山ちゃんの食べもの考

 

 

その95
 

 「高率を追求しすぎて、牛乳に危険性が発生している」と警告を発するのは日本子孫基金。その著『食べるな、危険』には、本来、牛乳は甘くないのに、味に魅力があり、栄養価が優れ、価格は安く、しかも安全な飲物である。子供を持つ親にとっては、これほどいい食品は滅多にない。ところが最近は、暗い話題が多くなった。「日本でもBSE(狂牛病)の発生、大手乳業会社の食中毒事件などに牛乳が深くかかわっており、その背景には、自然に反するエサと飼い方がある」と。
さらに、「乳牛の搾乳量は、この30年間に2倍に増えた。乳房炎が増加し、黄色ブドウ球菌が混ざった牛乳がでるようになる。牛の体内から出た瞬間は無菌のはずの牛乳が、菌を含んで出てきたのが、食中毒事件の発端である。」
 そして、「BSEにしろ牛乳による食中毒事件にしろ、共通するのは、酪農が自然の原則から外れていることから起きたことであり近代の酪農は、動物の生理より、経済効率を優先するエサや飼い方を農家に強制しているところに原因がある。」と述べている。
 私たちの食生活には無くてはならないものになった感のある牛乳や乳製品。育ち盛りの子供たちが学校給食を中心として毎日のように飲用している牛乳は一体どのようにしてつくられているのか、親には知っている義務があるのではないでしょうか。
 不自然な飼い方をし、濃厚な配合飼料を与えて、わざわざ高い乳脂肪率の牛乳を作ろうとする。そのようにして作られた牛乳がよい牛乳だと思い込まれている。私たちには日ごろ飲用するその牛乳を産する牛が、何処でどのような飼われ方をしているものであるかを知ることも大切なことであると思うのです。


 船瀬俊介著『早く肉をやめないか?』の中で、イギリスの女性ジャーナリスト、J・ペレラは、「狂牛病と成長ホルモンは、コインの裏表」と指摘しています。その理由は、狂牛病の蔓延には、先進国の畜産業が、牛乳・食肉生産に人工成長ホルモンを乱用してきたことで加速されたからだと言っています。そして、「この成長ホルモンとは、遺伝子組み換え技術によって生産されたもので、モンサント社など大手化学メーカーが開発したものである。この人工成長ホルモンを乳牛に投与すると、生産される乳量は飛躍的に倍増する。このホルモン使用は、1993年、安全性に問題なしとして、アメリカ食品医薬局によって認可されたものであったが、EU諸国、オーストラリア、ニュージランドなど軒並み使用禁止となった。」と述べています。
 ペレラ女子はきびしく批判し、「このホルモンが牛と人の健康を危険にさらす、という証拠は数多く出ている。成長ホルモン投与の牛は、絶え間なく妊娠、泌乳を繰り返す。その結果、老化が早く進み、通常20〜25年の寿命が、僅か5年以下となってしまう。」
 「乳房が地面に届きそうなくらいパンパンに張ったホルスタイン乳牛の姿は、どう見ても異常であり、その不自然な姿の裏側では、無理無茶が重ねれれていたのだ。そして、寿命が通常の5分の1という牛は、まさに不健康そのものであり、そのような牛から絞ったミルクが、果たして健康といえるだろうか」と船瀬氏は現代の牛乳の作られ方に大きな疑問を投げかけています。


 「人工ホルモンの牛への投与は、牛の寿命を5分の1程度に縮めさせましたが、反自然で過酷な近代農法は、牛に乳量を過剰分泌させてきました。1930年ころの乳牛の1日当り平均乳量は5kg程度でしたが、それが1988年には18kgと4倍近くに激増しました。ところが人口ホルモンの投与で、乳量は、なんと平均22kgまで跳ね上がったのです。」とペレラ女子は述べています。
 船瀬氏は、「かつての5倍近い乳量を搾り出すのですから、普通のエサをのんびり食べていたのでは間に合いません。そこで、非常に濃厚な飼料を必要とするようになる。一方でこの牛たちは肉体の器官や機能を酷使しており、そのため非常に感染に弱くなっている。そこで、感染防止のために、さらに抗生物質が増量されることになる。」
 「これらの成長ホルモン牛が必要とする“濃厚飼料”こそ、“廃棄処分された動物の肉や骨から作られた飼料”なのである。そもそも成長ホルモンを投与しなければ、牛に“汚染肉”を食わせる必要もないわけであり。その意味で、狂牛病と成長ホルモンは、コインの裏表なのだ。」ペレラ女子と言うのです。
 牛への成長ホルモン投与は、消費者には何のメリットもないものであり、動物と同様に、人間にもまた悪影響を及ぼし、健康を蝕まれるだけだ。と船瀬氏はきびしく警告を発しています。


