山ちゃんの食べもの考

 

 

その85
 

 朝夕、コンビニエンスあるいはファストフードショップに群る子どもたちを見れば分かるようにする、清涼飲料水やスナック類など口にしたがるものが極端なまでに偏っているように思われます。若い女の人達の昼食風景を見ても同様で、「これが食事か?」、と自分の目を疑いたくなるものがあります。これでは添加物の塊ばかり食べているようで、しかも、ビタミンやミネラル不足に陥るに決まっています。「朝、何食べてきた」と聞くと、「コーヒーミルクとポテトチップス」と言う。一体どうなっているんだ。夜はいつまでも起きていて、やはりスナック菓子などを際限なくつまんでいるのであろう。生活習慣病が低年齢化しているといわれるのも無理はない。


 中学生にもなると、味覚や嗜好もほぼ固まり、それに、自分の食べたい物を自分の意志で選択するようになる。昔と違って、現代の子供たちにはかなりのお小遣いが与えられる。コンビニに集る子供たちを見るにつけ、このお小遣いが禍とならなければいいが、と祈るような気持ちになる。
 良く食べよく動き、身長もぐんぐん伸び体重も増え、知的にも精神的にも吸収が旺盛であり、大きく変動し、どんどん大人に成長していく大切な過程である。この時期の食べ物こそが、その人の一生を決めるといっても過言ではない。
 この最も大切な成長期にである。子供たちの意志や自由、一人の人間としての権利を尊重するなどと言って、生涯を決める食べ物を、欲望のおもむくままに放任しておいていいのか。
 また悪いことに、この年代の子供たちが好む簡便な食べもののほとんどが、決して子供たちの成長に良くないどころか、健全健康に育まれるべき精神や肉体を蝕んでいくような粗悪なものが多いということである。
 私は、このような食べものと呼ぶにはあまりにも劣悪な食品を、子供達のお小遣いで買えるような低価格で、コマーシャルまで打って、これでもかこれでもかと押し出してくる大人の良心というか、その企業の倫理観を問いたい。
 人間の味覚は10歳そこそこで決まると言われている。がから、本当は幼児期からの食教育と食習慣づけが最も大事なのである。
 高校生ともなれば、もう完全に自分の意識で食べるかもしれない。その後ともなると、もはや軌道修正は効かないところまで行くだろう。
 人間は何を食べるべきか? 食べることを甘く見てはいけないと思う。


 スナック菓子やファーストフード、添加物で彩られ味付けされた簡便な食品や飲料水に馴れ親しみ、味覚が固まりつつある10代の子供たちまで成長してから、急に子供たちの体や精神が心配だからといって、口うるさくあれこれ言ったり、料理素材やメニューの変更をしても、うるさがられ煙たがられて、そう簡単には受け入れられまい。幼少時から、家族が揃って楽しく良い食べものをいただく習慣は、よき習慣として10代、20代に引き継がれて行き、健全なる心身のを形成基盤となるばかりでなく、よき社会人となる人格形成への基盤であります。
 スーパーやデパートなどでのお総菜コーナーが大流行りですが、簡便で口においしい調理済みの食品や加工食品で調えられる家庭が多いからでしょう。仮に、これらがどれほど美味しいものであったとしても、子供たちに果たして家族の親愛感が高まることでしょうか。かけがえのない愛する子供たちの成長を願う時、この子供たちのために腐心して作る愛情いっぱいの手づくり料理が、どんなにかこそ家庭の温もりとなり、体の栄養、心の栄養となることでしょう。
 よく食べ、よく動き、よく学び、よく考え、よく悩み、よく喜び、そしてよく成長するこの時期には、良質の糖質もタンパク質も脂肪も、そしてビタミンもミネラルも成人した大人以上にたっぷり必要なのです。だから、生涯を決めることになるかもしれないこの時期に、調味料も含めてよい食材を選び、栄養バランスのとれた手づくり料理を、朝夕しっかり食べさせてあげなければならないのです。これは家庭でしか、親でしか出来ないのです。


 デパートのお菓子売り場を見て、さすがに美味しそうなお菓子がたくさん並んでいるのに感心する。しかも、たくさんの出店が色鮮やかな多種多様の品揃えである。でも、やわらかいものばかり。昔からあったあの硬いお菓子はどこへいったのかしら。ず〜と隅の方に追いやられている。
 お菓子ばかりでなく、最近の食べものは、あまりかまなくても口の中でス〜ッと蕩けていくようなものでないと駄目なんですね。リンゴは硬いから嫌だという子どもがいると幼稚園の先生が言っていましたが、こんなことでいいんでしょうか。
 軟らかいものばかり食べていると、どういうことになるか。歯や胃の働きが鈍ってしまって、いろいろな食べ物に含まれている必要な栄養分が摂取出来ないことになるといいます。歯や胃の働きが鈍ってしまって、いろいろな食べ物に含まれている必要な栄養分が摂取出来ないことになるといいます。胃腸が弱いからといって軟らかいものばかり食べていると、余計にひ弱な体になってきて、かえって抵抗力がなくなり病気になりやすくなるそうです。


