 半日断食のすごい効果の1
 
●断食は世界最高の健康法
 
断食をすると、体の余分な水分や脂肪がとれ、肥満が解消し、引き締まった体になります。
ダイエットにも最適です。
実際、半日断食を実行して、体がスリムになった人はたくさんいます。
 
しかし、断食は単なる肥満解消、ダイエットの手だてにとどまるものではありません。
本来は、病気や不健康な体を根本から治す治療手段なのです。
不快な症状が解消して体調がよくなり、疲れも少なくなって、スタミナがつき、病気になりにくい体になります。
現代医学で治療がむつかしい難病が改善することも決して珍しくありません。
 
断食は、病気にならないための世界最高の健康法であると、私は確信しています。
 
 
●断食のルーツ
 
断食は本来、一定期間、いっさいの食べ物を断つ、すなわち、意識的にみずから禁欲を課すことで心身の浄化を実現しようとする、宗教の修行法として始まりました。
 
●宗教の修行法として始まった断食
たとえば、キリスト教でも、旧約・新約聖書に宗教的断食の記事が多く見出されます。
中でも、荒野におけるキリストの40日にわたる昼夜の断食は有名です。
 
キリスト教では、4、5、7、10の各月が断食の月とされ、贖罪の断食などの儀式として行なわれていました。
現在でも、ローマ・カトリック教会では、キリストが荒野で40日間断食を行なった苦難を追体験するため、復活祭(イースター)の40日前や聖金曜日、降誕祭の前などに断食の儀式が行なわれます。
 
イスラム教では、イバーダート(神への奉仕、儀礼)の一つとして、イスラム暦9月を断食月として、毎日、日の出から日没までの間、いっさいの飲食を禁ずる規律が定められています。
これが有名なラマダンで、現在でも敬虔な信者達の間で盛んに行なわれています。
 
インドにおいては、古代の民族宗教であるバラモン教で、断食は修行法として行なわれてきました。
仏教の祖、ブッダ(釈迦)が悟りを開く前にガヤの山林に6年間こもり、断食を何度も行なっていたのは有名な話です。
また、古くから、政治的抵抗の手段としても断食は行なわれてきました。
今日いうところの抵抗手段としてのハンガー・ストライキです。
 
わが国でも、宗教や修剣道の修行として、今から1200年前の平安朝以降に断食が行なわれてきたようです。
 
千葉県成田山新勝寺における参籠断食(神社・仏閣などにこもって断食すること)は比較的古い歴史を持ち、過去に、祐天上人を始め、新井白石、松平定信、二宮尊徳、倉田百三氏らも行なっています。
これら先人達の断食は、まだ大半が宗教上、あるいは精神修養の目的で行なわれたようです。
京都の比叡山、奈良・吉野の金剛山などで行なわれてきた「断食・断水・断眠」の荒行は現在まで受け継がれています。
 
また、一般の人の間でも昔から、病気治癒を願って、五穀断ちをする習慣が伝わっていますが、これも宗教の断食から派生したものと思われます。
 
●断食は遺伝子が獲得した自然治癒力活性化の最高手段
一方、精神修養をしているうちに、いろいろな病気が治ってしまうことが経験的にわかってきました。
特にインドでは、古くから健康法として断食を行なったようです。
 
インドの伝統医学であるアーユルベーダーの古典『スシュルタ・サムヒタ』では、断食は自然治癒力を活性化させる術であり、それにより健康を実現し長生きできるとして、腹水には1週間の断食を、長寿法には3日間の断食などを勧めています。
 
動物を飼ったことのある人ならわかるでしょうが、イヌやネコなども、少し調子が悪くなると、何も食べようとはしません。
つまり、断食をするのです。
これは、35億年の生命進化の過程で遺伝子が獲得した自然治癒力活性化の最高手段として行っているのです。
古代の人類も、体験的にこの自然に知恵を得たというわけです。
 
やがて近代になり、医学が飛躍的に発展を遂げても断食による治療法はすたれるどころか、ますます盛況を呈するようになりました。
 
ロシアでは1769年に、モスクワ大学のベニヤビノビッチ教授が断食療法を説いています。
20世紀になると、同じモスクワ大学のニコライエフ教授が、精神分裂の患者に長い断食を施し、効果があったことを報告しています。
 
