山ちゃんの食べもの考

 

 

その79
 
 
 世界中から食べものを買い集めて、物余りと言われるほどの豊かな食生活をしているのに、そして世界一の長寿国に住んでいるというのに、どうして私たちは、健康への不安にとりつかれているのでしょう。
 世界の中でも、食と健康に不安を抱き、ダイエット食品や健康補助食品に依存している人が多いのは、アメリカや日本を筆頭に世界の豊かさを一人占めする先進国だと言います。
 あまたある食品の中から、自分が選んで摂っている普段の食生活でありながらも、健康にも食生活そのものにも自信が持てる人が少ないのが、今日の日本人の姿です。それは、これでは決して良くないのだ、と思う自分の食生活スタイルとともに、この食の豊かさを保障している背景に不信があるからです。
簡単、便利、美味、華美、大量生産、清潔・衛生、品質保持、低価格追求のために使われる膨大な化学肥料や農薬・薬剤、添加物などの化学物質。それにバイオテクノロジー、遺伝子組み換え技術などです。
 私たちは、よくわけもわからないまま、近代科学の信奉者であり、その近代科学発展の恩恵に浴しています。その近代科学が生み出した便利さや豊かさに浸りながら、一抹の不安もないとは言い切れないのです。
「利害得失」。昨年も食にかかわる多くの不祥事件があり、私たちを、食への不信と不安に陥れました。そして今年に入って早々にも、またまた表示偽装事件や未登録農薬問題が暴露されています。経済性優先、利己本意なエゴ社会の構造から生み出される歪んだ食の世界に対する不信です。そして自己の普段の食とその食べ方や、食生活スタイルの自信のなさからくる不安が交錯します。


 厚生労働省が認可する遺伝子組み換え作物であるにも拘らず。何か心配が残ります。JAS有機認定の納豆から、遺伝子組み換え大豆が検出されるというおそまつな事件がありましたが。私たちは植物油脂や大豆加工品、トウモロコシ加工品、あるいは畜肉を通して直接・間接に、いくらかの遺伝子組み換え食品を、既に口にしているかもしれません。
 私たちの生命への執着は、決して半端なものではありません。にも拘らず、普段の食生活に関しては、“少し無頓着すぎませんか”といいたくなるほど、無関心で無責任な方が多いように思えてなりません。次から次と繰り出される食品業界の“売らんかな”の仕掛けに、後れじと乗って行ってはいないでしょうか。
 先日もデパートの食品売り場を見学してきました。食の傾向を見るためです。私達の食環境は決して豊かになったのではなく、物の量や便利さ美味しさはあっても、食べものの内容も食べ方も、だんだん貧しくおかしな方向行っているのではないか。こんなことで、子供たちの将来のことを本気に考えていると言えるのだろうか、と心配に思いました。大切にされなければならない家庭での普段の食。その家庭で毎日営まれるべき家庭料理が、どんどん家庭の台所から剥ぎ取られて行っています。
 そしてデパートやスーパーの売場からは、今や“自然”と呼べる良質の食品が数少なくなっています。私の目からすれば、広い売場に飾られた豊富な農産物も不自然に美しいものばかりで、もっと食べものを真面目に考えて欲しいと願わずにはいられません。


 突然、経営コンサルタントを業とする友人が訪ねてきて、良い漬物の作り方を教えてくれという。彼が経営アドバイスをする漬物会社の製品を、某スーパーに紹介したところ、そのスーパーの社長から、「もっと、まともな漬物を作れ、本気でやる気があるなら、彼(筆者)から教わって、彼のO・Kが出たら取り扱ってあげよう」と言われたという。若い真面目な社長なので力を貸してやってくれというのである。現状をあらまし聞いたうえで、ともかく社長ご夫妻にお目にかかることにした。
 そもそも私は、主婦が自分の目で確かめた旬の安心野菜を、天然塩など自然素材で、家庭で漬けるのが最も安全で美味しく、余分なものを加えていないから、体にもいいと考えている。
というのも、市販の漬物が、どのような原材料を使い、いかに多くの添加物を使用したものであるかの実態を、ある程度知るからである。アミノ酸の調味液などで味付けされた不自然な漬物などを、子どもに食べさせていたのでは、子供の味覚が狂ってしまい、まともな食べものの味が識別できなくなるのです。人工的な甘味や旨味を加えたものでないと満足できなくなり、本物の味が美味しいと味わえなくなるのです。これが最も恐ろしいのです。子供の味覚が狂い命まで狂うようなことをしたくなかったら、漬物くらい家庭で漬けるべきではなかろうかと思うのである。
 しかし、漬物とは、スーパーやコンビニで買うもの、と言うような若い世代が多くなった今日であるから、これなら安心してお召し上がりいただけるのではないですか。というものを作っていただけたらと思うのです。またそうした良い漬物をつくって販売しようという業者は、多くはないが全くないわけではない。
食品加工の経営者に、良い食べものづくりへの強い使命感と固い決意、人の命の尊さを思う熱い思いや優しさがあれば、不可能なことではない。


