
6月23日の日本農業新聞に、「環境」を考えた賢い買物を進めようとして今年度からスタートした法律。消費者が環境に配慮した商品を選ぶようになれば、エコロ
ジー商品の市場が広がり、それが企業に対し環境に配慮した製品の開発を促して、結果的に「産業のグリーン化」が進むというもの。
政府や自治体、企業などの大口購入者が率先して取り組み、再生紙使用、低公害 車、省エネ機器導入などへ切り換える。この運動の推進母体として行政、企業、消費者でつくる「グリーンネットワーク」(東京)が6月25日、グリーン購入の目安となる基本原則「グリーン購入ガイドライン」を作ったとその要旨が掲載されている。
「省資源・省エネルギー」「天然資源の持続可能な利用」「長期間使用・再使用・ リサイクル」をキーワードとして、紙、事務機器、パソコン、文具・事務用品、オフ
イス家具、自動車、照明ランプ、家庭電化製品など多岐にわたってポイントがアドバイスされている。
「自分ひとりでは何も変わらないと思わないで、グリーン購入することが、地球の環境に結びつくことを知ってほしい」と同ネットワークは呼びかけている、
と。

グリーンネットワークの呼びかけには、まったく同感です。大河の水、大洪水も一粒一粒の雨から始まります。何ごとにせよ、他人のせい、政治のせい、社会のせいな
どと他を責めるこの頃でありますが、これでは総論賛成各論反対で、事は始まりません。
要は一人ひとりの生き方についての意識・認識の問題であって、如何に考えどう生きるかという積極的な価値感の問題だと思います。子孫のためにも良い生き方をし、良い近未来を創っていこうとする今の考え方、生き方、生活や仕事のあり方に人間的意
味・意義を持つことが大事でしょう。
われわれの先人賢人の一人ひとりが、艱難辛苦の中にも、子々孫々の幸福と繁栄を願 いひたすら道を拓いて来てくれたように、私たち一人ひとりが、毎日の暮らしの中で成すべき事、出来る事を、「倦まず弛まず」続けることではないでしょうか。

中国古典に、「愚公、山を動かす」というのがある。愚公という老人が家の前にある二つの山が出入りするのに具合が悪い。息子と孫の3人でモッコを担いで山を崩し
海に運ぶ。近所に住む人が笑った。愚公は「もしわしが死んでも息子がいる、孫がいる。孫にも子供ができる。山は高くならない。平らかに出来ないことはない」と。
状況に甘んじていてはいけない。あきらめてはいけない。また、今の自分さえ良ければいいなど、目先の利得を追って事を判断してはいけない。混沌とした世情ではあ
るが長期的視野に立って、今何をなすべきか、何が出来るのかを考えてみたいもので ある。 環境の問題も、歪められた食の問題も、私たちに直面し、為すべきか為さざ
るべきかを迫られた巨大な「眼前の難山」です。
「汝、愚公たり得るか」。私たち一人ひとりが日々の暮らし方や在り方を省みて、「過ちを改るに、憚るなかれ」ではないですけれど、「倦まず弛まず」何を考え、何を求め、何を選び、何を消費するかということが、実は大きな力となって「山を移
す」とことにつながると思います。

多量の化学肥料や農薬など化学物質依存型の農業や、化学合成添加物や近代化された機械工業的に生産された食品が、健康に良くないばかりか自然環境を大きく汚染
し、人類をも含めたすべての生命活動に大きな危機をもたらしていることはこれまでにも述べてきました。
今回提唱されている「グリーン購入運動」に、食に関する提案の見当たらないのは残念ですが、「食・生命・環境は一体」であり、「安全・安心・健康の食」
を求めることは、ひとり自分の家族の健康を考えることにとどまらず、社会全体、人類全体、環境を含めた世界の近未来の創造につながることだと、その意味・意義を理解したいものです。
ごらんいただいたことを大変ありがたく感謝します。
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