山ちゃんの食べもの考

 

 

その330
 



食は生命なり
「生命なきは食にあらず」とも云われますが、
人は多くの生命を頂く事で生かされている。
植物の生命も動物の生命も微生物の生命も、
土の生命も水の生命も空気の生命も、
すべての生命がつながって生かされている。
そんな「共生」の世界で生かされている。
「人は何を食べるのかによって決まる」とも云う。
肉体的な健康、長寿のみならず、
知性、思想、性格までをも決すると。
その食べ物の作り方、その食べ物の商いほう、
その食べ物の選び方、買い方、食べ方は、
その人の生き方、その考え方そのものであると。

                                   
(山ちゃん)
『食は生命なり』 【173】
 
“食べかた上手”
食を変えて百歳まで生きる
神奈川県立保健福祉大学教授 中村丁次 著
幻冬舎発行 より その2
 
 
第2章
 食べ方が間違っているから大病になる
 
● 食べ過ぎと欧米食は発ガンリスクを高める
 
この数十年、食生活が劇的に変わったために、日本人のかかりやすい病気は大きく変化しました。
1950年には、日本人の死因の1位は脳卒中でした。
2位は老衰、3位は結核です。
ところが現在の日本人の死因ランキングを見ると、1位ががん、2位が心臓病、3位が脳卒中で、この順位はこの10年間変わっていません。
脳卒中は1980年ごろまで死因の1位でしたが、医学の進歩や、塩分の多い食事をやめようという減塩運動なども効を奏して死者数は減ってきました。
変わって1位に躍り出たのががんです。
 
がんにより死亡者数はどんどん増えています。
2002年には推計で30万4000人、なんと日本の全死亡者の31%ががんで亡くなっています。
いまや日本人は3人に1人ががんで亡くなるわけです。
こうなると、一家に2人以上のがん患者がいたり、親子でがんの治療を受けているような家庭も珍しくありません。
 
特に増加しているのは、大腸がん、肺がん、乳がん、前立腺がんです。
実はこれらのがんは、かつては欧米人に多いがんの代表でした。
肉食中心の欧米人には大腸ガンや乳がんが多く、菜食主義で塩辛い食品を多くとる日本人やアジア人には食道や胃、肝臓のがんが多いというのが一昔前の定説だったのです。
 
どうして日本人にはこれほどまで欧米型のがんが多くなってしまったのでしょうか。
この背景には、日本人の食事が欧米化していったことがあります。
 
日本人の食品摂取量の変化を見てみると、1995年には、米類が1日350gでいちばん多く、次が豆類の80g、そして魚類の70gでした。
そのころの日本人の多くは、ごはんにみそ汁と少量のおかずがつき、おかずの中心は漬物や魚介類という食事を毎日とっていたわけです。
 
ところがその後、高度経済成長を経て、日本人の食生活は豊かになりました。
流通が整ってさまざまな食材が家庭の食卓にのるようになり、加工食品や外食も増え、イタめしだフランス料理だと、世界中のいろいろな味を楽しむようになりました。
その結果、食べ方がいちばん変わったのは、ごはんの消費量が激減したことです。
 
3食ごはんを食べる人がどんどん減っていき、1975年までの20年間で、お米の平均摂取量は1955年の半分にまでなってしまいました。
かわって急激に増えたのが肉類と牛乳・乳製品、卵です。
しかし食事自体の摂取量はそれほど増えていず、むしろいまは減少ぎみの傾向にありますから、ひと言でいえば日本人の食べ方は「ごはん食い」から「おかず食い」になったということです。
 
● 日本人の死病は肺結核からがんに変わった
● がんで亡くなる人がどんどん増えている
● 肉類、乳製品をたくさん食べるようになった日本人
 
日本は食の欧米化が行きすぎてしまいました。
よくなかったのは、食物繊維の摂取が減り、動物性脂肪が増加しすげたことです。
伝統的な日本型食事では、おかずや汁物から野菜やきのこ、海草類、乾物などから食物繊維が豊富に取れていました。
ごはん食が減るとともにそうした食品や穀類、豆類の摂取量が減っていき、かわりに動物性たんぱく質、動物性脂肪の摂取が増えたことが、大腸がん、前立腺がん、乳がんの増加につながっています。
 