アメリカでは、19世紀後半に医師ジューイが断食療法の先駆けとなり、20世紀に入ってからはシンクレハ、ハスケル、ダンカンらが肥満治療に断食をほどこしました。
 
日本では、断食を療法として応用する施設が初めてできたのが大正の初期です。
大正から昭和にかけて盛んになり、特にその数を増したのは第二次世界大戦以降です。
 
当時、日本の各地に断食道場がありました。
奈良県生駒山の静養院断食道場や信貴山断食道場、山口県の高木断食道場、京都府の嵯峨野断食道場、神奈川県の辻堂断食道場などです。
 
これらをはじめとする多くの断食道場が現代医学では決定的な治療法がない難病(肝炎、腎炎、膠原病、ガン、アトピー性皮膚炎など)を引き受けて、治す活動をしていたのです。
 
 
●断食の科学的な研究が始まった
 
このような流れの中、なぜ断食で難病が治ってしまうのか、わが国でも近代になって現代医学が注目し、研究するようになりました。
 
一番古くは、1889年に東京大学の大沢謙二教授が、千葉県成田山の新勝寺にこもって断食を行なっている7名について医学的な検討を加えました。
 
1992年には、国立栄養研究所におられた高比良英雄博士ら5名が断食を行ない、断食中の心身の変化をいろいろな検査によって明らかにしました。
この結果は『断食研究』という分厚い書物にまとめられ、1930年に岩波書店から刊行されました。
この本が断食研究分野の著書では古典的な存在となっています。
 
こうして医学的研究がすすむにつれてわかってきたことは、やはり現代医学で治らない病気が断食によって治っているという事実です。
気管支ぜんそく、関節リュウマチ、慢性胃炎などが治っていますが、その一方で、断食中に血を吐いたとか、心臓発作で死んだなどという事故も起きています。
つまり、断食は、ものすごい効果もあるけれど、危険性もあるということです。
 
そこで、断食の危険な面はきちんと補い、誰でも安全にできるような科学的な断食を現代医学者がつくりあげなければならない。
そのような思いから、私が中心になって、断食療法を研究している医学者たちと、昭和42年に「絶食研究会」という組織を結成しました。
今年(平成13年)で35年目になりますが、最初5人の医師で始めたのが、今では大勢の会員数になっています。
 
また、それに10年ほど遅れて、1980年、東北大学の鈴木仁一教授などが中心となって発足した「日本絶食療法学会」は、主に心身症の治療としての断食を研究されてきました。
依頼、「絶食研究会」と「日本絶食療法学界」が2本柱となり、断食療法を医学的に解明してきたのです。
 
私個人としては、自分自身、半世紀にわたって幾度も断食を実行し、そのすばらしい効果を体験するとともに、一方では、数多くの患者さんに断食療法を試み、指導し、現代医学で難治の病気であっても、実に胸がすく思いがするほど快癒する例をたくさん目撃してきました。
 
なお、断食と絶食の呼び名の違いについてですが、「断食とは主として宗教上(祈念、誓いなど)の目的で行なう場合をいい、一方、医学的な目的で行なった場合は絶食と呼ぶ」という申し合わせが、昭和43年の絶食研究会において決められました。
 
しかし、私にとって、健康法というものは単なる病気治療とか体質改善の目的だけではなく、精神的な向上をも含んだものです。
また、断食という呼び名のほうが一般にもなじみがあることからも、一般の人向けには断食という言葉を使っています。
 
前述したように、断食の効用は近代になって現代医学の光だ当てられ、徐々に解明されてきて、さらに現代、次々と新しい事実が解明されてきました。
やはり、断食には、体の根本に働きかける、数々のすばらしい作用があることがわかってきたのです。
この章では以下、断食がもたらす卓越した作用とその仕組みについて紹介しましょう。
 
 
●断食は眠っている本来的な力を呼び覚まし、
体質を変える
 
断食の最大の目的は、食べ過ぎによる体内の余分な栄養を取り除き、人間が本来持っている能力を最大に引き出すことにあります。
 
断食は食物をいっさい断つので、体には飢餓状態という大きなストレスが生じます。
そして体は、このストレスに対する反発力としてショック状態を引き起こします。
 
断食は体にとって、このうえもなく迷惑な、危険な仕打ちです。
このまま放置したら、たちまち死に追いやられます。
体はそれを察知して、体のあらゆる器官を総動員して、断食による飢餓状態に対して生命を守ろうと必死になってもがきます。
 
