山ちゃんの食べもの考

 

 

その35
 

 「食べものの命を生かすことは、我が命を生かすことであり、殺すことは、我が命を殺すことである」。私たちは食べものの命をいただくことで生きており、食べものを作る人たちには命を育んでいるのだという意識、食べもの商う人のは命を商い、命をつないでいるのだという意識がなければなりません。そして「命は意識であり、意識は心の思いの波(波動)」と言えます。意識波動は人間同士だけでなく、命あるもの全てに響き合います。「嬉しい、悲しい、きれい、恐ろしい、愛しい、憎らしい、煩わしい」等々といった感情もあらゆる生物に響き伝わる意識波動であり、影響し合い響き合い呼応しているものと思います。
 人間の思い(意識波動)は生き物だけでなくあらゆる物質の持つ波動とも反応し合います。「山ちゃんの食べもの考その31」で紹介したIHM総合研究所々長・江本勝著『水からの伝言』でも明確に立証されています。
 では食べものや生き物の命を生かしている大本は何なのでしょう。『生命の暗号』などを著した筑波大学の村上和雄博士は、人智を超えた宇宙創造の大本・偉大なる存在「サムシング・グレート」と呼んでいます。宇宙意識という人もいます。命は単なる物質の寄せ集めではなく、あらゆる物を顕現せしめる源であり、あらゆる物に宿るエネルギー体であると思います。


 安全・安心な卵を生産する養鶏場、良い牛乳を生産出荷する牛の飼育場、安全な豚肉やハムを送り出している養豚場などは、いやな悪臭が漂うこともなく生きものたちは穏やかで懐しげに近寄ってきて、生き物同士としての命の響きがとても愛しく伝わってくるものです。一方、動物たちを単なる商品という物質と捉え生産効率を追求するような飼育場では、立派な設備を整えた工場さながらの雰囲気で管理を徹底していても、人間本位の仕組みでは動物たちに落ち着きがなく、人影を見ただけでけたたましく騒ぎ立て、敵対視する視線が痛いように突き刺さってくる感じして哀れさえ感じます。
 野菜や果物でも作る人の思いで恐ろしいほど大きく変わってしまいます。有機農業を志す方々、成功している本物といわれる人たちには、作物への“愛”が基本にあります。愛はあらゆるものへの思いやり、配慮となって広がります。必然的に土に、微生物に、生き物たちに、環境に優しくなっていきます。生態系ではあらゆるものの命のバランスで成り立っている棲み分けの世界ですから、化学物質を多用する現代農法のように病虫害に侵されることはありません。多少は虫にも食われますが生命力の旺盛な本物の作物が育ちます。そんな畑ではいろんな生き物がたくさん共生しており、野原や森へ行った時のようにさわやかでストレスがスーッと取れ、思わず新鮮な空気をいっぱいに吸い込んで命の甦りを感じるものです。一方、虫一匹、雑草一本ないような整然と管理された畑やハウス内では息苦しくなり、目眩を起しそうで早く逃げ出したくなります。
 私たちが普段何気なく食べているその食べ物には、どんな思いや魂が込められているのでしょう。作り手の意識にとってその肉や卵、野菜や果物、その加工品に、いろいろなものの意識が込められ波動となって働きます。“愛”がベースとなった生命エネルギーをいただくことによって始めて、私たちは心身ともに健やかに生きることができるのではないでしょうか


 T幼稚園における先生と園児たちによる無農薬栽培の話から、食べものと波動の関係について述べてきましたが、私が波動に興味を持って以来十数年の経験から、農産物をはじめとする生鮮食品のみならず加工食品についても、その食べものづくりや取り扱いに関わる人間の意識波動が最も大きく且つ決定的な影響を及ぼすものであろうと確信するようになってきています。
 何回も述べているように感動するような素晴らしい人柄の作り手が作るう良い食べものには、例えようのない自然な美味しさがあり、それは口先だけでなく体の細胞すみずみまでも命の喜びがしみわたっていくように感じるものです。以前にご紹介した伝右衛門の味噌で作った味噌汁などはまさにそれです。
 また、驚くほど美味しいブロッコリーに出会った時、その人柄がしのばれ、生産者を訪ねたところ、黙々と土作りに取り組むたいへんな人格者の老農家でした。本物の食べものの影には崇高な人の心と意識の働きが息づいているものです。だから私は食べものを選択して商品化するとき、まず相手の人柄に接しさせてもらうことにしてきました。都合がつかずお目にかかることのできない遠隔地などの場合は、電話を差し上げていろいろお話をお聞きします(電話の方がお互いに相手の姿が見えないので、思いや考え方、その人柄がよけいに伝わることもあるものです)。
 私はこの世の中の「現象世界」は人間の「精神世界」の現われではないかと考えるようになりました。食べものには作った人や関わった人の意識が生きており、そればかりでなくその作物や動物、環境や微生物、使用した肥料や農薬、添加物の意識波動が働いている。私たちが良い食べものを選ばなければならないのは、その作った人や関わった人の意識をはじめ食べものに込められているすべての意識波動を食べることになり、食べた人の意識と融合し一体化していくものだと考えるからです。「食べものがその人の精神や性格、能力まで決定づける」といわれるのは、そうした所以ではないでしょうか。


