山ちゃんの食べもの考

 

 

その87
 
■ 近藤正二博士の著書に「日本の長寿村・短命村」(の2)


 近藤博士の検証で、小魚を食べていれば短命から免れることがわかった。こうした実例は全国にあるという。ところが、「伊豆半島西海岸の田子は鰹節の産地で、鰹節にならない脂身の多い腹肉ばかり食べて、野菜をぜんぜん食べない。その結果、心臓が冒され、40、50歳で倒れる。」という。
 養殖が盛んになって年中ブリトロが食べられる時代になった。年に何回も食べることの出来なかった高級魚が一般魚になった。回転寿司に行っても小さい子どもがたっぷり油の乗ったブリ、サワラ、マグロなどの寿司が大人気です。ご馳走漬けになっていることは、はてさていいことなのかどうか。
 健康な食べもののいただき方に「一物全体食」という原則があります。食べものの命まるごと全体を食べることです。穀類もできるだけ精製し過ぎないものを食べる。野菜もお魚もそうすることでバランスの取れた豊かな栄養が摂取できる。沖縄では豚のほとんどを活かして丸ごと食べています。


 近藤先生は大豆を食べることが元気で長生きすることを検証しました。 「島根県の隠岐の島に行くと、70歳どころか80歳以上の人が沢山いる。しかも元気で野良に出て働いている」。この島では、大豆で作ったもの、納豆とか豆腐とかをよく食べている。
 米の飯を大きな茶わんで、一度に4杯も食べる秋田の農村地帯では、「せめて60くらいまでは生きたい」という。そういいながらも、40歳くらいから男女とも脳卒中で倒れているのです。せめて60歳までを理想としている短命村と、80歳までまだまだ働く長寿村とでは、寿命に対する考え方も大違い」です。
 隠岐の島のような長生きの村の人は、大食ではないが、必ず毎日魚を食べるか、魚の代わりに大豆製品を食べているのです。
「どんな形でもいいから、大豆製品を毎日食べておれば、必ずしも動物性のものを食べなくても、立派に健康で長生きができるということがわかったのです」と述べています。
 長寿学で有名な永山久夫先生や、京都大学大学院教授の家森幸生先生も、大豆を毎日食べることの大切さを教えています。大豆に含まれるレシチンは記憶の形勢に重要な役割を持ち、記憶力を高めて呆けを防ぐといいます。サポニンはコレステロールや脂肪を洗い流して肥満を予防し、大腸ガンを防ぐ。またイソフラボンはカルシウムの吸収と利用を高めて骨粗しょう症を防ぐ。さらに、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンEを含み、豊富な繊維質、オリゴ糖、カリウムなどが脳や体の健康に大いに役立ってくれるということです。
 煎り豆にしておやつ代わりに毎日少しつまむのもいい。ご飯に入れて一緒に炊いても旨いものです。畑の肉といわれる長寿食の代表的な大豆を上手に食べましょう。


 何が長寿と短命を分けているのか、全国を踏破して調べた近藤博士は、「長生き村の人が食べているのは多量の野菜です。野菜の食べ方が少ないところには、絶対に長生き村ではないということです」と明言しています。
 「果物を食べていれば野菜など食べなくともよい」というのは間違いで、果物をどんなにたくさん食べても野菜をとらなければ長生きできません。津軽のりんご産地、静岡県のみかん産地などで、果物ばかり食べて野菜を食べない村はすべて短命でした。」残念なことに、そうした果物作りの盛んなところでは、果樹園はあっても野菜畑は持っていません。農業を営みながら、果物を売って魚や肉をたくさん食べる果物の名産地が、全て短命村であったというのは皮肉です。
 最近では若い人たちが極限られた品数の軟らかい生野菜サラダを食べて、野菜を食べた気になっています。またこれ1本でとか、これをこれだけ食べることで野菜どれだけ分の繊維が摂取できます、などというのがありますが野菜は単なる繊維ではなく、生きた命です。四季折々の豊かな野菜を十分に食べているところが元気で長命であることを学ばねばならないと思います。
 美味しく煮炊きした野菜の素晴らしさを子供達にも。