「火事場の場価値から」というたとえがありますが、これは、人間は窮地に追い込まれた際、時として自分でも信じられないほどの力を発揮するという意味です。
我々の体内についても同じことがいえるでしょう。
 
栄養の補給をいっさい断たれると、体内ではかつてないほどの大きな変化が起こるのです。
通常の食事を続けていると、後からの補給が期待できるので、吸収できる栄養分を大便のほうに少々逃してもかまいませんが、断食では次の補給が期待できません。
したがって、胃腸に入ってきた食物は100%近く消化吸収して、それを身につけようと待ちかまえるようになります。
 
このように、飢餓状態というストレスに対する反発力が、体の仕組みを大きく変動させます。
この変動させる力、体質を変換させる過程が、さまざまな病気・症状を治す力(治癒力)として現れるのです。
 
たとえば、断食を行なうとストレスに強くなることが科学的に証明されています。
断食を行なうと、ホルモンの指令器官である脳下垂体から、ストレスに強くなる物質が出ることが医学的にも証明されているのです。
断食を行なうことで、自己治癒力が高まることも、報告されています。
 
 
●断食は快感をもたらす
 
現代栄養学は、朝食を抜くと、脳のブドウ糖が不足し、脳の機能が低下するという理由で、朝食抜きに反対しています。
 
それを裏付けるかのように、「朝食を抜いている学生は生成期が悪い」という報告があります。
いつも1日3食の人が1食抜くと、頭がボーとして、体に力が入りません。
その実感が、朝食抜き反対論を強力に後押しし、朝食抜きはよくないという考えが広く浸透しています。
 
ですが、朝食を抜くと脳の機能が低下するという説は、机上の空論に過ぎません。
 
満腹と空腹のときを比べて、仕事や勉強の能率がどちらが上がるかというと、空腹のときです。
お昼ごはんを食べた後、デスクワークや勉強をしようと思っても、頭がボーッとしてよく働かなかったという経験は、誰もがあるでしょう。
 
実際に半日断食を続けて行い、慣れてくると誰でも実感することですが、ふらふらなんかしません。
脳の働きが低下するどころではなく、かえって脳はすっきりとし、冴えわたってきます。
 
これは、どういうことかといいますと、普通に食事をとっていると、脳はブドウ糖のみをエネルギー源として使いますが、食事を抜くと脳は別の物質をエネルギー源として使うということです。
 
カナダのオーエンス博士が脳が何をエネルギー源として使うかという研究を行なった結果では、50%はケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸で、α-アミノ窒素、アセト酢酸がそれぞれ10%、ブドウ糖を使うのはたった30%に過ぎません。
 
注目していただきたいのが、50%はケトン体のβ-ヒドロキシ酪酸を使うことです。
ケトン体とは脂肪が分解されてできる物質です。
つまり断食をすると、体内の糖分が尽きるので、脳は体内に蓄えた脂肪をエネルギー源として使うようになるのです。
 
ケトン体をエネルギー源とした脳は、脳波のひとつであるα波を増やし、脳下垂体からはβ-エンドルフィンという物質の分泌量がふえることもわかってきました。
α波はリラックスの脳波で、βーエンドルフィンは快感物質といわれます。
これらがふえることによってさわやかな気分になり、心が平穏になって、とてもリラックスした状態になるわけです。
 
宗教では心身の浄化のために断食を行ないますが、それはこうしたしくみを経験的に知り尽くしているからなのです。
 
 
●断食はエネルギーの利用の仕方を変える
 
肥満が健康上、問題とされるのは脂肪が過剰にあるからですが、断食をすると、体脂肪が集中的に減ってきます。
半日断食を続けて行なった場合も、体脂肪が集中的に減ってきて、ダイエットに最適です。
 
前述したように、断食を行なうと、糖質をエネルギーとして利用できないため、脂肪を分解してエネルギーとして利用するようになってきます。
単に取り入れる栄養を少なくしたからというだけではなく、体質が変わり、体内のエネルギー利用の仕方が変わってくることによっても、体脂肪が減ってくるのです。
 
 
●断食は宿便を排泄する
 
物事はなんでもそうですが、まず、出すことを考えるのが順序です。
エレベーターでも電車でも、出てから入ります。
まだ降りる人がいるのに乗ったら、混乱が起こります。
 
それと同じで、体も老廃物が残っているのに栄養を入れてしまうと混乱が生じてしまいます。
濁った血液が循環してしまう混乱で、これが様々な病気のもとになっているのです。
 