いまの日本人のかかるがんのトップ肺がんですが、あと30年もすれば大腸がんがトップに躍り出るのではないかというのが多くの研究者たちの予測です。
 
がんの発生には、人種や遺伝子以上に環境要因が関係しているといわれています。
中でも大きいのが食生活です。
食生活と病気の関係を調べるには、10年、20年という長い時間をかけて、ある集団の食生活と病気の発症率を追いかける疫学研究という方法があり、こんれまで世界中で行なわれてきた疫学研究が、食生活とがん発症率との関連を明らかにしています。
 
それによると、でんぷんと食物繊維の不足は大腸がんの発症リスクを高め、脂肪のとりすすぎと食べ過ぎは乳がん、大腸がん、前立腺がんの発症リスクを高め、野菜と果物の不足はすべてのがんになるリスクを高めることがわかっています。
がんになりやすい体をつくるのは、毎日の食べ方なのです。
 
実際に沖縄県と全国のがんの発症率を比較すると、沖縄県は胃がんの発症率が全国一低く、大腸がんも低めで、食道がんの発症率は高いのです。
これは明らかに食生活の違いによるもので、沖縄県の食事は塩分が少なく、コンブやニガウリなどの食物繊維が多い食材をたくさん食べています。
その代わり、お酒はアルコール度の強い泡盛を飲むので、食道がんの発症率は抑えられていないのです。
 
食物を消化して栄養素を取り込むには、体内に存在するさまざまな消化酵素の働きがかかわっています。
そして、酵素の働きは、遺伝的に決定されている部分も大きいのです。
何千年という間、穀物と野菜を衷心に食べてきた私たち日本人が、この数十年で急激に食習慣を変えてしまったことのつけが、欧米型がんの増加という形ではっきりと示されているのです。
 
 
● 日本人は太ると糖尿病になりやすい
 
食の欧米化がもたらしたつけは、がん患者が増えたことだけではありません。
がんの次に増えたのが糖尿病です。
 
糖尿病の患者数は、1965年には3万3000人でした。
ところが1999年には、なんと211万5000人です。
たった30年で、これだけ糖尿病患者が増えた国は世界でも珍しいのです。
しかも、厚生労働省が2002年に行なった調査では、糖尿病が強く疑われる人は740万人、可能性を否定できない人は1620万人と推計されています。
いまや40代の10人に1人は糖尿病という時代です。
 
これほど糖尿病が増えた要因は、日本人がこの30年間で豊になり、たくさん食べれれるようになった一方、交通機関が発達し、家事も電化され労働も肉体労働から精神労働にシフトして、運動不足になったことがあるといわれています。
実際、食糧難だった第二次世界大戦直後には、糖尿病の患者数は国民の1%にも満たなかったのです。
また、食事が欧米化して、食物繊維が不足気味になったことも一因です。
食物繊維は小腸の中でブドウ糖の吸収をゆるやかにする働きがあるからです。
 
糖尿病にはウイルス感染や自己免疫異常のために膵臓でのインスリンの分泌がうまくいかないⅠ型と、その他の原因によるⅡ型がありますが、日本人の糖尿病の95%はⅡ型で、これがどんどん増えています。
Ⅱ型糖尿病は、もともと遺伝的に糖尿病になりやすい要素をもっている人が、食べすぎやお酒の飲みすぎ、運動不足、ストレスが続くなどの生活習慣が原因で発症するものです。
 
Ⅱ型の発症率は肥満度と正比例しており、太れば太るほど発症しやすいのです。
特に危ないのは、おなかの回りのぽっこりと脂肪がたまる内臓脂肪型肥満です。
小腸で吸収された栄養分は門脈という太い血管を通って肝臓に運ばれるのですが、その際、周辺にあるおなかの脂肪も分解されて運ばれ、インスリンの働きが悪くなるからです。
 