 伊藤宏氏によると、西欧諸国における牛乳・乳製品の消費量は、年間1人当たり最大がフランスの368kgで、次いでデンマークの365kg、オーストラリア304kg、旧西ドイツ298kg、イギリス、282kg、アメリカ254kg、イタリア251kg、となっています。これに比べてわが国では93kgです。
 乳牛といえば白黒の班模様を思い起こしますが、これはホルスタイン種で、たくさんのお乳を出します。普通では年平均5000〜6000kgもの乳量で、多いものでは7000kg〜8000kg、高等なものでは1万kgを超えるものがあるといいます。
 また、わずかですが『ジャージー牛乳』などで知られるジャージー種があり、年間の乳量は3000〜4000kgと少ないのですが、乳脂肪率が高く、タンパク質の含有量も多く、コクがあっておいしい牛乳と言われています。


 牛乳は戦後の栄養改善運動の中で、最も摂取することが強調されたもので、カルシウムと良質なタンパク質を含む食品として、学校給食を始め、妊婦、授乳婦、高齢者、さらには一般の人々にも、できるだけ多くの牛乳を飲むよう盛んにに奨励されてきました。そして現在においても骨粗しょう症の予防などに、多量の牛乳を飲むことが奨められています。「欧米並みに」のかけ声の下、乳糖分解酵素・ラクターゼを持たない日本人が、離乳することを否定されたと言っても過言ではない。と、島田彰夫氏は『食と体のエコロジー』で述べています。
 島田氏は、確かに牛乳の成分にはカルシウムもタンパク質も含まれていることは事実である。しかし乳糖不耐症の人が牛乳を飲んだ場合にはカルシュウムは分解されないどころか、むしろ排泄が促進されるということが明らかになった。牛乳を飲んだ後に下痢や腹痛を起こすのは、乳糖分解酵素ラクターゼが分泌していないためであるが、白人の多くの場合は、成人になってもこのラクターゼを分泌している。
 ラクターゼを分泌しているのは、北ヨーロッパ人や砂漠の周辺に住み、古くから乳類を飲用する習慣のある人々に限られている。日本人を含む世界の大多数の人々は、乳幼児を除いては、ラクターゼの分泌をしていないことから、乳糖は分解できないのです。
 日本では大多数の医師や栄養士が、現在でも牛乳や乳製品を摂取することを奨めているが、“人の食性にあわないものが、健康に良いはずがない”とのべています。


 『食べものとしての動物たち』によると、子牛は約40kgぐらいの体重で生まれ、母乳は初乳を5日間ほど飲むだけです。その後は脱脂粉乳を主原料とし、穀物粉などを加えた代用乳で約6週間育てられます。さらにその後は、栄養価の高い配合飼料が粉状またはペレット状の人工乳として与えられます。やがて、柔らかい乾草などを食べ出し、200kg位の体重になったころから育成牛として扱われ、生後14〜18ヶ月ごろには体重も350kg以上になり、種つけされ、280日の妊娠期間を経、初めての分娩をします。この間、生後約2年を経て体重は500kgになり、成牛となる。
 分娩後、乳量は次第に増加して、2ヶ月ほどでピークに達し、その量は1日30〜40kgにもなる。搾乳できるのは分娩後約10ヶ月間で、その総乳量は500kg〜1万kgにもなるのです。牛乳を産出する機械となった乳牛には多くの休暇は与えられません。分娩後2〜3ヵ月後には、次のために交配が行われます。そして、この雌牛は2〜3回の分娩をした後、搾乳を止め、肉用牛として肥育にまわされていき、今度はできるだけ柔らかく美味しい肉をつけるように肥育方法が変わるわけです。


 牛は草だけを食べ、どうしてあんなに大きくなれるのだろうか、たくさんの乳を生産できるのだろうか。伊藤氏の説明によると、牛たちは一日中食べ続け、生草を35kgも食べるという。牛は一度飲み込んだ食べ物を、再び口の中に戻してゆっくり咀嚼し、唾液とよく混ぜ合わせて再び飲み下すという「反芻運動」をしている。草をたくさん食べた牛は、胃から1日に1000回も口に戻して、約5万回も咀嚼するといわれます。そうやって硬い繊維質の多い草をよく噛み砕いて栄養吸収をしているのです。
 反芻動物である牛は、本質的には草だけを食べても成長し、繁殖するものなのです。牛は4つの胃袋を持ち、その第1の胃の容積は200リットル近くもあるとのこと。この胃の中には無数の微生物が棲んでいて、その微生物の活発な発酵作用により、摂取した飼料の分解・消化作用が進められていく。
 牛が食べた大量の草は、反芻胃の中の微生物たちを養い増殖させる食べものとなる。そして微生物たちは、草よりもずっと栄養を持った食べものに変身して、宿主である牛に与えているのです。


 いま、二酸化炭素などの排出による地球の温暖化問題が大きくクローズアップされていますが、その環境に及ぼす悪影響の割合が、二酸化炭素の数十倍にも達すると見られているのがメタンガスです。このメタン発生の60%が人間活動によるものであり、その半分は農業から生じていると見られています。その第一要因は水田であり、次いで反芻動物が放出ているという。胃の中にはメタンを生成する細菌が無数にいてメタンが作られ、莫大な量のメタンガスが胃からゲップとして吐き出されているのです。
 世界の反芻家畜は年々増加しておりメタンは増える。そして地球の温度は上がる。それに伴ってシベリアの永久凍土が溶け出すと、普通の湿地の1000倍から1万倍ものメタンを放出すると述べています。




 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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