山ちゃんの食べもの考

 

その5
 

友人から一冊の本が贈られてきた

 大阪高槻に尊敬する素晴らしい友人がいる。彼の名は、吉田清一郎。良い食べ物を広めようと有機農産物や畜産物、惣菜等を開発している。まず作る側の人柄を見、意気投合し納得いくものでないと扱わない。売り先も人柄や社風を見る。誠心誠意を尽すが、相手が理解納得し、共にいい物を育てよう広めようということでないと、媚びてまで売ろうとはしない。

 ニセモノが嫌いな哲学者風の勉強家であり、志高く、これからの時代をリードしていくべき人物であると思う。その彼から一冊の本が贈られてきた。

 

「森は海の恋人」(北斗出版)の著者 畠山重篤さん

 この有名な話は何度か聞いたことがあり、大きな感動を覚えたものだが本を手にするのははじめてである。山の命、川の命、海の命、そして私たちの命を含め、生きとし生けるものの命が一本に繋がっていることに気づかれ、漁民である自分たち自身で山に木を植えることを進められている。多くの人々に自然と命の尊さ素晴らしさを伝えていらっしゃいます。まだお読みでない方には是ひご購読をお勧めいたします。

 著書に記されている著者略歴のまま 畠山重篤さんをご紹介いたします。

 「1943年、中国上海生まれ、宮城県本吉郡唐桑町在住。牡蠣養殖業。牡蠣の森を慕う会代表。海の環境を守るには海にそそぐ川、そして上流の森を大切にしなければならないことに気づく。1989年より気仙沼湾に注ぐ大川上流の室根山に漁民による広葉樹の森づくりを開始する。同時に、環境教育の手助けとして、上流域の子供たちを海に招き体験学習を続けている。1994年、朝日森林文化将を受賞。2000年、環境水俣賞を受賞。著書に『森と海とマチを結ぶ』(共著、北斗出版)、『リアスの海辺から』(文芸春秋)などがある。」 

 ご存知の方も多いことでしょう。宮城県は世界的に有名な良質の牡蠣の生産地です。ちょっと長くなりますが著書の中から抜粋して、畠山さんの言葉を断片的にご紹介します。

 

森林、川、海と続く生態系の中に、生物の生存がある。

「気仙沼湾は古くから全国有数の漁港として賑わってきたが、(中略)牡蠣、帆立貝、昆布、ワカメの養殖漁場であり、養殖筏で埋め尽くされている」

「海苔が消えた海。気仙沼から唐桑に至る浅い海は、所狭しと海苔養殖の竹が立てられ、文字通り海の畑であった。海苔の養殖にとって、種苗付きの良し悪しはその年の作柄を左右する重大事である。舞根湾に注ぐ小さな川の河口は、最も味の良い種類である丸葉浅草海苔の種苗付け場であった。(中略)今思えば、沢が深く、川の上流の広葉樹を中心にした600町歩の山が、我が家の持ち山だったというから、その間を流れる川も保有していたのと同じだったのである。川が良ければ、河口は当然、海苔の種苗付け場として最良の条件が備えられていた」

「生産のピークは昭和37年で、(中略)味の良さから全国から仲買人が集まり、活況を呈していたのである。これだけの名声と歴史を誇っていた気仙沼湾の海苔養殖も、翌38年をピークに奈落の底へ落ちるように壊滅していった。我が貝浜漁場にも、この頃からベトと呼ばれる小さな油の固まりが流れてきて、海苔網に絡み付き、その部分の海苔は一夜にして消えてしまった。気仙沼市の加工場の垂れ流す魚の煮汁が主原な原因といわれた」。

「漁場が気仙沼市に近く、相次ぐ埋立て、海岸のコンクリート化、年々ひどくなる都市排水、(中略)この頃を境に、夏になると気仙沼湾奥から赤潮が発生し、唐桑の近くにまで流れてくるようになった。牡蠣の身が、プロロセントラルミカンスという赤潮プランクトンによって真っ赤になり、血牡蠣と呼ばれるものが発生したり、沿岸からは、小魚や小動物の姿がいつの間にか消えていったのである」

 

フランスにも輸出される、世界に冠たる宮城の種牡蠣

「養殖業にとって最も大切な牡蠣の種(種苗)は、実はそのほとんどが石巻湾から供給されているのである。宮城種と呼ばれるこの種牡蠣は、三陸沿岸だけでなく、北は北海道、南は三重県、岡山県、熊本県、日本海側は石川県、新潟県へ、さらに、大正年間からはアメリカ西海岸、昭和40年代にはフランスへと輸出され、成長が早く、病気に強く、味が良い、三拍子揃った世界に冠たる種なのである」

 

森の豊かさが海の豊かさにつながってる

「石巻湾が種牡蠣の大産地であるにはいくつかの理由がある。その第一は、何と言っても、北上川の河口域であるということである。(中略)牡蠣は主に、海水中に漂っている植物プランクトンを餌に育つが、この植物プランクトンを育む養分が、北上川流域の、森林の腐葉土を通ってきた河川水によって海に運ばれているからである。(中略)石巻湾は南の方向に口を開いている湾なのである。海の中を漂っている牡蠣の幼生は、夏の南風によって湾奥に集められる。そこに北上川が運ぶ森の養分が供給され、餌のプランクトンが増える。それを餌にして世界に冠たる宮城種が生産されているのである。