インスリンは食事のあと、血液中にでてきたブドウ糖を細胞に取り組む働きをしています。
ところが脂肪の多すぎる食事をしたり、内臓脂肪型肥満になると、インスリンの働きが阻害されて血液中のブドウ糖が細胞内に入りにくくなります。
そのため食後の高血糖の状態が続くことになるのです。
 
また、食べ方の習慣もインスリンの代謝に影響します。
だらだらと一日中食べていたり、逆に朝と昼はあまり食べず、夜遅くまとめ食いするような習慣だと、高血糖は治りにくくなります。
 
糖尿病は一度発症すると完全に治療することは難しいのですが、血糖値がやや高い程度のグレーゾーンならば、食事療法と運動療法だけで治る場合が多いものです。
高血糖の状態が続くと動脈硬化を起こし、狭心症や心筋梗塞、さらに脳梗塞につながります。
高血圧も引き起こしやすくなります。
高血圧が合併すれば、これらの危険度はさらに高まります。
 
また、動脈硬化が神経や網膜などの全身の毛細血管にすすむと、腎不全や網膜症、神経障害などの合併症を引き起こします。
怖いのはこうした合併症で、そこまで行く前に、減量や食事療法で血糖値をコントロールしなければなりません。
 
実は最近、日本人は欧米人に比べ肥満に弱い民族だということがわかってきました。
ヒトノゲムの解読の結果、人間は飢餓を乗り越えるために代謝をセーブする節約遺伝子があることがわかったのです。
この節約遺伝子は、日本人では約98%の人が正常に働いており、欧米人は80%なのだそうです。
狩猟生活が中心で動物の肉を食べ、高たんぱく・高脂質の食事がとれていたヨーロッパにくらべ、農耕生活が中心で穀物を食べ、脂肪の摂取量が少なく、収穫も天候に大きく左右される過酷な食環境にあった日本では、凶作になっても少ない食料で生き残れる、節約遺伝子を持った個体が生き延びてきたわけです。
 
その節約遺伝子があだとなり、豊に食べられる時代となった今でも、日本人の体は低エネルギーで生き延びられるように、脂肪を使わずためこもうとします。
だから日本人は過食するとインスリンの働きが低下しやすく、小太り程度でも糖尿病を発症しやすいというわけです。
 
私がこれまで栄養指導に当たった患者さんたちの中にも、糖尿病の方がたくさんいました。
そういう方々の食生活を分析してみると、見事に共通している点があります。
まず、食道楽でグルメ思考。
肉や魚介類が大好きで、霜降りの肉や脂ののったトロなどは大好物。
女性なら甘党で、男性なら辛党が多い。
晩所とも野菜が苦手で、出来れば食べたくない。
仕事が忙しく、食べるのが早い。
時間もなくストレスもあるので、朝食と昼食はあっさり済ませ、夜は仕事から解放されてたっぷり食べる。
その結果、体型は当然のこと肥満型。
 
どうですか。
あなたもこんな食生活を送っていませんか?
740万人の糖尿病患者予備軍に入りたくなかったら、今すぐこういう食べ方をやめることです。
 
● 中年以降の糖尿病が激増!
● 肥満は寿命を縮めるもと
 
 
 
● 脂ぎるから血管が詰まる
 
● 日本人は脂肪をとりすぎている
● 動物性脂肪のとりすぎは命とり
 
10年ほど前に『考える食卓』という本を書いたとき、私は「脂ぎる日本人」というタイトルで一節を書きました。
ちょうどその数年前から日本人の脂肪の摂取量が適正量をオーバーし、このまま行くと欧米型の動脈硬化からくる心臓病や脳梗塞の患者数が増えるに違いない、また大腸がんや乳がんなどの欧米型がんも増えるだろうと懸念されたからです。
残念ながらいま、日本はそのとおりの結果になっています。
 
2000年の国民栄養調査では、日本人の脂肪の摂取量はされに増えていました。
日本人が1日にとる脂肪の摂取量は、成人の場合、総エネルギーの20~25%ぐらいが適正です。
ところが調査の結果は20代が28.3%、30代が27.6%、40代が26.3%と、全体に脂肪の摂取量が多すぎ、しかも若い人ほど多すぎでした。
いまの20代、30代がこのまま食べ方を変えずに中高年になったときには、生活習慣病の患者はますます増えるのではないかと予想されます。
 
