山ちゃんの食べもの考

 

 

その40
 


 友人から使って見てくれと良質の砂糖を貰ったので、今回は砂糖について調べてみることにします。いただいた砂糖の商品名は、神奈川県足柄下郡湯河原町の株式会社アイジェエムの販売するもので、種子島産のサトウキビが原料です。商品名は「さしすせさとう」。商品ラベルには次のように記されています。「サトウキビの搾り汁から作られています、つまり一番搾りのお砂糖です。風味や湿りはサトウキビの天然成分を含んだ蜜分が残っているからです。ミネラルや有機物等のミネラルがたっぷり」「クセをおさえた自然の甘さ。天然の成分がコクを出し、肉や魚のくさみをおさえます。お料理やお菓子作りに……いくぶん甘味を強く感じるのでひかえめにお使いください」。
 このアイジェエムという会社は他にも有機栽培や無添加の厳選された原材料使用による良質の商品を開発して販売しており、おすすめしたい一品です。


 白砂糖は「悪の三白」と言われてきた一つです。あとの二つは化学調味料と精製白粉です。砂糖の摂り過ぎは体によくないことは誰もが知っていながらも、何にでも砂糖で、日常の食べものから砂糖を欠かすことができず、砂糖をたっぷり使った甘い魔力から逃れられずにいるのが現状です。お菓子にはもちろん缶飲料やペットボドル入りの飲料水、加工食品、市販のお惣菜、ファミリーレストランなどの外食には想像以上の砂糖が使われており、美味しい美味しいと食べる普段の食生活で、私たちは知らず知らずのうちに大量の砂糖を摂取しています。
 今ではスーパーの売り場でもいろんな種類の砂糖が売られていますが、しばらく前までは砂糖といえば殆んどが白砂糖でした。スーパーの目玉商品で数量限定の特売ともなると、親子兄弟引き連れて何袋も抱え込んで買われていったものです。冠婚葬祭のお返しとかちょっとした贈りものにもよく使われ、赤い模様の袋に入った純白の砂糖は何よりも喜ばれたものです。戦中戦後の物不足時代に砂糖は大変な貴重品であり、甘いものに飢えていた反動でもあったのでしょう。現在でも売り出しなどでよく売れるのがこの白砂糖です。
 以下には、小野寺明子著『食事を変えるだけで子どもが見違える』、アイシスガイアネット編『体にやさしい食材の本』、郡司篤孝著『何を食べたらいいか』、船瀬俊介著『買ってもいい』、食生活研究会編『安全な食べもの選び方Q&A』等から一部抜粋・参考にさせていただきました。

 今日でも相変わらず白砂糖が売れ筋の主力ですが、砂糖とは何か、砂糖にはどんな種類があるのかから見ていきましょう。
 砂糖は専門用語で蔗糖と呼ばれますが、サトウキビを原料とする甘庶糖と、大根に似ているところから砂糖大根とも呼ばれるテンサイ(甜菜)を原料とするビート糖とがあります。甘蔗糖とビート糖と生産量は約半々で、サトウキビの甘蔗糖は赤道を中心とする地域で、テンサイのビート糖は温帯の中北部で生産されます。日本の場合は沖縄や奄美諸島、種子島などで栽培するサトウキビから作る甘庶糖と、北海道で栽培するテンサイから作るビート糖がありますが、国内で消費される砂糖のごく一部にしか過ぎず、大部分が輸入に依存しているようです。


 サトウキビは熱帯地方に位置するブラジルやキューバで栽培され、現地で搾られた原料糖が輸入されています。これを製糖工場で精製し煮詰めていきます。精製の工程の中で分蜜機(遠心分離機)にかけるので分蜜糖といいます。最初にとれるのがざらめ糖や上白糖やグラニュー糖です。その後さらに煮詰めてとれるのが三温糖で、黄褐色をしているのは、加熱によってカラメルができるからです。白砂糖より三温糖の方が健康に良いといわれたりしますがなんら根拠がないということです。
 温帯地域にできるテンサイは消費地が近いので原料糖にせず、直接製糖工場に運び精製して純度の高い砂糖を作ります。このような現地での一貫作業で出来る砂糖を耕地砂糖といいます。
 一般に売られている分蜜糖の砂糖が問題にされるのは、精製工程における化学的な物質や手法による化学的清浄法であることと、もう一つは過度の精製で植物が本来もっているビタミンやミネラルなどの栄養分を全く失った純度の高いものになっていることです。


