山ちゃんの食べもの考

 

 

その90
 

 まず、豚カツやハムなどでおなじみの豚肉がどのように作られているのかを学んでみたいと思います。
 「屠畜されている豚のうち70%(2000年)に異常があり、一部廃棄の上で食肉になっている。私たちが食べていた肉の続きに病変部位があったと思うと気持ちのいい物ではない」。これは日本子孫基金の小若順一氏他が著した『食べるな、危険!』(講談社)に述べられている言葉です。続いて、
 「豚は本来、清潔好きでデリケートな動物である。ところが、コンクリートの狭い畜舎で飼われ、配合飼料を与えられると、胃潰瘍が起きる。ストレスからも病気になる」
 豚には、病気から守るため抗生物質などの抗菌剤が大量に与えられるのです。この養豚に使われる抗生物質は、病気の治療や予防の場合だけでなく、成長促進剤としても飼料に添加されていて、抗生物質を添加することによって栄養分の吸収がよくなり豚が早く太るのだというのです。
 「ただし、抗生物質を使い続けると恐ろしいことがおきる。炎症性の疾病は、抗生物質が効けば簡単に治るはずだが、豚の場合はなかなか治らない。その理由は抗生物質が効かない耐性菌が生まれているからだ」
 そして「多剤耐性菌に効果があった最後の切り札の抗生物質、バンコマイシンすら効かないという怖い菌が、2002年7月、アメリカで発見された。『早ければ2年で、遅くとも10年以内に世界中に広がるだろう』と、耐性菌研究の世界的権威である順天堂大学の平松啓一教授は警告している」。
 「抗生物質の乱用を止めなくてはいけない。人用の2倍近く使われる畜産現場を改善する必要がある。良い環境でゆったり育った美味しい豚が食べたい」。と述べています。


 伊藤宏著『食べものとしての動物たち』によると、豚は猪が家畜化されたもので、世界で最も古い豚の骨は、紀元前8000年ごろの新石器時代のもので、中国南部の遺跡から発見されているようです。豚は、大型の哺乳類動物でありながら「多胎動物」で、1回に10匹もの子を生み、妊娠期間は114日と短く、うまく繁殖させれば年に2回以上、2年では5回も子を生み、子豚は50頭にもなるという。しかも雑食性だから何でも食べて、どんどん太って肉をつけるから、食肉用家畜としては大変な利点があるわけです。
 実は、豚にも牙があって、雄の犬歯は伸び続けると猪のような牙になり、母豚の乳頭を傷つけるので、生まれてすぐに切除するから、見られないだけだそうです。そして、奥歯が永久歯として生え出すのは生後5〜6ヶ月ですが、たいていの豚はその前にはもう肉として出荷されてしまうわけです。
 また、豚には20〜23個の尾椎があって、尻尾となっている尾椎の先端15個ばかりが、尻尾のくるっと巻いている部分で、これを豚たちはお互いに噛み切ったりして傷をつける。傷口から細菌が感染するのを避けるために、生後2〜3日で切断する事が多い。と述べています。


 伊藤宏氏によると、平成12年(2000年)の地球上には約10億頭の豚がおり、人間6人に対して1頭の割合になります。日本で飼育されている豚は980万頭で、うち子を生ませるための雌豚が93万頭、種付け用の雄豚は7万頭。残りの820万頭は肉を提供するために育てられおり、これらは繁殖用に使われることなく、生後150日も経てば屠殺されてお肉になります。
 豚は生まれた子の体重が2倍になるまでに要する期間は、他の家畜と比べて極めて短くわずか2週間。馬は60日間、牛は47日間、山羊が22日間を要します。ちなみに人間は180日間も要します。
 豚は人間と同じく何でも食べる雑食性です。子豚に与える飼料は、植物性のものより動物性蛋白質を与える方が利用性が高く効率性が良いのです。そこで飼料にはトウモロコシなど植物性のものに、肉工場での家畜処理段階に副産物として出てくる屑肉や骨などを加工した肉骨粉が加えられることになるわけdす。