 私は食の乱れから胃腸を患って長く苦しんできましたが、食と健康の問題に関心を持ち出してから、むしろ硬い食べ物や玄米ご飯などを食べるようになって、胃腸も丈夫になってきたように思います。もちろん、時間をかけ、よく噛んで食べるように心がけてきて、いまはそれが習慣になっています。
 食べものは、少し硬いくらいのものをよく噛んで食べたほうが、食べ物本来の美味しさも味わえるし、消化酵素や殺菌力をたっぷり含む唾液もたくさん分泌されますから食べものを楽しみながら消化も促進されることになります。それを送り込まれた胃や腸も、待っていましたとばかりに消化や吸収を促進する酵素やホルモンなどを分泌して、働きが活発となり、体に必要な各種の栄養がしっかり吸収されます。そして体の免疫力も高まるというわけです。
 それなのに、軟らかい食べ物ばかりが増えているのが最近の傾向のように思われます。食品をお勧めする店員さんなどから、よく、「とっても軟らかくて美味しいですよ」、という言葉が使われています。
 子供たちの好きなお菓子も食べものも、フニャフニャしたやわらかいものばかりです。こんなものばかり食べていたのでは、歯も胃腸も、人間の消化機能はだんだん低下して行き、根性のない骨抜き人間になるのではないかと心配です。


 やわらかい食べものに馴れ切ってしまった人にとっては、食べものをあまり噛まないで喉に送り込んでしまうという習慣がありますから、いつまでも口の中に残る硬い食べ物には抵抗を感じるかもしれません。
 私もそうでした。玄米ご飯や素朴な硬い食べものは味けなく、とても喉に通るものではなく、なかなか馴染むことはできませんでした。ところが、体のためと思って食べ続けているうちに、田舎での幼少の頃の味覚体験が戻ってきたのでしょうか、自然な食べものってこんなに美味しかったのかと、その食べ物の虜になりました。そして、食べものの美味しさにたっぷり満たされて少食になりました。そうした硬い食べものは、噛めば噛むほど、これまでに味わったことのないような、そして、何か懐かしいような美味しさが甦ってきました。
 これは、唾液中に含まれるプチアリンというデンプン分解酵素の働きによって、デンプンが麦芽糖に分解されるためだといいます。
 私の友人が、有機栽培のモチ米で玄米餅を作っています。実に芳ばしく美味しいものです。昔の人は、こんなにおいしいものを食べていたのだなあ〜と感心したりしているのですが、この玄米餅にいろいろな雑穀を加えて、何種類かのお餅を開発して欲しいとお願いしています。


 食べものは、十分噛むことによって唾液がよくまじり、それが胃に送られると、胃は待っていましたとばかりに胃液を分泌する。胃液がたくさん分泌されるようなゆっくりした食べ方が大切なのは、胃液には、効率の良い殺菌作用のある胃酸があり、唾液では対応しきれなかった細菌や異物・毒物を浄化して、感染症や病気に犯されないように、私たちの体を守ってくれるのだそうです。
 胃腸を丈夫にする。――これは拙い私の体験からもいえることですが、胃が弱いからといって、やわらかい消化のよさそうなものばかり食べていたのでは反って良くないように思います。
 体に良い食べ方とは、体に良い自然な食べものを選んで、よく噛んで、しっかりその食べ物の美味しさを味わうこと。そしてその食べものが提供してくれた生命の力を感謝して体の芯に送るということでしょう。
 よく噛む、ということは本当に素晴らしいことです。噛むほどに、その食べもののもつ個性的な味わいと生命力が感じられるからです。煎り豆やするめ、伝統的な岩おこしやせんべい。各地には伝統的な昔から伝わる素晴らしいお菓子もたくさんあります。これらには、余分な添加物もあまり使われていない良心的なものが多く、その面でも安心です。ゆっくりゆっくり噛みしめながら味わうと、それを丹精込めて作って下さった方のお人柄も忍ばれて、一層のおいしくいただけるものです。


 「よく噛んで食べなさい。そうすれば頭に良い子になりますよ」といいます。噛むことは、頭に刺激を与えて脳の働きを活性化するそうです。お年寄りでも、硬いものを時間をかけてよく噛んで食べる歯の丈夫な方は、痴呆症になりにくいといいます。92歳でなくなった祖母も、最後までたくあんや魚の骨までバリバリ食べるという気丈な働き者の明治女でした。
 よく噛むことによって、脳にある記憶をつかさどる海馬が活性化することで、頭の働きが活発になるからだといわれています。
 それに、よく噛んで食べることの効用は、同じ食べものでもよく噛むことによって、少量でも十分に満足感が得られますから、先ず食べ過ぎるということはありません。ですから、食べすぎで肥満を気にしている方は、良い食べものを選んで、ゆっくりゆっくり、しっかり噛んで、よく味わいながら食べることです。無理して食欲をこらえるのではなく、美味しく食べ満足しながら、食べ過ぎによる肥満を防ぐことです。
 さらに噛むことは、噛めば噛むほど唾液に含まれる殺菌効果が働いて、バイ菌から犯されることを予防するとともに、歯を丈夫にしてくれます。そして食べものの持つ美味しさをたっぷりいただきながら、必要な栄養分がしっかり吸収できるのですから、噛むということは本当に素晴らしいことです。
だいたい、現代病の多くは、あまり良くないものの食べ過ぎからきているいいますから、よく噛んで食べるということは、現代病の大きな予防になるといえます。






 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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