欧米食が普及したため、私たちは肉料理、牛乳や乳製品などを日常的に食べるようになりました。
ファストフードやコンビニの弁当には揚げ物も多く、デザートのアイスクリームやケーキのたぐいも材料は牛乳、バターと卵ですから、知らぬ間に脂肪のとりすぎになってしまう可能性は大いにあるわけです。
 
これを反映して、今健康診断で数値が高いと指摘される第1位は高脂血症です。
とくに30代、40代男性の高コレステロール血症が増えています。
 
高脂血症は血液中に脂質が増えすぎている状態で、血液中の中性脂肪やコレステロールの値が高くなります。
自覚症状はほとんどありませんが、そのままにしておくと血管内にコレステロールがたまり、動脈硬化を起こす可能性があります。
動脈硬化は若いうちから進行していて、ある日突然、動脈瘤が破裂したり心筋梗塞などの症状を起こすまで自覚症状は少ないのです。
 
コレステロールには、肝臓から体の各細胞にコレステロールを運ぶ役目をするLDL(低比重リポたんぱく)に含まれているコレステロールとHDL(高比重リポたんぱく)に含まれているコレステロールの2種類があります。
前者が悪玉コレステロール、後者が善玉コレステロールといわれますが、悪玉も体にとって全然必要がないというわけではありません。
 
動脈硬化は、悪玉コレステロールが活性酸素により酸化され、それが血管壁にたまることから起こります。
このおかゆのようになった酸化LDLコレステロールの塊をアテロームといいます。
これに高血糖が加わるとブドウ糖も結びついて、血管の壁は厚くこぶのようになり、そこに血のかたまり(血栓)ができて血管がつまるのです。
 
日本人の死因の第2位は心疾患、第3位は脳血管疾患ですが、いずれも動脈硬化が原因で起こる場合がほとんどです。
脳卒中も、昔は血管が破れる脳出血が多かったのですが、今多いのは動脈硬化のため脳の血管がつまる脳梗塞です。
中でも急増しているのが、大きな動脈にアテロームがたまって起こるアテローム血栓性の脳梗塞です。
 
アテローム型の脳梗塞は、高血圧や高脂血症の多い都市部を中心に増えているというデータがありますから、その背景には食べ過ぎと脂肪のとりすぎ、そして運動不足があることは明らかでしょう。
 
血中コレステロール値は、年をとると体内での種々の代謝が不活発になるために上がるという要素もありますが、食生活の影響が大きく出ます。
特に肉の脂身、ラード、バターなどの動物性脂肪に多い飽和脂肪酸は、体内で体脂肪に合成されやすく、コレステロールの合成を促進します。
 
動脈硬化への対策は、毎日の食事から動物性脂肪をなるべく減らし、ごはん中心の日本型食生活にするのがいちばんでしょう。
そうすれば、コレステロールや中性脂肪を下げる効果のある食物繊維もとりやすくなります。
 
 
 
● 「栄養がいい」ものは本当にいいものなのか?
 
日本人に限らず、経済的に豊かになると肥満が増え、その影響で生活習慣病の患者が増えることは、最近のアジアを見ても同じです。
それにしても日本の食生活の変化は急激でした。
急激すぎたために、栄養に対する考え方がそれに追いついていないのです。
 
40代以上の人は、小学校の家庭科の授業で「三大栄養素」について習った記憶があると思います。
三大栄養素とは、糖質、脂質、たんぱく質のことです。
そのほかの栄養素としてビタミンやミネラルがあり、そして日本人には糖質が足りているので、たんぱく質や脂質の多く含まれた「栄養のある」おかずをもっと食べましょう、ということを教えられた記憶のある方も多いのではないでしょうか。
 
実は、この時代の栄養観は、栄養不足だった戦後すぐの栄養観を引きずったものでした。
当時の日本は食糧不足で、多くの日本人が栄養不足からくる成長障害や感染症、ビタミン・ミネラルの欠乏症に悩まされていました。
ですから、とにかく栄養素をたくさん摂取して、栄養不足を解消することが求められたのです。
 