東京女子医科大学の栗林毅助教授が警告しておられる「ドロドロ血液」も、老廃物が完全に排泄されていないのに食べてしまうことが原因です。
 
断食は老廃物を排泄しますが、その働きの中で最も期待されるのが宿便の排泄です。
第1章で詳しく説明しましたが、食べ過ぎによって宿便がたまると、腸マヒが起こり、毒素が体内に吸収され、さまざまな症状を引き起こします。
そして、宿便はついには、心筋梗塞や脳梗塞、ガン、膠原病、アトピー性皮膚炎など、いろいろな病気を引き起こす原因になります。
 
宿便を排泄し、また、ため込まないようにする唯一、確実な方法が断食です。長時間、おなかの中に何も入れないことによって、腸は活発に働き、みずから排泄する能力を高めるのです。
 
 
●断食は環境毒素を排泄する
 
高度経済成長期に、全国の田畑で大量の有機塩素農薬が使われました。
今では禁止されているBHCという劇薬(殺虫剤)が、当然のように田畑にばらまかれたのです。
 
このBHCが人間に体内に入ると、脂肪に中に沈着します。
脂肪にいったん沈着したら、何年も出てきません。
その時代生きた多くの日本人に、毒物であるBHCがまだ体内に蓄積されていることでしょう。
 
私は断食でBHCが排泄できるのではと考え、昭和48年、神戸大学医学部公衆衛生学の喜多村正次教授と共同で調べてみました。
その結果、断食すると、尿中に大量のBHCが排泄されることがわかったのです。
 
現在はBHCに変わって環境ホルモンであるダイオキシン、ビスフェノールA(プラスチック容器などが含む)など、さまざまな物質が人間の体を蝕んでいるとされ、大きな問題となっています。
環境ホルモンは、私たちの環境、、生活にあふれています。
そして、環境ホルモンによって、さまざまな病気が引き起こされると考えられています。
 
胃腸の働きが弱い人はもちろん、食べ過ぎで宿便をため込んでいる人では、体内に侵入した環境ホルモンを排泄する力は低下しています。
環境ホルモンはいったん体内にとどまり、脂肪の中に入ると容易には排出されないといわれます。
 
私はこうした環境ホルモンも、断食すると排泄できるのではないかと考えています。
残念なことに、それを証明する実験がまだ行なわれていません。
理由は、超微量な環境ホルモンを検出するには予算と設備が必要であり、個人レベルでは不可能だからです。
 
福岡県保健衛生研究所の森田邦正さんが、九州大学と共同で「生野菜やスピルリナ、クロレラをたくさん食べるとダイオキシンが排泄される」という研究結果を出されていますが、私は断食をするだけでも出ると考えています。
 
 
●断食は自己融解を起こす
 
断食が体にもたらす変化の中でも特質すべきことが、自己融解です。
 
断食によっていっさいの栄養分が断たれると、体はどこからか栄養分になるものを探し始めます。
体の細胞が勝手にエサ探しを始めると言うわけです。
 
さしあたって、生命維持に必要なもの以外の組織から栄養分を取り入れて、エネルギーに変えます。
これを「自己融解」といいます。
 
では、どこに栄養があるのでしょうか。
体のいたるところにありますが、いちばんわかりやすい例として血管があります。
 
動脈硬化症の人が断食をした場合を見てみましょう。
動脈硬化の多くは、血管内にアテローム(コレステロールが沈着してできたおかゆ状の塊)が形成されて、血管の中が狭くなり、血液の流れが悪くなっています。
 
このような人が断食すると、体は血管内のアテロームをエネルギー源として利用、断食中、アテロームはどんどん使われていき、しまいにきれいになくなってしまいます。
 
実際、動脈硬化のため、両足の血行が悪く冷えて困っていた人が、断食中に急に足が温かくなってくる現象が起きますが、これは血管内の自己融解がもたらした結果です。
 
もちろん、自己融解は血管の中だけで起こる現象ではなく、体中のあちこちで起こります。
もっともよく使われるのは脂肪です。
断食中にみるみるやせていくのは、自己融解がもたらした結果だといえます。
 