 私は心とか意識の波動が食べものに大きく影響するであろうことは、体験的に確信を持っていますが、どこまでも感覚的なものであり科学的ではありません。岩手県で波動農法を実践普及する方からのお誘いがあって、昨年の2月、「サトルエネルギー学会」が主宰する『波動シンポジュウム』に参加しました(サトル=波動)。
 勉強不足の私には、残念ながら学者集団の科学的専門的な理論は十分に理解することができなかったのですが、私がテーマとする「良い農業、良い食べもの」を考える上で、目に見えない人間意識こそ最大の決定的要因であるといよいよ確信を高めたのです。
 国際波動研究所副所長・琴音氏の講演『エナジーからのメッセージ、意識が現象を作る』を聞いてのメモから一部を紹介します。「人は生かされている。生命をいただいて生かされている。いただきますは命をいただきます」。「あらゆる存在は生命エネルギー体としての個の存在である。個はそれぞれ固有の振動(波動)を発している存在である」。「すべての存在は宇宙創造主(=サムシンググレード=宇宙波動)とつながっており、融合する」。「自然は波動の調和である」。「人が感じ、自覚し、意識することは、エネルギーの高まりであり、物質までをも動かす」。「気づき、感じる、精神の働きは魂を高める、そして魂は本質生命体であり、生きる力、命そのものである。そこから知恵や想念が生まれ、精神、愛、宇宙のエネルギーが感じられる」。「人間は自分の意識(心)を自分自身でコントロールできる。自分の意識が遺伝子の働きにも影響を与える」。「ヒーリングは意識(想念など)・愛のなせる業である」。「一人ひとりの思い、意識が現象を作っている。邪気・邪念を持たないこと」。


 私が「良い農業、良い食べもの」を実現する柱に「地産地消」「自給自足」「身土不二」を力説するのは、この意識波動、自然リズムとの調和ということが極めて重要であると考えるからです。作り手と食べ手の思いや意識がお互いに通じる関係、氏素性がわかり良い思いが、良い波動を持つ良い食べものづくりにつながると思います。
 東京女子医大付属病院講師で、医師であり登山家でもある今井通子さんは『日本農業新聞』に「健康長寿のために」の中で次のように述べています。
 わが国は、世界の最長寿国でありながら、健康に不安を抱いている人が多い。長寿で健康を全うするにはどうしたらいいのか。自らも環境保全と健康維持を目指して、実践を重ねている医師で登山家の今井通子氏は地産地消がその基本という。まさしく食べものと自然と命のつながりを説いた波動の問題であると思います。以下、今井さんの言葉です。 

■長寿で健康を全うする生き方について
 私が長寿になれるかどうかわからないので体験的な話はできませんが、地域別、世帯別の死亡率や平均余命から見ますと、やはり食べもの、水、空気が大きく関わっているように思われます。日本は世界でも最長寿国になっているわけですが、日本では「健康に過ごそう」「長寿でいよう」といったことを、主として個人が考えてきている。基本的に、口に入る食べものと水、それに吸う空気について一生懸命考え、それによって長寿ができていると考えられます。といえば、もう健康長寿の答が出ているようなものではないでしょうか。

■食べものと水と空気……
 それに着るものもあるんです、本当は。人工繊維ではなく、できるだけ自然のものを着る。自然の繊維には抗菌効果などがるのですから。でも、やはり食べものが大事です。人間も動物ですから、過激ないい方をすれば、他の命を奪って生きてるんですよ。だから命あるものを食べなきゃ、自分の命のプラスにならない。とれてすぐのもの、もしくはとれて半日以内のものを食べるのと、転送、転送でとれてから何日もたった、死んでしまったものを食べるのとでは大きく違う。ましてやポストハーベスト(収穫後)農薬処理がしてあるかもしれない輸入農産物なんか……。やはり地元のものを食べなきゃ。一村一品運動の平松守彦大分県知事も、このごろは地元で生産したものを地元で消費する「地産地消」を盛んにおっしゃっていますが、まさにそれこそが健康長寿の秘訣じゃないでしょうか。

