山ちゃんの食べもの考

 

 

その96
 

 さて、私達は日ごろお肉やその加工品などをおいしくいただいていますが、それらの家畜が、何を食べさせられどのように育てられているのかを中心に見てきました。そして日本では、一般の人々が普段の食事で当たり前のように動物性食品を取り入れ、お肉料理食べ、牛乳を飲むようになったのか。
 それは、実は戦後のことであり、ごくごく浅い40〜50年足らずの歴史でしかないものであることを確認しました。
 私達が口のするその動物たちが、私達が想像でイメージする、のどかな自然のなかで、優雅にのんびりと育まれていく生涯とは、大違いであることもわかりました。
 明治の開花とともに、西洋の栄養学と欧米型の食が導入されましたが、一般庶民は依然として日本の伝統食を守り通してきました。
 第二次大戦に敗れた日本は、平和憲法のもとに急速な経済成長ととも産業も復興し、食事情も豊かになりました。
 これまで口にすることもなかった美味しい動物性食品を、何時でも誰でもがお腹いっぱいに食べることができるようになりました。


 普段の食事メニューには、欧米風の食が当たり前のように中心をなし、動物性食品の比率がどんどん高まってきました。広まるレストランやファーストフードもそのほとんどが欧米風を模したものです。
 小躯でコンプレックスを抱いていた日本人も、今や若い人たちの体躯は欧米人並みに大型化しようとしています。
 米を中心とした日本の伝統食が影をひそめ、近藤正二博士が解明した長寿食などは見る影もない急激な様変わりです。そして、飽食と言われるくらい食は豊かになったものの、多くの人が糖尿病やガンをはじめ、いろいろな生活習慣病に不安を抱いている現状です。
 幸いにも、日本は世界の最長寿国です。高齢化社会を迎えていますが、この食事の有り方で、今後とも元気で健やかな長寿国であり得るのでしょうか。私たちの体は、まだ肉や牛乳、その加工品など、動物性食品の多量摂取に馴染んでいないはずです。
 食品、医療関係等コンサルタントを国際的に行っているイギリスのピーター・コックスさんが著した『新版 ぼくが肉を食べないわけ』(築地書舘)を中心に、肉食について学んでみたいと思います。


 『新版 ぼくが肉を食べないわけ』のなかでピーター・コックス氏は、まず、「肉を食べるのはやめよう」と呼びかけ、そして、この著書の中でそのワケを克明に述べられています
 「アメリカの疫学者であるローラン・ド・L・フィリップス博士とその研究チームは、25000人の研究対象人数をもとに6年間にわたって、肉を食べる人と食べない人の健康度合いを調査した。その結果肉を食べない人が冠状動脈心臓病で死亡する危険率は、男性が普通の人の4分の1であり、女性の場合3分の1であることがわかった。そして20年に及ぶ研究で、致命的な心臓病の危険率が、肉を食べる頻度と密接に関係しており、肉を食べれば食べるほど心臓病の危険性が高くなることを化学的に立証した。」と述べています。
 そして、週に1〜2回というわずかな量でも危険は高くなる。男性についていえば45歳から54歳の年齢ではとくに危険性が高い。その危険率は、菜食者に比べて400%であると、統計的に示しています。
 本来穀菜食動物であるといわれる人間が、動物性食品を主体とし、ことに日本人の場合、気候風土にそぐわない動物性食品の多摂取は体に負担を及ぼすことは当然でしょう。


 日本でもガンをはじめとする欧米型の疾病が急増しています。東京の国立がんセンターの科学者達によっても、肉食と健康についての研究が行なわれました。12万2000人以上の人数を追跡する調査が、16年にも及ぶ長期にわたっておこなわれるという大規模なものでした。
 その結果、肉食をしない人に比べて肉食をする人は、心臓病で死亡する人が1.88倍、ガンについては2.4倍という高率が示されたのです。
 この研究では、健康に対して危険率の高い喫煙や飲酒をしないで、緑黄色野菜を多食するという健康なライフスタイルのグループであっても、肉食という一つの要素を加えるだけで、死亡率に大きな影響があることがわかったのです。そして、危険率の低いグループ(禁煙・禁酒・非肉食・緑黄色野菜の多食)と、同じく禁煙・禁酒・緑黄色野菜の多食ではあるが肉は食べるというグループとの差は、心臓病について言えば30%も高かったといいます。
 また、喫煙し飲酒するが、しかし野菜を多く食べ、肉は食べないという人たちは、最も健康なグループ(禁煙・禁酒・非肉食・野菜の多食)に比べて全体的な死亡率は39%も高かったのです。しかし最も不健康なグループ(喫煙・飲酒・野菜を食べず・肉食する)では、死亡率はさらに14%も上昇したと述べています。肉食が健康にとっていかに関係するかがこの研究で解明されたのでした。


 ドイツのガン研究センターでは、科学者たちが「ベジタリアンがなぜガンにかかりにくいのか?」に高い関心を示して、熱心な研究がすすめられました。1900余の研究テーマが集められ、5年後にその研究成果が現れました。
 ベジタリアンの死亡率は、平均的な肉食の人の37%で、ガンによる死亡率は56%、心臓病においては20%と低い数字で示したのでした。
 同じく、イギリスにおいても4000人あまりのベジタリアンについて、7年間にわたる死亡原因が追跡調査されました。その結果も、ドイツ同様だったといいます。ベジタリアンの男性の死亡率は普通の人の約50%、女性は約55%であった。また、心臓病については男性が44%、女性が41%であったといいます。




 

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生命の農と食を考える
L A F 健農健食研究所 ラフ
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池田 優

 

 

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