また、腸の癒着がはがれる、イボなどの腫瘍が消失することも、断食中に頻繁に見られます。
これらも自己融解です。
ガンが縮小するのも自己融解です。
 
たとえば、過去に虫垂炎(盲腸炎)を起こして手術をした人が断食を行なうと、その部分が断食中に痛むということもよく起こります。
これは盲腸炎の手術で発生した腸の癒着が断食による自己融解ではがれたわけで、それで一般的に痛みがもたらされます。
腹部を手術するということがほんとうにこわいことだということを、皆さん、よく知っておかねばなりません。
 
 
●断食は遺伝子を活性化する
 
現代の最先端医療といえば遺伝子治療ですが、遺伝子治療で期待する効果と同じことが断食によって可能になると考えられます。
 
遺伝子治療は、遺伝子を組み込んだウイルスまたは細胞を患者の体内に戻すと、体内でその遺伝子が働き、病気に関わる遺伝子のはたらきを抑えたり、補ったりして、病気を治すといった治療法です。
ガン、エイズ、慢性肝炎など、難治な病気の治療に期待がもたれています。
 
少しややこしくなりますが、「断食をすると、眠っている遺伝子を起こすことができる」という話をしましょう。
 
1996年7月、イギリス・エジェンバラのロスリン研究所で、クローン羊のドリーが誕生したことは、まだ記憶に新しいことでしょう。
それまでのクローン技術は、受精卵クローンといって、未分解の受精卵を分割してある程度培養させた後、代理母の子宮で成長させるものでした。
 
ところが、ドリーは体細胞クローンといって、6歳の雌羊の乳腺細胞(乳房にある細胞)を分化させて培養し、代理母の子宮で成長させたものです。
つまり、体の一部である1つの乳腺組織から取り出した1個の細胞から、同じ遺伝子を持った丸まる1匹の羊が作られたわけです。
それ以前、受精卵ではない、体の一部でしかない細胞からクローンが作るのは不可能だと信じられていました。
 
とはいえ、体細胞は、その始まりを質せば、一つの受精卵が繰り返し分化して発生したものですから、理屈では、どの細胞も同じ遺伝子を持っているはずです。
ところが実際は、胃の細胞は何回分化しても胃の細胞です。目の細胞は何回分化しても眼の細胞です。
そうでなければ、胃に目ができるなどして、具合が悪いからです。
 
細胞はその成長過程で分化して、胃の細胞は胃の細胞として、目の細胞は目の細胞として、個別に機能するようになるのです。
例え最初に保有していた遺伝子が同じであっても、胃の細胞が目の細胞に変わることはありません。
 
なぜそのように整然と規制されているかというと、胃の細胞に必要ない電子は機能した状態(スイッチオンの状態)になっているけれど、それ以外の遺伝子は機能しない状態(スイッチがオフの状態)にしている、つまり、眠らせているからです。
したがって、分化した体細胞には、生物全体を作り出す能力がないというのが常識でした。
 
しかし、体細胞クローンはそれを可能にしたのです。
それは、雌羊からとった乳腺細胞に、「初期化」という操作を行ったからです。実は、この初期化という操作が、断食だったのです。
 
乳腺細胞を培養する数週間のうち、1週間ほど、培養液の濃度を通常の10%から0.5%に、すなわち、栄養を20分の1に減らす操作をしました。
すると、飢餓状態のショックで、今までオフになっていた遺伝子がオンに切り替わるのです。
つまり、乳腺細胞の中で眠っていた遺伝子が起こされて、それがやがて一匹の羊になったわけです。
 
我々が断食する場合にも、オフになっている遺伝子をオンにしている可能性があります。
断食すると体質ががらりと変わったり、難治の病気が治ったりするのは、遺伝子治癒と同じことが行なわれている、と私は考えています。
 
最近、抗生物質(微生物から作られる薬)が聞かなくなったという情報が盛んに耳に入ってくるようになりました。
肺炎、結核、コレラなども例外ではありません。
最初は効いていた抗生物質が次第に効かなくなってしまうのです。
 
これは病気が抗生物質の耐性を獲得したためですが、それはすなわち病原菌の遺伝子が変わったことを意味します。
このように生命体は環境の変化に従って遺伝子を変えて、生き残りをはかるのです。
 
遺伝子というものは固定的なものではなく変化しやすいものであることがわかっています。
人間の思いによっても遺伝子が変わると、筑波大学の村上和雄教授がいっておられるではありませんか。
断食もまた。難病が劇的に変化することなどから、オフになっていた遺伝子を切り替えてオンにする可能性があるに違いありません。
 