■都会の人はどうします?
「地消」のおこぼれをもらうしかないですね。都会の人はお金を持って農村にいきます。休眠農地を借りたりして自分で農業――とまでいきませんから、農耕作をする。現役をリタイアした農家のお年寄りなどに指導してもらいます。土地の借り賃、指導料はもちろん、農家に泊めてもらえば宿泊賃、食費などを払います。もう一つは、農家が自家用に作っている農作物を、きちんとお金を払って分けてもらいます。これが地消のおこぼれちょうだいです。都会の人が農耕作することは、命ある農作物が手に入れられるだけでなく、農村のおいしい空気を吸い、自分の体を動かす機会にもなります。これは都会や、デズニーランドに行くことと同じレベルのレジャー産業の一つに育つ可能性があるのではないでしょうか。
むろん、農産物を大量出荷する大規模農業も、それはそれで必要です。経済効率を求める農業が一方にあってもいいのですが、もう一方で命を食べられるような施設、システムが広げられれば、高齢化する農村にとっても、それから都会の人にとっても大いに役立つと思います。

■農家の役割りは
 実は私たちも、命あるものを求めて、農耕作をしたり自然のものを探しているのですが、たとえばパンを作るための国産の小麦粉など、自然に近い食品を探すってことはなかなか大変になってきているんです。昔は自然に近い食品がいっぱいあり、だから安かったのですが、今は逆です。だからこれからは都会の人がまず考え方を変えなければならないのでしょうが、農家の方もちょっと考え方を変えてもらって、もし農耕作に取り組もうという都会人が出てきたら、ぜひ指導して欲しいですね。


 もう一つ、人の良い思い、良い意識波動が素晴らしい行動を起させ、素晴らしい食べものを生み出すものである例を、同じく『日本農業新聞』(10月8日)からご紹介しましょう、
 「食べることをもっと大事にして欲しい」。今年6月、プロの「お弁当作家」として活動を始めた松山市の尾原聖名さん(28歳)。自分で栽培した野菜や作り手の顔が見えるこだわりの食材を使ったお弁当にメッセージを込めて発信している。

☆ コンビニのお弁当やファストフードなどが手軽に買えるようになり、食べることがおざなりになっているような気がするんです。買い物をしたり、料理を作ったり、食にかかわることから手を抜くのは生きることに手を抜くのと同じ。だから、料理はやっつけ仕事でして欲しくない。食べる時間が楽しいものであって欲しい。

 もともと料理の道を目指していたわけではない。父は寿司職人、母は栄養士という家庭に育ちながら、食べものにたいしてあまり関心がなかった。数年前、自然食品店で働くようになってはじめて、添加物や残留農薬の怖さを知った。安全な食べもの、食べることの意味や大切さを考えるようになり、自宅の近くに借りた小さな畑で野菜の無農薬栽培をはじめた。

☆ 「お弁当作家」を人生の目標に考えるようになったのは3年くらい前。個展を開いていた陶芸作家に手作りの弁当を差し入れたら、「君の弁当は作品。君はお弁当作家だね」と言ってくれたんです。人生のすべてだった人を事故でなくし、生きる意欲が無かった時だったから、その人に励まされ、何か人のお役に立つことができるかもしれないと意識するように……。

 弁当屋ではなく「お弁当作家」を名乗るのは、「食を大事に」とのメッセージ性を一番に考えるから。自分が無農薬栽培する野菜や友人の作る減農薬米など作り手の顔が見える安心食材にこだわる理由は、自分の料理で誰かの体を汚したくないから。弁当の会食会や個展、料理教室、家庭の記念日にあった出張サービスなどの活動を通して、食べること、食べる時間を大切にと提案する。

☆ お弁当しか作らないんですかとよく聞かれますが、「お弁当は食の空間」ととらえています。お弁当は家族を気遣う一番身近な文化だから、そうあり続けるようメッセージを発信するのが私の役目。

 明日へのエネルギーには食べものばかりでなく笑いが必要――が持論。


 ここでおのろけを一つ。私は現在“愛妻弁当家”である。体が弱くしょっちゅう体調を崩していた私は、弁当を持つようになってから3年余、以来医者に1度もかかったことがない、風邪もひかず至って元気で薬を飲んだこともない。家内の弁当に込められた思いの波動が私の生命エネルギーとなって生きているのであろうと感謝している。


 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

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