そのときお手本になったのはアメリカの栄養学でした。
日本中で栄養士が欧米食の講習会を開き、高脂肪・高たんぱく・高ビタミン・高ミネラルの欧米型の食事が「栄養がいいから」取り入れられていったのです。
パンと牛乳の学校給食が普及し、栄養失調や栄養素の欠乏症に対する指導が行なわれ、この結果、日本人には、消化がよくて栄養価の高いものがいい食品だという考えが染みついてしまいました
 
ところが、現在では事情はまるで違っています。
大きな問題はエネルギーの過剰摂取であり、動物性脂肪のとりすぎや栄養素のアンバランスなのに、私たちの頭にあるのはいまだに栄養不足時代の栄養間です。
「ごはんよりおかずが大事」「栄養のいいものを食べて元気になろう」、残念ながらそういう考え方だけでは、もうこれからの時代、健康長寿はまっとうできないのです。
 
日本の家庭の食事は、ごはんが減っておかずが多くなりすぎたために糖質が減少し、逆に動物性たんぱく質や脂質、塩分のとりすぎになっています。
それをバランスのよい方向に変えていくためには、飽食時代にふさわしい、新しい栄養のスローガンが必要なのかもしれません。
 
一方で、今健康と栄養についての情報は、毎日見るテレビや雑誌にあふれていて、それがまた混乱を引き起こしています。
困ったことは、ある成分が体に良いと報じられると、そのことばかりが一人歩きして、全体の食べ方から見るとある一部のことなのに、ものすごく重要なことで、それだけで健康ななれるかのごとく報じられてしまいがちなことです。
 
たとえば赤ワインやココアに含まれるポリフェノールが活性酸素を退治するといっても、ポリフェノールのような抗酸化物質は植物の色素や味の成分で、ほとんどの野菜や果物に含まれているものです。
普段の食事で野菜や果物を豊富にとっていれば、特別にワインやココアを飲む必要はないのです。
飲んだとしても、赤ワインにはアルコールが、ココアには脂肪や糖分が多いことを忘れないで下さい。
 
何より、私たちはポリフェノールなどの成分で体を維持しているわけではありません。
健康な体を維持するために必要なのは糖質、たんぱく質、脂質などの基本的な栄養素です。
まず毎日の食事から基本的な栄養素をとり、その上でさまざまな成分のことを考えるのが順序というものではないかと思います。
 
さらに、これも飽食の反動かもしれませんが、食べ方の知識や情報が世の中にあふれたせいで、脂肪のとりすぎがいけないと聞くと脂肪を一切とらなくなってしまったり、食物繊維がいいとなるとそればかりを中心に食べて栄養バランスを崩しししまうような行きすぎ現象も起こっています。
健康食だと思って食べていると栄養失調になってしまうというような本末転倒現象も起きています。
 
食べものや栄養についての話は面白く、ためになるような気がして興味が引かれるものです。
いろいろなメディアから栄養の知識を取り入れるのはいいことだと思いますが、ぜひ間違えずに正しい食べ方をしていってください。
 
 
 
● 食べ過ぎなのに
栄養不足になってしまう現代人
 
栄養過剰で肥満が増え、生活習慣病になりやすくなってしまった現代人ですが、では栄養が十分に足りれいるかというと、そうともいえない現象もいろいろ起きているのが難しいところです。
 
たとえばよくいわれる若者や子どもが「キレる」という現象があります。
近頃では大人でもキレる人が増えているようです。
これにはカルシウムの不足も関係しているのかもしれません。
飽食の日本でも、カルシウムの平均摂取量だけでは過去20年間にわたって不足傾向が叫ばれています。
 
カルシウムは骨をつくる原料になるだけでなく、筋肉の収縮、ホルモンの分泌、遺伝子の情報伝達、神経の伝達など、すべての細胞をコントロールする重要な栄養素です。
そのため、不足すると全身の機能が低下します。
また、精神状態を安定させる働きもするので、不足すると興奮を抑えることができなくなり、少しのストレスでもカットしてしまうことがあります。
 