 
●断食はスタミナをつける
 
私の兄は農業に従事しています。
もう50年ほど前の話になりますが、私が半日断食を提唱した際、兄から怒られた経験があります。
「お前は涼しい病院に中で、椅子の上に座っていればそれで仕事が勤まる。しかし、毎日、自分は炎天下にさらされ、泥まみれになりながら体を動かし農作物を育てなければならない。そんな人間が大事な朝食を抜かせるか」
というのが、兄の言い分でした。
 
そこで、私も兄の野良仕事に参加することになったのです。
田んぼを耕したり、稲刈りをしたりして、朝食を食べている兄と、食べていない私、どちらが元気に仕事ができるかを競おうというわけです。
 
結果は、私の予想通り、私のほうに軍配が上がりました。
兄が田んぼをバテながら耕しているとき、ハアハアと息を吐き出しながら稲刈りをしているとき、常に私のほうはらくらくと作業を進めていたのです。
これには兄も驚き、ついには白旗を上げ、私に謝った後は半日断食の実践者になりました。
 
意外に思うでしょうが、少食の人ほどスタミナがあります。
テレビ中継などでマラソンを見ると、選手はみな一様にやせています。
太っていると、そのぶん、体に重石が乗っているようなもので、長距離はとても走れないのです。
 
半日断食をきちんと実行した人は一様に、スタミナがつくことに驚きます。
それも半端ではありません。
42.195kmのマラソンを完走できるほどのスタミナで、実際、半日断食によって病気を克服し、完走した人が何人もいます。
 
元気をつけるためにもりもりご飯を食べても、運動で消費されなかったエネルギーが体につくだけで、スタミナはつきません。
太って赤ら顔の人は血色がよく見えますが、顔がほてっているだけで、内臓の周りや血管の内側にはドロドロとした脂肪がいっぱいくっついています。
こういう人は、スタミナがまったくなく、マラソンどころか、人生を走りぬくことも難しいでしょう。
 
スポーツなど動的なスタミナだけでなく、デスクワークなどに必要な静的なスタミナも、少食のほうがつきます。
 
また、食事を抜いたほうが短期のスタミナもつきます。
戦後の国民的スターだったプロレスの力道山が、世界選手権のとき、前の晩から断食していたのを私は知っています。
当日は朝食も昼食も、そして夕食も食べずにリングに上がりました。
 
理由を聞かれた力動山いわく、「食べたら治からだ出ない」でした。
 
 
●断食は免疫を上げる
 
断食は免疫の力(病気と対抗する力)を上げ、自然治癒力を高めます。
このことは、昔から経験的に知れれていたことでした。
たとえば、短期の効果でも、カゼを引いたとき、栄養がたくさんあるものを食べるよりも、1日何も食べなかったり、おもゆだけにしたりしたほうが早く治ります。
 
半日断食を継続している人では、免疫力高まっていることは明らかで、たとえば、カゼを引きにくくなります。
なぜ半日断食をしたら免疫力が高まるのか、現代科学をもってしても、そのしくみは完全には明らかになっていません。
 
ただ、断食を実行したら免疫が上がることは、九州大学の久保知春教授が証明しておられます。
たとえば、3日間の断食でリンパ液の免疫活性が高まるとか、白血球が多くなるとか、免疫に関係する胸腺や副腎の重量が大きくなるなど、確認されています。
 
 
●断食は活性酸素をへらす
 
最近、活性酸素の研究がすすみ、これが私たちの健康問題に大きく関係していることがわかってきました。
活性酸素は、私たちの臓器や細胞に障害を与え、ガンや動脈硬化、老人性痴呆症などのいろいろな病気を引き起こすというのです。
したがって、活性酸素の産生をなるべく少なくする生活を、健康法として採用するようにしても良いのではないかというようになってきました。
 
この活性酸素は、人間の酸素消費量の約2%から発生するといわれています。
だから、酸素の消費量が激増する厳しいトレーニングや労働は、健康上あまり好ましくないというわけです。
 
一方、朝食抜きの1日2食(ただし夜食はしない)の場合は、酸素消費量が13%も減るというデータがあるのです。
酸素消費量が1日3食の人よりも13%も減るということは、それだけ活性酸素の産生量も減るということではありませんか。
このことについては、腫瘍学が専門の小林博さんが、著書『ガンの予防(新版)』の中で「腹7分のカロリー制限食で活性酸素量が減ることにより、ガンの予防に役立つ」という新説を紹介しておられます。
 

