山ちゃんの食べもの考

 

 

その73
 

 アメリカでは食改善運動が進んで、日本の伝統食が普及し米を食べる人が増えていると言う。健康志向から日本食がすそ野を広げていて、寿司屋さんが若者の間でも安くてヘルシーだと大繁盛。若者達に「安くてヘルシー」と低価格路線で受けているそうだ。
 しかし、日本では相変わらず米の消費量は減少を続けている。米食の減少に伴って日本人の食生活は乱れ、健康への不安は高まって来ている。米を中心とした日本食は、日本の気候風土のもとで育った食べもので構成されるから、日本人の体質・生体に最も適合したものであり、身土不二の観点から最も理想的な食べものであることは言うまでもない。
 フランスには「若者の食事を見れば、その国の未来がわかる」ということわざがあるそうだが、若い人たちの食生活のベースには、これが日本食だといえるものはもう影も形もを無くし、秩序のないバランスを欠いた国籍不明食となっている。


 若い人たちばかりではない、あらゆる年代層に渡って、ファスト・フードやコンビニ食、インスタント食品や加工食品、調理済み食品などの工業化された簡便食への食の外部依存化が高まっている。スーパー関係者の話しによると、お正月料理についても原材料を買い求めて家庭でおせち料理をつくることは殆んどなくなったようで、乾物類の売行きは全くないということであった。
 先日も大繁盛で評判のデパートの食品売り場を見学して唖然とした。いまや食品売場というより料理売場だ。料理・調理が商品化されているのである。家庭に持ち帰って料理しなければならない食材は売場の片隅に追いやられているのである。家庭で調理・料理をしないことを前提に食品は開発され工業製品化して行っている。まな板や庖丁が要らなくなるばかりではない、台所がなくても一向に困らないということになるかもしれない。
 食生活の乱れに不安感をいだき各方面から警告が発せられてから久しくなるが、食業界の様相を見るかぎり悪化への歯止めはかかっていないように思う。


 朝食を食べない子どもが増えているというのも心配だ。これも子どもに限ったことでなく若者にも多いという。幼稚園の先生に聞いた話だが、こんな幼少時なのに平常の生活習慣から、食べさせようとしても体のリズムが受けつけないのだそうである。
 日本農業新聞で紹介された生協総合研究所の「2002年子供の食生活全国調査」によると、朝食をとらない原因として、就寝時間が遅くなっていることと、空腹感が減少していることなどが指摘されている。10年前に比べ、午後10時半以降に寝る子が47%から66%に増えている。結果として起床時間が遅い子が増え、起床してから朝食までの時間が短く、食事をとらないで登校する子が増えているといいます。
 また、空腹を感ずるということもなくなっているようである。食べ物が豊富になり、タンパク質や脂肪が多く腹持ちが多くなった。寝る前に間食することで翌朝になっても空腹にならない。食欲がないのである。「子どもにとって空腹の時は学びの最良の条件で、何でもおいしく食べられ、食事の大切さを理解しやすい」(八倉巻和子大妻女子大教授)といわれるだけに、健全な食事のためにも問題であろう、と指摘しています。
 こうした食生活の乱れによる健康障害も指摘されていて、いつも「疲れている」「眠い」「だるい」「イライラする」など異変が起きている若者がいる。肥満、高血圧症、糖尿病などの習慣病を子供のうちから背負っている。同調査では、下痢や便秘を訴える子も増えている。
 また一方で、男子を含め子供のときから過剰なダイエット志向の兆候があり、「太り過ぎを気にしている」のは、男子で21%、女子で32%である。成長期の子供の無理なダイエットは、各種の病気を引き起こす要因になる恐れがある、と述べています。
 いつでも、どこでも、何でも食べられるという簡便でモノ豊かな食環境が、食べることの喜びや感動を喪失しているようで“食べることは生きること”なのだという実感をなくし、健康な生命を育むための食が、歪められた食生活によって身心が蝕まれるという堕落病を来たしているといえます。


 「若いお母さん、危ぶまれる食の姿」と題し、桑原経営研究所の桑原才介氏が昨年の9月、日本農業新聞に次のような文を寄せられていた。
 「郊外のショッピングセンターは、どこも若いお母さんでいっぱいだ。2、3歳の子どもをベビーカーに乗せて、あたかも東京の渋谷や青山あたりを散策するような気分でショッピングや飲食を楽しんでいる。この若いお母さんたちは20代後半から30代前半。団塊ジュニアやハナコ世代の人たちだ。
 背も高くなり、身なりもファッショナブルで颯爽としている。しかし、そんな微笑ましい親子連れの姿も、いったんフードコート(立ち食いコーナーなど)の食事場面になると信じられないような姿に変わってしまう。むろん本人達にはそんな意識はまったくないのだが、洋食化の波にもまれながらも、ごはんと味噌汁、おかずという日本の伝統的な食のスタイルで育ってきたものにとっては、ぞっとするような光景を彼女たちは繰り広げて行く。
 まず目につくのは、一品主義というスタイルをとっていくこと。実はこの特徴はフードコードだからというのではなく、あらゆる食事場面で現れる。主食と副食をバランスよく食べるという習慣は煩わしいと思っている。だから一つのプレート一つの丼に中にすべてを投げ入れ、スプーンでかき混ぜて食べる“ネコマンマ”スタイルだ
 最近は提供する側も、そのかき混ぜスタイルに迎合したメニューを開発しているので、日本人の味覚を大切にする人にとっては衝撃的な場面に出くわすことになる。これらのメニューの特徴は、ごはんの上に副食らしきものをトッピングし、マヨネーズ、ケチャップ、しょう油がいっしょになったドレッシングでかき混ぜるというもの。
 コンビニエンスストア食とジャンクフードで育った子どもがお母さんになった姿をここに見るのだが、果たしてぞっとして見ているだけでいいのかどうか。






 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

 

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