「良質の牡蠣種が生産されるには、もう一つの条件がある。それは万石浦の存在である。(中略)周囲を深い広葉樹の森で囲まれた遠浅で懐深いこの湾は、海水と北上川の河川水が混じり合った汽水域でその名が示すように、鰊、白魚、鰈、鰻などの魚から、栗蟹、海苔、浅利、そして牡蠣の採れる豊穣の海である。(中略)」「万石浦には、周囲の広葉樹の森から流れ落ちる淡水と、北上川から廻ってくる淡水が混ざり合い、実に多くの生物が生育している。それは、甘藻のジャングルが浅い海底を覆っているからである。甘藻は陸の広葉樹林と同じような働きをしていて、海中に酸素を供給し、多くの生物の産卵場となっている。さらに夏になると枯れ、海底に堆積して、やがてバクテリアによって分解されてゆく。このバクテリアをモナスという原生動物が食べ繁殖する。さらにモナスは牡蠣の幼生の餌となる、という循環がある」

 

わずか50年ほどで、山も川も海も、暮らし振りも変わってしまった

「上流の山が荒れれば、治山、治水の面はもとより農業用水や都市の生活用水の不足、海の生物生産の減少と、その影響は計り知れない。森の恩恵を受け続ける下流の民は、上流の森の民に、何等かの手段で恩返しをしてゆかねばならないことを強く感じたのであった」

「海にとって森や川が、いかに大切かを思い知らされるようになり、大川上流域に足を運ぶ機会が多くなっていった。(中略)気仙沼地方の経済の中心が海辺に位置するようになってからの歴史はまだ浅く、たかだか50年ほどだろうか。この地方の経済、文化の中心は、それまで山よりの地にあった」

 


それでは、ほんもの野菜の見分け方20 前回の続きをいたします。

[8] ほんものは、アクが少ない

 化学物質や過剰な肥料などで栽培され、薬剤消毒が多いものは、アクが強く、ニガ味が多く、エグ味や嫌なカラ味があります。こうしたものはしっかりアクを抜いても同時に、本来の味や香りや栄養も損ないますから、お料理してもあまりおいしくなくお勧めできません。

 作物にはそれぞれ多少のアクやクセがあるものですが、自然に健康に育ったものは、それがまた一つの個性でもあり持ち味にもなりますから、特有の風味として楽しむことが出来ます。したがって、簡単な下ごしらえやお料理でしかも薄味で、あるいは生のままでも素材のおいしさがいただけるというのがほんものです。

 

[9]ほんものは、切り口の色が変わりにくい

 野菜でも果物でもほんものは切り口の色が変わりにくいものです。化学物質で作られたものは酸化が早く、切り口の色が褐色に変わりやすいものです。また酸化の早いものは栽培上においても、害虫のつきやすいものであり消毒薬などを必要としたものともいえます。

 大きく立派に見えるリンゴやナシその他の果物でも比較してみてください。ほんものは切り口が乾いても色の変化は遅いのですぐにわかります。切ったら水にとって変色を防ぐとされる野菜などでもお試しください。一目瞭然です。変色の大きいものはエグ味やニガ味があったり、香りも良くなく、嫌なあと味がしたりするものが多いものです。色の変わりにくいものは、単に甘いだけでなく調和のとれたおいしさが味わえます。

 

[10] ほんものは、短時間で火が通る

 カボチャ、ダイコン、ニンジン、サトイモなど何なりとお試しください。ほんものは煮くずれしにくいのですが、あまり火を通したくないものは煮過ぎないようご注意ください。化学物質で育てられたものはどちらかというと火の通りが悪く、それでいながら煮くずれしたり繊維っぽかったりするものです。

 

[11] ほんものは、煮ても量が減らない

 ほんものは煮ても量が減らないのは、必要な栄養成分が凝縮された緻密な脂肪で出来ており、過剰な水分を含んでいないためでしょう。同じ量のほうれん草や小松菜などで試していただくと一目瞭然です。ほんものは、軟らかくてしかも形が崩れたり凹んだりすることなく、色がきれいに冴えてお料理しても美しく盛り付けることが出来ます。

 

[3] ほんものは、煮くずれしない

 ダイコンやカブ、カボチャ、ジャガイモ、サトイモなど煮くずれして困ることありませんか。火の通りが悪いわりに煮えた頃にはベチャッと煮くずれを起こしてしまうものはいい野菜とはいえません。ほんものは、火の通りが良くて煮くずれしなく、しかも柔らかく口の中でおいしさがとろけていくようなものです。葉野菜なども茹で上げてシャキッとしており、しかも食べて繊維質が残らず適度な歯ごたえがあり、しかも柔らかく溶けるような感じで食べられるものがほんものと言えると思います。

 


ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 


生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

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