断食の10の効用
1、断食は眠っている本来的な力を
呼び覚まし、体質を変える。
2、断食は快感をもたらす
3、断食はエネルギーの利用の仕方を変える
4、断食は宿便を排泄する
5、断軸は環境毒素を排泄する
6、断食な自己融解を起こす
7、断食は遺伝子を活性化させる
8、断食はスタミナをつける
9、断食は免疫を上げる
10.断食は活性酸素をへらす
 
 
●栄養的によいものでも食べ過ぎると害になる
 
食べ過ぎると、健康を損ない、さまざまな不調や病気を引き起こす原因になります。
そのことは今日、多くの人が認識しているようですが、栄養があるものなら多少多くとってもかまわないという誤解が根強くあります。
 
たとえば、玄米菜食を続けていたのに病気になったと、不思議がる人がいます。
玄米や野菜が中心の玄米菜食主義は、食事の内容ということでは、異議をはさむ必要がない、健康食といってもいいでしょう。
しかし、そこに宿便のことが抜け落ちていたら、大いに問題です。
いくら栄養的によい食品でも、宿便を排泄することをせずに食べ続けていたら、宿便をますますため込むことになってしまうでしょう。
 
また、生野菜が体によいというと、生野菜を大量にとる人もいますが、生野菜を食べ過ぎると胃腸を荒らしてしまいます。
何ごとも過ぎたるは及ばざるがごとしです。
 
質のよい食品を適正量とり、、宿便の排泄を促すことこそ、私たちに求められていることです。
そのために私たちが誰でもできる最善の方法が、半日断食といえるでしょう。
 
 
●半日断食のダイエット効果
 
ダイエットにはさまざまな方法がありますが、なんといっても半日断食によるダイエットがお勧めです。
 
●確実に脂肪がへってくる
半日断食を始めると、まず、水分の排泄が促進され、むくみが取れてきます。
そして体が脂肪を分解してエネルー源として使うようになるので、すみやかに脂肪が取れてきます。
 
半日断食をすると、体脂肪も減るが筋肉も減ってしまうのではないか、と思っている人が少なくありません。
また、やせ過ぎてしまうのではないかと心配する人もいますが、結論からいうと、こうした心配は無用です。
 
半日断食をはじめて3ヶ月は筋肉も多少へった状態がつづきます。
しかし、それ以降は逆にふえて、元に戻ってくるのです。
そこが断食の神秘的なところです。
 
そして、3ヶ月で5kg程度、体重が減ります。
しかも、ある程度まで減ったら、後はまったく減りません。
これは、適正体重に落ちついたことを表しています。
一方、やせ過ぎた人が半日断食を続けていると、逆に理想的なところまで体重がふえてくるのです。
 
肥満になって困るのは、さまざまな病気の発生が多くなることです。
以前は脂肪といえば、ほとんどが皮下脂肪(皮膚と筋肉の間にある脂肪)をさしていました。
しかし、最近では、おなかの臓器の周辺につく内臓脂肪が、生活習慣病の元凶として問題視されてきています。
 
内臓脂肪がふえると、高脂血症(血液中の脂肪が異常にふえた状態)、糖尿病、高血圧が起こり、動脈硬化が着実に進みます。
動脈硬化が進めば心臓病や脳卒中を招きます。
このほか、内臓脂肪は、乳ガン、子宮ガン、通風、脂肪肝などのさまざまな病気の原因となるため、肥満とわかったら早めにダイエットに取り組まなければなりません。
 
●BMI21が理想的な体重
肥満になるのは遺伝的な要素も否定できませんが、ほとんどが食べ過ぎと運動不足が原因です。
肉やバターをたっぷり使った欧米型の食生活や、通信販売やパソコンショッピングで家庭に居ながらにして買い物ができる便利な日常。
こういった現代生活によって、摂取するカロリーが消費するカロリーを上回り、余ったカロリーが体脂肪となって体に蓄積されるのです。
 
ですから、肥満かどうかを判断する目安は、単に体重があるとか、見るからにぶくぶく太っているといったことではありません。
体重のあるなしや見かけの体型ではなく、その人の体脂肪がどのくらいの割合であるか、つまり、体脂肪率がどのくらいあるかで判断するのが正しいのです。
 