日本はヨーロッパなどに比べると土壌に含まれるカルシウムの量が少ないため、野菜や水から摂取できる量がもともと少ないという事情もあります。
しかもインスタントラーメンやスナック菓子、清涼飲料などの加工食品に保存料として添加されているリンは、カルシウムと結びつく性質を持っており、リン酸カルシウムとなって体外に放出されてしまうので、カルシウムの吸収を悪くします。
現代人はカルシウムの摂取がもともと足りないのに、リンを取りすぎて、ますますカルシウム不足に陥っているのです。
 
切れやすくなるのは、糖分のとり方にも関係があります。
糖分は脳の大切なエネルギー源ですが、とりすぎると糖質の代謝に働くビタミンB1が足りなくなり、糖分をエネルギーに変えられなくなります。
脳がエネルギー不足に陥ると、イライラしたり怒りっぽくなってしまうのです。
 
ですから、おなかがいっぱいになっていたとしても、食べた中身がジャンクフードや甘いおやつばかりだとしたら栄養的には十分ではないわけです。
朝、昼、晩の食事の中で栄養素がバランスよく取れるのであれば、それにこしたことはありません。
ところが、実際には思うようにいかないものです。
 
普通に食事をしているつもりでも不足が心配されるのはビタミンやミネラル類です。
ビタミンミネラルなどの微量栄養素は、ストレスが強くなると体内で大量に消費され、
されに空気汚染や残留農薬などの有害物質が体内に入ると、その解毒のためにも使われます。
で、私たち現代人は、慢性的にビタミンやミネラルが不足しがちといえるのです。
 
それなのに、今野菜に含まれるビタミンやミネラルの量は、昔のものに比べて少なくなっています。
女子栄養大学の吉田企世子教授が、食品成分表の改訂をするために食品の栄養成分値を調べたところ、最近の野菜は栄養価が落ちていることがわかりました。
これは化学農業がいきわたって、土壌に含まれる栄養素の量が減ってきたためです。
 
たとえばこの約10年間で、ほうれん草100gに含まれるビタミンCは65mgから35mgに、小松菜に含まれるビタミンCは、75mgから39mgにまで減っていました。
 
野菜だけでなく、昔に比べていろいろな食品からビタミンやミネラルがとりにくくなっています。
たとえば魚は内臓にビタミン、ミネラルが多く含まれ、頭の部分にはカルシウムやリンなどが多く含まれていますから、丸ごと食べればかなりいろいろな栄養素が取れるのですが、切り身ではたんぱく質や脂肪ばかりです。
穀物は精製し、肉はばらして、食べやすくおいしいところだけを食べようとするのが現代人ですから。
 
だから現代人は、大食漢で太っていたとしても、その人が栄養素を十分にとれているかどうかの判断は難しいのです。
一昔前の食糧不足の時代には、ビタミンB1の不足で脚気になるとか、ビタミンAの不足で夜盲症になるなど、因果関係のはっきりしたビタミン欠乏症が問題でしたが、今の問題は、その前段階にある「潜在性栄養素欠乏状態」です。
 
旧厚生省の調査でも、腰痛や肩こり、体がだるいなど、なんらかの自覚症状を持っている人が国民の3割もいるという報告がありますが、病気というほどでもなく、病気が特定できないけれどもなんとなく調子が悪い、こういった体の不調の多くは、潜在的な栄養素の欠乏状態から起こることがわかっています。
 
総合ビタミン剤や栄養ドリンク剤が売れている背景にも、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素の潜在的な欠乏状態があると考えていいでしょう。
総合ビタミン剤やドリンク剤には各種ビタミンやアミノ酸が含まれていて、一時的には栄養素の補給効果を得ることができます。
しかし、カフェインや微量に含まれているアルコールの効果で「元気が出た」と感じる場合も多いようです。
 
いずれにせよ、ドリンク剤では一時しのぎにしかなりません。
それよりも毎日の食事で緑黄色野菜や牛乳・乳製品をもっと多くとるようにし、食事からビタミン・ミネラルを取り入れることが、慢性的な体調不良から抜け出す近道です。
 

 

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池田 優

 

 

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