 以前は生まれた子豚が離乳するのに1ヵ月程度かかっていたのですが、近年では17日前後で離乳させるようになってきているそうです。これは、母乳(豚乳)に代わるすぐれた人工乳飼料が開発されたことによるものです。
 離乳前後までの間、脱脂粉乳などの主成分を主原料に、水や温湯に溶かした代用乳が用いられるとのこと。その後、トウモロコシや小麦の穀粉、大豆粕、魚粉、きな粉、動物性油脂、飼料酵母などに、わずかな脱脂粉乳を加えた人工乳に切り替えていく。さらに、ビタミン、無機物、アミノ酸類、抗生物質、合成抗菌剤なども加えられるという。生後2ヶ月ころからは、穀類、大豆粕、魚粉、糠類を主原料とする、子豚育成用配合飼料が、粉状またはペレット状で与えられます。
 肉として出荷される間際の豚には、与える飼料に抗生物質などの抗菌性物質を添加することは禁じられています。
 こうして、現在の豚肉の多くは、出荷年齢が5ヶ月ちょっとのわずか160日、しかし体重は110kgということになっているとのことです。


 『食べものとしての動物たち』によると、私たち日本人が1年間に食べる肉の量は、1人当たり換算で、昭和30年(1955年)には3.2kgでありましたが、40年あまり経った平成9年(1997年)には、30.7kgとおよそ10倍近くに増加しています。そのうち豚肉の摂取量は11.3kgで、鶏肉の11.0kgとほぼ同量であり、牛肉は8.0kgでとなっています。
 豚は、生体検査を受けた後、炭酸ガス麻酔法または電撃方式で失神させ、後足にフックを通して逆さに吊るし上げます。そして心臓付近の大動脈を刺して放血します。その後、頭部を切断除去し、皮を剥ぎ、四肢を切り取り、内蔵を取り出し、背割りで半丸に分割し、成型、洗浄されます。
 豚は、人間に食べられる肉だけのためにこの世に生を受け、私たちを楽しませ、血肉となり、命を育んでくれているのです。


 店頭で、「安全で健康な豚でキメ細かく柔らかいお肉です」などのキャッチフレーズで、「SPF豚」あるいは「清浄豚」、「無菌豚」などとして売られている豚肉とはどのようなものなのでしょう。食生活研究会編著の「安全な食べものQ&A」によると、正式名称は「特定病原菌不在豚」で、Specific Pathogen Free Pigsの頭文字をとったものです。
 豚の伝染病である流行性肺炎や、萎縮性鼻炎などの心中を受けた養豚場では、豚の発育や飼料効率に影響して、養豚の経営上に問題があるにもかかわらず、なかなか撲滅することができません。
 SPF豚は、その対策のために開発された飼育方法です。分娩末期の母豚から帝王切開によって無菌状態で取り出した初生豚を、消毒した無菌状態の豚舎に移し、熱で滅菌処理したエサを与えます。厳重な隔離状態で、徹底した衛生管理の下に飼育した豚です。従って、疾病予防や治療のための薬剤使用も少なくてすみ、その残留性の心配もほとんどないといわれます。
 小若順一氏は「SPF豚は、特定の病原菌不在ということであって、抗生物質耐性菌がついていないという意味ではない」と述べています。


 「価格が高いけれど肉質がしまっていてコクがありおいしい」、と評判の黒豚ですが、全国で飼育されている豚のわずか0.7%程度しかないというのに、全国あちこちに出回り売られている。にせ物が横行していて偽装問題が持ち上がり話題騒然となりました。
 黒豚はその名の示す通り皮の黒い豚ですがそれだけでなく、バークシャー種の純粋種のみをいいます。このバークシャ―種は一般の白豚が一回に10〜12頭の子豚を生むのに対して、7〜8頭しか産みません。しかも飼育に時間がかかりエサ代が高くつき、しかも育て難いという難点があるそうです。
 黒豚生産者の62%を鹿児島県が占めており、「かごしま黒豚」のブランドで売られています。





 

ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。

 

生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
L ife A griculture F oods

FAX :076-223-2005
mail :m.ikeda@ninus.ocn.ne.jp

池田 優

 

 

◎ ご意見、ご教示はこちらまで    掲示板も御座います。是非ご利用下さい。→ 掲示板

最新号へ戻る