一般的に、体脂肪が男性なら25%以上、女性なら30%以上の場合には肥満とされています。
体脂肪を計る機会がない人でも、家庭で簡単にできる方法があります。
それが世界的な統一基準として採用されているボディ・マス・インデックス(BMI)をいう方法です。
BMIの値は、体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出できます。
たとえは身長が1.6mで体重が60kgの人なら、60÷(1.6×1.6)=23.4で、この人のBMIは、23.4ということになります。
 
日本肥満学会では、BMIが22になる体重を標準体重としています。
そして、BMIが24.2以上、26.4未満を「やや肥満」、26.4以上を「肥満」と判定しています。
ただ、体脂肪がどれくらいあるかを計るものではないため、筋肉質の人に高い数値が出たり、内蔵に脂肪がたくさんたまっているのによい数値が出たりすることがあります。
 
しかし、おおむね、この方法で肥満と判定が出たら、体脂肪も間違いなく肥満の部類に入る程度にあると思っていいので、肥満を判断する目安になります。
 
前述したように、日本肥満学会では、24.2以上26.4未満を「やや肥満」としていますが、私はこのレベルですでに警戒信号が灯ったりっぱな肥満と考えています。
標準体重も22にしていますが、さらに厳格に、21が適当だと思っています。
BMIから理想の体重を産出する計算式は次のとおりです。
 
身長(m)×身長(m)×21=理想体重(kg)
たとえば、身長1.6mの人なら、1.6×1.6×21=53.76で、約54kgということになります。
 
●美容にも絶大な効果を発揮
半日ダイエットは、肥満が解消するだけでなく、健康な体づくりに役立ちます。
 
ダイエットという言葉の意味には、ただ単にやせて体重が少なくなるだけでなく、健康的な美しさや、肌がきれいなことも含まれます。
半日断食は、肌が美しくなるし、健康的な体作りにも役立ちます。
そしてその効果は絶大です。
 
半日断食を行なって肌がきれいになるのは、前日までに体内に取り込まれた食品が消化されてできた老廃物をすっかり排泄できるからです。
 
宿便には食べ物のカスがたまっていることがあり、これが腸内に長い間とどこおると次第に腐敗していきます。
腐った便はウェルッシュ菌などの悪玉菌の温床となって、毒素やガスが出ます。
毒素は腸壁から吸収されて全身を回り、その影響は、便秘や宿便といった症状で現れます。
そして、肥満はもちろん、肌にも影響を及ぼします。
便秘はニキビや吹き出物の原因ですし、慢性的な下痢になると栄養が体にいきわたらないので肌が荒れてしまいます。
 
腸になかには、人間が生きていくうえで欠かせない、重要な働きをしている善玉菌がいます。
乳酸菌、酵母菌、酢酸菌などがその代表的なもので、ビタミンを合成したり、消化吸収を助けたり、あるいは病気に対する抵抗力をつけたりと、非常に多彩な働きをしています。
しかし、腸が弱ってくるとこうした善玉菌の活動が鈍くなり、代わりに大腸菌やウィルッシュ菌を中心とした悪玉菌が活発に働きだすのです。
 
半日断食を行なうと、宿便が排泄され、腸内細菌の状態も改善し、腸の状態がよくなって便秘や下痢が改善するし、毒素も排出されます。
それによって、ニキビ、吹き出物、肌荒れが解消して、肌は美しくなってくるのです。
 
●口臭やイライラ、抜け毛も改善し、精力も増強
宿便がたまり、腸が弱ってきて、悪玉菌が活発に働きだすと、抜け毛、ニキビ、口臭や体臭、イライラを招くほか、さまざまな病気を引き起こすことになります。
 
これらの症状を抱えていて、ひそかに悩んでいる人は少なくないと思われますが、原因が宿便にあるとわかったら、簡単です。
半日断食を行なえば、これらの症状は容易に解消できるのです。
 
半日断食を行なうと、疲れやすく、スタミナがなくなるのではないか、と心配する人がいますが、心配には及びません。
 
逆に、疲れにくくなり、驚くほどスタミナがついてきます。
また、男性の場合、勢力が衰える心配がなく、むしろますます強くなり、持て余すようになります。
それくらい断食とスタミナ不足とは無縁のものです。
 

 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る