 沖縄や、奄美諸島の黒砂糖はサトウキビの搾り汁をそのまま煮詰めたもので含蜜糖と言います。天然のビタミンやミネラルを含むと同時に、化学的な加工工程は経ていませんから、黒砂糖の方が自然食品であることはご存知のとおりです。黒砂糖は他の砂糖より少し栄養素が多く含まれ不純物も多く糖度も低いのですが、独特の風味があり、甘さはかえって強く感じられます。
テンサイから作られる砂糖は、これまで分蜜糖であるグラニュー糖や上白糖だけでしたが、精製しすぎない含蜜糖から作られた「てんさい糖」があります。これはテンサイから抽出した糖液を黒砂糖と同様に煮つめたもので、多種の糖類やミネラル、腸内細菌を活性化するラフィノース(オリゴ糖の仲間)などの有効成分を残しています。独特の風味と機能性を持つ新しいタイプの砂糖です。合成・添加をしていない自然なてんさい糖が販売されています。


 いずれの砂糖にしてもブドウ糖と果糖が化学的に結合したもので、果糖も体内ではブドウ糖となり、身体中に運ばれてエネルギー源になります。砂糖の食べ過ぎは皮下脂肪となって蓄積され肥満の元になることには変わりありません。
 砂糖の消費量は文明国ほど多いと言われますが、砂糖の多食は自慢できることではありません。それどころか逆に現代人の健康を蝕んでいます。市場に出回る加工食品には想像以上に多くの砂糖が使われています。食べものの多くを外部に依存するようになった今日、私たちは見えない食品添加物と共に、大量の砂糖を摂らされていることをまず忘れてはなりません。
 主食の米と合わせると炭水化物の摂取量が相対的に多くなっています。炭水化物の摂取量が多いと、その代謝を円滑にするために、ビタミンB1の必要量が増えます。私たちはビタミンやミネラルを削り取ってしまった白米や精白粉を主食とするかぎり、ただでさえ不足しがちなB1が砂糖の摂取で拍車がかかり、B1が一層不足する状態になります。その結果、炭水化物の代謝がうまくいかず、余分な酸(ビルビン酸・ケトグルタール酸)が蓄積しやすくなります。そのような状態が長く続いていると、これらの酸を中和するために体内のカルシウムが減っていき、骨や歯がもろくなるばかりでなく、体のやわらかい組織や神経にまで異常が起きます。それが現代っ子を怒りっぽくしている原因の一つですし、最近、中・高校生に多くなっている“脚気”の原因でもあります。
 精製された砂糖は、その植物が本来もっている栄養素のビタミンやカルシウム、鉄、その他のミネラルを失った純粋な炭水化物で、からっぽの単なるカロリー食品。あるのはカロリーだけで、必要な栄養素はまったく含まれていません。この栄養分が削り取らたからっぽのカロリー食品で1日のエネルギーの何割かを摂ってしまった場合、残りのカロリーの枠の中で40数種もある必須栄養そのすべてを取らねばなりませんが、そのような食品はありません。ましてや加工食品では難しく、栄養分の不足やアンバランスが起きて、体質を弱めて半健康に結びついていきます。少量で高カロリーの砂糖は「からっぽのカロリー食品」の最たるものでることを、ゆめゆめ忘れてはなりません。
 

