山ちゃんの食べもの考

 

 

その71
 

 さらに大日向光氏は「3年前“食べずに捨てた食品の実態と対策”の中で、100家庭を対象に一週間の実態調査を行った。調査初日、家の中に保存していた食品を点検して処分した食品(飲料は除く)は1家庭あたり2113g。続く日常の6日間に廃棄した食品は1115g。市販加工品と調理素材の金額は合わせて2683円になり、その他に自家製食品の食べ残しが軽重カップに約2杯分あった。」
 「日常の食べずに捨てた食品は1日1人あたり56.5gで、厨芥ゴミの約3割を占めた。廃棄した食品の保存場所は冷凍冷蔵庫が62%と多く、その理由は“古くて食べたくない”が38%、次いで“腐っている”11%であった。
 内容的に問題なのは調査初日に乾麺類や漬物・佃煮などの市販加工品の貰い物が43%を占め、廃棄品の42%が手つかずという状態である。廃棄が多かったのは、多くの食品をかかえている50歳以上で、食事が不規則な末子18歳以上の家庭であった。日常の6日間では大根などの野菜や果物、魚介などの調理素材の調理素材が6割以上を占め、この中には大根の皮や葉など果食部分が42%含まれていた。」


 大日向光氏は食べずに捨てた食品の実態調査と同時に行った廃棄しやすい食品を利用したエコクッキングの試食を行った。固くなったパンのスープや大根葉の茎を使った梅風味に即席漬けなどは主婦等に好評で、みじめな料理ではなく普通の料理と理解されたという。
 しかし昆布を細かく刻むとかイワシの骨を揚げるなどの手間は敬遠され、野菜の葉や皮などの利用については農薬が心配との声も聞かれたという。
 食べものがムダにならないように自分で出来る工夫をしている人はわずか4分の1で“解っているが実行できない”が61%あった。食品を有効に活用するポイントは“買い物をし過ぎない”、“わかりやすい保存”、“使い切る調理の工夫”、食事がいらないとき連絡したり、エコクッキングや残りもののリフォームを受け入れる“家族の協力”である。
 「この実態を見ると、売場中心主義の販売が果して家庭の食卓に並べられる食品と一致し、味や量に満足を与えているのかと疑問に思う。また消費者も豊かさに慣れて知恵を働かせず、ずぼらになってきている。」と。そして「食品・飲料・嗜好品業界のテレビ広告費に占める割合は4分の1以上と最も多く、豊富な品揃えであるが、供給過剰であることはいなめない。この作り過ぎ、買い過ぎを抑制すれば、包装容器を節約することにもつながる。」という。


 大日向光氏は“食べずに捨てた食品の実態調査の結果から、今後の食事のあり方として4つの提言をしている。

 1つ目は、食卓の背後にある多くの労苦を知る教育の場をつくり、極端な鮮度思考や食べ残しについて考える機会を持つこと。産地直送など顔の見える関係で学びあう試みや学校給食の場で食べ残しの処理に取り組む学校もある。

 2つ目は、学校や地域活動の中で基本の技術と時代に即した知恵を伝え、食べる人のために創意工夫が出来るようにすること。安易な食事では生活習慣病などの改善も難しい。ある教育者は“どんなに便利になっても3割の不自由は残さないと人間は悟らない”と話された。食事を正す中で、無駄にしない習慣も身につける。

 3つ目は家庭や流通過程で余った食品を活用する社会の仕組みを作ること。相手の事情を考慮しない贈答品が持て余され、期限切れや返品などで廃棄になる食品も多い。貧富の差が大きいアメリカでは1996年に法律を制定し、善意の食料提供者や非営利団体の過失責任を問わないことで、食料再生回収運動を前進させたという。

 4つ目は、生ごみ、包装容器の廃棄を有料化すること。わかっていても無駄や楽をするのであれば廃棄には対価を支払う。生きる源である食べものを無駄にしないことを切に願うものである。




 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。


  

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

 

◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る