 私たちが簡単便利と、口先だけの美味しさを求めれば求めるほど、食べものは自然から遠ざかり、いろんな添加物や科学調味料で作られたものとなっていきます。それが味覚を狂わせます。狂った味覚をさらに満足させる食品を作り出すために化学薬品は欠かせないものとなって行くのです。そして多くの食品が狂い、人々の味覚が狂い、健康が蝕まれていくとしたら、現代の食とは一体どうなっているのでしょう。
 食品添加物に詳しい渡辺雄二氏は、その著書『コンビニ時代の食品添加物』の中で次ぎのように述べています。
 「コンビニエンスストアやスーパーマーケットの食品を見るたびに、日本は、質の悪い食品で占領されてしまったとつくづく感じます。というのも、ほとんどの加工食品に数多くの食品添加物が使われているからです。
 本来食品は、野菜や果物、塩などの食品原料から作られるべきであって、食品でない食品添加物は使われるべきではありません。ところが実際は、食品原料のみから作られている食品は、ほとんど見当たらないという現状です。
 こうした食品を毎日食べていて、健康を維持することができるのか、非常に疑問を感じます。また成長期にある子供たちが、こんな食品でちゃんと育つのか――肉体的な面でも精神的な面でも、――と、とても心配になります。最近、子供たちがさまざまな問題を引き起こしていますが、食べものと無関係ではないでしょう。」――このように渡辺氏は警告を発しています


 子供の好むお菓子などは本当に恐いと思う。食品添加物を使わないお菓子は見栄えもよくなく、その味はもう、今の子供たちから受け付けられなくなっているのです。お菓子には色、香り、歯ざわり、その他のために、たくさんの添加物が使われます。どうやったら子供たちから買って貰えるかは考えても、どうやって子供たちの命を健やかに育むか、と考えて作られたお菓子を見つけることは困難でしょう。
 前出の渡辺氏は次ぎのように述べています。「人間は、自然から誕生した生き物であって、自然界にあるものに対しては、体がそれを処理する能力を持っています。フグ毒やキノコ毒など一部の毒を除いては、人間は天然にあるものを食べても、それを消化し、栄養として利用することができます。しかし、人工化学物質である食品添加物を、人間の体はうまく処理できないのです。これらの化学物質の一部は分解されず吸収され、全身に行きわたり、細胞や遺伝子に影響します。」
 「その結果、内蔵の働きが低下したり、ガンが発生したり、胎児に障害が起こるなどの問題が発生しています。また免疫やホルモンの働きを撹乱して、アレルギーを増やしたり、ホルモン異常を引き起こしたりします。」


 馴らされてしまったのかどうか、賞味期限は見ても、食品表示に書かれている使用原材料や、使われている添加物を気にして見る人は案外に少ないようです。また、表示を見ても何がなんだかよく理解できないということもあるのでしょう。国が認めている添加物だし、それに、少々添加物を使っていたって、あの美味しいケーキの魅力からは逃れられない。やはり美味しいものが食べたい、という欲求には勝てないのかもしれない。
 「今や、子どもも大人も、健康に不安を感じている人が非常に増えています。そのため、健康食品や栄養補助食品などがよく売れています。しかし『元』を正さなければダメなのです。毎日普通に食べている食品の質を良くし、それによって体を養い、体の機能を十分に維持して行かなければならないのです。こうしない限り、真の健康は得られないでしょう。」と渡辺氏は述べている。
 そして、渡辺氏は、「そのためには食品添加物を減らすことです。現状ではすべてをなくすことは不可能でしょう。先ず毒性の強いものをなくし、さらに食品添加物の使用自体を減らしていくことが必用です。」と語っている。
 私は、食品添加物が使われることのもう一つの問題点を指摘したい。それは、その食品に使われる主要原材料や調味料の問題です。無添加で美味しいものが作られるには、吟味された使用原材料の質が良くないと、決して良いものは出来ません。調味料も最高のものを使わないかぎり、安心できる美味しいものができないのです。無添加食品がどうしても割高になるのは、よい原材料の使用に拘り、本物の味に拘るところにあります。低価格を追求し、たくさん売れて儲かるものを作ろうとすると、粗悪な原材料で大量生産し、多種類の添加物に依存せざるを得ないことになるのです。現代の多くの食品はそうしたものです。
 食品から、どうしたら添加物を減らせるか、使わないようにすることができるか。それは只一つ、食品表示をよく確認し、そのようなものは買わないようにすることです。それが身のため、子供のため、社会にためと言うものです。





 

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生命の農と食を考える
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池田 優

 

 

 

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