 ヒジキの煮たものがお好きですか。ワカメのおつゆや酢の物はよく召し上がりますか。長寿県の沖縄は日本でいちばん昆布の消費量が多いといいますが、昆布をどのように食べていますか。近藤正二先生は次ぎのように述べています。
 「どこで調べても、海藻を常食している人は、脳卒中にかかることが断然少ない」。秋田県・男鹿半島の旧戸賀村は、毎日のように海藻を食べる習慣があり、脳卒中で倒れることはないのに、その隣村は海藻を食べる習慣がなく脳卒中で短命である。このことは全国的にも裏付けされており、たまに食べるのでは効果がなく、「少量でもいいから毎日食べ続けることが大切」だと述べています。
 また家森幸雄先生は『やっぱりあった長寿の秘訣』の中で、「沖縄に次いで、日本で2番目に長寿の島根県隠岐の島の人が長生きできるのは、海藻を常食しているからだ」と述べています。先生は、この事実を確かめるために100%脳卒中になるネズミを使って実験。濃度1%の食塩水を与え続けたところ、1ヶ月後には全部が脳卒中になりました。ところが、食塩水に海藻の昆布の繊維を1割だけ混ぜて与えたところ、血圧の上昇が抑えられ、1か月たっても脳卒中の症状がでるネズミは一匹もいなかったといいます。
 そして、海藻の繊維には、有害なナトリウムを吸着して便とともに排泄する作用があるからだと。さらには余分なコレステロールや糖分、その他の有害物質をも吸着して腸から早く出してくれる。「長寿食は、ふだんの積み重ねが大切ですから、海草類や食物繊維の多い野菜類を豊富に積極的に摂ることをおすすめします」と述べています。


 同じ海女としてのお仕事をされている中にも長命と短命があることを近藤正二先生は述べています。普段どんな食生活をしているかによってこんなに違いのあるものであるならば、食はやはり心して選ぶべきでしょう。
 海女の発祥地といわれる三重県の国崎の海女は皆長命だといいます。海女は朝5時頃から野良着姿で畑に出て芋や野菜を作り、9時過ぎには海女の装束になって海岸に出て行きます。海に潜る作業は3時頃切り上げ、今度はまた野良着に着替えて暗くなるまで畑仕事に精を出し、夕食の支度、後始末をいっさいを自分でやるそうです。
 近藤博士は、「私は1ヶ月間この村に滞在して、海女といっしょに浜に出かけ、海から上がってくるとつかまえていろいろ話を聞き、夜まで行動を共にしました。みんな70歳以上のおばあさんで、最高が78歳でした。この人はグループの先頭に立って働いています」
 「朝、何時どこそこに集まれとマイク放送します。そこへ出かける彼女たちは実に元気がいいのです。大きい笑い声を立てて楽しくて仕方がないというふうです」
 「これには考えさせられました。それは秋田の短命村に行った時、おばあさんたちは、みんな“ああ、今日も重いものを背負って歩かねばならんなァ”と愚痴をこぼしながら仕事に出かけるのを思い出して、ここはまるで反対だなあと思い、すっかり志摩の海女に魅せられてしまいました」
 この人たちの食生活は、お米が取れないのでサツマイモと麦を主食にし、大豆やゴマをたくさん作り、野菜もあらゆるものを作って食べている。海の幸の魚はむろん海藻も食べている。
 博士が、「何が好きか」と聞くと、「甘い菓子が食べたい」と言う。そこで、菓子をたくさん買っていって、すすめると、1つ口に入れて「ああおいしい」と言うが2つ、3つとは食べる人はいない。遠慮しているのかと思って「さあ、さあ」とすすめても「実はのどから手が出るように欲しいけれども、食べると水に潜ったときにおなかが苦しい」と言うのです。
 また、人参を食べるかを聞いてみると、10人が10人食べるという。好き嫌いのある野菜なので、聞いて見ると、「実は好きではないが、海に潜ってあわびをとる時に、人参を食べていると力が入るから」という返事であった。
 同じ海女の村でも、伊勢湾に浮かぶ神島の海女はあまり長生きしないが、これは野菜を作っていないので、野菜不足になっているのだそうです。