 白砂糖と精白粉の摂り過ぎと、低血糖症との関連も無視できません。アメリカのマクガバンレポートでは「低血糖症は白い小麦粉や砂糖が原因で起きる。さらにビタミンやミネラルの不足も発病の原因である」と指摘しています。 
 マクガバン博士は、ネズミに大量の砂糖を与えてみたところ、ネズミはみな狂って変な行動をするようになったそうです。博士がネズミの脳の中のドーバミンという物質の量をはかってみると、ドーバミンが極端に減っているのがわかりました。ドーバミンは神経刺激の物質として大切な役割りを果たしているものです。こういう大事なものが不足しては、心も変になって行動もおかしくなるのは当然です。神経の細胞は細胞同士の間に隙間が開いていて、その隙間には神経刺激の伝達物質が入っています。ですから神経細胞同士は、仲介役の伝達物質がなければ刺激も命令も伝えることができないことになります。この伝達物質の不足が過剰な砂糖の摂取によって起きていたのです。体の中で十分なドーバミンが作られるのを砂糖がさまたげていたのです。
 とかく子どもは甘いお菓子を……という感覚が大人にはあたり前のようにありますが、今のような時代になっては絶対に考え方を変えていかなければなりません。赤ちゃんの時から親が気をつけていると、それほど甘いものを欲しがらずに成長します。子どもの味覚も大人の思い込みで作り上げているのではないでしょうか。
 

 イギリスの栄養学者ユドキンは、砂糖にはたくさんの害が有り、その害はどれも恐ろしい。そのような害は心まで狂わせることがあると言っています。
 オハイオ州立地裁主席保護監察官のリード女史の研究報告によると、「扱った106人の犯罪者の食事はジャンクフーズ(粗悪な加工食品)、砂糖の多い食事であった。犯罪者たちの訴えは次のようなものであった。「心が空白である」「頭が混乱しやすい」「カットしやすい」「感情をコントロールできない」「いつも不安を感じる」「苛立つ」「自殺を考える」「立ちくらみがする」「寝汗をかく」「筋肉が引きつる」……などなど。低血糖症タイプの犯罪者は、自分の行動の意味も自分で解っていないと言います。
 リード女史は、白い粉や白砂糖を一切やめ、ビタミン剤とミネラル剤を与えるとともに、加工食品を一切やめて手作り食品にするなどの食事改善を行いました。すると2〜3ヶ月で犯罪者たちを苦しめた症状は消え失せ、みな「人生がこんなに明るいものとは、今まで知らなかった!」と目を輝かせたと言うのです。
 白砂糖は吸収が早く、それだけ血糖値が急上昇します。すると血糖値抑制ホルモンのインスリンが分泌され、血糖値は急降下する。すると猛烈に甘いものが欲しくなり、ケーキなど甘いものを食べるとまた血糖値が急上昇する。これが血糖値の“ジェットコースター現象”です。インスリンが出続けるとそれを抑制するためアドレナリンが分泌されますが、このアドレナリンは“怒りのホルモン”と呼ばれ、攻撃行動の引き金になるといいます。


 また白砂糖を食べ過ぎるとうつ病になりやすいなどとも言われます。このような砂糖の摂り過ぎによる弊害を考え合わせて、子どもの健康づくりにはぜひ「砂糖減らし」を考えてください。子どもたちは学校給食をはじめ牛乳をたくさん飲んでいますが、ちょっとしたことで骨折するとか我慢がない、すぐカットする、寝転んでばかり、忍耐力がないなど、カルシウム不足で心身ともに病んでいます。子どもばかりではなく砂糖の摂りすぎは、生活習慣病の引き金になるなど多くの問題があるようです。
 かといって日常の料理や食べもの、嗜好品から全く甘味をなくすことは無理です。せめて商品表示のラベルをよくごらんになって、良質の黒砂糖やてんさい糖や粗製糖、果糖、あるいは蜂蜜(花名のあるもの)などを選びたいものです。そしてこれらも、白砂糖より多少栄養素を含んでいますが、カロリーは殆んど変わりませんから、調理する時なども、素材の味を大切にして砂糖の量を控えめにすることが大切です。薄味に慣れてくると、素材一つひとつのもつ風味が楽しく味わえるようになり、砂糖を入れないほうが美味しく感じるようになります。良い食べものを味わい見分ける味覚を育てる上でも、これが最も大切なことであって、いろいろ工夫していただきたいと思います。
 現代人はミネラルの亜鉛不足だといわれます。亜鉛不足は味覚を狂わすといわれますが、亜鉛は食品ケミカルによって消失する栄養素です。この亜鉛が不足すると、砂糖や化学調味料や人工的な味が美味しいと感じられるようになり、そうしたものをさらにどんどん食べるようになり、行き着くところは代謝障害というわけです。



 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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