 長寿村には長寿になるわけ、短命村には短命になるわけがあります。近藤正二博士は長寿と短命になる岐かれ道を次のように述べています。
 三重県南島町はたいへんな僻地で、ここに平家の落人が亡命上陸して、8つの部落を作って住んできましたが、この平家部落は実に長命村なのです。人々が「魚はときどき買って食べます」というので、「目の前の海にいつでもいるじゃありませんか」というと、「私たちは絶対とらないのです」という。
 800年の昔上陸した時、先住漁民との間で、「決して魚を一匹もとらないから」という約束ごとで、この海岸に住むことを許されたため、今でもそれを守り続けているのです。
 この純粋の平家の子孫には共通した食生活パターンがあり、畑を作り、芋や青い野菜を作って自給して、海藻を常食し、70歳以上の長寿者が多くいます。博士は、「漁村で短命というのは、野菜不足です」と述べている。そして、「土地の習慣や伝統が食生活を左右し、それが長寿と短命の岐かれ道になるのです」と述べています。
 家森幸男先生は「カリウムが成人病予防のカギを握っている」と言います。野菜や果物に多く含まれるカリウムが豊富な食物繊維とともに摂取過剰が心配されるナトリウムを排泄し高血圧などから守ってくれます。私は日本のよい農業良い農産物が広まることを願います。それには食べる人、選ぶ人の意識がもっと変ることが大切だと思うのです。


 女性に比べて男性が短命であるのは、どうも男の横暴と言うかわがままにあるらしい。近藤博士は次のように述べています。
 いつの国勢調査でも高齢者の比率が男女とも同じくらいの比率であるという岡山県の公文村。女性のほうに長寿者が多いのが普通なのに、この村だけが男女同率の秘密はどこにあるのだろうか。
 これは、この村の人の言によれば、「食事はすべて女にまかせてあります。その女が作ってくれたものを、男が好き嫌いで残すという法はないでしょう」ということになっている。
 「普通、男がご馳走を食べて野菜を残す人が多い。女は好き嫌いを言わずに野菜を食べる傾向が多い。ところが男が女と同じものを食べていれば、長寿者率が同率になることを立証したと思います」と博士は述べている。長生きする比率の男女差は、この辺りにあるのではないだろうか。
 禅寺などの高僧に長寿者が多かったというのは僧侶が摂取する普段の食に要因があったのではないだろうか。


 近藤博士が全国行脚で実地調査した当時、石川県の金野村、小松町、寿井野町、久常村などでは、男の長寿者率が極端に低い。「野菜は女の食べるもの。男が野菜を食べると笑われるから食べられない」という。
 反対に、女に好き嫌いがあったらお嫁にもらいてがない、ということで、女の子は小さい頃から好き嫌いしないようにしつけられ、何でも食べる。そして、女性は長寿である。
 「男が野菜を食べると笑われる」などがあったかどうか知らないが、豆や芋、南京などというものはの食べるものであって、男が野菜を好きだといい「旨い旨い」と食べるようだったら、やはり女々しい奴だと見られる気風がなかったとは言えない。
 すき焼きを食っても、肉は旦那様や男の子に「どうぞどうぞ」とすすめて、女性は野菜ばかりを食べている。食卓で残されるのはいつも野菜。女の子は幼少から母親とともに野菜を食べさせられ、有無を言わさず好き嫌いしないように躾けられるのである。


 長寿村の多い志摩半島でも、尾鷲湾沿岸の桂城、須賀利といった短命村があり、そこには畑をいっこうに見かけない。女性を働かせると主人は甲斐性がないと笑われるので女を畑仕事などで働かせないのです。魚介類はたくさん食べるが、畑がなく野菜を買って食べる習慣もないのです。魚は十分食べていますから子どもの背丈は高いのですが、全体に若死にとなっているのでした。
 日本は小さな島国ですが、温暖湿潤な気候風土とメリハリのある四季がもたらす恵みには計り知れないものがあります。実に多種多様な多くの植物が繁茂します。最近、家庭菜園をされる方が多くなってきていますが。多くの欲さえかかなければ、少しの空地にでも種を撒き、苗を植え、少し世話をするだけで、誰にでも美味しい自然の恵みを手にすることができます。家庭菜園は、食べものに命を感じ、命をいただく感謝と喜びを知って、いやでも健康長寿食に導いてくれることでしょう。
 「身土不二」「旬産旬消」は健康長寿の原則。身近に出来た野菜、その季節にで来た豊富な採れたて野菜を食べることこそ大切にして行きたいものです。 



 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る